Another Trainer   作:りんごうさぎ

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今更ですがこれを読んで下さっている読者の皆さんへ

本当に拙い作品ですが、お付き合い下さり感謝の至りです
お気に入りや評価もちゃんと見ています
身に余る評価で逆に恐縮ですが内心かなり喜んでいます
感謝感謝です

もちろん打ち切り前の感謝祭とかではないので、お話はまだまだ続くので今後もよろしくお願いします。


2.変人変態 お転婆乙女

 アカサビという新メンバーを加えながら旅路を進め次の町に着いた。虫取り大会があった町はタマムシの北にあったので必然的に次に目指していたのはハナダジムだ。ハナダシティはゲームではかなり出入りがしづらい町という印象だったがここではどうなんだろうか。

 

「ジムのある町にやっと着いたな。タマムシからだといつもの流れに背いているみたいで変な気分だが南からも普通に入れるな。さすがに細い木に囲まれて入れない、なんてことはないか。町として不自然だしな」

 

 ハナダシティを見てそんな印象を受けていると北東の方から自分のいる方に黒ずくめの男が慌てて走ってきた。どう見てもロケット団だな。そして場所と方角からすぐにこいつが何者か見当がついた。“あなをほる”ドロボーだ。

 

「まさかレッドが取り逃がしたか、あるいはそもそも会わなかったのか。いずれにしても、一度とっ捕まえてみればわかることか。とりあえずグレン、行く手を塞いで“いかく”してやれ」

 

 “しんそく”で男の前に立ちふさがり“いかく”すると、男は慌ててのけぞり、しりもちをついた。もう完全に戦意を失っているな。

 

「あんたいかにも怪しいな。このままジュンサーに突き出しても構わないが、出すもん出すなら見逃してやってもいいぞ?」

 

 暗に“あなをほる”のわざマシンを要求すると、観念してすぐにわざマシンを差し出してきた。もちろん盗品の又盗みなんて褒められたことじゃないが、俺は元々盗人。レッドのような正義の主人公様ではない。いまさら遠慮はなかった。……もっとも、そのレッドも持ち主の鼻先で又盗みしているが。

 

「いいもん持ってるじゃん。そういや、この辺で赤い帽子の子供に会わなかったか?」

「なぜそれを! あっ、いや、知らない知らない!」

 

 こいつ、底抜けに間抜けだな。しかしレッドには会っているのか。しかもついさっきと見た。あっちも今旅を始めたところか。俺が西側からきて奴が東側から抜けたなら丁度入れ違いになったということか。ま、あっちの進み具合がわかっただけで十分だ。確実に今年のリーグは面白くなる。楽しい勝負ができるかもな。あんまり相手が弱いと退屈極まりない。歯ごたえのある奴がいるようで安心した。

 

「じゃ、俺はここで……」

「待て」

 

 俺が考え事をしている間にどさくさに紛れて逃げようとしてんじゃねぇよ。そもそもレッドにもわざマシンは渡しているはずなんだ。そう考えるとこいつは複数個持っている可能性が高くなる。

 

「な、なんの用です? へへ、もうわざマシンは…」

「まだあるだろ? あるだけ全部置いていけ。さもないと……」

「ヴォウ!」

 

 レインは わざマシンを 30個手に入れた ▽

 

 グレンの一鳴でボロ儲けだな。正直すぐには使い道なんてないから売るぐらいしかないが、もしかしたら何かあった時に役に立つかもしれない。とりあえず今はキープしておこう。さて、いきなり変な奴が出て来たが、この町に来たら最初にやることは決まっている。そう、自転車だ! 念願の折り畳み!

 

 ◆

 

「この自転車は100万円になります」

「なん……だと……!」

「この自転車は100万円になります」

 

 きれいに復唱された。そういう意味じゃない! なんで自転車に100万も値段がつくんだっ! なんでそこはゲーム通りなんだよっ!

 

「この折り畳み式自転車はモンスターボールの技術を応用して圧縮して持ち運べるのです。世界最先端の技術ですのでこの価格になります」

 

 ロマンが、折り畳みのロマンが……いや、まだ諦めない。交渉してなんとかする。俺はずっと現実でも折り畳み片手に旅するのが夢だったんだ。せっかくそのチャンスが来たのにここまで来て諦められるかよっ!

 

「なら、このわざマシンと交換はどうだ?」

「それは非常にレアな“あなをほる”のわざマシン! どうやってそれを! いや、でもダメですよ。こっちは100万ですからね。複数なら考えてもいいけど……」

「3つ。これでどうだ?」

「だ、ダメです! せめて……10、10はないとなー。ま、そんなにないでしょうが……」

「交渉成立だな」

 

 バンッ!

 

 わざマシン10個を叩きつけて、見事折り畳みを勝ち取った。まさかこんなにすぐにわざマシンが役立つとは、ラッキー。交渉は俺の粘り勝ちだ。なんとなく、トレーナーで自転車に乗っている人を見かけない理由がわかったな。

 

 ◆

 

 嬉しさの余りその後は自転車を乗り回し、気づけば方角も見失い広い河原に出てきて道に迷ってしまった。だがなんとなくこの地形は見覚えがある。ハナダの北西の、洞窟の前にある川の辺りか。川の流れから方角は逆算できる。とはいえさすがにはしゃぎすぎた。疲れたし少しここで休もう。

 

「ガーウッ」

 

 グレンは広い河原に飛び出して行った。たまにはゆっくりさせてやるか。そもそもあの町から出られたらもう急ぐ意味もない。この町でジム戦はしないといけないが探すのは後にするか。回復は十分だし、見つけたらすぐできるだろうからな。けど、グレンは泥んこになってけっこう汚れているな。けづくろいしてやるか。

 

 最近はなつき度上げを兼ねてグレンとアカサビには“けづくろい”をするようになった。前の町でブラシなど必要そうなものを一通り購入しており、だんだんコツもわかりグレンもアカサビも喜んでくれるので毎日一度はやるのが習慣になっていた。ついでだし今からやるとするか。

 

「クゥゥーン」

 

 毛並みを整えて、軽くマッサージをしてあげた。いろいろ試してどこがいいのかもわかってきた。優しくツボを押してやると嬉しそうに鳴いた。それを見てこっちまで嬉しくなり、頬ずりして背中を撫でた。グレンもそれを受けいれて身を任せてくれる。

 

 ちなみにアカサビは鋏(?)を研いでやると無表情ながら嬉しさを隠しきれていないなんともいえない反応を見せてくれる。なんでかポケモンに触っていると感情が手に取るようにわかり、しかも幸せな気分がこっちまで移ってくるのでけづくろいをするのは自分にとっても至福のひと時であった。

 

 ――ッッ!!――

 

 ハッ!? 幸せをかみしめながらブラッシングしていると、どこかから視線を感じた。なんだ今の感覚。慌てて辺りを見渡すが人影はない。気のせいか?

 

「……」

 

 ふと、遠くへ目をやればハナダの洞窟が見える。……なんとなくヤな感じだ。

 

「ガーウ?」

「いや、なんでもない。横になってろ」

「クウーン」

 

 けづくろいを続け、きれいになったグレンは気持ち良さそうに伸びをした後、蝶を追って駆け回り始めた。和む風景だな。空気もタマムシとは違って澄んでいるし言うことなしだ。あの町は廃液やら煙やらのおかげで空気が淀んでいたからな。満足してゴロンと横になり休憩していると、静かな河原に鋭い悲鳴がこだました。

 

「やめて、離してっ!」

 

 子供、それも女の子の声。こんな昼日中から厄介事のにおいがする。関わるとめんどそうだが、ほっとくのもさすがにマズイか。チラリとグレンを見ると、どうするんだ、と目で語りかけてきた。俺の指示を待ってくれている。当たり前といえば当たり前だが、それを見て俺への信頼を感じて少し嬉しくなり、その信頼に応えるため助ける決意をした。こんなガラじゃないのにな。

 

「しゃーない、急いで助けに行くぞ。飛ばせ!」

 

 ガウ、と嬉しそうに返事して身を屈めたグレンに跨り一気に駆けた。遠くの木陰に人影が見える。女子とおっさんの2人いるな。

 

「それ、返してよー」

「へへ、いいじゃないか、ちょっと遊んでこうよ。おじさんのきんのたまをあげるからさあ、へへへ」

 

 え、なんなのこれは。きんのたま……おじさん? この状況は、いろいろ狙い過ぎじゃないのか。なんと言うべきか……とりあえず間に入るか。

 

「えーん、もう、誰か助けてー!」

「おバカだな。こんなとこに人なんてこないよ、へへへ」

「それはどうかなぁ。ここに1人いるけど?」

 

 俺の姿を見て怪しい男、言い草がきんのたまおじさんみたいな奴はうろたえて距離をとった。小心者だな。

 

「な、なんだ、お前! なんでこんなところにいるっ!」

「お前こそ、こんなところで何をしてたんだ?」

 

 いちいちバカ丁寧に相手の質問に答えるのは下の下。今のところ被害者っぽいこの女の子は何もされてなさそうだし、様子見に徹した。

 

「た、助けて! この変な男に付きまとわれて、なんか私の体に触ってくるし」

「イヤなら無視して逃げたらいいだろ」

 

 普通はそうすると思って聞いてみた。

 

「それが着替えを取られちゃって、ううっ……」

 

 と、困った表情で訴えかけるこの子は確かに水着姿。服がないと困るな。でもまだ夏前なのにもう泳いでいるのか。しかも水着のままこんなところをうろついていたことに。こっちも大概変な奴だな。失礼なことを考えていると俺が何も言わないことに対して勝ち誇ったように男が声を上げた。

 

「へへ、でも残念。これは落ちてたもんを拾っただけだ。だからこれは俺のもんー、欲しいなら代わりに俺と遊んでいくんだ」

 

 こいつ子供かぁ? 自分勝手な小学生と同じレベル。アホらしい……真面目に話するだけムダか。さっさとケリをつけよう。

 

「あっそ。だったらこうだ。グレン、いかく」

「ヴォウオオォォンン!」

「ヒイイッッ!」

 

 ビビッて男が手を放した隙に服を取り返した。

 

「ほれ、これでいいか?」

「え、あ、はい」

 

 ポン、と投げて寄越すと目を白黒させながらも女の子はペコリとお辞儀した。

 

「ああっ!? お前っ! 勝手に何やってんだ! 俺の服!」

「何って、落ちてたもんを拾っただけだ。拾ったものは俺のものだから、この水着っ子に渡してもいいだろ。おっさんが言ったことだぜ?」

「こいつ、屁理屈を! あと、俺はまだ20代だ! おっさん言うな! こうなったらバトルして力ずくでも奪い返して……」

 

 ごちゃごちゃうるさいのでグレンに目で合図して追っ払ってもらった。

 

「ガウゥゥゥ……!」

「ッッ! す、すいませんでした!!」

 

 グレンの唸り声が決め手となり、怖気づいた男は全速力で逃げていった。さっき見たロケット団の奴そっくりの逃げっぷりだな。逆に感心しながらも水着っ子に視線を戻すと、意外にもこっちは怯えた様子もなくグレンを見て感心していた。そういえばさっき視線を感じたが、あれはこいつからの視線だったのだろうか。他に人はいないしな。

 

「ほえー、とってもよく育てられてる。すごーい。あっ、どうも、助けてもらってありがとうございます。一時はどうなることかと」

 

 俺の視線に気づいて改めて礼を言われた。最初は助ける気もなかったからバツが悪く、素直には礼を受け取れなかった。

 

「たまたま近くにいたから様子見に来ただけだ。大したことしてないしな。それより、お前トレーナーか? こんな時期に水着だし、グレンに腰が引けてるわけでもない。なのになんであんな奴に後れを取っていたんだ? バトルして無理やり奪い返してやればいいのに」

「うう、実はここで特訓をしていて、もうポケモンはヘロヘロなんですよ。元気ならあんな奴ぶっ倒してやるのに。さすがにこの子の“いかく”みたいにすごいことはできないけど」

「やっぱりそうか。トレーナーは得てして変な恰好をしているしな。だったらハナダのジムの場所知っているだろ。教えてもらえるか?」

「ちょっと、この服装はうちのフォーマルなのっ、変な人扱いしないで下さい。……あなたジム戦にいくのね。ならラッキーよ! 何を隠そう私こそっ、我らがハナダジム、ジムリーダーカスミの一番弟子、コズエよ! えへへ、びっくりしました? よろしくね。丁度戻るところだから一緒についてってあげる。えーと……」

「レインだ。こっちこそよろしく」

 

 まさか関係者だったとは。一番弟子というのは正直怪しいが、これは確かにラッキーかもしれない。グレンを挟んで着替えると、コズエはなんとピクニックガールだった。水関係ないなと思ったが弟子というのはこいつ曰く大概そんなものらしい。

 

 河原のピクニックガールか。ゲームではそんな奴いなかったが、ジムの中にはいたのだろうか。わからない。そこまで覚えてないな。グレンをボールに戻し、コズエの後についていくと、道すがら町の案内もしてくれたので非常に助かった。意外と面倒見のいい奴だ。

 

「悪いな、こんなにゆっくり案内させて」

「いえいえ、助けてもらったお礼ですから、このぐらいなんでもないです。さあ、着きましたよ。我らがハナダジムに到着です。すぐカスミを呼んでくるので待っていてください」

 

 タマムシに比べてトントン拍子に行き過ぎていて怖いな。まあこれが普通なんだろうが。一応今回も看板を見ておくか。

 

 おてんば人魚カスミ

 

 ……これ、まさか自称じゃないよな。自分でこんなこと言っていたとしたら大分変人だな。ゲームでなくリアルで見ると大分印象が変わる。

 

「あなたがチャレンジャーのレインね、コズエが世話になったわ。バトルの申し込みならすぐに受けて立つわよ。奥へついてきて」

 

 看板について考えているとすぐにカスミが現れた。予想外に早く出てきて思わず考えていたことをそのまま言ってしまった。

 

「あ、おてんば人魚もう来たのか。早いな」

「ちょっとあんたっ! その言い方はやめてちょうだい! それは姉さん達にふざけてつけられたのよ。私はれっきとした乙女なんだからっ」

「やっぱり自称ではないのか。……乙女?」

「何よその顔は! 失礼な男の子ね。いいからさっさとこっちに来なさい!」

「っと、奥についていくんだったな。じゃあ案内してくれ」

「もしかして今看板見てそんなこと考えてたの? はぁ、随分と余裕ね。足元掬われても知らないわよ。バトルの世界はそんなに甘くないわ。そんなことでジム戦の方は大丈夫なの?」

「それはバトルしてみればわかることだろ」

 

 やれやれ、という感じでカスミはトレーナーカードの読み込みを行い、ランクを見て驚きの声を上げた。何事だ?

 

「まだランク2だったの? 慢心するのが早過ぎよ。もうちょっと気を引き締めた方がいいわよ。コズエからかなり強いとは聞いているけど、本当なの?」

 

 バトルフィールドに立ちながら呆れ声で言うカスミに、ランクを上げるためにあえて余裕を見せつけるように自慢げに返した。

 

「誰だって最初はランク1から始まるんだ、どんなに強かろうとな。その証拠に最初のジム戦はランク7に勝ってバッジを手に入れた。俺は既にバッジ7個相当の実力、ということだ。もっとも、前はあのジムのリーダーが弱過ぎたせいかもしれないが」

 

 これにはカスミだけでなく審判として間に立っていたコズエも驚きを隠せなかった。

 

「レインさんホントですか!?」

「そんなことありえないわっ! まさかあなたずっとジム戦はしないでポケモンだけ育てていたの?」

「別に。トレーナーになったのはつい最近。だがポケモンは短い時間でもみっちり鍛えてあるから同族で敵う奴はいない程強い。まぁ俺のことはどうでもいい。今回もランクは7にしてくれ。できるだけ強い奴と戦いたいんだ。いつも弱い奴ばっかで退屈だから。いいだろ? とにかく格上との戦闘経験を積んでおきたいんだよ。駆け出しだから」

 

 駆け出し、というところをあえて強調して言った。

 

「あなた、ホントにランク7に勝ったの? どこのジムよ?」

「タマムシ。そんなに信じられないなら連絡とってそこに聞けよ。待っていてやるから。面白いものが見れるかもしれないしな」

「面白いもの?……うーん、あのエリカが駆け出しのトレーナーに負けるなんて信じられないけど……。いや、いいわ。そこまで言うなら信じてあげる。それに、あなたの言うようにバトルしてみればわかることだしね」

「なんだ聞かないのか。チッ、あいつのうろたえる声が聞けると思ったのに」

 

 最後はぼそりと、カスミには聞こえない程度に言ったので聞こえてはいないようだ。

 

「じゃ、ジム戦を始めるわ。先に言っとくけど私は強いわよ。それに、ランクを上げるからって手加減はしないわ。覚悟してよ」

「別にこの前も相手が油断してたから勝ったわけじゃない。そっちこそ油断したとかそういう言い訳はなしだぞ? 前はつまらん試合だったしちゃんと楽しませてくれよ、おてんば人魚さん」

「だ・か・らっ! その名前で呼ぶな! 使用ポケモンは2体、交代はチャレンジャーのみ。フィールドはこのプールよ。いいわね?」

「ああ」

 

 やっぱりハナダはこんなフィールドか。ジム側に有利すぎてセコイ。水なかったら水ポケモンは戦えないから仕方ないのかもしれないが。

 

「両者構え、用意……始め!」

「いけ、アカサビ」

「いくわよ、ゴルダック」

 

 アナライズ!

 

 ストライク Lv27

 実 83-97-54-36-54-85 

 技 1つばさでうつ 

   2でんこうせっか 

   3みねうち

   4つるぎのまい 

   5まもる

   6みがわり

   7こうそくいどう 

 

 ゴルダック Lv40 

 実 106-97-76-83-68-107

 

 かなり能力値は負けているし、ゴルダックだから能力も尖りがない。逆に戦いづらいな。積んで決めるか。

 

「水中に潜って周回して」

「4。相手は視ず、俺の言葉に集中しろ」

 

 攻撃せず、舞を続けるストライクを見てカスミは怪訝な顔をした。今指示したのは“つるぎのまい”、攻撃力を2ランク上げる技だ。

 

「どういうつもり? そっちから来ないならこっちから攻めて攻めて攻めまくってやるわ。みずのはどう、連続で撃ちなさい!」

「右の足場へ移れ! 次は前だ」

「避けられたか。ならねんりきよ!」

「右だ! なにっ!? 避けられないだとっ!!」

 

 躱す指示をするがそれでも当たった。“ねんりき”は避けられないのか? しかしすぐに技の効力は切れて、ゴルダックも動かない。硬直時間があるのかもしれない。技にかかるとこっちも動けないから、このまま積みにいくのはマズイ。だったら盾を先に張っておくか。“みがわり”をさせてから“つるぎのまい”をするように指示を飛ばす。

 

「6,4」

「また舞い始めた。何も技の指示をしないし、あんたやる気あるわけ? まさか私のことなめてんじゃないでしょうね?」

「さぁ、どうだろうな。というか、お前は何も思わないんだな。意外だ」

「どういうこと? ……ふーん、何か考えがあるのね。なら悠長にしていられないか。次はれいとうビームよ」

「もう十分だな。1、当たるのも構うな」

「なんですって?!」

 

 直撃も厭わず“つばさでうつ”が決まり、ゴルダックに命中。ちょっとインチキくさいがしゃべって時間を稼いだおかげもあり4ランク能力は上昇している。つまり攻撃力は3倍。ゴルダックをもう少しまで追い込んだ。だがおかしい……。

 

 テクニつばさでうつ(135)に係数0.25と3倍をかければ約100だから、100*97>106*76となり指数では相手の耐久指数を完全に上回っている。普通ならほぼ1発、というところだったんだが……技を受けながら水中に逃れ、水で上手く衝撃を和らげているようにも見えた。そのせいで完全にはダメージが伝わっていないのだろうか。

 

 人間なら鞭打ちのようになってもおかしくないのにさすがは水ポケモンか。防御にまでフィールドを使っているとは、さすがにいい動きをしてくる。確実に当てるなら先制技の“でんこうせっか”の方が良かったかもしれない。乱数の幅が大きいというのは考え物だな。

 

「まさか無理やり突っ込んでくるなんて! 水中で体勢を立て直して」

「仕留め損ねたか、乱数が悪かったな。アカサビ、慌てるな。俺の声に集中しろ。敵は見なくていい」

「たいした自信ね。いい度胸しているじゃない。ゴルダック、あれをやるわよ」

 

 なんだ、何かする気か? アカサビの真後ろから攻撃の準備をするのが視えた。すぐに指示を飛ばす

 

「真後ろ、2」

 

 “でんこうせっか”は先制技。水から出てきたゴルダックが技を出すより先にこっちの攻撃が決まり戦闘不能になった。

 

「うそっ!? なんでわかったの!? 完全に今のは読まれていた。私の考えがわかったのっ」

「実力の差だな。ポケモンの能力は攻撃以外全てゴルダックが上だが、トレーナーのレベルが全く違う。たとえ水の中に姿をくらまそうが、俺には全て手に取るようにわかる。これで少しは俺の実力を認める気になっただろ?」

「……確かに、今のは見事だったわ。でもあなたずっと技の指示はしてないじゃない。ポケモンが自分でやったことでしょう」

「ああ、そうか、そっちからはそう見えるのか。そうそう、1つ気になったんだけど、あんた、つるぎのまいっていう技は知らないのか?」

「え、もちろん知ってるけど……まさか今のがそれだったの?」

「気づかないもんなんだな」

「ポケモンごとに特徴があるんだから技名を聞かなきゃ普通わからないわよ!」

 

 へぇ、これはいいことを聞いたな。なら技名を言わないのはかなりのアドバンテージになる。

 

「そういうもんなのか。ま、聞きたいのはそれだけだ。次のポケモンをどうぞ?」

「なんか釈然としないけど、今はバトルに集中しないと。ジュゴン、出番よ!」

「パウパウウ!」

「ジュゴン……らしくない。えらく守り寄りのポケモンだな。攻めて攻めて攻めまくるのがポリシーじゃないのか? ちょっと意外」

 

 ジュゴン Lv41 おだやか 

 実 137-71-72-75-104-67

 

「ハッ、まさか! 全員が攻撃寄りなわけないでしょう? それに、この子も攻撃面を疎かにしたつもりはないわ」

 

 そう言われても……能力でみれば疎かにしているのが一目瞭然なんだがな。やっぱりレベルぐらいしかわからないもんなんだろう。能力がわかればこんなことは恥ずかしくってとても人に言えたもんじゃないだろうし。

 

「はじめっ!」

「なみのり!」

「5」

 

 範囲攻撃は避けられないから“まもる”はかなり有効だ。広範囲を攻撃する際はその分反動も大きいから“まもる”後の隙も気にならない。今みたいにこの技は相手の出方を見てからでも間に合うので“みがわり”よりもさらに使い勝手はいい。覚える技の上限がないこともあって、“まもる”と“みがわり”は完全に必須技だ。

 

「そのまま潜ってみずのはどう連打」

「右に、次は左」

 

 なるほど、“みずのはどう”は攻撃後にそのまま潜ることで技後の隙をカバーしているのか。初動も“なみのり”でスムーズに水中にそのまま逃げ込めているし、さすがに戦術ってやつを考えているな。水中からの狙いもバラけていて読みにくい。この目でサーチできなければ苦戦していたな。

 

「なんで!? ここまでやって一度も当たらない! そんなことありえないわっ! リーグでもここまで読み切られることなんてなかったのに、どうして?!」

「スキあり! 左、1」

「しまった、みずのはどうよ!」

 

 “つばさでうつ”が完璧に決まったと思ったが、なんとジュゴンはその場で“みずのはどう”を盾のように展開して攻撃の衝撃を水で吸収して受けきり、見事に防御した。信じられない技の使い方に唖然としてしまい、技の指示が遅れてしまった。

 

「動きが止まった、チャンスッ! れいとうビーム!」

「やば、2だ」

 

 慌てて“でんこうせっか”を指示するが、上手く動けず直撃して倒れてしまった。アカサビで全抜きするはずが、こんなことになろうとは。向こうはまだ大したダメージはない。これは少々マズイな。アカサビとはまだ阿吽の呼吸とはいかないか。

 

「ようやく隙らしい隙を見せたわね。正直今のはラッキーだったわ。それに急にポケモンが動かなくなったのは、やっぱりあなたが指示を出していたからなのね。もしかしてその数字みたいなので伝えていたのかしら」

 

 今俺が呆けたせいで番号で技を伝えていたことに気づかれたな。仕方ないか。

 

「そんなところだな。ま、今のは素直に感心した。技の使い方に関しては、確かに長くバトルをしているあんたに一日の長があるな」

「みずのはどうはうちのジムのお家芸なの。ジムにはそれぞれ研究している技があるものなのよ、駆け出し君」

 

 そうか、そういやここでは“みずのはどう”のわざマシンがもらえたっけか。研究して極めればあんな使い方もできるようになるのか。さっきは特に何も言わずあの使い方をしていたし、普段から使い慣れているようだな。だが良いことを知った、いろんな意味で。得意そうな顔をしていられるのも今のうちだ。

 

「一度見れば二度同じ手は食わない。任せたぞ、相棒!」

「ヴォウオオン!」

「あ、あのときの」

 

 コズエはグレンの登場にちょっと嬉しそうだな。

 

 グレン Lv28

 実 95-92-56-67-48-92

 技 1かえんほうしゃ 

   2かえんぐるま 

   3しんそく 

   4かみなりのキバ 

   5まもる

   6みがわり 

   7オーバーヒート 

   8こうそくいどう 

   9ひのこ 

  10おにび

 

「ふーん、その子が切り札なのね。でも、うちのジムに炎ポケモンを使うなんてどういうつもりなの?」

「俺は相性よりこいつの強さを信じてる、それだけのこと。いくぞグレン!」

「か、開始!」

「ヴォウ!」

 

 “いかく”でビリビリと空気が振動する。

 

「大したいかくね。でもレベルはまだまだよ。みずのはどう」

「レベルしか見てないようじゃ、まだまだ甘いな。グレン、右」

「みずのはどうを続けて」

 

 次々来る波動を右、左、右後ろ、と短い指示でかわし続ける。グレンとは最初の頃からの付き合いで戦闘経験が長いので、阿吽の呼吸で俺に応えてくれた。

 

「だったら、今度は変化もまぜなさい!」

「!……5」

 

 今度は避けたはずの波動が曲がってきた。指示を聞いて念のため先に“まもる”を張らせておいたが初見でされたらまた直撃だったな。

 

「チッ、グレン、真ん中の浮島へ行け」

「そんなところじゃいい的にしかならないわ。れいとうビーム」

 

 いろんな攻撃が飛んでくるがその全てをグレンは避け切った。曲がる波動も、曲がり際を見切ってなんなく避けられた。

 

「なんで……そうか、足場が広いからね。真ん中は一番足場が広い。だったらその足場から崩してやるわッ、たきのぼり!」

 

 下から来たか、チャンスだ。

 

「右へ、ついでに当てろ」

 

 なにを、と言わずとも避けながら“ひのこ”をジュゴンに当てた。

 

「逆に攻撃されるなんて、なんて連携力なの。負けずにオーロラビームよ」

「来た! 右後ろ! 7だ! 決めろっ!」

「ヴォオオオ!」

 

 “オーバーヒート”が炸裂。この技は能力が下がるがその他のデメリットが薄い。この一発を確実に当てるため、ずっとグレンに攻撃パターンを見せて隙をうかがっていたんだ。グレンも何も言わず俺の意図を感じ取ってくれていた。やっぱりピンチでここぞという時に頼りになる。だがジュゴンはまだ耐えている。……いや、それどころか結構残っているな。残りHPは90ぐらいか。理由は……特性か。

 

 “あついしぼう”のせいでダメージはいまいちだったが、吹っ飛んで浮島に打ち上げられている。あいつは素早くないからすぐには潜れない。今まで水中で攻撃できなかったが、これで一気に畳みかけられる!

 

「ジュゴン! マズイ、一旦かげぶんしんで攪乱して!」

 

 これでゲームセットかと思いきや、それはむこうも承知。対策を講じていたか。“かげぶんしん”で時間を稼ぐ気だな。抜け目ない。だが俺には無意味。

 

「そいつだ! 新技を決めてやれ!」

 

 バリバリッ!

 

「うそっ! しかもここでひるみぃ!?」

「そのままもう1回だ! いっけぇ、グレン! やっちまえ!」

 

 俺の指さした先にグレンの新技、“かみなりのキバ”が炸裂。いきなりのことでガードも満足にできず、さらに“ひるんでわざがだせない”ようだ。この技は一定確率で相手をひるませる追加効果がある。ラッキー。もう一度“かみなりのキバ”を当てて、ジュゴンは戦闘不能となった。

 

「ジュゴン戦闘不能、勝者チャレンジャーレイン!」

 

 互いに歩み寄り、カスミからバッジを渡された。

 

「ふう、まさか本当に負けるなんてね。いいわ、あなたの実力を認め、ブルーバッジを渡します」

 

 水滴のような形をしたブルーバッジを手に入れた。戻ってきたグレンと一緒に喜んだ。

 

「全くもって大した奴ね。一瞬で本物を見破られるとは思いもしなかったわ」

「かげぶんしんか。あれは俺も教えようとして弱点に気づいていたからな。分身には影がない。だからすぐにバレる」

「やっぱり知ってたのね。それにしても早かったけど」

 

 そう、俺も一度は覚えさせようとしたがやめたのだった。回避率が上がるならまだしもほんとに分身を出すだけの上、分身中は他の技を出せず、気づかれたら丸損するリスクがあるので使う気はおきなかった。ただし、さっきは本当のところは影じゃなくてサーチで視たのだが。

 

「レインさんやっぱりすごいんですね。びっくりしました。あの猛攻を全部軽やかにかわし切って一瞬の隙を突いて反撃。あれはもう神がかってましたよ。ポケモンとも息ぴったりで、どうやったらあんなことできるんですか?」

「こいつとはそれなりの場数を踏んでるから、以心伝心でお互いの考えがわかるんだ。なぁグレン。俺達に敵はいないな」

「ガウッ!」

 

 適当に言ってごまかしたがコズエは信じたらしい。ちょっと目を輝かせている。そんな反応されると逆に困る。

 

「レイン、いい勝負だったわ。でもあんまり無茶ばっかしてちゃダメよ。こんなランクの上げ方普通じゃないんだからね。油断していると……」

「心配しなくても、勝算のない勝負はしない主義だから。じゃ、またな」

 

 手を上げてジムを後にした。面白い技の使い方も見られたし収穫アリだな。技の使い方はもう一度見直す価値がありそうだ。

 




本当にこの拙作を見て下さる方がいることには驚きました
そもそも評価云々以前に、宣伝も何もない作品を見に来る人っているんだなってびっくりしました
最初は読み手なしも覚悟で自己満足で投稿していました
今となっては何人来たかなーとか考えてにやけています

あと意外としおりって効果絶大だと思いました
あれが動いて最新話に追いついてくると結構、続き投稿しなきゃ、って思うもんですね
しおりは書く人間のための機能だと初めて知りました
あの、もちろんだからといって、読んでないけどとりあえず最新話にしおりぶち込んだろ、とか考えないでくださいね、不毛ですので


で、本編の話ですね
まずこれも今更過ぎますが題材がカントーですがこれは赤緑ではないです、ましてや青でもピカピカ版でもない
FRLGの話ということを前提にしておいて下さい、ピクニックガールで説明抜けに気づきました(赤緑は確か別の名前)
もしかしたらそれはタグを増やすかも


また、本編の地の文はレインの一人称ということにはご注意ください
推測部分などはレインの勘違いや間違いなども当然ありえます、神様ではないので
もちろんその辺はわざとミスリードしています
作者がそういうことする人なんやな、と思っていてください
タイトルでそういうことをしているのでもうバレていそうですが

今回の内容の補足だとアカサビの“みねうち”が気になった方がいるかもしれませんね
倒してゲット出来るならいらない気がしますし、なのになぜかいい番号をもらっている
どういうことなんでしょうね(黒笑み)

あとはコズエちゃんのことですね
この人なんと実在します、ないと思いますがプレイ機会があれば探してみましょう
ついでに言うと暴走族のリーダーだったゴウゾウさん、あの人もいるんですよ
暴走族って数多いので探すの大変ですけどなんちゃらを探せみたいに探すと面白いかも

看板のおてんば人魚とかもゲームから引っ張ってるので、そういうところはあったあったと思いながら読むと楽しいかもです。
攻めまくるのがポリシーとかもゲームのセリフを意識していますし、そういうパロネタは所々入れていきたいです。

なお、言った本人はゲームではスターミーで“じこさいせい”を使ってくるので、体力半分以上削れないと急所乱数頼みの運ゲーを強いられます。
お前のポリシーはどうしたんじゃ! と文句言った記憶があります。完全に詐欺です。
その文句を本人に言えたらどうなるかなーと思って書いたのが本編のその後の発言です。

……と、いうわけで、懐かしくなったらFRLGをしてみよう!
ゴウゾウさん見つけられたら教えてください
ちょっと難しい
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