Another Trainer   作:りんごうさぎ

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8.好きな相手と好かれる相手

 

「砂漠に行く!」

「ゆっくりピクニックするの!」

 

 今日も俺とみゅーは喧嘩していた。内容は些細なこと。分かれ道でどっちに行くのか意見が割れてしまったのだ。

 

 いつもならどこにでもついていく、とおおらかなみゅーが、珍しく強気で自分の意見を曲げずにいる。

 

「化石との出会いは一期一会、今行かなかったら会えなくなるかもしれないんだ!」

「ヤダ! 砂嵐ヤダ!」

「お前天候ぐらい変えれるだろ?」

「……それでもヤッ!! ピクニックするの!!」

 

 どうも強引だな? とってつけたような理由を並べる割に意志は固い。言えない何かがあるのか?

 

「じゃあ別行動にする?」

「みゅっ!? みゅうぅぅ~~~」

 

 なんだこの表情? 怒ってる、ともまた少し違う。もっとドス黒い何かを感じる。最近のみゅーは本当にちょっとヘンだ。

 

 ——たすけて——

 

 これは? このテレパシーはまただっ! SOS!! やっぱりまだ助かってなかったんだ……。

 

 どこだ? どこにいる?

 

 ——たす……けて……——

 

 声が消えかかっている。本当にマズイ! お前はどこにいるんだ! なんとか助けてあげたい。俺の気持ちに応えてくれ!!

 

 ピキーーン!!

 

 俺の願いに呼応するかのように、脳裏に鮮明な景色が広がった。

 

 これは……流砂か!? その傍に1人の少女が立っている。今までのようなボンヤリしたイメージではない。ハッキリと、その姿形まで視ることができる! 距離が近いからなのか? それとも別の理由? イヤ、とにかく今は助けることだけ考えよう。

 

 女の子はもう体がボロボロで、立っているのもやっと、今にも倒れそうだ。赤くて、ブルーをさらに進化させたような特徴的な形の髪に白い帽子。ミニスカートで見覚えのある服装をしているこの女の子、もしかして、見たことあるぞ!

 

 コードネームはL……。間違いない、ラティアスだ! そしてこの人間の姿、まるでカノン!

 

 あの映画の子か!

 

 カノンを取り囲むのは青い衣装に身を包む集団。グラエナの群れに囲まれて……シャドーボールが発射寸前!? 全方位からの攻撃。これは躱せない! 危ないッ!!

 

 どうするんだ!? 意を決した女の子は……流砂に飛び込んだ!?

 

 ブツッ……

 

 こうしちゃいられねぇ!

 

「みゅー!!」

「……」

「止めてもムダだ! 俺は行く!」

「……そう」

「絶対にお前のことを迎えに来る! だからどれだけ時間がかかっても待っていてくれ!」

「………………うん」

 

 俺の熱意が通じたのか? 一瞬目を大きく見開いて、しばらく悩んでからみゅーは頷いてくれた。

 

「ありがと」

 

 ギュッと軽く抱きしめてからグレンに跨って砂嵐へと突っ込んだ。

 

「にほんばれ!」

 

 これで砂嵐もヘッチャラだ。ゴーゴーゴーグル? 知らない子ですね。

 

 しっかり休んで目はもうある程度は戻っている。探知範囲を広げよう!

 

 グラエナ Lv.31

 

 ビンゴ!! 見つけたぞ! 接近すれば青い服装の人影……あれはアクア団だな!! とりあえず1人見つかれば話は早い。

 

「オラッ!! Lの場所を言え!!」

「ひぃぃぃぃ!? 知らねぇよ!?」

「ウソつけ!! 今お前らの仲間が攻撃してるだろ!!」

「仲間が見つけてたら俺はこんなところで油売ってねぇよぉぉ」

 

 はぁ? いや、でも確かにそうだ。探知してみれば団員の反応はあちこちに点在している。しかもそれぞれが何かを探しているような動きをしながら徘徊している。

 

 まだ見つかっていない? 少なくともこいつはウソを言ってるオーラじゃない。ならこれはどういうことだ?

 

 そういえば、そもそもりゅうせいのたきの時もおかしかった。最初のSOSが来てから、俺がりゅうせいのたきへ到着するまで、どれだけの時間が経っている?

 

 もしかして、これは未来から届いたSOSだったのか!?

 

 こんなことに今更気づくことになるとは! だったら、俺はまだあの少女を助けることができるかもしれない!

 

「流砂だ」

「は?」

「流砂が発生しやすい危険地域はどこだ?」

「そ、そりゃ北の方だ」

「チッ! 俺が来た方じゃねぇか。ムダ足踏んだ!」

 

 そういやぁ、つめのカセキやねっこのカセキも流砂に沈んでとれなくなるんだったっけ。あのカセキがある辺りか。

 

 くっそ! 間に合え……!!

 

 全速力でグレンが翔ける。周りの景色が飛ぶように流れていき、そして……視えた! 探知範囲にアクア団のポケモン、そしてあれはやっぱりラティアスだ!

 

 目の前で、今まさにっ! さっきの光景が再現されているっ!

 

 あれはやっぱり未来の光景だった! そして俺が視た景色にこの先の未来は映っていなかった。だったらさぁ……こっからは俺が乱入してもいいってことだよな? この先がどうなるかはまだ何も決まってない。まさに女の子が身投げした瞬間、俺はアクア団に攻撃を仕掛けた!

 

「ぎんいろのかぜ!」

 

 アカサビがボールから出てきながら技を繰り出す。たった1度の攻撃で敵は総崩れだ。

 

「何者だ?!」

「敵だっ敵だっ!!」

「カノン!! 俺に掴まれ!!」

 

 アカサビに続いてユーレイも出した。敵のポケモンはアカサビとユーレイが対応。乗っていたグレンは遠くからは目を光らせて不意打ちや増援に備えている。俺は手ごろな岩にあなぬけのヒモを結び付けて、ロープを持った状態で流砂に飛び込んだ。

 

 流砂の一番底で砂の中に埋もれそうになっているカノンに手を伸ばした。

 

「つかめ!」

「……!」

 

 俺と目が合ったカノンは驚いた表情を見せたが、言うとおりに手を掴んでくれた。そのまま体を持ち上げて、ひとまず流砂からは脱出だ。

 

「ヒモの長さはバッチリ。あとは上に登るだけだ。俺の体にしっかり捕まってろよ」

「……」

 

 黙って頷くのを見て、両手でヒモを引いて脱出を開始した。頭上では激戦が繰り広げられているが俺はあいつらの強さを信じている。迷いなく自分のやるべきことに専念した。

 

「ガウッ!」

「よし! 追っ払ったな」

 

 制圧完了。全員逃げかえったようだ。いや、一人のびてるヤツがいるな。

 

「あれは?」

「ガウガッ」

 

 アカサビが殴ったのか。バレットパンチ……そりゃ気絶するわ。また全能力上がりまくってるもんな。ついでなので持ち物を物色。アクア団のIDカードみたいなものがあったので頂戴して、流砂に落ちないように岩の上に乗せておいてあげた。アクア団とはいえ生き埋めになるのは忍びない。

 

 これで本当に一件落着だな。

 

「さて、あとは君から色々聞かせてくれる?」

「……」

 

 この女の子と向き合う時がとうとう来たな。

 

「SOSを送ったのは君だろ? ……ってオイ! どうしたんだ?」

 

 カノンは俺にむかって倒れ掛かるようにして気絶してしまった。HPを確認すればすでにゼロ。もう限界だったようだ。

 

 仕方ない……聞きたいことはあとで聞くことにしよう。

 

 でも、この子どうやって運ぼうか? アナライズすれば、やはりラティアスであることは間違いなかった。ボールに入れてしまうのが手っ取り早いし、体力ゼロの今ならそれは容易。でも、今捕まえてしまうのは何か違う気がした。

 

 抱っこしていくわけにもいかないし、グレンの上は揺れるから体への負担が大きいかもしれない。

 

「ユーレイさん、この子運べる?」

「ゲン? ゲンガガ」

 

 自分で運べば、か。まぁ、拾ったのはたしかに俺だけどさ。

 

 ブルーやみゅーですら抱っことかそういうことは一度もしていないのに、見ず知らずの女の子にそんなことできないだろう。ましてや、今からみゅーのところに戻るわけだし。じゃあ起きるのを待つ? いや、ここは砂漠のど真ん中。場所が悪すぎる。

 

 しょうがない。みゅーには怒られるしかないか。

 

 諦めてカノンを背負い、グレン以外はボールに戻して俺は砂漠を歩き始めた。おんぶなら抱っこよりはマシだろう。だが、自分で背負ったことで思わぬご褒美があった。

 

「この気持ち……」

 

 深い感謝に、底なしの信頼。ぴったりくっついたことで感情が直に伝わってくる。この子は俺のことを無条件に信じてくれている。やっぱり、SOSを送ってきたのはこの子だったようだ。根掘り葉掘り聞こうと思っていたことも、もはやどうでもよくなってしまった。言葉で聞かずとも、この気持ちが全ての答えだ。

 

「ガウガウガー?」

「別に赤くなってない! それより天候! また戻ってるけど? “にほんばれ”お願い」

 

 いまさらおんぶしたぐらいで照れてねーわ! “にほんばれ”の指示を出してなんとか誤魔化した。

 

 ◆

 

「おそいよ……。レイン、あなた、何してるの?」

「ごめん。ちょっと自分で運んでたから遅くなって」

「はぁ?」

 

 うっわぁ……見たことがない怒り方をしている。これは話がこじれそうだ。

 

「それ、何?」

「今完全に体力が尽きている。おおめに見てくれ」

「みゅーにはそんなことしないよね?」

「……」

 

 嫉妬だ。嫉妬深いみゅーが出てきてしまった。なんとなくそんな気はしていた。だがこれは少々、いやかなり……俺の考えが甘かったかもしれない。

 

「本当に、待たせてごめんな」

 

 すぐにカノンを地面に寝かせて、みゅーを力の限り抱きしめた。みゅーは拒否しない。やっぱり寂しかったんだ。

 

「……」

 

 抱きしめて、愛情を注いでいる間、みゅーは何も言わない。今この状況で必要なのは誠意だ。愛のある誠意。たとえどれだけ巧妙に言い訳を並べても、そんなものみゅーは求めていない。ただひとつ、求めているのは愛情だ。

 

 そもそもみゅーはずっとおかしかった。これまでずっと、いや、ここ最近だけか。1つずつゆっくりと思い出せば、それは全部、ちょうど今と同じような反応だった。一見理不尽な怒り。だけどみゅーにとっては正当な思い。だとすれば、これまでの不自然な行動、まさか全部……!!

 

「ヤキモチだったのか」

「!!」

「お前……ずっと……ごめんな」

 

 みゅーがおかしくなったのは、いつもSOSが届いた時。そしてSOSを送っていたのはこの女の子。だからこの子に対して嫉妬していたのか。いや、そんな単純なことではないのかもしれない。みゅーは俺が助けに行くことをとにかく拒んだ。

 

 俺をこの子から遠ざけていた?

 

「置いていって」

 

 まるで俺の考えの正しさを証明するかのように、みゅーはカノンを置いていけという。やはりそうだったのか。

 

「……この子は悪の組織に狙われてる。置いていけない」

「でもその子はレインとは関係ない。その子の都合と、レインが置いていかないことに関係はないよね。置いていかないのは、その子が気に入ったからでしょ? みゅーを置いていくぐらい、その子が好きなんだ」

「……」

「ねぇ? その子とはどんな関係なの?」

「一方的にSOSを送られただけだ」

「ウソ。その子の名前……カノンっていうんでしょ?」

 

 タラリ……と冷や汗が体を伝う。みゅー、助けるところを見ていたのか。そういえば咄嗟にカノンと呼んでしまっていたかもしれない。カノンをおんぶしてここに着いた時、さっきはこの子を見て信じられないものを見せられたって反応をしていたのに、あの驚いた表情は演技だったのか?

 

 さて、どうやって説明する? カノンっていうのはこの子から聞いたわけじゃない。この子の名前でもない。やはりどう考えても、説明は……できない。

 

「それは、何も言えない」

「じゃ、レインはその子のこと、なんで好きなの?」

「えっ!?」

 

 そんなことない、と否定しようとしたが、ウソが通用しないみゅー相手に、そう言い切れる自信はなかった。さっき感じたもの、そしてこの子を守ってあげたい気持ち。それは好意以外の何物でもない。まさかこんなふうにみゅーから攻め立てられるとは思わず、何も言い返すことができない。

 

 返す言葉もない俺に、みゅーは冷酷に言葉を浴びせた。

 

「浮気者」

「……」

 

 耳元で侮蔑を込めた声で囁くみゅー。これから何を言われても、言い返してはダメだ。黙って嵐が過ぎ去るのを待つしかない。

 

「ふーん……。まぁいいの。当面、レインには再教育が必要ね」

「……」

「夜、みゅーのところに来なさい」

「……」

「じっくりお話しようね」

「一緒に寝るってこと?」

「いいから! 全部みゅーの言う通りにして。レインには、まだみゅーの気持ちがちゃんと伝わってない。だから教育が必要」

 

 なんだその教育って。しかも一緒に寝る気満々だ。最近は夜フラっといなくなることが多くて、一緒に寝ないようになってたのに。

 

 なぜ夜なのか、なぜ一緒に寝たいのか。みゅー、お前なんか良くないこと考えてない?

 

「……」

「そんなわけないか。いいよ、全部言う通りにする。よろしくね」

「ん……」

 

 みゅーは満足したみたいだ。とりあえず、許されたみたい。あとはピクニックでもして、ご機嫌取りしておこうか。

 

 ギュッとハグしてお礼の気持ちを伝えてから、カノンの治療に取り掛かった。

 

 かいふくのくすりでカノンの手当てをして、体力は回復させた。でも起きる気配はない。もう体は大丈夫のはずなので、カノンはグレンの上に乗せて運んでもらい、自分はみゅーちゃんをおんぶして周りの景色を楽しみながらたわいもない会話を楽しむことにした。

 

「レイン、ここ好きそうね」

「え? 別にそんなことないけど」

「ホウエン地方のこと。いつも楽しそうにしてる」

「あぁ~~たしかに。なんでって聞くのはもうやめてくれよ?」

「そんなにイジワルじゃないよ。どこが好きなの?」

「うーん……思い出」

「それ、どういうことか聞いてもいい?」

「イジワルしないんじゃなかったのかよ!」

「みゅふふ。どの街が好き?」

「街? ポケモンじゃなくて? 別に特にないけど、キンセツとか? これから行くところ」

「みゅ? ポケモンはみゅーが1番好きだから聞く必要ないでしょ?」

「……あ、当たり前じゃないか、みゅーちゃん。イヤだなぁ」

「すごく気分が悪くなったの」

「本当に! 心の底から! みゅーが1番です!」

 

 みゅーとの思い出を数えながら気持ちを込めて答えた。この子、少しも油断させてくれねぇな? 会話に交えて俺のこと試してたりするの? もしかして教育ってこういうこと?

 

「ガウ!?」

 

 なんだ? 突然グレンの鋭い鳴き声。ふと見上げれば空から女の子が! どっかで聞いたようなセリフだな?

 

「よっと。目が覚めた?」

「……!」

 

 降ってきたのはカノンだ。目が覚めたが起きた拍子にバランスを崩したのかもしれない。案外なんなくキャッチできた。年齢に対して体重は割と軽いな。小学生ぐらいの体重なんじゃないか? 

 

「どうした? 大丈夫?」

 

 よく見ると目じりに涙が溜まっている。泣いてたのか、この子? 尋ねても何もしゃべらないので心配しつつもじっと様子を伺うが、しばらくすると大胆にもいきなり俺に抱き着いてきた。あっ、今はダメだって!

 

「みゅーちゃん! これは違う! ちょっと落ち着いて」

「別に、落ち着いてるけど」

 

 よかった! みゅーは冷静だ。降ってきたのをキャッチしたのでお姫様抱っこの恰好から抱き着かれていて、今すごい体勢だ。みゅーを不必要に刺激しないようにまずはカノンを地面に降ろした。

 

 好かれてるのは嬉しいけど、今は本当にマズイ。

 

「もう大丈夫みたいだな。傷だらけだったから、悪いけどこっちで勝手に介抱したよ」

「!」

 

 俺の言葉を聞いて突然カノンはギュッと体を抱きしめて、自分の体をペタペタ触り始めた。そしてじっと俺の眼を覗き込んできた。もしかして、なんかあらぬ疑いをかけられてる?

 

「なんにも体とか触ったりしてないよ?」

 

 エスパーには本当のことを伝えるのは簡単だ。じっとこちらも見つめ返してあげると安心したのかフッと笑みを浮かべてくれた。

 

 でも、この子は人間じゃないはずなのに、なんでこんなこと気にするんだろう。だいたい、さっきは自分から俺に抱き着いてきたし、触られるのがイヤって感じではなさそうだけど。

 

「ねぇ、元気になったならさ、なんで悪いヤツに追われてたのか話をきかせてくれない?」

「……!」

 

 ようやく本題に入ろうとしたが、一瞬大きく目を見開いて、下を向いて目線を切られてしまった。なんだなんだ?

 

 それにさっきから全然しゃべってくれないけど、もしかしてしゃべれないのか?

 

「もしかして、しゃべれないの?」

「……」

 

 何も答えてくれない。首を振ったりとかもなし。どうしたものかね。答えたくないってことなのかもしれない。

 

「じゃあ、これだけ聞かせて? お前、一緒に来る?」

「……!!」

 

 一瞬こっちを見て嬉しそうな顔を見せてくれたが、すぐにバツが悪そうな、気乗りしないという表情に変わった。なんでだ?

 

「SOSを送ったのは君だろ? 悪いヤツらにも追われてる。1人じゃ次はどうなるか、わからないわけでもなかろうに。自分の正体を気にしてるなら大丈夫、こっちの女の子もお前と同じ、ポケモンの女の子だよ」

「……」

 

 あれ、ノーリアクション。というか俺の話、聞いてない? なんか掴みどころがないなぁ。なんにも話してくれないからわからないことだらけだし、どうしたものか。

 

「じゃあさ、ボールに入ってるっていうのはどう?」

「!!」

 

 ダメもとでゲットの誘いをすると、なぜかコクコクと勢いよく頷いてくれた。どういう基準なんだ? でも都合がいいからまぁいいか。許可を貰ったのでボールを投げた。

 

「じゃあ、これからよろしくね」

「……」

 

 黙ったままボールに入った。

 

 コロコロ……カチッ!

 

 やった……ラティアスゲットだ! 何気に念願のドラゴンタイプ。めちゃくちゃ嬉しい。しかも、ラティアスってハッサムとの相性が抜群なんだよな。夢が広がる!

 

 そんなことを考えていると突然ボールがカタカタ揺れ出した。そうだ、7匹目だから1匹戻さないといけないんだ!

 

 どうしよう、考えてなかった。でも口に出して言えばみゅーに怒られること間違いなし。極めて冷静に、予定通りという雰囲気を出しながら選択した。

 

「アカサビさん、ゴメン! 休んでて」

 

 みゅー、ラティアス、シスイまで確定。移動手段のことがあるからグレンも確定。イナズマは泣くだろうから戻せない。ならアカサビかユーレイ。“ぎんいろのかぜ”は捨てがたいが、過剰戦力だし、ユーレイは潜入に必要だから、しょうがない。

 

「……」

 

 みゅーはノーコメント。たぶん許されてる。

 

 ……まったく、なんで俺がトレーナーなのにポケモンの機嫌を伺わないといけないんだろうな。しかも仮にもチャンピオンなのに。

 

 まぁいいか。今は新しい仲間の加入を祝おう。ポンとラティアスをボールから出して、改めてその能力を確認してみた。

 

 ラティアス ♀ Lv30 おだやか ふゆう @???

 29-15-23-31-31-31

 

 つんよっ!! というか持ち物欄これ何!?

 

「変態」

「え……あっ!」

 

 能力チェックに夢中になっているとラティアスがもじもじしながらさっきのように自分の体をギュッと抱きしめていた。そうだ、ラティアスもエスパーだからこれ使ったらバレるのか! もう勝手に確認するのがクセになってしまっていてやめられない。

 

 みゅーは耳元で罵倒してくるし、ラティアスは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしてるし、絵面が本当によろしくない!

 

「……」

「ごめん。それより、何を……」

 

 持ってるの、と尋ねかけてギリギリで思いとどまった。そういえばマグマ団やアクア団はラティアスが持っている何かを探していた。そして絶大な力が手に入るとも。さらにいえばこの持ち物欄には見覚えがある。

 

 思い出すのはマスターズリーグ決勝戦。レッドが使っていたメガシンカ。それが悪の組織の狙いだとしたら? 辻褄は……あう。

 

 この子はそれを必死に守っていたんだ。それこそ流砂に身を投げるほどの覚悟で。だったら、これは俺が軽々しく口にするべきではない。

 

 気を取り直して、ニックネームでもつけようか。

 

「それじゃあ気を取り直して、ラティアスが仲間になった記念にニックネームをつけたいと思います!」

「……」

「つけるもなにも、その子はカノンでしょ」

「え……?」

「……」

 

 スッとラティアスの方へ視線を向けると神妙に頷いている。え? いいの? まさか適当に言ったカノンって名前合ってたの?

 

 なにさ、それじゃあホウエンのどっかにアルトマーレがあったりするのか?!

 

 めちゃくちゃ気になるが、肝心のカノンは堅く口を閉ざしている。まだ真相を知るのは先になりそうだな。

 

 メガシンカもアルトマーレも気になるが、楽しみはあとにとっておくとしようか。

 




やっとカノンちゃん登場……
映画もそうですが、対戦始めて最初に使ってたパーティがカバドリラティアスハッサムだったので思い入れが深い
初手厨パやんは禁句
ドリュウズが強すぎたので仕方ない()
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