Another Trainer   作:りんごうさぎ

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最初はカンナさん視点です


4.秘密の密会

「ブルーちゃん、すごく上手になったじゃない」

「カンナさん! えへへ……そうでしょ? いっつもシショーがしてたのを思い出してやってみたらだんだん上手くなってきたのよね」

 

 最初は壊滅的だったものね。

 

 バトルのトレーニングが終わり、ブルーちゃんはポケモン達を丁寧にブラッシングしている。本当に飲み込みが速くて毎日私は驚かされる。

 

 トレーニング終わりの何気ない会話。ブルーは本当にメキメキと実力を伸ばしている。まったく、末恐ろしい……と思う一方で、とても基本的なことができていなかったりする。その辺りはやっぱり年齢相応なのよね。

 

「それじゃ、ブルーちゃんにもご褒美をあげましょうか?」

「へっ? わたしに?」

「じつはおもしろいものを見つけたのよ」

 

 対戦相手になりえる相手はしっかりチェックして対戦のヒントを探している。当然、前年のチャンピオンであるレインのことはカントーからいなくなった今でもマークしている。

 

「これは……?」

 

——ミラクル☆ルチアの! コンテストスカウトー!——

 

——かっこいいーーーーーーー! すごいすごい! すっごく似合うよ!——

 

「どう? おもしろいでしょ? それ、ホウエン地方の人気番組よ」

「なななな……」

「?」

「なに鼻の下伸ばしてんのよぉぉぉぉ!!! このムッツリスケベがぁぁぁぁあああああ!!」

「ちょっと! テレビ壊れちゃうでしょ!!」

「アガガガガガガガァァァァァーーーーッッ!!! なによこれ! アイドル?! スカウト?! なんでシショーがバトル以外のことなんかするのよ!! 絶対ありえないっ!! これ、絶対なんか裏取引してるっ! 信じらんない! あるいはこの女にたらしこまれたか! まさか私がいないうちにこういう女の子相手によからぬことをしようとしてないでしょうね? いや、ありえるわ! 今まではずっと私がいたから、ここぞとばかりにぃぃぃ!! あぁぁ~~もうっっ! みゅーちゃんは何してるのよっ!!」

「……」

「あぁぁぁムカつくゥゥゥ!! 私顔洗ってくる!」

「そうね。頭を冷やしてくるといいわ」

 

 あらら……。これは見せない方が良かったわね。難しい年ごろね。男の子ならこれぐらいの反応別におかしくないでしょうに。

 

 でも、結果的にいい起爆剤にはなるかもしれないわね。あの子はまだまだ強くなる。私の方が置いていかれないようにしないとね。

 

 ……ルーキーの女の子相手に四天王がついていくだけで精一杯なんて、私も引き際なのかもしれないわね。

 

 

 ◆

 

 

「次みゅーちゃんに会ったら全部確かめてやるんだから! ことと次第によっちゃ、絶対許さない!」

 

 本当にあのバカシショー! 何考えてんのよ! 昔っからそう! 全然わかんない!

 

 こうなったら「お願い」を使って無理矢理結婚してやろうかしら。もうそれでもいい気がしてきた。

 

 ——あせっちゃダメだよ——

 

「くぅ……」

 

 思い出されるのは以前密会したときのみゅーちゃんの言葉。言われたのはホウエンに旅立ってすぐの頃だっけ? 焦っちゃダメか……そんなことはわかってるけど、それを実行できるかどうかは別。みゅーちゃんは色々と凄すぎる。いつからあんなに大人になったのよ! 最初に会った時はもっとこう、子どもらしさがあったのに!

 

 はぁ……やっぱり地道に攻略するしかないのか。なんで私ばっかりこんなに大変なのよ。

 

 バシャバシャ……

 

 モヤモヤした思いを振り払うようにつめたい水で頭を冷やす。

 

「はぁ……ホント最悪。こっちの気もしらないで……」

 

 プシュッ!!

 

 洗面台でため息をつきながらセッケンを出した。イライラに任せて強く押したので勢いよく出てくる。

 

 はぁぁ~~。イイ香りねぇ……。

 

 ちょっと気持ちも落ち着いてきたかも。出てきたセッケンをそのまま顔に塗り広げていく。

 

 イイ匂いのヌルヌルが……私の顔いっぱいに広がっていく……。

 

 あーあ、みゅーちゃんだけいっつも一緒でズルいなぁ。私だってもっと……。

 

 …………

 

 段々と顔が火照ってきてしまった。

 

 気恥ずかしくなってバシャバシャと水で洗い落とすけど、やっぱりその感触が名残惜しくて……。

 

「……」

 

 プシュ……プシュ……

 

「……」

 

 プシュッ……プシュッ……

 

「……」

 

 プシュプシュプシュプシュッ! プシュプシュプシュプシュッ!

 

「ブルーッッ!! きたよーーっっ!!」

「うひゃああぁぁぁあああ!?!?!?」

 

 この声はみゅーちゃん!? いつからいたの!?

 

 いきなり真後ろから呼ばれてびっくりして振り返ると、やっぱりみゅーちゃんがいた。ジト目でこっちを見つめている。

 

「声かけてよ!」

「ずっと呼んでたの。聞こえてなかったのね」

「ぐっ……!」

 

 周りが視えてなかったのは事実。みゅーちゃん相手に下手なウソはNG……どうする?

 

「セッケン出し過ぎだよ。何してるの?」

「あっ……アハハハ!! それより何よあれ! 見たわよ! なんかシショーがアイドルにたぶらかされてたでしょ! もう絶対に許さないんだから!」

 

 いきなり聞かれた! そりゃツッコまれるわよね。とにかく無理矢理怒りの感情を掘り起こしながら話題転換した。

 

 やはり私は天才だったようで、なんなく危険な話題から話を逸らすことができた。

 

「大丈夫。アレは完全に脈ナシだから。レインの方が別に興味なさそう」

「本当?」

「絶対」

「なぁ~~んだ。だったらいいんだけど。じゃあ前に言ってたポケモンの子は?」

 

 シショーの女の子事情は全部筒抜け。よからぬことをしてるのは全部知っている。

 

「今はボールに閉じこもってるから大丈夫」

「ボールに?……それ、苦痛には感じないの? 無理矢理じゃない? ちょっとそういうのはかわいそうじゃない?」

「でも、その子ブルーよりかわいいから取られるよ?」

「うげっ!! ぐぬぬ……でも、ポケモンの子にはちょっと同情しちゃうのよね。人間だったら絶対許さないけど。その子、上手くボールの外にも出させてあげることはできないの? みゅーちゃんならできるでしょ」

「みゅ。じゃ、みゅーの管理下でたまに外に出すようにするね」

 

 管理下って……なんだかんだみゅーちゃんってちょっと怖いところもあるのよね。まぁ、ともあれひとまず私の失態はごまかせたし、みゅーちゃんの近況も聞いておこう。

 

「みゅーちゃんの方はどうなのよ? シショーになんかしてもらった?」

「……」

 

 いきなりの無言。で、この表情ってことは……みゅーちゃん、あなたまさかっ!!

 

「あぁぁーーっっ!! ちょっと!! 何してもらったのよ!? 顔まっかっかじゃない! そんなにイイことされたの!? ズルイズルイズルイ! 絶対に何されたのか吐いてもらうからね!」

「別に……ギュッってされただけ」

「ハイ、ウソ!! 絶対なんか言われたでしょ!! ハグだけでそんなに赤くならないでしょーがっ!!」

「それは……すごく気持ちも込めてくれるから……」

 

 また赤くなった! 何よ何よっ! めちゃめちゃ幸せそうじゃないのよ!!

 

「気持ちって、どんな気持ちなのよ!」

「みゅ……どんなに急いでいても、みゅーのことしっかり見て、優しく、ギュッて……」

「ゴクッ……」

「すごく……愛情込めて……」

「あいっ……! そ、それだけなの?」

「あと、愛してるって言われた」

「はぁぁぁあああああああ!?!?!?!?」

 

 なにそれ!? デッレデレじゃないの!? 私には絶対そういうのないクセに!! なによ、なによ!! 私以外にはそういうことしちゃうわけ?!

 

「ぶっころす……!」

 

 決めた! 「お願い」使ってぶっ殺す! 本人もぶっ殺していいって言ってたわよね? だからいいわよねぇ?!

 

「ブルー、焦っちゃダメ。今はとにかく強くなることに集中するの。負けちゃったら元も子もないよ」

「そりゃそうだけど……」

「今のレインになら勝てるよ」

「本当? でも確かに……この感じだと相当寄り道してるもんね。よ~~し! 絶対ボコボコにして参りましたっていわせてやるんだから!」

「みゅみゅ。その息ね」

 

 このイライラを全て特訓にぶつける! あのボケナス絶対にぶっ倒してやる!!

 

「それはそうと……みゅーちゃん! どうやってシショーにそんな羨ましいこと言わせたのよ! 教えてよ!」

「んみゅ? レインのお願いを聞いてあげただけだよ? エスパーの力もちょっと使ったけど」

「あっ! それズルーイ! しかもそうやって簡単にシショーがボディタッチできるのって、絶対ポケモンだからハードルが甘くなってるだけでしょ!! みゅーちゃん、ちょっとポケモンの特権使い過ぎなんじゃない?」

「でも、ブルーだって人間だからできること、たくさんあるでしょ? みゅーはできないんだよ」

「それは、まぁそうかもしれないけど」

「ブルーがもし、本気でポケモンになりたいんだったら、なってみる?」

「えっ!? なれるの!?」

「今はできないけど、みゅーと入れ替わることだったらできるかも」

「……なりたい! 私だってみゅーちゃんみたいにされてみたい!! なにそれめっちゃ面白そう!!」

「じゃ、頑張って覚えてみようかな」

「なになに!? なんかそういうポケモンの技があったりするの?」

「みゅふふ。じゃあ今日はここまでね。みゅーはお使いもあるから」

「そっか。わかったわ。その技、覚えるの楽しみにしてるから! じゃあまたね」

「みゅみゅ」

 

 テレポートしてみゅーちゃんはいなくなった。よーっし! 私も頑張ろう!

 

「カンナさーん!」

「あら! すごくいい顔してるわ。ゴキゲンは治ったみたいね」

「まぁね! それじゃ今から特訓の続き……いっぱいしましょう!」

「あなたね……今何時だと思ってるの? ヤル気があるのはいいけど、休息も大事だって言ったでしょ?」

「えへへ……ですよね。じゃあ今日の反省をしましょ! いつもみたいに!」

「そうね。じゃあまずは最初の対面からね」

 

 さぁ、燃えてきた! 待ってなさいよシショー! 絶対追い越してやるからね!

 




閑話なので短め
不憫なブルーと幸福なみゅーちゃんを見て楽しむ回です!
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