「レイン、今日は反省ね」
「わかってるから言わないで」
ジム戦には勝ったものの締まらないまま終わった。ホウエンはバッジを集めるだけなら3時間で十分、なーんて気楽に考えていたけど……知らないことだらけで案外大変かもしれない。
バッジは奥の部屋にはないようで、ジムの入り口まで戻りバッジを受け取った。
「レイン君、見事な勝利だったよ。これがバランスバッジだ。受け取りなさい」
「どうも」
ホウエン最初のバッジゲットだ。バランスバッジ……こんな形なのか。すごく独特な形だけどあんまり覚えてなかった。
「君はカントーのバッジはいくつある?」
「8つです」
「通りで。それだけ強いのにどうしてホウエンへ?」
「育てたいポケモンがいたので。さっきのヌマクローです」
「こっちに来て間もないだろうにもうあんなに育てたのか。ハルカよりも来るのが遅かったのはそのポケモンを育てていたからだね」
「まぁそんなところです」
実際はオダマキ博士の手伝いがほとんどだけど、一応育てる時間もあったからセーフ。でもなんやかんや聞かれるとみゅー辺りが「ウソなの」っていいそうでマズイ。そろそろ帰ろうかと思った時ジムの扉を叩く音がした。
「おっと、次の挑戦者か。……入りなさい」
おずおずと扉を開けて入ってきたのは緑色の髪の少年。雰囲気がなんとなく違う気はするけど、この子はもしかして……。
「あの……ぼく……ポケモンがほしいんですけど……」
「ん? きみは……たしかミツル君と言ったよね」
やっぱり! 将来チャンピオンロードの警備員と化し、最後まで誰からも忘れられていた悲しき少年!……ごめん、俺も今の今まで存在を忘れてたよ。
センリの言い方からすると見ず知らずってわけではないみたいだな。近所だし知り合いでもおかしくはないか。
「……あ、はっ、はい! ぼく今日からシダケタウンの親戚のうちにいくんですけど、ひとりじゃ寂しいからポケモンを連れて行こうかと思って……でも今まで自分でポケモンを捕まえたことがないからどうやったらいいのか……」
「……ふむ、なるほど。話はわかったが、ポケモンがほしいならポケモンセンターでトレーナーの申請をすればどうだい? もちろんトレーナーにならなくてもポケモンを捕まえるのは自由だが、それが1番手っ取り早いだろう」
「ぼく、体が弱くてあんまり外に出ちゃダメでトレーナーになれなくて、シダケタウンに行くのも静養のためで……」
いきなり家族と離れて全く違う環境の場所で暮らすというのはやはり心細いものなんだろうな。表情を見ているとよく伝わってくる。
正直ミツルにはいい思い出はない。いつもいつもトウカで面倒なイベントを起こして時間を取るし、チャンピオンロードでは満身創痍ながらあと一歩のところまで辿り着いたのに強制送還されたこともある。手伝った恩も忘れやがって!……ってなもんだ。
でも……
「みゅ? レイン?」
「なぁみゅー、ちょっと寄り道してもいい?」
「みゅふふ。レインの冒険でしょ。自分で決めればいいの。みゅーはどこにでもついていくから」
ありがとね。心の中でお礼を言った。
「話は聞きました。センリさんはジムの仕事もあるでしょうし、俺でよければ手伝いますよ」
「レイン君! 本当に? 助かるよ。わたしはここを離れられないから困ってたんだ。トレーナー同士、助け合いの精神だね」
「あの……いいんですか? ジム戦にきたんですよね?」
「ジム戦はもう済ませてバッジは貰ったよ。ボールとかポケモンは貸してあげる。引っ越しまで時間もないんでしょ? 早く行こう」
「あ、はい。センリさん、ありがとうございました」
「こっちに戻ったらまた元気な姿を見せてくれ。成功を祈っているよ」
「じゃあ俺達はこれで。センリさん、できたら今度はお互い本気のバトルがしたいですね。マスターズリーグでまた勝負しましょう」
「君は心配するだけムダのようだな。よい旅を! ミツル君は任せたよ」
ちょっと苦笑いされたけど、最後はいい笑顔で送り出してくれた。
トウカジムに別れを告げ、ミツルと一緒に一旦ポケモンセンターへ向かった。先に聞くべきことがあるのでそわそわしているミツルに声をかけた。
「時間はいつまである? 今から急がないとダメか? できたらポケモンの回復をしたいんだけど」
「えっと、夕方にはうちに戻ってねって……」
「じゃあ結構余裕はあるな。今後のためにも、せっかくだし自力で捕まえられるようにやり方を教えようか。時間がやばくなったら俺が手伝うけど、最初は自分の力でやってみよう」
「はい、がんばります」
なんか態度とか表情が堅い……やりづらいな。大事なゲットがかかっているし緊張しているのかもしれない。
ちょっと頭を悩ませながらポケセンへ入った。
「あっ! おかえりなさいませ!」
「!?」
「みゅ? ご主人様?」
「違う違う! やめんかい! それアウトだから!」
何考えてんのこの人!? 新手の嫌がらせ!?
「いや、これは私の気持ちです」
「そんな気持ちいりません」
「レイン、そう言いつつちょっと嬉しそうね……こういうの好きなんだ」
「うぐ……」
だって! 新ジャンルじゃん、ジョーイさんがするのはさぁ! 込み上げるものはあると思います。
なお、ミツルくんは無言ながら「なんなんこいつ?」って感じの視線を俺に向けている。バカでごめんね。でも今のやり取りのおかげで表情とかは若干柔らかくなったかもしれない。ね、狙い通り!
これ以上自分の株価を暴落させたくないのでシスイ達を無言で預け、その間にミツルに捕まえ方を教えることにした。ここで名誉挽回だ!
「最初にとりあえず自己紹介を。俺はレイン。夢とロマンを求めてカントーからやって来たさすらいのポケモントレーナー。こっちはみゅー。不思議な不思議な女の子」
「ぼくはミツルです。うーん……ポケモンが好き、です」
今改めて見て思ったが顔とか雰囲気が知ってるのと違う気がする。なんというか、より幼くてかわいい……ミツルってこんなだった?
「みゅー? ふーん」
「うえっ!? なに!?」
「ぶふっ! みゅー何してんの」
みゅーがしげしげとミツルを眺めた後今度はペタペタと体を触り始めた。他人に自分から触ろうとするなんて珍しい……というか初めて見た。面白いから黙って静観しよう。
ミツルは助けを求めて俺に目で救援サインを送るがこれを笑って受け流した。ものすごく困った表情のミツル……かわいいね。
「珍しいなぁ。こんなに立て続けに会えるなんて。んみゅー、どうしようかなぁ」
「もう許してよぉ」
「みゅぅー、じゃあミツルは弟にしてあげる」
「えーっ?!」
「はぁーっ!? なんでだよみゅー!」
こだまする2人分の叫び声。脈絡無さ過ぎるのはエスパーの特権なのか? 勝手に家族を増やすな!
「あれ? レイン急に慌ててどうしたの?」
「いやだってさ……それよりこの子、もしかして近いのか?」
「みゅふふ。大丈夫、みゅーの1番はずっとレインだから。心配しなくていいよ」
「ちょっと! 違うから!」
「えっと……あの……」
ミツルが置いてけぼりになっている。いい加減話を進めないと。
「大丈夫、冗談だから。今のは気にしないで」
「レイン冷たいね。くすくす」
なんだその笑い方! みゅーの勘違いだからな! 俺は大人の対応で軽く受け流した。
「はいはい、今は立て込んでるから。さっそくポケモンゲットの話だけど、ミツルはどれぐらいわかってる? まずポケモンはどんなところに出てくるか知ってる?」
強引に話を切り出すとちゃんと答えてくれた。
「たしか草むらとか水辺とか洞窟とか色んなところにいますよね」
「そのとおり。よく知ってるね。ポケモンの生息地は様々で、場所により生息するポケモンは変わる。だから目当てのポケモンがいる場合はちゃんとその生息地にいかないとダメなわけだ。ちなみにお目当ては?」
「特にはないです。仲良くなれそうなポケモンならなんでも……」
「じゃあコトキ方面へ向かったところの草むらに行こう。あっちは生息するポケモンの種類が多いから。次は肝心の捕まえ方だけど、モンスターボールを投げるのはわかるよね? でもそれだけじゃダメ。どうするかわかる?」
「バトルして弱らせるんですよね。倒すことができれば確実に捕まえられる」
「よく勉強してるね。準備万端だな」
「えへへ……ぼくずーっと前からポケモンと一緒に過ごせる時を待って勉強していたんです」
これは感心。性格的にはしっかり者っぽいな。俺なんか倒してもゲットできるとか知らなかったし。そう考えると自分は勉強不足だったんだなぁ。
「でも、難しいのはここからだ。ゲットにはバトルに勝たないといけない。相性とかわかる?」
「もちろん! 技を使ったりするのも知ってます」
「それは頼もしい。じゃあポケモンの特徴とかはわかる? ジグザグマは素早いとか、ポチエナは攻撃力が高いとか」
「え? それは……」
考えたこともないって顔だ。こういうのは勉強だけではどうにもならないから当然だけど。
「知ってると便利だよ。素早い相手には攻撃を当てるのが難しいから工夫が必要だったり、攻撃力が高い相手には回避を上手く使うようにとか、戦い方も柔軟になる」
「あっ……」
「自分のポケモンが使える技、そして相手が覚えているであろう技もわかるといいよね。例えば“かみつく”とか“たいあたり”しか技がない相手なら遠距離から攻めれば戦いやすくなるでしょ?」
「……」
「そういうことはバトルしながら一緒に確認していこう。どんなポケモンがバトルに強いとかもわかってくるし、ゲットしたいポケモンも出てくるかもね」
ミツルは真剣そのものという表情に変わった。かわいいだけかと思いきやこんな顔にもなるんだな。
「レインさん、回復終了致しました!」
はやっ! もう!? このジョーイ人が変わったな。
ならさっそく今回ミツルにレンタルするポケモンのお披露目といこうか。
「出てこい!」
「わぁ……ポケモンだぁ……」
「マー」
キラキラした眼差しにシスイもまんざらでもなさそうだ。これなら上手くいくかな。
「かわいい……触ってもいいですか?」
「シスイ、どう?」
「マックロ!」
「褒められて嬉しいみたい。もちろんいいよって言ってる」
「ほんと!? やった!……なんでポケモンの言葉がわかるの?!」
「それはまぁみゅーだから当然だな」
「みゅ、当然なの」
「そうなんだ……」
やけくそでさも当たり前みたいに言ったら信じた。……ミツル、純粋な子。
「ミツル、これをシスイにあげてみて。喜ぶから」
「これ、きのみ? シスイ……どうぞ」
「マァ? もぐもぐ……マァーーッ!」
「すごい! 喜んでる! やったやった!」
渡したのは“ロメのみ”だ。スキンシップで親睦を深め、いよいよ実戦。ミツルにはタイプや能力、使える技をざっくりと教えて草むらへ向かった。
「シスイ、このお兄ちゃんは初心者だから俺みたいな指示はできないけど、お前が引っ張ってあげるつもりで頑張ってくれ。頼むよ?」
「マー! マックロ!」
「初心者と旅するつもりで研究所にいたから構わないって。任せろってやる気マンマンね。むしろレインが強くてびっくりだったとも言ってるの」
「あれ、そうだったのか。言われてみればそうだな」
「……」
ミツルは神妙な顔つきで黙っている。会話が呑気過ぎたな。
「さぁ着いた。ミツル、シスイは強いからどれだけ失敗しても倒れることはない。最初から上手くいくなんて思ってないし、失敗から学ぶぐらいのつもりでいろよ」
「はい! シスイ、よろしくね」
「マッ!」
ポンと胸を叩いて頼れる兄貴って感じのシスイ。ミツルがみんなの弟分になってゆく。なぜなんだ。雰囲気のせい?
「ボールはとりあえず10個渡そう。追加もあるからどんどん使っていいよ。ポケモンはすぐに出てこないから根気よく探そう」
「よーーし! やるぞ!」
気合を込めた矢先、辺りにポケモンの鳴き声が響いた。
「バウバウ!」
野生のポチエナが飛び出してきた!
突然のことにパニックになったのかミツルは何もできない。
「え!? いきなり!」
「バウ!」
「ヌマッ!?」
「あっ! ごめんシスイ! なんでこんな急に……」
“たいあたり”でダメージを受け、シスイはミツルに声をかけた。
「マッ!」
しかし混乱の渦中にいるミツルの耳には届いていない。無為に時間だけが過ぎてゆく。
「バウ!」
「グゥ……マークロ!」
またしてもミツルはおろおろするだけだが、みゅーの一声が救いになった。
「ミツル、シスイが技を使わせろって言ってるよ。このままじゃ防戦一方なの」
「あっ、そっか! じゃあこっちも同じように“たいあたり”! 思いっきりやって!」
ようやくまともな指示を出すが単調な攻撃は躱されてしまった。指示がちょっと呑気だしこれでは当たらない。
「アオーーン!」
「ん? なんだこれは?」
「あっ、これマズイかも。レイン、どうするの?」
えっ? みゅーは今の声を俺が理解していると思ってそうだ。けど俺にはさっぱりわからない。今のは“とおぼえ”とも感じが違うしなんだ?
「わ! 数が増えた!」
「なんじゃこれ!?」
いきなりダブルバトル!? とんでもない展開になってきた。シスイはダメージこそ少ないが完全に防戦一方になり手も足もでなくなっていた。しかもさらに増えていく!
「れ、レインさんどうしよう!」
「仕方ない。シスイ、ミツルと一緒に“まもる”イナズマ出てきて“ほうでん”」
ポケモンをせんめつしてバトルを終わらせた。俺は素早くシスイの手当てをした。
「たくさん増えたのに一撃で……すごい」
「ごめんごめん。こんなことカントーじゃなかったから俺もびっくりしたよ。こっちだとだいぶゲットは大変そうだな」
「レインまたわかんなかったの? もう……もっとしっかりして」
「面目ないです」
ホウエンでは仲間を呼ばれることもあるのか。これはかなり厳しいな。いつぞやブルーにも言ったけど、初心者にとっては相手が複数になる時が1番難しい。それが最初から強制的に試練としてぶつかることになると旅は厳しいものになりそうだ。
「レインさん、どうしよう……ぼくもう自信ないです」
「大丈夫。相手が多ければ難しいのは当たり前。一緒に考えていこう」
ついでだし今色々実験しよう。相手が複数の時にボールを投げた場合。
「ううっ、どこに投げれば……」
攻撃が入り乱れていて狙いをつけるのは難しそうだ。俺ならできるかもしれないが全滅させた方が結局早いかもしれない。
「ああっ……弾かれちゃった」
狙いの相手だけ気絶させると仲間にボールを弾いて妨害され失敗。1体動けなくしても結局周りは元気だもんな。
「ヴォウ!!」
「キャウン!?」
グレンが“ほえる”を使うと全員逃げて行った。退場技は全体に効果があるんだな。数を減らす使い方はできないか。
「声なんだから当たり前なの。みんな聞こえるもん。今のでポケモンいなくなったよ? どうするの?」
「レインさん、もう時間が……」
「そうだな……仕方ないし、次は俺がまた全部倒すから、好きなのを1体ゲットしてくれ」
「……はい」
ミツルは少し浮かない表情だったがうなづいた。自分でゲットしたい気持ちもあったのかも。とはいえこれで万事解決。あとはちょちょいのパー……と思いきや、今度は俺自身がゲットに苦戦することになった。
「全然寄り付いてこないな」
「ガウ……」
「仕方ないの。グレンじゃ強過ぎ。怖くて近づけないの」
こんなことになるとは。グレンに弱そうになってとか言ってみるが首を傾げられるだけで事態は好転せず。ゲットってこんなに複雑で難解なイベントだったっけ? こうなれば最終手段だ。俺の自慢の能力でズルして見つけてやる!
サーチ!……おっと、さっそくいたいたっ!
ラルトス ♂ ……
後ろの木の影にいる。意外と近くだ。
振り返ってさっそくアカサビのボールを握るが少しその表情が気になった。似たようなのを以前見たような……そう、昔のみゅーみたいな、好きな誰かを見つけてこっそり様子を伺っている、そんな感じ。もしかしてこのラルトス、ミツルに惹かれて?
「ポケモン……友達……」
「マーッ!」
半ば諦めて悲しそうな声を漏らし座り込むミツル。それを見かねてシスイが懸命に励まし、みゅーも傍に向かい声をかけた。
「ミツル、シスイが元気出せって言ってるの。俺に任せろって。みゅーも今度は上手くいくと思うの。もう1回頑張ってみよう?」
「でも……」
「ミツル、もう一度だけ言うからね。諦めないで! 最後まで頑張って!」
「!」
ミツルの目の色が変わった。みゅーがこんなことするのは初めて見たけど、よっぽどミツルが気に入ったんだろうな。
「自分でダメとか決めたら本当にダメになるの。失敗したら全部レインのせいなんだから、ミツルは気負わず自分にできることを最後までして」
「おーい、みゅーさん?」
「なに? ブルーにおんなじこと言ってたの。それに今回は本当にレインのせいだし」
「ぐっ……」
鬼かこの子? いいとこあるじゃんと見直したらこれか。俺はいったいどんな責任の取り方を強いられるんだろう。ネガティブになる俺とは対照的に、激励によって元気づけられたミツルは大きな声を出して立ち上がった。
「よーし! もう1回やってみよう! 当たって砕けろだ! 後悔はしない! シスイ、お願い! もう一度手伝って!」
「マーッ!」
そのときはっきりと流れが変わったのを感じた。何の流れ? 風向き? いや、これは……
「やっと出てきたの。恥ずかしがり屋なのね」
「ラルー! ラルラル!」
「あっ! 見たことないポケモン! レインさん!」
説明を求められたので素早く簡潔に返答した。
「ラルトスだ。エスパータイプ。進化前のポケモンで能力は高くないし、偏りもあまりない」
「よし、まずは“マッドショット”で……」
「待って。ラルトスはミツルに話しかけてるの。わからないの?」
「ぼくに? なんて言ってるの?」
「みゅふふ……ミツルのこと気に入ったのね。ミツルと一緒にいたいみたい。仲間にしてほしいって」
「えっ!? きみ、本当にぼくでいいの?」
「ラルー!」
すごい……そうか、気持ちの流れが変わったんだ。ラルトスはたしかきもちポケモン。滅多に人前には姿を見せないが、トレーナーの気持ちに呼応して現れることがあるとか。きっと前向きなミツルの気持ちに惹かれたんだろう。
「仲良くなれそうな相手を探してたみたい。レインは怖そうで暗い気持ちになってるからヤだけど、ミツルは優しそうで明るい気持ちだからいいんだって」
「うがっ!?」
俺の評価、ボロボロ!?
「え、どうしよう。でも、ポケモンってバトルしなきゃダメなんじゃ……」
「そんなことないよ。レインはボール投げて捕まえた数の方が少ないぐらいだし、絶対なんてこと何もないよ。ラルトスはずっと待ってる。不安になる前にボールを投げてあげて」
「うん……いけっ、モンスターボール!」
「ラル!」
コトン! コロコロ……カチッ!
「あっ! レインさん、これ!」
「おめでとう、ラルトスゲットだ」
「や……や……やったーーー!!」
ぴょんぴょん飛び跳ねてすごい喜びようだ。失敗も多かったし喜びもひとしおだな。これならきっとラルトスを大切に育てるだろう。時間ギリギリだけど上手くいって良かった。結局最後は俺の知る通りラルトスゲットで収まったな。
「ちょっとボールから出してみたら?」
「あ、そうしよう。出てきてラルトス!」
「ラルー。ラルゥーー!」
「ああっ! わぁぁぁ……」
嬉しそうにミツルに寄りかかるラルトス。そのままぎゅーっとミツルに抱き着き、ミツルの方は身動きできずになされるがままになっている。
ラルトスといえば特性はみゅーと同じ“シンクロ”だったはず。ミツルは暖かい気持ちを共有して、嬉しさに言葉も出ないんだろう。自分も経験があるからわかる。
「じゃ、少し失礼して……」
アナライズ!
外に出して貰ったのは能力を見るため。さっきはサーチだけだったから今のうちに見ておこう。あ、これは……!
ミツルにとってはかなりマズイ。先に言っておくべきか。
「ラル?」
「げ!」
がっつり目が合った。完全にバレてる。みゅーといいこのラルトスといい、エスパーにはバレちゃうな。
「あっ! レインまたやってる! 勝手に大事なところ覗いて……趣味悪いの。ヘンタイ」
「ちがっ! ヘンタイ言うな!」
「ホントにヘンタイだもん。ラルトスも同じ気持ちのはずなの」
「ほざけ! どうせさっきの翻訳もお前が都合よく改変したんだろ! じゃなきゃポケモンにはモテモテの俺が嫌われるわけない!」
「愚かなウヌボレね。はぁ~。いつかきっと痛い目見るの。絶対ね」
「そんな適当言われても怖くないし」
「みゅみゅみゅぅ……」
「ぐぬぬぅ……」
「あの、2人共落ち着いてよ。ケンカとか良くないよ……」
ミツルとラルトスが見事なシンクロで両手を広げてまぁまぁと俺達を落ち着かせようと同じポーズをとった。もう息ぴったりだな。
「ごめんごめん。それよりも1つ伝えておきたいことが……」
「え、伝えること?」
俺が大事な要件を言いかけた時、遠くからミツルを呼ぶ声が聞こえた。
「ミツルー! どこなのー! いるならすぐに出てきてー!」
「あっ! お母さん! ぼく呼ばれてる! レインさん、ぼくもう行かなきゃ!」
「えっ」
まだ話がっ! でもみゅー達はすでにお別れモードだった。
「ミツル、元気でね。また会えると思うからそのときまで少しお別れね。みゅふふ」
「マーッ」
「上手くいって良かったってシスイも喜んでるの。それとまた会おうねって」
「みゅーちゃん、シスイ……本当にありがとう! ラルトスと友達になれたのは君達のおかげだよ! ぼくのラルトス……ずっとずっとたいせつにするね! きっとまた会おうね! じゃあねー、バイバイ!」
ミツルはお礼を述べ、とびきり嬉しそうな表情でラルトスを抱きしめると駆け足で消えていった。
あーあ……俺もうどうなっても知らないからな。とりあえずミツルの目的は果たせたし、上々ってことでいいか。
「レイン、そんな顔してたらエスパーから嫌われるよ。また心配事? それともあの子がいなくなって寂しい?」
「さみしがりはシスイだけで十分でしょ。俺が気になってたのはあのラルトスの使える技のこと」
「技? 攻撃技がないとか?」
「なぜわかった?!」
「エスパーだもん」
みゅーって本当にどこまでわかっているのだろうか。ほんっと、不思議な女の子だね。
俺の唯一の気掛かりがラルトスの技構成。まさかの“なきごえ”と“テレポート”のみ。どないすんねん! 俺でも育てるのは大変だ。……無理とは言わないけど。
「大丈夫。ミツルは心配いらないの」
「本当? ま、みゅーが言うなら大丈夫か」
エスパーの言うことは本当にそうなるからな。実際心配しても仕方ないし俺は気にせずにいよっと。
「それよりレイン、忘れてないよね? 反省会」
「……そうでした」
「おんなじ失敗しないよーに、次までにしっかりと悪かったところは直すこと。……また同じ失敗したら許さないから」
みゅーちゃん厳しいね。なんかまた初心者に戻された気分。初心者何回目? こういうのって期待の現れだからありがたいけどさ。さっきのミツルへの叱咤激励といい、みゅーはグッと大人になったね。かっこいい。
「レイン」
「なに?」
「楽しみだね」
「反省会が?」
「もう、わかってるクセに。素直じゃないの」
男の子はそういうもんだからいいんだよ。さて、次はいつになるんだろうか。
ミツル、ラルトスのことしっかり育ててやれよ? 変な育て方してたらおしおきだからな!
レインはラルトスのフェアリータイプにはまだ気づいてません
わかりきっているタイプなんて確認しないですよね
わるあがきはどうやっても使えません(PPがないため)
レインはズルしてレベルを上げる方法を思い浮かべています
トレーナー申請の件は細かく設定をほじくり返すとややこしいのでそっとしとく感じで
トレーナー手帳絡みはザル説明で一瞬マズイかなって思いましたが見返すと破綻レベルではないと思いったので結局そのままにしました()
そもそもなんでこんなややこしいシステムにしたの?(自業自得)