Another Trainer   作:りんごうさぎ

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レッド回想その1


5.メガシンカへ至る道

 レイン、あんたは強かった。特訓で強くなったピカチュウも、伝説のポケモンも倒してみせた。

 

 やはりおれの思った通り……あんたこそがおれの倒すべき最後の敵。

 

 目の前にいるレインは普段の澄まし顔とは一変している。

 

 口を開けてこんなに驚いた顔……初めて見たな。

 

 ポケモンリーグで負けた悔しさは片時も忘れたことはない。

 

 ただレインに勝つために、そのことだけを考えて決勝まで戦ってきた。

 

 四天王戦まではとにかくピカチュウで勝ち上がりミュウツーとリザードンを伏せておく。

 

 準決勝でミュウツーを解禁し、メタモンのマークをミュウツーに向ける。

 

 そして決勝、メガリザードンであいつの首を取る!

 

 この勝負、リザードンに全てをかけた。あの時見せたこいつの強さを、俺は信じている。

 

 ◆

 

「オレは少しの時間もムダにできねぇし、さっさとナナシマにいくぜ。バイビー」

「……」

 

 ポケモンリーグ……惨敗に終わったおれは大きな変化を求められている。このままでは何回勝負を挑んでも勝てない。

 

 レインは常におれの想像を超えてくる。ならおれはさらにその上をゆく。

 

 限界を超えてポケモンを鍛えるには普通の場所では足りない。

 

 噂に聞くあの場所へ……それしか勝つ可能性はない。勝つためなら命も惜しくない。

 

「リザードン」

「ボォォォ!!」

「いくぞ!」

 

 マスターズリーグの受付を済ませ、“そらをとぶ”でハナダシティに向かった。すぐに目的の場所へ到着。一般人は立ち入りを禁止されているハナダのどうくつへやってきた。

 

 以前この町に来たときは通行止めされておとなしく諦めた。だが今のおれには力がある。多少の危険を冒してでも中に入る価値はある。

 

 リーグのトレーナーでも危険過ぎるという最強の野生ポケモン達……どれほどのものか見極めてやる。

 

「……」

 

 どうくつの入り口には何重にも防護柵のようなものがあり人はもちろんポケモンも間違って入ることのないようにしてあった。とんでもなく厳重なバリケードだ。

 

 この辺りのポケモンは弱いし、すきこのんで中に入ろうとするポケモンもいないはずだが、ここまで厳重にする必要があるのか?

 

 厄介なのは入り口の周りをうろついている門番。あれさえなんとかすれば空から侵入できる。

 

「でてこい」

「フィフィーー」

「フリィィ~」

「エーフィ、バタフリー、いいか、これから言うことをよく聞いてくれ」

 

 まずバタフリーを門番の上に飛ばせて上空に注意を向ける。

 

「ん? バタフリー……こんなところで珍しいな」

 

 次にエーフィの“ねんりき”で遠くのくさむらを揺らし、ついでにエーフィの鳴き声を出して複数個所に警戒を分散させる。

 

 ガサガサッ

 

「フィフィ~~」

「野生のポケモンか? こっちからも聞いたことのない鳴き声……1度にくると面倒だな。先にポケじゃらしを撒いておくか」

 

 仕上げは上空からの“ねむりごな”。すでにただのバタフリーへの注意はゼロのはず。

 

「ん? んぐぅぅ……」

 

 眠りに堕ちたか。

 

「よし、戻ってこい」

「フィーフィー」

「フリィィ」

 

 甘える2匹の頭を撫でてやり、モンスターボールに戻した。

 

 どうくつの中は薄暗いが明かりが必要なほどではなさそうだ。先へ進んだ。

 

「ゴーゴー」

「……」

 

 野生のポケモンが飛び出してきた。ゴーリキーとゴルバット、レベルは共に46か。まずは歓迎の挨拶ってところか。

 

「ピカチュウ、10まんボルト! エーフィ、サイコキネシス!」

 

 各々弱点をついて一撃で倒した。この辺りはまだ余裕。だが最奥までどれほどの道のりかわからない。慎重にいくべきか。

 

「エーフィ戻れ」

「――」

「?」

「ピィカ!」

 

 なんだ? 音はしなかった。……超音波? 

 

「――!!」

 

 ゴルバットの群れ! 仲間を呼んだのか!

 

「ほうでん!」

「ピッカ!」

 

 何割かは倒せ、何割かは痺れた。だがそれでもかなりの数が攻撃を耐えきりこちらに襲いかかってきた。

 

「全員攻撃したせいで的になってしまったか。……出てこいバタフリー、ねむりごなをばらまけ! ピカチュウ、逃げるぞ」

「ピィィカッ!?」

「回り込まれた……」

 

 数が多過ぎる。ゴルバットに囲まれたか。こいつらやたらとしつこくおれ達を狙ってくる。

 

 ノッケから大ピンチだな。さすがにこんな入口付近からいきなり総力戦はできない。

 

 門番に気づかれても不味いしおれ達の体力も浪費したくない。どうする? 必死に辺りを見渡す。

 

「あれは……みず?」

 

 どうくつ内に水場があるようだ。入口近くに水場があったのはツイてる。これを使う!

 

「ピカチュウ、おれに向かってたたきつける!」

「ピッカ!」

 

 狙い通りピカチュウはおれをみずのある方へ叩き飛ばした。空中を飛びながらボールを出してピカチュウを戻し、勢いに身を任せて水中へダイブした。

 

 ひとまず難を逃れたが水中にもポケモンがいたようだ。新手がやって来た。ゴルダックレベル44

 

「ゴーッダーッ」

「……!」

 

 ラプラスを水中に繰り出し反撃。指示を出せないおれに代わり自己判断で攻撃した。

 

「ラァァー」

「ゴダッ!? ゴォォ~?」

 

 “みずのはどう”が命中。混乱したようだ。

 

 相手をせずラプラスにつかまって先を急いだ。

 

 水面にあがり、陸へ降りた。その先にもやはりポケモンが待っていた。

 

 おれを見るや否や即戦闘を仕掛けてきた。

 

「パーラセクッ」

「ジリリ……」

「ナンスッ!」

 

 パラセクト49、レアコイル49、ソーナンス55……おかしな組み合わせだな。なんでこんなポケモン達が洞窟にいる?

 

 3体同時だがソーナンスの“かげふみ”で逃げれない。やるしかないか。

 

「ラプラスれいとうビーム! リザードンかえんほうしゃ! バタフリーねむりごな!」

 

 パラセクトが“れいとうビーム”を耐えて“キノコのほうし”を使ってきたが後は無力化した。

 

 ソーナンスはダメージさえ与えなければ怖くない。

 

 眠ったラプラスを戻してピカチュウに交代し総攻撃。なんなく勝利した。

 

「ラプラスは起こしておくか。……起きろ!」

「ラッ!?」

 

 レベルも上がった。ここなら修行場として申し分ない。それに奥にいくほどまだ強くなりそうだ。

 

 さっそく奥に……いや、速く先へ進みたいがまずはこの階層で地力をつけるべきか。

 

 どこか拠点を探して一度落ち着こう。

 

 ◆

 

 しばらくの間はレベルの底上げに時間を費やし、さらに奥へと進んでいった。いよいよ最下層とおぼしき場所についた。

 

「シェェェイ」

「……リザードン、かえんほうしゃ!」

 

 ユンゲラーレベル67か。レベルアップしたピカチュウよりもさらにレベルが高い。最初の攻撃は完全に相殺された。威力は同じ……なら今度は本体を狙う!

 

「グゥゥ……シェェェイ!!」

 

 反撃の“サイコキネシス”……リザードンは紙一重で耐えた。

 

「ブラストバーン!」

「シェェェ……」

 

 トドメをさしてなんとか勝った。さすがにバトル続きで疲労が蓄積し過ぎている。技にもキレがない。

 

 どういうわけかここのポケモンはやたらと凶暴だ。こっちの気配を感じるとどこからでも襲い掛かってくる。

 

 連戦による疲労は大きい。一度出直してくるべきか? いや、往復の時間がムダか。

 

 強くなるためには限界を超えてこそ意味がある……さらに戦うか。

 

 回復道具には限りがあるのでダメージは構わず先へ進んだ。どうくつの最深部、大きな湖に孤島を見つけた。

 

「何かいる……?」

 

 ラプラスに乗って進んでゆくにつれ、そのポケモンの姿がはっきりと映る。見たことのないポケモン。これは……

 

(こっちへこい……)

 

 頭の中に直接語りかける声、瞬間感じる凄まじいプレッシャー。なるほど、こいつがここの主か。

 

 ただ者ではない。これまで相対してきた猛者達と変わらぬ手応え。傷ついた状態で戦うのは危険か?

 

 ドバァァァァンンンン!!

 

 撤退を意識したタイミングで後方に水柱。退路を断たれた。もう進むしかない。

 

 相手は孤島の中央にて悠然とおれを待ち構えている。さっきの水柱を見るにエスパータイプ。それも伝説級。

 

 ゆっくりと中央へ向かって歩いて行くと、突然体が動かせなくなり中央のポケモンのいる方へ吸い寄せられた。

 

「ぐっ!?」

「ミュー」

 

 受け身も取れず堅い地面に投げ出され、無防備になったおれに“スピードスター”による攻撃が飛んできた。必中攻撃! 耐えるしかないか!?

 

「ピッカ!」

 

 ボールから出てきたピカチュウが“たたきつける”で“スピードスター”を弾いて相殺した。ナイス! このまま畳み掛ける!

 

「ねむりごな、ひかりのかべ、10まんボルト!」

 

 バタフリー、エーフィ、ピカチュウを繰り出し先手をとった。伝説のポケモンは慌てるでもなくじっと“しんぴのまもり”を使いこちらの出方を窺っていた。

 

 バチバチッ!

 

 “10まんボルト”がクリーンヒットするがあまり効いていない。それどころか笑みを浮かべている。少しは楽しめそうだとでも言いたげな表情だ。

 

「むしのさざめき! シャドーボール! ボルテッカー!」

 

 ビュン!

 

 こちらの攻撃は寸分違わず敵のいた場所で交差するが、敵は一瞬で移動しこちらの背後をとられた。

 

「ミューーッ」

「ビカッ……チャアァァ」

「ピカチュウ……!」

 

 一撃でやられた。たぶん“ひかりのかべ”は適用されている。なんて威力だ。

 

「のしかかり! シャドーボール!」

「カンビ!」

 

 ミュウツーの頭上からカビゴンを投入。決まれば大ダメージは必至だが“サイコキネシス”に阻まれた。

 

「フリッ!?」

 

 軌道を変えられカビゴンはバタフリーの上に落ちた。下敷きのバタフリーに意識はない。

 

 “シャドーボール”は命中したが気にするそぶりもない。攻守に隙が無い。

 

「戻れバタフリー! エーフィ、こっちでまもる! カビゴンじばく!」

 

 おれもエーフィの傍に駆け寄りカビゴンの“じばく”で相打ちを狙った。カビゴンは遅すぎてまともに攻撃してもダメージは通せないだろう。これしかない。

 

「カンビッ!」

 

 ドカン!

 

「……いない?」

 

 爆発の後には伝説ポケモンの影も形もない。吹き飛んだか?

 

「フィーッ!」

「……上か!」

 

 エーフィの声でようやく気づいた。やつは“ねんりき”で逆さになり天井に張り付いている。

 

 しかも“シャドーボール”と“10まんボルト”による傷が高速で治っていく。“じこさいせい”が使えるのか!

 

「ミュ……」

「今度は後ろ!?」

「フィッ!!」

 

 エーフィがいきなり吹っ飛んだ。相手の“シャドーボール”か! 一瞬で移動して、かつ壁越しに一撃で倒せるほどの攻撃を……強過ぎる。

 

「かえんほうしゃ! れいとうビーム!」

 

 右手にリザードン、左手にラプラスを繰り出す。

 

 両サイドから挟み撃ちにしたが今度は“ねんりき”で軌道を曲げられお互いの技で同士討ちになった。

 

「フレアドライブ!」

 

 ここにきて遠距離攻撃ではダメだと悟り、近距離から攻めた。

 

 バシッ!

 

 なんと敵は真っ向から受け止めて反撃してきた。

 

「ミュ……」

 

 これはピカチュウを倒した時と同じ技。“サイコキネシス”に似ているが決定的に何か違う。見たことない技だ。

 

「グルゥゥゥ」

 

 リザードンは岩に叩きつけられ完全に気を失った。

 

 今の“フレアドライブ”は“もうか”が発動していた。最初からダメージがあったからだ。生半可な威力ではなかったはずなのに……だが、余裕を見せたこの攻防が命取りになる。

 

 リザードンは……囮だ!

 

「ラッ!」

 

 ピキピキピキ……

 

「終わりだ!」

 

 “ぜったいれいど”命中……一撃必殺!

 

(そのような小細工は通じぬ)

 

「……!」

 

 氷漬けにされた敵が出てきた! 一撃必殺でも勝てない……これでは万事休すか!

 

「ハイドロポンプ!」

 

 ……避けない!?

 

 最後のあがきだったが、敵は微動だにしない。技を使う気配もない……!!

 

「……回復している!? まさかずっと! 勝手に再生する能力があるのか?!」

 

 ようやく理解した。おれのポケモンではサシで致命傷に至る攻撃は不可能だ。

 

 だから“ハイドロポンプ”を避けないのか。圧倒的な力の差……気づくのが遅過ぎた!

 

 ラプラスをボールに戻す。もう逃げることもできない。逃げるつもりもない。

 

 どうせ死ぬなら背は向けない。おれは前のめりに倒れて死ぬ!

 

(力が足りぬ……出直してこい)

 

 一瞬激しい痛みを感じ、そこで意識が途絶えた。

 

 ◆

 

「起きて! 起きてください!」

「……」

 

 河原……ここはどこだ? なぜこんなところに?

 

「やっと起きた! あなたレッドさんよね? どうしてこんなところで寝っ転がっていたの? 真冬だよ? 私が通りかからなかったら風邪引いてますよー」

「……誰?」

「うっ……私はあなたがカスミに挑戦した時に審判してた女の子ですぅ!」

「あぁ……なぜこんなところに?」

 

 覚えてはないが黙っていよう。

 

「暖かい季節はここらで特訓したりもするんだけどね、今回は別件よ。どうやらハナダのどうくつで異変が起きているようで、様子を見てこいってカスミに言われたの。わたしがこの辺によく来ていることがバレてたみたいで……。リーグの関係者まで来るしなんか色々やらされて大変だったわ」

「そうか」

 

 異変……おれのせいか。さすがに門番を眠らせて入ったのは強引過ぎたか。侵入したことがバレていたかもしれない。

 

 ここにはおそらくあのポケモンに飛ばされたのだろうが、逆にラッキーだったな。門番の目を掻い潜って外に出られた。

 

 すぐにリベンジしたいのは山々だが、今のままでは力不足。レベルはあの洞窟以外では上げられないし、技を磨くしかないか。

 

 あとはあのポケモンの情報……丁度いい、この子に聞こう。情報はとにかく人から話を聞いて回るのが1番いい。

 

「洞窟のポケモンについて何か知っているか?」

「えっ、私が? さすがに知らないわ。とっても狂暴らしいけど、その生態はあまり知られていないの。入る人がいないからね。入った人も帰ってこないし……」

「誰なら知っている?」

「うーん。そう言われてもなぁ……あ、リーグ関係者と一緒に様子を見に来たおじいちゃんはなんか訳知り顔だったわね。ここに詳しいから呼ばれたのなら納得だし」

 

 有力そうだな。今はその人物にかけるしかない。

 

「誰だ? 名前は?」

「名前は忘れちゃったかな……博士とか言ってたような……頭ツルツルで、眉が太いおじいちゃん。とっても優しそうな人だったわ」

「……フジ?」

「あっ! そうそう、そういえばフジ博士って言ってた!」

 

 あの人か。博士ってことは昔に研究者とかだったのか?

 

 他に手掛かりはない。一度行ってみよう。

 

「おれはその人に会いに行く」

「あ、ちょっと! いっちゃうの!?」

 

 そういえばリザードンはひんしか。歩いてまずはポケセンに……ん? ここはどこだ??

 

 歩き出した足を止めて女の子の方に向き直った。情報は人に聞くのが基本。

 

「ポケセンはどこだ?」

「……バカ」

 

 呆れられたが丁寧にポケモンセンターまで案内してくれた。

 




レッド、無事護送される()

本編の味付けが薄いということで外伝っぽいのを入れてみました
こういう話を今後も続けるかは様子をみながら考えます

次はミュウツーに関する設定をしゃべる回です
もちろんいわゆる独自設定ですけどね

最新作でポケモン屋敷の地下にミュウツーの実験施設があったり、初代女主人公の名前がブルーだったりでそんなに的外れではなかったので調子に乗ってます

ブルーについてはリーフにしなかったことを内心結構気にしてましたが今は心置きなく呼んであげれますね

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