まず最初は1次審査。俺の出番は思ったより最後の方だった。エントリー順だと思うが、けっこう他の参加者は早めにエントリーしてるもんなんだな。
俺はハッキリとコンディションが視てわかるので、審査の点数がかなり正確に行われていることもわかったし、この大会のレベルもよくわかった。
レベルは……高い。かっこよさだけに集中してコンディションはマックスに整えてきたので、1次審査で負けることは絶対にない。だが逆に、思っていたよりもリードすることができていなかった。
ゲームだと2次審査までなので、ノーマルランクとかだとコンディションを整えておくだけで2次審査は適当でも必ず勝てるほどの差が出ていた。だが、ここの大会は結構な猛者揃いのようだ。
「みんなー! ルチアと~」
「チルチル~」
「チルルだよー!」
うわ……カンストだ! 1次審査に出てきたルチアペアはコンディションがカンストしている。本気の勝負だな、これは。俺ってコーディネーターとしては駆け出しだってルチアはわかってるんだよな? いったい何がお前をそこまでさせるんだ? たった3日でかっこよさ部門に出るためだけにルチアも仕上げてきたのか? 大したプロ意識だ。やはりルチアが1番のライバルになるか。
1次審査でも脱落があるようで、ここで残り16名まで一気に数が減った。そんなに減るのか。参加者は100名以上いた気がしたが。
「さぁ、続いて2次審査! 最初の挑戦者は~?」
あれ? 2次審査は1人ずつなのか? 前のパフォーマンスをみているとわかってきた。なるほど、4回技を撃って一番ポイントを稼いだ方が勝ちなのか。たしかにこれなら運要素はなくなるか。だが、盛り上がりは5回ゲージが必要。4回だと何も起きようがないのでは?
考えているとルチアの番が回ってきた。
「チルル~? いっくよ~? まずはりゅうのまい!」
「チルー!」
「続けてりゅうのいぶき!」
「チルルルッ!!」
「おおっ! 見事なコンボが決まった! 会場は大盛り上がりだ!」
そうか、ドラゴン系統もかっこよさなのか。派手にポイントを稼いできたな。
「かげぶんしんからのこうそくいどう!」
「チッルル~!」
軽やかな技の連携は見るだけで惚れ惚れする。どれだけの鍛錬を積んできたのかは一目瞭然。ゲームでは同じ技を使えば必ず同じ得点だが、これを見せられると同じ点数が貰えるとは思えないな……。
しかも“かげぶんしん”と“こうそくいどう”の組み合わせはこっちも使う予定だったから、比較されるのはちょっとイタイかもしれない。
「「おおおおおおおお~~~!!!」」
「会場は大盛り上がりだ!」
なるほど! コンボを出すとゲージが2つ以上たまるのか! 会場がゲームのように大盛り上がりになっている。この仕様ならたしかに5つ貯められる。
ルチアのあとの選手も何人か大盛り上がりしていた。
「次は今回が初参加! レイン選手です!」
「よし! まずはかげぶんしんからのこうそくいどう!」
「ダーッス!」
よし! 出だしは順調だ。単純にレベルが参加者の中で1番高いので技の速さは1番いい。
「じゅうでんからかみなり!」
あれ? “じゅうでん”はかっこよさじゃないのか。しかも“かみなり”は威力高い割にアピールだと点数低めっぽいな。ちょっとマズイか?
「「おおおおおおおお~~~!!!」」
「会場は大盛り上がりだ!」
とりあえず大盛り上がりは引けたか。やはりコンボは2つ増えると見てよさそうだ。2回コンボを使えたのでなんとか足りたようだ。他の部門の技を使うとゲームだと盛り下がるんだが、ここだとそうはならないようだ。
「さぁ、決勝に残ったのは誰だ~?」
ルチア レイン メグミ カズラ
残ったのはポイントが多い順にこの4人。俺はポイント2位か。1次審査はトップのはずだから技のところでルチアに差をつけられたようだな。やはり魅せ方も加点要素になるということだろう。同じ技を使うだけじゃダメなんだろうな。
だが、バトルならこっちの独壇場。さて、始まる前に相手のポケモンのレベルだけは確認しておかないと。
チルタリス チルル オス Lv.50
ゴーリキー ゴルコ メス Lv.50
トドグラー タマ メス Lv.50
はぁ!? 全員50!? どういうことだ!?
偶然? いやそんなまさか……。もしやイナズマもっ……
サンダース イナズマ オス Lv.50
やりやがった!
「さぁ試合開始!!」
「チルル! かっこよさ全開! りゅうのまい」
「チルー!」
「おんがえし!」
「オーロラビーム!」
「チッ……こうそくいどう!」
フラットルールか! どんなカラクリでこうなった!? いや、バトルに集中しろ! 今考えられる最高の戦略をすぐに練り上げるんだ!
「チルタリスが舞う! 傷つきながらも力強く舞い続けるその姿は破滅的なのにドラマティック! 存分にかっこよさを引き出している!」
なるほど、技を出せば加点される。だから“りゅうのまい”でチルタリスが加点。だが攻撃を受けたことで攻撃を出した2体も加点、さらに被弾したチルルは減点されている。しかも“オーロラビーム”は盛り上がりの加点がなく“おんがえし”は加点されている。
このバトルロワイヤルでも盛り上がり要素はあるということだし、メグミはそれを無視してでも4倍弱点でルチアを倒しにきているということだ。
「準備オッケー! キラキラくるくる~~! チルル、じしんだよ~!」
「チッルゥゥーー!!」
ドシン!!
力強い振動がステージ全体を襲う!
「まもる」
「ゴーリ?!」
「グラグラッ!?」
2体は減点。しかも体力が大幅に減った。あのチルタリス、攻撃力も中々のものだ。しかもポイントを荒稼ぎしている。盛り上がりはないが、3体全員を同時に削りながら自分は3体分の加点を貰っている。
だんだんわかってきたぞ、このコンテストの戦い方が!
基本的にこれは攻撃技が偉いルールだ。自分は加点、相手は減点だからだ。しかも“まもる”でダメージがないイナズマまで減点されているのでダメージの大小にかかわらず技を受ければポイントのやり取りが発生するらしい。
そうなると技は撃ち合いになる。防御する意味がないからだ。だからルチアは一度能力を上げてから全体攻撃する戦略を取ったわけだ。最初の集中攻撃さえ凌げば、チルタリスが圧倒的に優位。
いわば積み技はハイリスクハイリターンな博打。ルチアはその賭けに勝ったのだ。
「れいとうパンチ!」
「こなゆき」
あのトドグラー、相当レベルは低いな。NNもタマだし、進化したばかり……レベル30台か。とはいえ今は謎のシステムでレベル50だし、4倍弱点は嫌うはず。
「めざめるパワー」
「3人から狙い撃ちか……躱してチルル!」
「チルー」
れいとうパンチ、こなゆき、その両方を躱した。だが素早さが上がったイナズマの攻撃は避けられない!
「ダーッス!」
「チルゥゥ!?」
「えっ!? チルル!?」
チルタリス戦闘不能!
「あぁぁーーっと!? チルルノックアウト!? ダークホースレイン選手のめざめるパワーが火を噴いたァァ!!」
「ラッキー」
「だったらあとは……」
ゴーリキーとトドグラーは示し合わせたかのように2人とも標的を俺に変えてきた。こいつら、ホント徹底してるな。本命を倒した後はじっくり新人いびりかい? ポケモンリーグの連中を思い出す。
「もう止まらねぇよ。10万ボルト!」
「グラッ!?」
「トドグラー戦闘不能!」
「だったら優勝はオレのものだ! 渾身のばくれつパンチ!」
「そんな大振りでは当たらない。でんげきは」
「躱せ!」
ニヤリ。そうくると思った。このルールでは攻撃は防御するのではなく躱すのが効果的。だが“でんげきは”は回避を許さない!
ジム戦じゃ地面タイプで相手したから見れなかったからな。テッセンお得意の“でんげきは”……俺が代わりに使わせてもらうぜ!
「ゴルッ!?」
「あっ!? ゴルコ!? 耐えろ!!」
「とどめの10万ボルト」
「ダダーッス!!」
勝負あったな。
「ゴーリキー戦闘不能! 優勝はレイン選手とサンダース!」
「ダダーーッス!!」
駆け寄ってきたイナズマを抱きしめて勝利をわかちあった。
思いのほか激戦になったが、存外コンテストも楽しめそうじゃないか。これからがより楽しみになってきたな。
リボンと賞金、貰うものは貰った。もうここに用はない。
さて、寄り道が長くなった。そろそろ次に向かうとしようか。
「ちょっと! 待ってよー!」
会場を後にするとルチアが追いかけてきた。
「また撮影?」
「あれ? この前の怒ってた? ごめんね~今は本当に回ってないから大丈夫だよ!」
キラッキラのスマイルで謝るルチアに毒気を抜かれた。まぁ、別にそんなに怒ってないけどさ。
「言われた通り、コンテストに出てみたわけだけど……案外トップアイドルっていうのもたいしたことなかったな? あっさりルチアに勝てちゃったね」
「……」
少し言い方がキツかったか? キラキラスマイルは影を潜めてぱったりと黙ってしまった。
「ぐうの音も出ない?」
「3日だよ」
「ん?」
「たった3日で、アナタは私に追いついた。これまで私が……ううん、私達コーディネーターがどれほど努力してきたかわかる?」
急に真剣な表情で語り始めるルチア。たしかに、ぽっと出のトレーナーに負けてしまっては思うところもあるだろう。
「それが勝負の世界でしょ? 努力しても才能がなければ決して報われない。ルチアだって、そういうコーディネーターを山ほど蹴落としてトップの地位に上り詰めたんだろ?」
「そうだよ。その通り……。ねぇ、レインはコンテストバトル、どう思った?」
試すような眼差しと物言いに少しだけたじろいでしまった。おふざけは許さないって顔だ。
「奥深い、と思ったよ。あの決勝戦、それぞれがどんなことを考えていたのか、なんとなく見えた気がしていた。だけど、まだ俺は全てを完璧に理解できているわけじゃないし、コンテストバトルが難しくなるのはこれからだということも理解している。だからやめないよ、コンテストバトル」
「……そっか。ふふっ……実はね、レインを見つけたとき、レインしか持っていない何かがあるみたいに感じて、それがなんなのか知りたくなったの! だからね、レイン……『アイドル VS. スター! 本気だよ☆ライブでショーブ!』次にコンテストにレインが出るとき! わたしとチルルも出るわ! 私達……今度こそ負けないよ。チルルとコンテストアイドル、ずっとずっとやってきたんだもん。だからこそ全力でレインに挑戦する! 私達ふたりが一緒にコンテストライブをやればファンの皆も喜んでくれるし、なにより……」
「なにより?」
「ううん! すっごく、すっごく! 楽しいと思う!! お互い遠慮はなしだよ。思いっきりいこうね!」
ルチアの表情、これはまるで……そう、長い間探していたものを見つけたような喜びが見え隠れしていた。
「俺と再戦できるのがそんなに嬉しい?」
「そうだね。それもあるよ? でも、ちょっと違うかも」
意味深な微笑みを浮かべるトップアイドルさん。キラキラが売りだろうに、こんな表情もできるのか。
「どういうことかお聞きしても?」
「オホン! じゃあスターのタマゴくんに宿題を出そうかな」
「宿題?」
おどけたもの言いとは裏腹にその眼差しは真剣そのもの。ルチアは何を考えているんだ?
「スターに必要なものってなんだと思う?」
「スターに……?」
「私は今日、その答えを見つけた気がする」
「……トップアイドルのルチアちゃんでも今日まで見つけられなかったんだ?」
「えへへ……私もまだまだだね。でも、私は君のおかげでみつけることができたの! だから今度は、私が君に教えてあげる番だね☆」
目の中に星が光ってそうな笑顔でキメゼリフ。アイドルが板についてるね。
「それはどうも、ご厚情痛み入る」
「それじゃあ、感謝ついでに1つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
軽い口調とは真逆に全身からは教えるまで絶対に逃がさないぞというオーラを発している。どこぞの優等生ジムリーダーみたいだな。
「決勝のこと?」
「ううん、違うの。1次審査をトップ通過したイナズマちゃんのコンディションのこと! あれ、どうやって3日であそこまで仕上げたのかな? 初めて見たときは全くコンディションは上がってなかったよね」
よく見てる。スカウトした相手だから気にかけてくれていたのかもしれない。
「そうだな……それじゃ、これあげるよ」
「これは……! すごい! なにこのレベル!? レイン、これどうやって作ったの?」
「そういえばいつのまにか呼び捨てだな……」
何気なく呟いただけだったが意外にもルチアは顔を真っ赤にして慌てふためいた。
「いいからそんなこと! レインだってルチアって呼んだでしょ! それよりどうやったの?! アナタ初デビューなのに手動で作る派?!」
「俺が説明するより、一筆書いてあげるからここで聞いてきなよ」
「これは……サン・トウカ? お花屋さん、だよね?」
知ってるんだな。まぁ上客になればラッキーだし、この様子なら必ず行くだろう。
「スーツとか貰ったのと、いい勝負ができたお礼。今日はありがと」
「あっ、そういうことなんだ。いいのいいの!」
「それじゃ、俺は先を急ぐから」
「ねぇ……」
背を向けた俺を呼び留める声に思わず足を止めてしまった。振り返れば急に神妙な表情で何かを言おうとするルチア。なんだこれ……どういう展開?
「なに?」
「もしもなんだけど……」
「……」
ゴクッ……。
「今、実はカメラ回ってるっていったら怒る?」
「怒るわ!!!」
「ウソだよ~~! ウソウソッ! レインくん顔真っ赤だよ~?」
こいつ……さっき自分が顔真っ赤になった仕返しかよ! 子供か! この小娘絶対次のコンテストでしばく!
「お前、次のコンテストでは覚えとけよ」
「楽しみにしてるよ! カメラは回ってないけど、さっき言ったことは私がずっと覚えてるからね! 勝ち逃げは許さないんだから、勝手に逃げちゃダメだよーー!」
そういって勝手に走り去っていった。アイドルってすごく自由な生き物なんだな。終始振り回されっぱなしだった気がする。
コンテストか……。こういうのも悪くないかもしれない。
「ねぇ、レイン」
「どうした?」
「みゅーも出るね、コンテスト」
「え゛っ!? みゅーが出るのか? 決勝はともかく、2次審査がキツくない?」
「みゅみゅ……レインを導くのはみゅーの役目なの」
どういう意味……?
ここ最近、女の子との会話が難しすぎる……。
新ルールで戦略を考えるのが楽しい!
難所も超え、書くための勘も戻ってきた感じがします
どんどん進めたい……!