Another Trainer   作:りんごうさぎ

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3.かわいいこにはバトルをさせよ

 ジムを出て、ひとまず回復のためポケモンをポケセンに預け、ハナダの町をふらふらと見て回ることにした。ポケモンコレクターの爺さんや粉職人の家をのぞいたりして、それなりに収穫はあった。“ばんのうごな”とか作れたしな。一通り見て回り、バッジもあるしもう次の町へ向かおうと思い立った時、ふと道端で面白い話を小耳に挟んだ。

 

「またやられたよ。あの橋の6連戦、きつ過ぎだろ。地味に不便だし勘弁して欲しいぜ」

「ほんとだよな。各自はそんなに強くないが、状態異常にされたりして途中で力尽きるんだよな。いっつもイヤになる」

 

 思い出した。そういやハナダといえばレインボーブリッジだったな。ちょいと情報を集めてみるか。

 

 軽く聞いてみると、岬へ行く道の途中に6人のトレーナーがいて、連続で勝たないと通れない上、賞金も必ず決まった額で強制的に設定されるらしい。

 

 他に行く道はあるがかなり遠回りの上、賞金目当てに挑む奴もいるらしいが、最後に近いほど賞金額が増えるので途中で負けると結局減ってしまうらしい。

 

 むしろ賞金制度があったことに驚いたが、両者の合意があれば普通にこの世界じゃやることらしい。プロのトレーナーはそういうところで稼いで強くなっていった奴らってことか。

 

 とにかく全員に勝てばかなりの額が入るみたいだ。今までに勝ち抜けたのはここらじゃジムリーダーぐらいらしいが、やはり状態異常にしてくるのが相当きついらしい。一応警戒しながらいくか。岬にいるマサキに会っておくのも悪くないしな。

 

 ◆

 

 翌日、橋に行くとホントにトレーナー達が待ち構えていた。仰々しいな。

 

「おっ、新しいチャレンジャーか。ルールは知っているか?」

「フルバトルの勝ち抜きだろ? 相手になってやるよ」

「そうこなくっちゃな。いくぜ、ポッポ!」

 

 レベル20か。そこそこだが、相手にはならないな。なんなく勝ち進み、時折出てくるくさタイプなどのまひやどくは“みがわり”で起点にして積極的に能力を積んでいき、順調に勝ち進んだ。手持ちが2匹いるので“オーバーヒート”が打ち放題なのもデカい。PP制限なんてものはないみたいだからな。

 

「これで6人目か。来いよ」

「なんて強さだ。だがここで負けるわけにはいかない。いけ、ニドキング!」

 

 レベル25。結構上がってきているな。

 

「あばれるだ!」

「なるほど。5!」

 

 グレン

 技 1かえんほうしゃ

   2かえんぐるま

   3しんそく

   4かみなりのキバ

   5まもる

   6みがわり

   7オーバーヒート

   8こうそくいどう

   9ひのこ

  10おにび

 

 技の番号は視たときの技の並びをそのまま使っている。順番は使用頻度に合わせて変えられるので、後ろの方は新技“かみなりのキバ”を覚えたときに少し入れ替えた。

 

 俺は見ながら言うから間違えることはない。だがポケモンの負担を考えて変え過ぎないようにはしている。アカサビもグレンも技の練習はいつもかなり頑張ってもらっているからな。この戦法はその努力の賜物でもある。

 

「くっ、当たらない!」

「やっと混乱したか。7」

 

 “まもる”“みがわり”連打、いわゆる「まもみが」でやり過ごし、混乱したところを“オーバーヒート”で決めた。ニドキングの“あばれる”で残りの手持ちを一掃するのがこいつらの狙いだったんだろうが甘かったな。これで全員倒した。賞金を受け取ろうとするとなぜか話になかったはずの七人目が現れた。

 

「おっと、勝ったと思うのはまだ早い。最後に俺とバトルしてもらおう。でなければ賞金は没収。勝てばこのきんのたまをやろう……って、お前、あの時の!」

「ん? ……ほう、よく見れば昨日の変質者か。またセコい真似して、大の大人が情けない。今度こそグレンで叩き潰してやろうか?」

「くそう、あの時は戦略的撤退を試みたが、今はお前のポケモンは弱っている。返り討ちにしてやらぁ!」

 

 逆上して襲い掛かってきて、強制的にバトルが始まった。だが怒り任せの雑な攻めで、特筆すべきこともなくあっさり倒せてしまった。こいつ、ここにいたってことは実はロケット団だったのか。たしかにロケット団みたいな逃げっぷりだとは思ったがまさか本物さんだったとは。

 

「バカな、強過ぎだ! これじゃカスミ並の強さだ!」

「相手が悪かったな。とにかく賞金を渡しな。お前、この前の分も合わせて、きっちり出すもの出してもらおうか」

「ひいいい!」

 

 チャリーン

 

 予想外の収入に懐を温めながら改めて岬へ向けて出発。しかしその先でもかなりのトレーナーに絡まれた。どうやら勝ち抜きで消耗したトレーナーを狙って待ち伏せしているようだ。

 

 つまり二段構えってわけね。油断も隙もありゃしねぇ。セコイこと考えるなぁ。結局何戦連続で戦えばいいんだ? 普通のトレーナーにとっちゃかなりタフな展開だな。

 

 だが大して消耗していない俺にとっては賞金を稼ぐ絶好のカモにしかならない。積極的に賞金を賭けてくれるからむしろ好都合。

 

 普段はここに来るトレーナーをカモにして儲けているだろうし遠慮もいらないだろう。ここでしっかり稼がせてもらおうかな。

 

 戦闘してない方をきのみなどで回復させながら順番交代で戦わせ、全てのトレーナーを倒し切った。さすがに数が多く、気疲れはしたな。そういやここはゲームではかなりしんどかった記憶がある。

 

 ◆

 

 ようやくマサキの家に着くが、なんとマサキは留守だった。仕方ないので庭の方を見てみるとたくさんのポケモンがいた。ジムではたくさんポケモンがいるらしいが、それに匹敵するんじゃないか? すごい。

 

 感心しながらクセになっているサーチを使うと、柵の外の木の上からポケモンがこっちの様子見ているのに気づいた。何で柵の外に? そして能力を見て驚愕した。

 

「なんて奴だ! すごい能力じゃないかこれは!」

 

 イーブイ♂ Lv25 おくびょう

 個 20-00-04-27-23-31

 

「なんやなんや何事や? おっ、あんさんこの辺では見かけへん顔やな。ワイのコレクションでも見に来たんか? ええでええで、ゆっくり見てきーや」

「あんたがマサキか。いや、実はかなり気になる奴を見つけたんで、つい」

「なるほどな。わかるでー、おおかたワイのギャロップを見て仰天したんやろ。わかるわかる、ワイの自慢のポケモンやからな」

「違う。そっちじゃなくて、あのイーブイ。すごい素質がある」

 

 へ? とマサキが間抜けな声を上げ木の上を見ると、そこからイーブイが出てきてマサキに駆け寄ってきた。ほっぺを摺り寄せて甘える姿から、この上なく懐いているのはすぐにわかった。

 

「おーよしよし。しかし、あんさん変わっとるなぁ。たしかにイーブイは珍しいポケモンやけど、このイーブイは全然つよないで。むしろよわ過ぎてかなわんって愛想つかされて捨てられとったのをワイが拾ったぐらいや」

 

 驚愕の事実だった。このイーブイを捨てる? なんてことを……。

 

「なんだとっ! 馬鹿な奴め……もしかして人見知りしてあんなとこに隠れていたり、おくびょうな性格だったりするのはその馬鹿のせいか。かわいそうに……こんなに素質があるのに勿体ないなぁ」

「ありがとな、トレーナーの人。あんた、何て名前や?」

「レイン。このイーブイがなんで捨てられたかは見ればわかる。おそらく前の奴からは攻撃力も低いし、防御力も低くて何の役にも立たないって悪態突かれたりしたのだろう。 しかもノーマルタイプだ。使い道がないって思うのは想像に難くない。でもお前は進化して初めて才能を開花する。天性の素早さに加え、とくこ……でんきタイプやみずタイプの技に関してならかなり能力が高い。悪いのはその馬鹿の方だ。お前は悪くないよ、イーブイ」

 

 最後はイーブイに語りかけるようにして言った。

 

「ブイイィ」

「ほ、ほんまか? でも素早いのは当たっとるで。……あんさん何者や。本職のブリーダーでも、見ただけでそんなこと簡単にわからんで。触れば別やけどな」

 

 しつこいけど、ブリーダーさんマジ何者? 触ったらわかるのかよ。

 

「俺よりいい目を持っている奴はこの世にいないだろうな。にしても……ホントに、どこの世界にも簡単に責任放棄して捨てればいいと思っている奴はいるもんだな。聞いただけでも腹が立つ」

「えらいご立腹やな。なんか昔あったんか」

「俺自身もまあ似たようなもんだし。身寄りはおろか親の顔も知らない。まぁ、かといって別に同情してるわけじゃなくて、純粋にこのイーブイの才能を腐らせるのは惜しいと思っただけなんだけど」

「そないか。悪いこと聞いたな。レインはんも苦労しとるな」

 

 その後もたわいもない世間話をしながら、マサキのコレクションを見せてもらった。その帰り、どうしても諦めきれずマサキにお願いをした。

 

「なぁ、あのイーブイ、俺に譲ってくれないか? どうしても育ててみたいんだ」

「あんさんほんまにあのイーブイに惚れ込んどるな。ワイとしても、あのイーブイをしっかり育ててくれるなら任せてあげたいのは山々やけど、如何せんかなりの人見知りやからな。たぶんワイ以外のトレーナーに懐くことはないと思うで」

「なら、もし俺に懐いたら任せてもらえるか?」

「それなら構へんけど、相当しんどいで。めっちゃ辛抱強くないとアカンやろな」

「わかっている。懐いてくれるまでいつまででもここに来る。あいつにはそれだけの価値がある。じゃあ、明日また来るから、よろしく頼むよ」

 

 ◆

 

 そこから岬通いが始まった。ポケセンに泊まれないので宿代もかかるが、構わずイーブイのところへ行き続けた。あの手この手でやれることは手を尽くしたと思う。この地道な努力を続ける根性には、ポケモン愛好家のマサキも舌を巻いた。

 

「自分で言うのもあれやけど、ここは町と離れとって辺鄙なとこにあんのによう毎日くるなぁ。イーブイもちょっと打ち解けてきてるで」

「でもまだまだ。何かきっかけがあれば」

 

 まだ親元を離れる決心はできないのか、何度か一緒に来ないか誘ったがまだ返事は芳しくない。俺のことはマサキの言うようにいい感情を持ってくれているみたいだし、好奇心もありそうだ。外へ行くことに興味自体はあるみたいに見える。でも何か壁がある。そう、怯え。俺に……いや、トレーナーに対しての怯え、それが妨げになっている。きっと昔の苦い記憶が邪魔をしている。何か手はないか。

 

「イーブイ、おいで」

「ブイイィ」

「ネコブの実だ。食べてみな、おいしいから」

「ブィッ!」

 

 おいしそうに食べてくれる。最近はほんとによく笑顔を見せてくれるようになった。好感度はやっぱり高そうだ。始めはずっと怯えていて、近くに行くだけでも一苦労だったからな。となると心の問題か。

 

「イーブイ、聞きたいことがある。俺の勘違いでなければ、俺はお前からそんなに嫌われてはいないと思う。でも一緒には行けないのは、やっぱりまた捨てられたり、ひどいことを言われたりするのが怖いからじゃないか? 最初は優しくても、自分が弱かったらまた怒られて捨てられるんじゃないかって心配してるんだろ? バトルになれば何度も負けて、痛い思いをして、容赦のない暴言で心も傷つけられる。バトルなんて二度としたくないと思うには十分過ぎる程とても辛いことだと思う。必要以上にポケモンから距離を置いて木の上にいたのは、もしかしてバトルになるのが怖かったからなんじゃないか?」

 

 そう尋ねると力なく首を縦に振った。不安げにこっちを見ている。疑心暗鬼、そんな目だ。きっとイーブイ自身とても苦しんでいるのだろうな。

 

 グレンと俺が一緒にいる時、羨ましそうにこっちを見ていることもあった。気づいたのは偶然だったが、その時のせつなそうな目は忘れられない。旅に誘ったときは期待と不安がごっちゃになったような表情をしていた。それを見ると強引に連れて行く気にはなれなかった。

 

 イーブイだって珍しい種類だし、捕まえられた最初は期待されていたはず。始めは大切にされた経験はあるだろう。ならそれを忘れることは、辛い過去がある分なおさらできないだろう。だったらイーブイだって普通のポケモンのようにトレーナーに大切に育てて欲しいと今でも思っているはず。だからこそ行ってみたいと、もしかしたら優しい人かもと淡い期待を抱く。けど怖い……一度裏切られたから。ほんとは手を伸ばしたくても体が固まってできないんだ。

 

 そんなジレンマに苦しんでいる姿を見るとやるせない気分になって、とにかく真正面から自分の気持ちをぶつけた。

 

「イーブイッ!」

「ブイッ!?」

 

 ガッシリと強く抱きしめてその不安をかき消すように言葉を紡いだ。

 

「ごめんな、すぐに気づいてやれなくて。ずっと辛かったんだろ。俺から誘われる度に、きっと思い出したくもないことを、苦しい思い出を突き付けられて、行きたくても行けないこと、ひとりぼっちで悩んでいたんだな。本当は仲間も欲しかったんだろう。褒めて貰ったり、一緒に勝って喜んだり、トレーナーから大切にされたり、お前だって望んでいるに決まってるよな。無理だなんて思っていても簡単に割り切れやしないよな。でも、どうしても勇気が出ない。簡単には決められないよな」

「ッブイィ、ィィィ」

「ずっと苦しくて寂しかっただろう。でも、俺は全部受け止めてやるから。お前の気持ちは全部分かる。周りが何と言おうが、誰もお前を認めなかろうが、俺はお前のこと裏切らない、ずっと味方だ。だから全部吐き出して。今まで1匹でため込んだ苦しいことも悲しいことも全部、ここで出していい。今は誰にも見えないから。怒られないからな」

「ブイィ、イイィッ、ブイーッ!!」

 

 さめざめと泣く声が、徐々に大きくなり、しだいにはワンワンと大声で泣いていた。きっとそれだけ苦しかったのだろう。ゆっくり頭をなでて落ち着かせると、泣き止んだイーブイは恥ずかしそうに横を向いた。照れているな。そんなところもかわいいので、ほっぺをぐりぐりしてやるとまんざらでもなさそうだったが、調子に乗りすぎて度が過ぎたせいで仕返しをくらい、いつぞやのように頭をなめまわされべたべたになった。

 

「つ、疲れた。イーブイ、はしゃぎすぎだ」

「ブイ、ブイイッ」

 

 そっちこそと言われた気がする。たしかにそうだが。

 

 その後は急激に距離が縮まり、一緒に庭の周りを駆け回って遊んだりした。以前の引っ込み思案は鳴りを潜め、俺を見つけると自分からじゃれついて遊んでほしそうにする。驚くほど元気ではつらつとしている。元々は明るい性格だったのかも……。

 

 折を見て、イーブイにある提案をした。

 

「一度俺と特訓して、実際にバトルをやってみよう。絶対勝たせてやるから! ホントに一度でいいから俺を信じてくれ。お願い!」

 

 ギュッと抱きしめながらお願いするとコクコクと頷いてくれた。予想通りだな。意外と人懐っこい一面もあるようで、あれ以来抱きしめてあげるとものすごく嬉しそうなのがこっちにも伝わってくる。捨てられて人とのつながりを断っていた分その反動だろうか。おかげでこうすると無理を頼んでも言うことを聞いてくれる。

 

 最近は俺の姿を見ると胸か背中に飛びついて抱き着こうとすることもある。特に心臓の辺りによく顔をうずめる。落ち着くのかな?

 

 ちなみに、このタイミングでこの話を切り出したのには理由がある。きのみを与え続けて努力値下げが完了し、ドーピングで振り分けもできたからだ。……こっそりと育成は進んでいたのだよ。

 

 つまり、この時点でこのイーブイはそんじょそこらのポケモンよりステータス的には強くなっていた。ここから野生のポケモンで技の練習をしながら戦闘に慣らしていって、なんとかトレーナー戦で勝って自信をつけさせてやりたかった。

 

 間違いなくイーブイはバトルの自信さえ取り戻せば旅に出る勇気も出るはずなんだ。過去の記憶はバトルに勝つことで克服するしかない。勝たなきゃ前には進めない。

 

 特訓はイーブイの頑張りのおかげでどんどん進んで、技の練習もすぐに終わった。もう技名なしでも連携がとれる。ここに来てからもう半月以上か、ようやくだな。ただ、たまーに何度か何かの視線を感じるようなことがあり、少し不気味だったが。

 

 ◆

 

「イーブイ、今日は気合入れて行こうな。でも心配するな。負けてもまた一緒に特訓するだけだ。とにかく思い切っていけ。自信持てよ?」

 

 イーブイを抱き上げながらそう言うと、緊張しながらもコクリとうなずいてくれた。まぁいけそうだな。多少動きが鈍るぐらいなら負けるわけないし。今日はいよいよ初バトルだ。これを転機にしてイーブイをつれていく。必ず。

 

「あ、やっぱりあんたレインじゃない。ホントにまだいたのね」

「か、カスミ!? なんでこんなところに」

 

 唐突に出てきたな。聞けばどうやらコズエが俺の姿を見かけたというのを聞いて気になってここまで見に来たらしい。もしかしなくても不気味な視線はコズエだったのか。そういえば河原でもコズエは近くにいたし、全てあいつか。意外と陰険というか、イメージに合わないことをするなぁ。コズエは実力があるのに先へ行かないから何かあったのかと思って俺が心配になったとか。それでカスミにも話したと。

 

「ここにいたのはこのイーブイを口説いてたからだ。素質のあるポケモンだからどうしても仲間になってほしくて」

「ふーん。ガラにもなく似合わないキザないい方するわね。ん? その子、もしかしてマサキさんが預かっていた訳アリのイーブイ? あれ、なんで! ものすごい人見知りって聞いていたのになんでそんなにあんたに懐いてるのよっ。何かあったの?」

 

 ガラにもないは余計なんだよ! 人相悪いって言いたいのか? 自分が一番わかってんだよ! カスミはイーブイが俺にすり寄る様子を見て驚いていたが、俺クラスになると人相なんて関係なく懐かれるんだよ。どうだ、羨ましいだろう。気分がいいから今の発言は捨ておいてやろう。

 

「別にー。ずっと一緒に遊んでいただけだ。なあイーブイ」

「ブイーッ、ブイブイッ!」

 

 そういって抱っこしてやると嬉しそうに声を上げた。それを見てカスミもいけると思ったのか触ろうとしたが、イーブイは全身の毛を逆立てて威嚇した。やっぱりまだ俺以外の人間はダメみたいだな。

 

「ぐ、予想していたとはいえ少し傷つくわね」

「悪いなぁ。許してくれたまえ。まだ知らない人間は慣れてないから怖いんだ。それに今から大事なバトルを控えていてナーバスになってるしな」

「その言い草は悪いと思ってないでしょ。バトル? 大丈夫なの、その子は……」

 

 心配そうに言葉を濁しながら言われたが、その不安を払しょくするようにあえて強く言い切った。

 

「心配無用。言いたいことはわかるが必要なことだ。このイーブイが過去と決別するには勝って自信をつけてやらないとな。それに自分でも気づいてないがものすごいポテンシャルはあるんだ。絶対に勝たせてやる。これほど能力があるのに負けたら、そりゃトレーナーのせいだと言い切れる程強いからな」

「へぇ、そこまで言うなんて、なんか面白そうね。いいわ! じゃ、そのバトル私も見させて。わざわざ心配してここまで来てあげたんだし、いいでしょ?」

「観戦ね。まぁ構わないか。気の散るようなことはするなよ?」

「へいへい。わかってるわかってる。で、誰とするの?」

 

 他人事だと思ってずいぶん楽しそうに言ってくれるな、このおてんばは。絶対に乙女とは認めねぇ。相手はすぐに見つかった。いつも横にいるグレンの代わりにイーブイがいるのを目聡く見つけて、いつぞやに連戦した時フルボッコにした短パン小僧がリベンジに来たのだ。

 

「俺と1対1の勝負だ! 今度は勝ってやるぞ! いけ、ポッポ!」

「イーブイ頑張って」

 

 イーブイ Lv25

 技 1シャドーボール

   2めざめるパワー

   3あくび

   4バトンタッチ

   5まもる 

   6みがわり

   7こうそくいどう

   8てだすけ

   9でんこうせっか

 

 ノーマルは相性が悪い。メインの“シャドーボール”が効かないからだ。でもこいつの“めざめるパワー”は氷威力65。見せてやれ、お前の力!

 

「ポッポ、かぜおこしだ!」

「右へ避けて7」

「いきなり反復横跳びなんかして何のつもりだ?」

「軽いウォーミングアップってところだ」

 

 “こうそくいどう”だが正直に教えはしない。逆に挑発した。

 

「ぐっ、なめるなよ! たいあたりだ!」

 

 煽られて単調な攻めになったな。トレーナーって人種はノーキンさんが多くて助かる。

 

「相手は遅い。よく見て引きつけて躱して」

「なっ!? いきなりそんな高度な指示あのイーブイには無理よ!」

 

 カスミが慌てて言うが、その心配をよそにイーブイはそれを難なくやってのけた。イーブイ自身も驚いている。だがこれは当然だ。素早さが違い過ぎるからな。

 

「相手は隙だらけだ。2! やっちまえ、イーブイ!」

 

 無防備な相手の背中に渾身の“めざめるパワー”が決まり、効果は抜群。不意を突いたので乱数もいい。一撃でノックアウトだ。イーブイは嬉しさのあまり飛び跳ねて俺に“たいあたり”をかましてきた。

 

「うおっと!! 攻撃力は低いはずなのに結構衝撃が……。よしよし、よく頑張ったな。本当にえらい。お前は元々これぐらいはできたんだ。今まで上手くいかなかったのはトレーナーのせいだ。わかっただろ?」

「ブイ一ッ!」

「これからもっともっと勝ちまくって、強くてカッコイイポケモンにしてやる。なりたいだろ?」

「ブイッ」

 

 しっぽがブンブン振れていて、耳もピコピコせわしなく動いてる。よっぽど嬉しかったらしい。やっぱりバトルして良かったな。短パンは悔しそうにして帰っていった。もちろんその後は存分にイーブイを抱きしめて撫で回してあげた。懐いてるポケモンって本当にかわいい。

 

「すごいわね。本当にこのイーブイ強いわ。今の動き、それにあの威力……あなたには最初からわかっていたの? それにこんな短期間で連携も抜群。技も増えてる。レイン、ホントにあんた何者なの? まさか別の地方からきた実力者だったりするんじゃないでしょうね?」

「だから、トレーナー登録はこの前にしたばっかだ。ポケモン捕まえたのも最近だしな。まぁポケモンに関する知識とかは元々あったけど」

 

 イーブイのほっぺをぐりぐりしながらテキトーに答えると、思ったより真剣な表情で考え込み始め、しまいにはとんでもないことを言い始めた。

 

「ねぇ、良かったら私の全力の手持ちとバトルしてみない?」

 

 ……これはまた面白い提案だな。フルバトルか。なら、イーブイゲットで新たに考えていた戦法のお披露目といこうか。実戦での肩慣らしには丁度いい。今からイーブイの活躍が楽しみだな。

 




おくびょうなイーブイかわいい
元気で笑顔のイーブイかわいい
抱きついて褒めてほしそうなイーブイかわいい
結論イーブイかわいい

いや、元々ブイズは使ったこともなく、そこまで好きなわけじゃなかったのですが、このイーブイめっちゃ好きになりました、自分で書いたんですけどね
もっというと次の話で進化するんですけどね
イーブイかわいいですね


……そろそろ本編にツッコミいれましょう
まず橋の六連戦、サラッと途中で負けたら金減るぞってありますがこれは大変なことです
六人のかける賞金を整数比で考えるとします

1,1,2,4,8,16 (一戦目に負けで減る)
1,2,3,6,12,24 (二選目までに負けで減る)
1,2,4,8,16,32 (六戦目までに負けで減る)

最後が最初の32倍って、それでええんか?(コガネ弁)

これは「勝つまで倍プッシュ」っていう二分一の賭け事で最終的に絶対に勝てる必勝法を使っています
負け筋は軍資金切れだけなので資金力があれば必勝です
本編では結局全敗で勝つまで我慢できませんでしたが

見ての通りすぐ大金絡む上勝ち分は必ず最初に賭けた額で固定というデメリットもあります
この橋ロケット団が管理しているだけあって汚い手口ですね

イーブイは見ての通り抱っこ大好きです
レインのハートには魔力があるので
……じゃなくてめざパですね
昔の威力計算です
これあるので技の威力変更込みで書き直すのはめんどくさい
めざパで矛盾が発生しまくる気がするんです

◆威力計算の仕方
6つの能力にHABCDSの順で得点を設定します
1,2,4,8,16,32
これ全部で63点の加点方式
加点は個体値が4n+2、+3の部分
具体的にはUとVなどが対応していることから逆算できますね
最低点30最高点70にしたいので上の点数を40/63して30足せばいいわけですね

※一次関数のイメージです
Y=(40/63)X+30 
X:0~63 → Y:30~70

なお、得点設定が倍々なのは二進数で0から63全部対応が存在するからでしょう
この手順で理解しておくと理屈とかも込みで記憶にヒモがつくので思い出しやすいです

イーブイは右3つ対応なので1,2,4の7減点
係数かけたら約分で40/9つまり4ちょい
70から引いたらだいたい65ですね
加点方式といいつつ減点方式なのは計算しやすいので仕方ないです
本質的には同じことですので

威力についてはまぁね、主人公が迷い込んだ先が最新ゲームとは限らないですから、昔のゲームなら仕様そのままなこともあるでしょう
いや、あるんです(断言)
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