みゅーの言葉はほっといてさっき御三家がいた部屋に戻った。中はなぜかジメッとしていてミズゴロウの姿もなかった。
「どうしたんですか?」
「あっ、レイン君! 実はちょっと困ったことになっていてね」
ハルカとしゃべっていた間に何があったのか詳しく聞いた。
話をまとめると2人が去った後選ばれなかったミズゴロウが悲しさからか寂しさからかはわからないが不貞腐れて暴れたらしく、その際に“みずでっぽう”を乱射したらしい。
ジメッとしたのは本当に湿っていたんだな。ミズゴロウ本人は研究机の下に隠れて引きこもっているらしい。近づくと攻撃されたそうだ。
もちろん無理やり引き釣り出すことは簡単だがそれでは余計に心の傷を広げてしまう。それでどうしたものかと困っていたわけだ。
「どうしてここまで悲観的になってるんですか? 基本的に選ばれることの方が少ないことぐらいミズゴロウもわかってますよね?」
「それがね、レイン君。この子はこれが1回目ではなく、もう5回目なんだよ」
「え……」
思わず絶句してしまった。そりゃグレもする。
「みゅ……かわいそう」
「なんでそんなに人気ないの!? さっきは一応公平に説明したけど、個人的な意見を言えば最初の1体はミズゴロウが1番いいと思ってます。むしろカントーのヒトカゲ・ゼニガメ・フシギダネとか、他の地方の最初の3体と見比べてもミズゴロウ……つまりラグラージが1番優秀ですよ!」
「そこまで評価してるのかい?」
「タイプが優秀過ぎます。ホウエンならラグラージ1体でもジムや四天王戦で困らない。そもそもみずタイプは初心者にも使いやすいはずです」
自分は最初の1周目はどの地方でも必ずみずタイプを選ぶようにしていた。1番タイプが優秀だからハズレはない。それぐらいに信頼している。
「そうなんだけどねぇ……なぜかとんでもなく不人気になっていてね。最近はみんなスクールで勉強しているから最終進化形も知ってるし、たぶんそれが原因かなぁ? バシャーモやジュカインはカッコいいからね」
はぁ?! それは遠回しにラグラージのことディスってんの?! たしかに……たしかにバシャーモやジュカインはカッコイイ! そこは認める、ラグラージが後れを取っていると。でもさぁ、シンプルにラグラージは強いじゃん! 御三家で1番合計種族値が高いポケモンを言ってみろよ? なぁ? ラグラージだよなぁ?!
「1番強いのは?」
「え?」
「1番強いのは?」
「ら、ラグラージかなぁ……」
ほらぁーっ!!
「でしょー!? ラグラージが最強ですって! そうでなくっちゃ! ホウエンなんてラグラージ1体いれば余裕! パーティー組むなら先発で起点作って良し、電気カットに砂対策もバッチリ! 意表をついてカウンターミラコの役割破壊もアリ! なんなら輝石ヌマクローも可! ね、なんでもできるでしょう? エースじゃないってだけでだいたいなんでもできる! ね?」
「そうだね。まったくラグラージはすばらしい」
「レイン……」
さすがだなぁ、この人はやっぱりわかってる! わかる人はわかってるんだよなぁ。新人トレーナーは修業が足りてない。
「ホントにそうなんですよねっ! カバルドンには安定性で勝りますし、ギャラドスにもタイプで差別化してますし、ガブリアスにも……そう、タイプで勝ってますから!」
全く、ラグラージは最高だぜ!
「たしかにラグラージは優秀なんだけど、君の言うようにやや玄人向けなところもあるだろう? 速くて強いというようなシンプルな強さではないからね。そういうこともあって、最近は最初の初心者用ポケモンの候補から外そうかという意見もあるんだよ」
「はぁ!? そんなこと許されるわけないでしょう?!」
こんなことは許されない……絶対におかしい!
どいつもこいつもわかってねぇなぁ……ならわからせてやろうか。
俺が……この俺が変えてやる! この狂った価値観を叩き直してやる!
取るべき選択は決まった。もう決心した。必ず押し通す!
サーチでミズゴロウの場所を特定。あっちか。チラッと目を向けるとこっちの話に興味があったのかこちらの様子を伺っているミズゴロウと目が合った。しかし俺を見てすぐ奥へ引っ込んでしまった。
「みゅーちゃん!」
「あの子と話したいの?」
「そういうこと。通訳して」
ゆっくりとミズゴロウに近づくと容赦なく“みずでっぽう”をかけてきた。
「危ない!」
「大丈夫」
オダマキ博士が慌てて声を上げるがその制止を振り切り敢えて正面から攻撃を受け切った。
バシャァーッ!
「レイン君!?」
「……躱せばいいのに、強引ね」
この程度の攻撃なんでもない。避けていたらずっと攻撃されて話ができない。ミズゴロウの全てを受け切ってあげないとダメなんだ。
「ゴロッ!?」
「この程度? 博士には効いても俺には通用しない」
「ゴロロ……ゴロゴロッ」
「どーせおれは弱い。だから誰にも相手されないんだ。ほっとけよって」
「え?! みゅーちゃんはポケモンの言葉がわかるのかい?!」
みゅーはポケモンだからな。でも一々今取り合うつもりはない。そっちはほっておいてミズゴロウへ話しかけた。
「何言ってんの? 別に弱いなんて言ってない。むしろ眠ってる才能は誰よりもある。それを誰もわかってないだけ」
「ゴロッ、ゴロッ!」
「でまかせいうな。おれのことはなんにも知らないくせに!」
「わかるよ、全部。本当は“さみしがり”で、トレーナーと一緒に早く旅に出たいんだろ」
「!!」
「……図星ね」
少しこっちの話に耳を貸すようになってきたかな。
「君もそんなことわかるのかい!? ブリーダーなのか!?」
「ただのトレーナーですよ。なぁ、ミズゴロウ? お前にお願いがあるんだけど」
ミズゴロウは静かに耳を傾けている。
「……」
「俺と一緒に来てくれない?」
ミズゴロウは仲間にして連れて行く。拒否はさせない!
「ゴロッ!?」
「やっぱり……バカ」
ボソッとみゅーが何か呟いたが俺には聞こえなかった。
「アチャモや、特にキモリには絶対負けないように強く育てるからさ、どう? 一緒に外の世界を冒険しにいかない?」
「ゴロォ……ゴロッ、ゴロロ!」
「同情はいらない! おれのことバカにしてんのか! どっかいけって」
「はぁ? おいおい……なんでだよ? まぁそうだな、仲間になる前に教えとくけど、俺はそんなお人好しじゃないから。むしろ悪い人間だからね。ポケモンを育てるのは好きだけど、基本めんどくさがりだし」
「え? レイン君さっきえらく親切だったような……」
「本気で思ってるのね。呆れたの」
「ゴロ!?」
外野が何かしゃべっているが俺は説得に集中した。
「同情だけでお前の面倒見てやろうなんて思うわけないでしょ? アホらしい。俺は頼んでるんだ。お前に仲間になってほしい。たしかに元々ミズゴロウは1番好きなポケモンだし、ミズゴロウを探してホウエンに来た。でもね、ミズゴロウならなんでもいいわけじゃない。俺はお前と強くならなきゃいけないと強く思った。だからお前が一緒に来てくれないと意味がない! 今この瞬間から、俺の目標はホウエン中にお前が1番強いポケモンだって知らしめることだ! そのために……一緒にいこう!」
「ゴロロ……ゴロ」
「でも、自分は初心者用として連れられたからダメだろうって」
くわっと目を見開いてオダマキ博士の方へ向き直った。
「れ、レイン君?」
「お願いします! ミズゴロウを譲ってください!」
「や、やめてくれレイン君!」
「ゴロッ……!」
90度のお辞儀。ミズゴロウのためならこの程度安い。ミズゴロウはもうその気になっている。あとは博士を説得するだけ!
「お願いします!」
「そうはいっても決まりだからね……もちろん君のことはトレーナーとして信頼できると思っているけど……」
わかってるさ。正攻法で頼んでもダメだ。誠意を見せるために頭は下げたけど、それだけで「はい、どうぞ」となるわけはない。だからちゃんと手順は考えてある。交渉っていうのは等価交換でないとね。
ゆっくり頭を上げて博士の目を見て問いかけた。
「博士、あなたは1つお困りのことがあるはずですね」
「……なんのことかな?」
この感じ……いけそうだな。
「とぼけないで下さいよ。ずっと考えているんでしょう? どうやってヒンバスを進化させるか?」
「!!」
「職業病ってやつですよね。でも人の能力には限りがある。あなたにそれは無理だ。それに簡単に協力を頼めることでもない。進化方法を先に誰かに漏らすことになれば意味がない」
「……」
「その点俺ならバレるものもない。一応コンテストはかじったことがあります。……協力できますよ。もちろん手柄は全てあなたのものです。進化方法の情報料も込みにしましょう」
「なるほど。たしかにただのお人好しではないね。悪い人間だ」
「ありがとうございます」
「さすがに褒めてないよ」
話のわかる人はキライじゃない。別にオダマキ博士自体は悪い人ってわけじゃないけど、殊更断る必要もないはずだ。それに研究したい欲求には逆らえないだろう。
「博士、ギブアンドテイクです。俺はコンディションの上げ方を教える。あなたは上手くミズゴロウの便宜を図る。互いにできることをして助け合う。素晴らしいじゃないですか」
「……賄賂なの」
「みゅー、黙ってて」
人聞きの悪い。お金のやり取りはしてないからギリギリセーフの計算だ。このチビッ子はいったいどこでそんな邪悪な単語覚えたんだ。
オダマキ博士の返答を待つとポツポツと話し始めた。
「実はね、このミズゴロウはぼく自ら目利きしたんだ」
「えっ」
「最初の3体は特別な場所でブリーダーが育てていてね。ぼくが毎年そこへ赴いて直接見て選ぶようにしているんだ。旅立つトレーナーにいいポケモンを渡してあげたいからね」
「パソコンで送っていなかったのはそれで……」
少し最初から引っかかってはいた。この地方のことをよく知るわけではないから、ボックス機能の使用感がカントーとは違うのかもというぐらいにしか思わなかったけど、それなら話はわかる。
「だからね、この子のことは余計にずっと心配だったんだ。親心って感じかな? 能力はあるはずなのに選んでもらえなくて、仕方ないから今年でもうこの子は最後にするつもりだったんだ。あまり育ち過ぎると最初のポケモンとして不向きになるだろう? この子にもそう伝えていた」
「……!」
「ゴロ……」
あの表情はそういうことだったのか。俺が思っていたよりずっと深刻だったわけか。
「レイン君、改めて聞くけど本当にこの子でいいのかい?」
「博士、あなたも相当な目利きだってことはわかります。3体とも素晴らしかったですから。それも揃いも揃ってかわいい性格ばっかり。むじゃきなアチャモ、おくびょうなキモリ、さみしがりのミズゴロウ。博士も憎いですね。でも、俺はポケモンを見る目だけは誰よりも自信があるんです。何匹ミズゴロウを連れてきても、俺はこいつしか選びませんから」
だって、ほぼ5Vだもの。
ミズゴロウ ♂ Lv10 さみしがり げきりゅう
31-31-21-29-30-31
「……たいしたトレーナーだね。ミズゴロウ、幸せになっておくれ」
「じゃあ……!」
「その子は君に任せる。大事に育ててやってくれ」
「よっし! ミズゴロウ、よろしく!」
「ゴロ! ゴロォ……」
ミズゴロウを抱き上げて一緒に喜んだ。ミズゴロウは俺に寄りかかり、顔をうずめるようにして黙ってしまった。
そっか……さみしがりでも男の子だもんな。涙はみせられないよな。
何も言わず頭を撫でてあげた。
「あっ……すごいあったかそう。いいなぁ」
「博士、ありがとうございます!」
しんみりした空気を吹き飛ばすようにあえて明るく礼を述べた。博士もいつもの笑顔で答えた。
「いやいや、ミズゴロウにとっても大切に育ててくれるトレーナーと会えて良かったよ。ぼくとしてもようやく肩の荷が降りた気持ちだ。こちらこそありがとう」
「ゴロゴロ!」
「あっ、ミズゴロウもお礼が言いたいみたい。博士に……毎年ここに連れてきてくれて、面倒見てくれてありがとうって言ってる。迷惑かけてお部屋ビショビショにしたのもごめんなさいって」
「何言ってるんだ、いいんだよ。君の気持ちはよくわかってるから。この部屋のことは気にしなくていい。やっと旅に出られるんだから、いっぱいレイン君に甘えさせてもらいなさい。でもそうだね、ぼくのこと忘れないでくれるなら、たまには元気な姿を見せてほしいかな」
ミズゴロウ、本当にオダマキ博士から大切に思われていたんだな。幸せ者め。
「もちろんまた来ますよ。なっミズゴロウ?」
「ゴロロ!」
「絶対来るって」
「そうか。これはいい楽しみができたね。そうそうレイン君、手伝いもしっかりしてもらうからね。ぼくはこれから研究に取り掛かるから今から始めよう」
「え、今から!?」
たしかに協力を申し出たけど、この人遠慮がないな。そうでなきゃ研究者なんてできないのかねぇ。
「思い立ったらすぐ旅立てだよ。わたしの研究の実体験ができたら、うちの研究を見に来たっていう君の目的も最高の形で達成できるじゃないか」
「ポジティブですね。まぁいいや、とことん付き合いますよ。じゃあミズゴロウにはボールに入ってもらって……」
「レイン待って!」
「どうしたみゅー?」
「それ、7つ目だよね?」
「あっ!」
そうだ忘れてた。このままじゃミズゴロウはボックス行きか。しばらくはそばでじっくり一緒にいてあげたい。でも急に誰かボックスに送るわけにもいかないし……ここは一時保留が最善だな。しばらくボールには入れないでおこう。
これで大丈夫と思いみゅーを見ると俺を咎めるような厳しい表情をしていた。
「みゅぅぅ……」
「げっ」
みゅーのオーラ、なんかそこはかとなく怒りを感じるような。俺で感じられるってことは相当怒ってるのかも。
そういえばボックス絡みは一度喧嘩したことがあったっけ。むしろ今までよく文句を言わなかったな。逆にびっくりだ。
「ミズゴロウ、ボールに入るのは仲間を紹介した後にしたいから、しばらくは俺の頭にでも乗っかってて」
「ゴンロッ!」
「ぐっ!?」
ピョンと飛び乗って頭の上でゴロンと寝そべった。ズンと頭部に重みが加わる。首が……予想の何倍も重い。けれど自分で言ってしまった以上耐えるしかない。
直接触れ合える場所の方がお互い馴染みやすいと思っての発言だったが軽率だったかもしれない。せめて肩ならこの程度の重みならたいしたことなかったんだが……。
「レイン、反省して。それとあとで家族会議だから。わかった?」
「えっ、あ、はい」
そこまでの案件なのか。家族だと言ってくれたのは嬉しいし、悪い気はしないけど。
実験はとりあえず特攻アップの性格のヒンバスを俺が目利きして、しぶいきのみで作ったものを中心にポロックを大量に用意させた。しぶ味は色が青いのが特徴だ。
「ゴロロ!」
「ん? どうした? お前も食べたい?」
「ゴロ!」
「お前にはこっちがオススメかな。ほら、からいポロックだよ? あーん」
「ゴンロ。ゴロゴロ? ゴンロォーッ!! ゴロゴロッ! ゴロゴロッ!」
「んー? おいしかった? お腹すいたらまたあげるからね」
「みゅぅ……」
ミズゴロウとじゃれながら実験を進めること数日、無事に成功を収めてようやくゴールできた。これで心置きなく研究所を発てる。
「ありがとうレイン君。ミズゴロウをよろしく頼むよ」
「任せてください」
「7匹目はまずボックスを開設しないと捕まえられない。一度ポケモンセンターのあるコトキタウンに寄っていくといいよ」
いいことを教えてもらった。やっぱりここじゃ自分の常識は当てにならないな。
「わかりました。じゃあお元気で」
「ゴローッ!」
ミズゴロウと一緒に元気よく手を振り、いよいよ出発だ。目指すはコトキタウン。
「あ、そうだ。みゅーさん、ここの研究所マーキングしといて。顔みせで来るときテレポートできれば便利だから」
「はいはい。レイン、しっかりこれから反省して貰うからね。家族会議するから」
「はい……」
「レインはウソついたの。手持ちは6体って言ってたのに、簡単に浮気してホイホイ好きな子を増やして! みゅーのことほったらかしでミズゴロウにばっかり好き好きーって……バカみたいで見てられないの」
そこまでは言ってない、とかみゅーに口答えすれば逆鱗に触れそうだな。
「……」
「そうやってウソつく人間をなんて言うか知ってる? 二枚舌っていうの。きっと余計なベロがくっついてるんだね。みゅーが引っこ抜いてあげよっか?」
「みゅーはいつからえんまさんになったの? ベロとられたら死んじゃうからやめてね」
「じゃあ反省して」
「はい……」
みゅーは将来怖いママさんになりそう。なんとなく。
◆
マーキング後、自転車に乗って一気にコトキタウンまで駆け抜けた。怒気に満ちたオーラをまとうみゅーのせいか野生のポケモンは寄り付かなかった。
ポケセンでボックスを作り、いよいよ誰をボックスに置くかという会議が始まった。
「あれ? なんか皆さん表情が怖くない? 明るくいこう、明るく?」
「なんで誰かがいなくなるのに明るくなるの? バカなの? ふざけてると怒るよ?」
バチバチボウボウ……!
右手に“10まんボルト”左手に“かえんほうしゃ”……怖いね。
「ミズゴロウ、ちょっと離れてて。巻き添えはイヤでしょ?」
「ゴロ?」
「ん? お前のせいじゃないよ。気にしないで」
「そうね。悪いのは全部レイン。ミズゴロウはかわいそうだったし、レインがほっとけなかったのはわかるからミズゴロウは仲間として歓迎する。でも約束を破ったことは別の話。落とし前が必要ね」
「……なんでもします」
「みゅ? なんでもって言った?」
「言いました」
「ねぇグレン。どうする?」
「ガウガ」
「ふーん。あなた達は許しちゃうんだ。優しいね」
ん? なんかわからんが助かりそうか?
「じゃあみんなの意見をまとめるね。実はテレパシーでもう相談済みなの」
「え?」
「オダマキ博士に作らせてたお菓子……余分に作ってたよね。それを全部渡すこと。そして全員が満足するまでマッサージとけづくろい、それからおしゃべりもしてよしよしって頭も撫でてほしい。あとちゃんと好きだよって言うこと」
「……ホントに相談したの?」
それ全部みゅーの願望なんじゃ……。
「なんでもするんでしょ? わかった? 返事!」
「はい……。それで、ボックスにいってもらう話なんだけど」
「それも決めたの。有志を募ったらヒリューが行ってくれたの」
「は!? いや、俺の意志はどうした?! そらをとぶ要員いなくなると困るんだけど!! お忘れか? トレーナーは お・れ !!」
「言うこときくんでしょ?」
「はい……」
「ヒリューはね、その乗り物要員がヤだって。疲れるしめんどいって。あと今度手持ちに入れるときはおいしいお肉をたっぷり用意しろって。用意しなかったらたぶんレインかじられるよ」
「えぇ……お、俺って人望ないの? たしか俺のこと一応認めてくれてたよね? なついてる……よね?」
「ゴォォ~ン」
あくびで返された。おいこれ大丈夫か? もっとお肉でご機嫌とっておいた方が良かったか。過剰戦力だからアカサビかグレンを預けようと思ってたんだけどな……仕方ないか。
1日ポケモンに尽くして怒りを鎮めた後、ヒリューはボックス、残りはボールに戻ってもらい、ようやくミズゴロウと向かい合う時が来た。
……といってもグレン達はそんなに怒ってなかったので実質大変なのはみゅーちゃんだけだったけど。
「みゅんみゅん! レイン~! レイン~!」
「あー、ありがとうみゅーちゃん。大好きだよ」
「みゅーー!! みゅーー!!」
「ゴロォ……」
ミズゴロウは困惑しながら距離をとっている。みゅーには少しやり過ぎたかな。今のみゅーをミズゴロウはどんな気持ちで見てるんだろうか。いきなりキャラ崩壊してるもんな。
みゅーはおんぶしてひとまずジャマにならないようにした。
「みゅふーー!! ちゅっちゅ! レイン~、ちゅーちゅー!」
ほっぺを激しく吸われているが無視して好きにさせた。
「じゃあ改めて、これからよろしくね」
「ゴロッ!」
ポン! コロコロ……カチッ!! ポン!
ミズゴロウゲット! すぐに本人は外に出てきた。
「さ、待ってました! ここでニックネームのお時間です!」
「みゅがっ!?」
「ゴロロ?」
「うちは仲間になった子には必ずニックネームをつけてるんだよね。実はねぇ、ミズゴロウだけは絶対にゲットしたいポケモンだったからずーっと前から名前は決めてたんだよね」
「イヤな予感しかしないの」
「その名も……ジャジャーン! スイレン(水蓮)くんだ!」
やった! とうとうこの名前が日の目を見る時がっ!
「……はぁ~。レインって本当にバカなの」
「え、なんでだよ! めっちゃいい名前だろ?」
さっきまでのメロメロはどうした! どうせなるなら今なれよ! そして俺を褒め称えろ! 百年の恋も冷めたみたいな顔すんな!
みゅーは背中から離れてしまった……。
「レイン……考えてることわかるけど、水蓮は間違いで睡蓮ね。水は入んないから」
「え!? うそでしょ!?」
「しかもスイレンって女の子みたいなの。ミズゴロウは男の子だよ?」
「うっ……女の子みたいとか、そんなこと別にないよな?」
「ゴロ……」
おまっ、目をそらすな! その微妙に気を遣ってる反応やめろ! なんかこっちがいたたまれなくなるから!
「1年考えてたんだよ? 俺の苦労はどうなるの? 本当にダメ? お願い!」
「ダメね。レインの苦労とかどうでもいいの。この子が女の子みたいって言われたらかわいそう。そっちの方が重要なの」
「それを言われると……」
名前でレッテルついちゃうのは1番かわいそうだもんな。俺のわがままでそんなことはできないか。
「ちゃんと考えて」
「はい……」
どうするんだ……絶対喜ばれると思ってた。代案は全くない。想定外過ぎる……。
よし、まずラグラージの特徴とか生態とかをよく考えろ。みずタイプ。沼とか池とかそんな感じの場所に住んでる。カッコイイ(1番重要)……さて、どうするか。
……!! キタッ! 今キタぞ! 天才的閃きが降りてきた!
「じゃあさ、シスイ(止水)でどう? 水が入ってて、水が止まってる場所に住んでて、で、名前の響きがカッコイイ! ハイ文句なしの天才!」
「うえっ……とんでもない変化球がきたの。レインの性格みたい」
おまっ、ダイレクトに失礼なやつだな! お前の中の俺ってマジでどういう人間なの? 本当に俺のこと好きなんだよな?
「ゴロロ!」
「あっ。それでいいって。まぁさっきよりはマシだもんね」
「コラァ! なんじゃその消極的な言い方! 気に入ったから言ってるに決まってるだろ? なっ?」
「ゴロロ!」
ほらぁ!! うんうんって言ってるじゃんか!!
「オーラ乱れてる。ウソね」
「ゴロ?!」
「マジか……」
やっぱりウソ良くないね……。1番怖い。
でもミズゴロウのニックネームは結局シスイに収まった。ごたごたしたけど、これでミズゴロウの仲間入りは完了。さて、次は育成に取り掛かろうかな。
鬼より怖い(目に遭う)二枚舌
はい、鬼より怖いが言いたかっただけです(飛車厨)
ミズゴロウの重さは7.6kgです
3体の中では1番重いですね
この数字をどう思うかは人それぞれでしょう
とりあえずホウエンに来た目的は達成されました
2話で完結()
ニックネームはSMが出る前からずっと考えてました
スイレンになるはずだったんですけどね
みゅーちゃんのいうことが全てです