レインvsブルー!
最後の戦い!!
「決まったわ。この3体で勝つ!」
「いい顔だ。だがブルー、最初の1体はちゃんと考えたか? 最初に相性が不利だと一気に厳しくなる」
「そんなことわかってる。何を言われてもこれで決まりよ」
これ以上は揺さぶりをかけてもムダか。ただ選んだだけのさっきとは手応えが違う。ちゃんと勝つための策を用意して、それに沿ってポケモンを選択しているな。
「よし。道具は当然持たせるものだけ。交代自由、ジャッジはセルフ。これでいいな」
「ええ」
さぁ面白くなってきた。俺にもプライドがある。面倒な約束事とか色々あるが、今この瞬間はもうどうでもいい。ただ自分のために勝つ!
ブルーの選出。これはもう何度も考えた。ずっと一緒にいたから、もしこのルールで戦うとしたらどうなるか、ふとした拍子に考えたことはあった。だから考える時間は不要だった。
まず確定がラプラス。絶対にないのがフシギバナ。これは間違いない。逆にここの予想は外れてもそれは俺が有利になるだけ。だから予想通りの場合だけ考えればいい。
あとの2体は残り4体から選ぶわけだが、ソーナンスもほぼないだろう。こいつはマークしていないとあっさり負けることにもなりかねないが、こっちが“ちょうはつ”持ちで固めていれば全く怖くないポケモンでもある。イナズマはバトンで逃げられるし、困るのは実質グレンだけ。
つまりピジョット、レアコイル、ハクリューの中で誰を外すのかという問題になるが、相性的にピジョットが格落ち感がある。弱点を突かれやすく耐性を活かしにくい。ブルーは見せ合いに慣れてないわけだからここは素直な読みで十分だ。
結局選ぶのはラプラス、レアコイル、ハクリューの3体。
そして問題は先発だが……可能性としてはラプラス6、レアコイル3、ハクリュー1ってところか。なら……。
「ぶちかませ!」
「いくわよ!」
「ッサム!!」
「ラーッ!!」
出たなラプラス。やっぱり最初か。
「いきなり勝負手!?」
「そりゃお互い様だろ?」
ブルーが1番考えるのはどうやってラプラスを活かすかということ。さっき俺はラプラスが厄介と自分で言ったし、それはブルーだって最初からわかっている。使うことはほぼバレてるが、出さないわけにもいかない。
ならせめてタイミングで裏をかきたい。ラプラスは先発しないという先入観が強い。だから敢えて最初に出してみる。そういうことだ。
ブルーのラプラスには物理技か補助技で攻めるのが定石。アカサビかユーレイで倒すのがセオリーだ。
だがこいつは“しんぴのまもり”を使えるし、タネがバレてる“のろい”はリスキー。それに交代まで考えると“とんぼがえり”が使えるアカサビが最も厳しくなるはず。
さらにアカサビならレアコイルにも有利だ。リーグでイナズマとのコンビでレアコイルを手玉に取られたことは忘れたくても忘れられないはず。それも含みだ。
交代はさせない。ここでラプラスは仕留める!
「ハイドロポンプ!」
「むしくい!」
フィールドがないので最大威力は“むしくい”の135だ。相手の出方を見るため技名を聞いてから動いたがラプラスはすぐには行動しない。どういうわけだ? “むしくい”がクリーンヒットしたが、それをがっしりと受け止めてから反撃に移った。
……確実に狙いをつけたのか! 何か仕掛けてくる!
「今よ!」
「ラーッ!」
ゴッゴッ!!
この光はまさか!?
「ジュエルドロポンくらっときなさい!」
「やってくれたな……!」
確認するヒマがなかったな。相手の動きに集中していた。交代か突っ張りか一応両方ケアしていたからな。まんまとやられたか。
ブルーめ、いきなりかましてくれたな。あいつの考えは読めた。
おそらくサシの勝負になっていれば俺は結局グレンかアカサビを使うと読んだのだろう。そしてこの水ジュエル付きの“ハイドロポンプ”で奇襲し勝つ算段だった。
だがな、アカサビはブルーの想像以上にレベルが上がっていた。耐えきったぜ、ジュエルドロポン!
「公式戦じゃないってわたし言ったわよね?」
「わかってるさ。これは真剣勝負。卑怯なんて言葉ねぇよ」
「さっすが。みずのはどう!」
「1!」
甘い甘い。さすがに今度は体力を見ている。すでに先制技圏内。相手の行動も確認した。“バレットパンチ”で決めろ!
「ラッ」
「……まもる!?」
“いのちのたま”の反動狙い? いや違う! ヤバイッ! 自己判断で“まもる”を使うパターンと言えばっ!
「みずのはどう!」
「戻れ!」
「あーーっ!! 戻んな!!」
「ゲーッ!?」
いきなりビショビショになってイヤそうな声を出すユーレイ。それぐらいは我慢してくれ。
不幸中の幸いだな。“みずのはどう”はぬるかった。確実重視だったんだろうがこれはサシ勝負とは違うんだぜ? 交代の選択肢は常に頭に入れておかないとな。
……逆に言えば、今の一連の攻め、サシ勝負だったならば完全に決まっていた。俺が負けて……いや、今はそんなことは関係ない。
「交代……しかもまためんどうなのが来たわね」
「ラーッ」
またしても指示がない。まさかしゃべりながらのテレパシーなのか? 今度は“れいとうビーム”。ユーレイは地中へ逃げて回避した。
さっきの“まもる”はかなりの高等プレイだな。声でそれらしい指示をしながらテレパシーで本当の指示を出していたのだろう。強い信頼関係と訓練の賜物だ。
しかも“バレットパンチ”はわからないようにしたのに思いっきり読まれていたわけだ。ほぼ“バレットパンチ”一択の状況とはいえ迷いがない。少しでも躊躇すればタイミングが間に合わないことをわかっていて、この作戦に全てをかける覚悟をしていた。
このバトルにかけるブルーの想いが伝わってきた気がする。
さて、厄介なことになってきたな。大したやつだよ、お前は。もうブルーの声は頼りにできない。ラプラスはここで強引にでも倒させてもらう!
「2」
「れいとうビーム!」
今度は指示通り“れいとうビーム”か。ブルーは特殊耐久の堅さを盾にして殴り合いを挑んできたな。こっちが補助技を打てないこともわかっている。
ゴッゴッ!
「うそ!? 今度はそっちが!?」
「当然卑怯とは言わせないぜ?」
考えることは同じだな、ブルーよ。もしバトルになったらこれで奇襲してやろうと思っていた。
格闘ジュエルが発動! “きあいだま”が直撃した。予想外のダメージに踏ん張りが効かなかったのかラプラスは倒れた。
「ラー……」
「ゲェェー」
「おっと……ダブルノックアウトか。ここできゅうしょに当ててくるとは参ったな」
これは本当に参ったな。さすがに耐えるか耐えないかは全然違う。キツ過ぎるな。ここで耐えて次の催眠“いたみわけ”に繋ぐ予定だったんだけどなぁ。ラプラス相手だしこれぐらいは仕方ないか。
「ずいぶんと荒らし回ってくれたな」
「わたしは見せてない2体、シショーはかなり消耗したアカサビさんと1体。先手は取ったわよ」
情報の価値もよくわかってる。だとするとここで俺がアカサビを出したくなることもわかってそうだな。いや、今のはアカサビを出させないためにわざと誘導を?
なーんて、悩んでも俺の選択は最初から1択だけどな。
「お願い!」
「頼むぜ」
「ソォォォーナンス!」
「ッサム!」
!?
「ソーナンス?! しかもここでか?! 9!」
「アンコール!」
こっちは当然“ちょうはつ”だ。そのまま戦うつもりか?
「ナンスー」
「サム?!」
効いてない!? いや、回復した? まさかあいつ道具を……ああっ! 持ってる、メンタルハーブ!! わざと使い方を黙ってたのに!!
この状況はかなりマズイ!! ハクリュー降臨でほぼ詰み……!!
「みゅーちゃんにお礼言っといてくれる?」
「使い方に気づいたのか!」
「そういうこと。戻って! いくわよリューちゃん!」
「ビーリュー!!」
「カイリュー!?」
進化している。レベルは55を大幅に超えている。意図的に進化キャンセルを……。そういやカンナ戦を控えていたから進化させないのは戦略的になくはないか。そのあと俺のあげた“ふしぎなアメ”辺りで進化させたんだろうな。
さて、今アカサビが動くわけにはいかない。適当に驚いたフリでもしておくか。
「すごいでしょ」
「ラプラスにカイリューか。たまげたなぁ。四天王と戦っているみたいだ」
「りゅうのまい!」
「……1!」
俺は引っ込めることすらせずに様子を見ていた。“バレットパンチ”は当然失敗だ。交代時も“ちょうはつ”はわざと使わなかった。
ブルーの狙いは俺の出方を見て交代を確認してから交代先へ攻撃技を使うこと。“ちょうはつ”を縛る以上“りゅうのまい”はできない。アカサビは攻撃できないので居座っても仕方ない。
だが隙を見ればつけ込みたくなるのがトレーナーの性。俺が“ちょうはつ”しないのを見て目聡く“りゅうのまい”を仕掛けてきた。ラストがグレンだと攻撃力は下がるからな。
これは苦肉の策。現状俺はかなり苦しい。ここで素直に交代して一貫する“げきりん”を打たれても負け。“ちょうはつ”を当てて居座っても結局負け。勝つ可能性があるならこれだ。敢えて何もしない! そのまま居座る! ヤンキーの極みだな。か細い勝ち筋だが拾ってみせる!
カイリューの道具はドラゴンジュエル。これなら問題ない。
まだだ、まだ動くな……。あと2回、2回積んだら交代を宣言しよう。
「え? もう交代はできるわよ? そのまま出せもしない技を失敗しているならありがたくりゅうまいさせてもらうわ」
まだ気づいてない? さすがにそろそろおかしいと気づいてもいい頃だが……もしかしてブルーは理解してないのか? 自分がどれほど危険な行動をとっているか。それともやはり罠にかかっているのか? 俺はすでに罠を仕掛けている。
そんな俺の思惑をよそにカイリューはさらに能力を上げてゆく。
「ッサム!」
「きたか」
「ほのおのパンチ!」
“アンコール”が解けたがブルーもすぐに対応してきた。けど“ほのおのパンチ”なら好都合。すでに3回積んでいる。もう追加効果を引こうが急所に当たろうが俺の勝ちだ。微妙にあった負け筋も消えた。
この勝負……俺の勝ちだ!
「交代だ! 戻れ!」
「もうリューちゃんは止まんないわ!!」
俺のボールから飛び出した影は瞬く間に姿を変え激しい拳を同じ右手で受け止めた。
「びーりゅー!」
「えっ!? なんで!? みゅーちゃんはいないはず!?」
ブルー……やっぱり気づいてたか。ラプラスからアカサビを引っ込めた時、みゅーがいるなら必ずみゅーに交代するべき場面だった。だからみゅーはいないはずだという読みが効く。ブルーならそう考えてくれると思ったよ。
敵を騙すには相手がありえないと思うことをしないとな。自分の身を切るからこそ相手を騙すことができる。ユーレイを失ったのは痛かったが結果オーライだな。
みゅーがいなければ“りゅうのまい”を使いまくってくれる。
カイリューはほのおタイプの技が使える対アカサビの切り札であると同時に“りゅうのまい”による最後のエースにもなれる。全抜きを狙うなら出すのは当然こっちのダメージが蓄積している最後。そして必ずどうにかして“りゅうのまい”を決めてくる。
だから俺は最初からそれをコピーして逆に全抜きすることを考えていた。だからラプラスを確実に倒しておきたかったんだ。
「お前知らないのか? へんしんすれば能力変化もコピーできるって」
「わかってるわよ! でもこんなのおかしい! さっきラーちゃんに出せば良かったのに!」
「さっきは慌ててたからな」
なるほど。やっぱ理解した上で自分の読みを信じたんだな。見せ合いで勝負するのは初めてだがさすが、ブルーは俺の見込んだ通り……やっぱり面白い。そうやって読み間違えると思ったから俺も咄嗟に罠を張ったんだけどね。元々みゅーは積み技のケアで最後までとっておくつもりだったし。
「うそばっかり! でもね、それでも結局能力は五分に過ぎないのよ! だからみゅーちゃんは怖くないわ! ここで同速勝負を制して私が勝ってやる!」
そうか……最悪でも五分、そういう考えがあったんだな。だから自信満々でこんな恐ろしいことをできたのか。果たしてそうかな?
「事実上これが最後の攻防だ。先に技を決めた方が勝者になる」
「いっけぇぇリューちゃん!」
「みゅー、決めちまえっ!」
「「げきりん!!」」
勝負の天秤はあっさりと傾いた。初速がまるで違う。みゅーの首元にはあの道具が巻かれていた。
「りゅーーー!!」
「リュ……」
「カイリュー戦闘不能……おれにはアカサビも残ってる。勝負あったな」
「そんな……あっ、それはこだわりスカーフ!! せんせいのツメじゃないの!?」
顔に隠れて見にくいがみゅーにはたしかに“こだわりスカーフ”が巻かれている。勝負がついたのでみゅーが見えやすいように角度を変えてブルーに見せていた。
「このルールだと本来メタモンには“きあいのタスキ”か“こだわりスカーフ”を持たせるのが王道。確実にミラーマッチに勝てるようになるからな。“せんせいのツメ”は邪道だ。これが本来の戦い方なんだよ。相手のエースをコピーして、同速に勝ってそのまま逆に全抜きするってのがこいつの得意戦法だ」
「それじゃ、それをわかっていなかったわたしの……トレーナーの実力不足なのね。……負けたわ。シショーの……勝ちよ」
ブルーは泣いている。少し前までは勝利を確信していた。それだけにこの敗北はより悔しいだろう。だけどこれでいいんだ。この悔しさがブルーの糧となるはずだから。
慰めの言葉は必要ない。
「ブルー、戦ったポケモンを見せな。みゅーに回復させてもらうから」
「え、今?」
「全員で、最後のお別れぐらいはしておきたいだろ」
「……! わかってる。わかってるわよ。約束は……守る」
ブルーは倒れたポケモンを出した。俺のポケモンと合わせてみゅーがそれを回復させ終える頃にはブルーも泣き止んでいた。
(ブルー……)
「いいのいいの。仕方ないわ。わたしの完敗だもん。真剣勝負なんだから約束は守らないとね」
(……)
「ダァー! ダァー!」
「どうしたのイナズマちゃん? わっ! ちょっと、くすぐったいわよ?」
悲しそうな声で鳴き、ブルーの腕に飛び込んで甘えている。別れることは部屋でさっき話していたから駄々をこねたりはしないが、なんとも胸が締めつけられる声だ。
「クゥゥーー」
「うぅっ……だ、大丈夫よ! きっとまた会えるから! 今度会ったらまた一緒に歌ったりして遊びましょう!」
「ダーッ!」
全員で言葉を交わし合い、ポケモン達の別れも済んだ。もう出発の時だ。これ以上先延ばしにはできない。ポケモン達は自分からボールに戻った。
「さぁ、これでもうやり残したことも言い残したこともない。本当のお別れだ」
「うん……」
「ブルーに最後なんて言うか、色々考えたけどやっぱりわかんないな。もう何も言わないでおくよ」
「……シショー」
そのまま立ち去ろうとしたがその前にそっと手を掴まれた。暖かい気持ちが伝わってきて、ちょっと頭がボーっとしてきた。熱に浮かされたように気づけば言葉がついて出てきた。
「ただ、最後に1つだけ」
「……なぁに?」
「ブルー、お前のこと……好きだよ」
「……!」
背を向けて手を振った。もう振り返ることはしない。ブルーの目を視たら俺の方が離れられなくなってしまうから。
今日は眠れそうにない。星はあんまり見えないけど、夜空でも眺めながらゆっくり散歩しようかな。
「待って……待って! いがないで!」
「えっ!?」
「ごめんなざい、やっぱりヤダ! わだしも行く! 一緒に行く!」
いきなり背中から抱き着かれた。ブルー!?
「おまっ、バカ! バトルしてケリはついただろ! それにポケモン達も含めてお別れも済ませた! ここまで来て全部ナシにする気か?!」
「ひぅぅ、ごめん、ごめんなさい。わたし約束もなんにも、うぐっ、守れないの! バトルに負けだけど、やっぱり耐えられなくなったの! わたし、もうどうしようもない人間なの! でもシショーは…………やっばり好ぎなのっ! ごべん、ごべんっ!!」
ブルーは子供みたいにワンワンと泣きじゃくっている。さっきまでの取り繕った控え目な泣き方とは全然違う。なんとなくわかる。自分の中の何もかもが崩れ去って、怖くて不安で押しつぶされそうな、そんな感じ。ここまでお別れもしてしっかり納得もさせて、さっきまで元気そうな顔に戻っていたのに、今はもう完全に理性のタガが外れている。
「ブルー、わかったから一旦ちょっと落ち着いて。一度手を離してくれる?」
「ヤァァッ!! もう離せない! どっかいっちゃう! シショーはわたしの知らないところでいなくなっちゃう!」
「……」
「もう無理! 離さない! 絶対離さない! ぅぅ……」
これだけがっしりくっついているとイヤでもわかる。ブルーはわがままでこんなことしてるんじゃない。本当に耐えられなくなって、自分でもどうしようもないんだ。弱気で臆病になって、辛くて苦しくて、それで俺に縋るしかないんだ。
こうなった以上もう理屈で説得することは不可能だ。どうしたものか。
「わかった。そのままでいいから。なんで急に我慢できなくなったの?」
「シショーが好きって、わたしのこと好きなんだって、なのにわたしのために、辛いのに別れて、わたしのために、いつも応援してくれて、いっぱい優しくされて、こんなに愛されてるのに、愛情を感じて、お別れするなんて、もうお別れなんだって、思ったら……もういなくなるって、耐えれなくて、そんなのって、もうわたし、生きていけないの。チャンピオンなんてどうでもいい。シショーといる方がいい。ずっと弱くてもいい。弱いままがいい。弱いままでずっとシショーの弟子のままがいい! ずっとこのままがいい!」
ブルー……。
それを聞いて思ったのはやっぱり一緒に連れていこうかということだった。ブルーがそれを望むなら、断る理由はないんじゃないか? 俺だって一緒の方がいい。今が幸せなら、それで……。
――わたしすぐにシショーなんか追い越してやるからっ!!――
あぁ、そういえばいつもこんなこと言ってたな。最初の頃から俺に向かってこんな大言を吐いて、やっぱりこいつは大物だった。でも、こういうことを言うブルーを見ていると嬉しくて……そうだ、大事なことを思い出した。
俺はただブルーが好きなんじゃない。夢にむかって進み続けているブルーが好きで、ずっとそんなブルーを見ていたかったんだ!
今ここでブルーを連れて行ったら、もう大好きだったブルーは消えてしまう。このままがいいなんて言葉はブルーには似合わない。まだブルーには前を向いて進み続けてほしい。
ブルーとの勝負、楽しかった。初めて試すルール……バトルはどこまでも変わり続ける。そしてあのメガシンカ……ポケモンにだって終わりはない。だからポケモンバトルにゴールはないんだ。この先には何があるのだろうか。自分の目で見てみたい……さらに強くなったブルー、そしてさらに強くなった自分を。
俺の元を離れることはブルーが強くなるうえで必要なこと。自分で考えて強くなるプロセスは絶対に必要だ。そしてチャンピオンになってほしい。ブルーがチャンピオンになるのはもう俺の夢でもあるから。
もう一度……ブルーには立ち上がって貰わないとな。そして俺自身も迷いは切れた!
「ブルー!」
「えっ!?」
震える手でしがみついているブルーを力任せに引き離した。そして驚くヒマも与えず正面から抱きしめてあげた。
「あうっ……」
「こっちむいて」
本当はこういうことをしないためにあんなこと言ったんだけどなぁ。
「ん!?……これ……」
「落ち着くでしょ?」
「うん……」
さっきまでぐちゃぐちゃだったオーラは安定している。もうおかしくなることはないだろう。
「俺の話を聞いてくれる?」
「うん」
「俺さ、決めたよ。やっぱりホウエンに行こうと思う。お前やレッドと戦ってわかったんだ。俺はまだまだ弱いって」
「えっ……チャンピオンになったのに?」
「全然だ。俺はまだまだ強くなるし、まだまだ色んな冒険やバトルが待ってると思う。この世界は知らないことだらけだってようやく気づいたんだ。遅過ぎるよな」
「……」
ブルーは黙って聞いている。かわいい顔を撫でながら、ブルーの気持ちを感じながら、俺はゆっくりと話を続けた。
「だから俺は世界を見てくるよ。俺の旅路はいっつも寄り道ばっかりだから、少し道のりが増えても変わらないし」
「……そうね」
「それから、新しい夢も聞いてくれる?」
「うん」
「俺はさ、全部の地方でチャンピオンになろうと思うんだ」
「全部……!」
「そう。あらゆるマスターズリーグで優勝して、ポケモンマスターになる。それが次の目標」
「ポケモンマスターか。フシギな響き。たしかにそう呼ぶにふさわしいわね」
「そういう言葉はないの?」
「初めて聞いたわ」
「そうか……じゃあ俺が初代だな。それともう1つ夢がある」
「まだあるの?」
俺は欲張りだからな。もっと大切な夢が増えてしまった。
「それは……お前がカントーのチャンピオンになること」
「!!」
「今気づいたんだ。俺はずっと夢にむかってがむしゃらに走り続けるブルーが好きだ。お前にはずっと前を向いていてほしい。だからもう弱いままでいいなんて言わないでくれ」
「ごめん。さっきはおかしくなってて……」
「わかってる。お前には辛いことをした。お前だって頭ではわかってるんだよな」
「……」
「だからもう1つ、俺とブルーで秘密の約束をしよう」
「約束?」
この約束がきっとブルーをもう一度立ち上がらせてくれるはず。ブルーは絶対こんなところで終わらない。
「ブルーがチャンピオンになったら、俺は必ずお前に会いに行く。それまで絶対勝手にいなくなったりとか、もちろん死んだりもしない」
「……!」
「そしてまた会ったら、今度はチャンピオンの座をかけて俺と本当の決勝戦をしてもらう。俺に勝つまではカントーチャンピオンは名乗らせないから」
「シショー……」
「そしてもしお前が勝ったら、俺からご褒美がある」
「ご褒美?」
「バトルに勝ったら、お前の願いを1つ、なんでも叶えてあげる」
「……なんでもっ!?」
さすがにちょっと気前が良すぎたかな。
「ああ。お前の言うことならなんでも聞いてやるよ。俺にできることならね。死んでくれと言われれば死んであげるよ」
「そんなこと言うわけないでしょ! でも、それじゃホントになんでもいいのね?」
「嘘偽りなく。約束は守るよ」
「……」
「その代わり……ブルーも必ず約束を守ること。俺なんか追っかけてないで、ここでしっかり強くなってチャンピオンになれよ。約束な? 俺を探してホウエンに来たら『なんでも』っていうのはナシだから」
「あっ! ずるーい!」
「ありがと」
「褒めてない!」
ブルーは嬉しそうだな。どんなこと頼むつもりだ?
「お願いはいつ決めてもいいし、勝ってから考えてもいいけど、その顔だともう決まってそうだな。なんて言うつもりなんだ?」
「えっ!? ま、まだ考え中よ! こんなチャンス二度とないもん、じ~っくり考えさせてもらうから!」
「決まってるクセに。ケチだな。どんな恐ろしいことを言うつもりなのやら」
「ケチでいいもーん。そうと決まったらわたしもウカウカしてらんない。シショーはゆっくりホウエンでバカンスを楽しんでね。わたしは鍛えまくっておくから。絶対に勝ってやるわ!!」
ブルーは抱きしめていた俺から離れて、ビシッと俺を指さしながら宣言した。その姿を見て無性に嬉しくなる。
「そうさせてもらうよ」
「じゃあね! 今の約束、ぜぇぇぇっっったい!!! 忘れちゃダメだからねーーっっ!!!」
「わかってるわかってる」
そんなおっきな声で念押ししなくても聞こえてるから。
「じゃあ1年後会いましょう! 楽しみにしてるわ! すっぽかしたらホウエンまで探しに行くからね!」
「絶対に会いに行くよ」
なんとブルーの方が先にカイリューに乗って去っていった。俺を見送ろうって気は皆無なんだな。さっきまで離れたくないってしがみついてたのがウソみたいだ。
全く……締まらない別れ方だったな。でも、こういう方がブルーらしいかな。
「いっちゃったね」
「みゅー? もしかしてボールの中から見てたのか? 野暮じゃない?」
音もなくボールから出てきていた。どうやったんだ……。暗いからちょっと声にびっくりした。さすがにずっとボールの外にいたわけじゃないよね?
「みゅふふ。レインかっこよかったよ」
「え、そう?」
「みゅーにはしてくれないの? ブルーばっかり羨ましいなぁ」
「あ、いや、それはその……」
「くすくす……。レイン慌て過ぎ……冗談なの」
「うっ……」
みゅーの言葉に一喜一憂させられる。気づいたらみゅーがどうやって現れたのかについては忘却の彼方だった。
「レインはブルーの心を癒してあげたんだよね。わかってる。ねぇ、ブルーがチャンピオンになったかどうか、どうやって調べるの? 1年後かどうかはわかんないよね? みゅーのテレポートに頼るつもり?」
それが聞きたかったのか? 簡単なことだ。
「あれ? みゅーさんわかんなかった? ブルーが本気になったのに負けると思う?」
「あっ……みゅふふ。思わないの。レインって罪な人間ね」
「さて、なんのことやら」
ブルー、また会う日までお前はお前の道を走り続けてくれ。俺も俺の道をずっと進み続けるから……果てなき夢にむかって。
これにてカントー編は完結です!
やったぜ!
行き当たりばったりで書いてましたが意外とちゃんとまとまりましたね
なんでもとりあえずやってみたらなんとかなるもんですね
とりあえずブルーの秘密探求から殺されかける流れとかみゅーのきもち編とか書きたかったことも全部詰め込めたので満足です
一応バトルの補足だけ
流れの都合上みゅーが登場してすぐ決着なので説明を書く余地がありませんでした
要するにこういうことです
まず前提として
+0げきりんでカイリュー確1で交代不可
+2げきりんでソーナンス乱1で3回積めば倒せる
と仮定するとアカサビの行動は
Ⅰ)ちょうはつする場合
レインの行動を見てから後出しで技を決めれるので
1.交代
アカサビ以外に一貫するげきりんを使うのでみゅー戦闘不能
残りHPが僅かなのでアカサビもげきりんでダウン
2.居座り
ほのおのパンチでアカサビダウン
カイリューミラーはげきりんでみゅーが勝ちますがソーナンスにカウンターを貰って負け
Ⅱ)ちょうはつしない場合
1.ブルーがりゅうまいしない場合
上のⅠと同様に負け
2.ブルーがりゅうまいする場合
みゅーが能力アップをコピーすればワンチャンス
こういう感じの場合分けの結果ちょうはつしないでりゅうまいして貰う場合だけ勝つ可能性があるということです
ちなみに3回積んだあとレインは勝ち宣言してましたが
ほのおのパンチの後
1.火傷する
火力1.25倍なのでカイリュー確1は変わらず、アカサビでソーナンスを倒せるので勝ち
2.火傷しない
当然カイリュー確1なのでソーナンスに交代してもこっちも“げきりん”で確1なのでみちづれ不可で勝ち
というガバガバな場合分けをしてレインは新世界の神になった気でいますが
3.火傷してソーナンスに交代される
ソーナンスに引いて耐えられ補助技なので2回目のげきりん前にみちづれをされ相打ち
カイリューにほのおのパンチをされアカサビ焼死
という筋を見逃しノートをすり替えられて負けです()
レインはソーナンスがげきりんの確定ラインに入ったら即勝ちという思考に陥ってました
たぶんバトルにミスはないと信じたいですがなんかおかしかったらこっそり教えてください()
ブルーはりゅうまいを狙い過ぎ感ありますが、元々5割で勝てれば御の字という感覚なので同速勝負は歓迎ということと、スカーフを持たせることは知らなかったということが致命的で負け筋が読めず敗着になりました
ただ、正味レインもりゅうまいコピーを最初から狙い過ぎではありますね
ユーレイ切って手持ちの情報をひっかけるプレイングがしたかったんですが1歩間違うとただの奇行ですね()
レインは反省して(みゅーちゃん並感)
次の話なんですが、ホウエン編への橋渡しの部分をどうするかまだ考えてないんですよね
エクストラみたいな感じで続きを書くとか、あと後日談っぽいのをつけるのもアリかなとか
ちょっと小考入ります
一応公約通りとりあえず完結は先に済ませたので万々歳ではありますが、まだ手直しが必要なところはあるので自分でたまに読み返すときなどに多少いじることはあると思うので内容は変わったりするのはあしからず
投稿するときに何回も読んでるクセに飽きずに読み返してますからね
自分自身が最大の読者(真顔)
あとオマケっぽい話とか回想とかも増やすかもしれません
レッドの話(カラクリとかサカキとか)は書こうとしたこともあったんですがレッドの語りがイメージできず断念してましたが今ならできそう?
内容を思いついたらなのでやるかはわかりませんが()
みゅーの過去とかみゅーvsミュウツーとかブルーの旅立ちとかエピソードっぽくできそうな要素は他にもばら撒いてるのでやろうと思えばってところではあるんですよね
面白くないとあれなんでボツ状態ですが
最後に、作者はなんかやりきったぜみたいな感じを出してますが実際には単に区切りがついただけなので話は普通に続きます
実は特に変わることはなく今まで通りですね()