「やっぱりブルーはブルーだったな」
ジム戦の後マジに焼肉をおごることになり、この前の分までたらふく食べられた。あの時のデザートの件は申し訳なかったからいいんだけどね。ただこの展開はもうこれ以上しなくていい。
「ほら、早く食べないと焦げちゃうわよ。はい」
「……」
珍しく気が利く、と思ったら渡されたのはピーマン。おそらく、いや間違いなくこいつのキライな食べ物だろう。ほんとにブルーはぶれない。
「ふーん。お前これキライなのか」
「な、何言ってるの? わたしは単に焦げそうだったから」
「肉だけ食べると。明日の昼はピーマンを大量に作っておくか」
「ごめんなさいもうしません許してシショー!」
冷ややかな視線を送るのは勘弁して、さっきのバトルの話をした。ブルーはあの勝ち方で満足しているようだった。
「たしかに運は良かったけど、それも実力の内でしょ?」
「お前に限ってはあんまり否定しにくいが……もっとだ。まだ考えが甘い、もっと考えろ。特に、ピジョンの戦い方は考え直した方がいい。これから先、強くなるには格上と戦い続ける必要がある。そうなればマチスとの勝負の最初みたいなゴリ押しは通用しない。相手が苦手で、自分の得意なところで戦うこと。そのために、知らない相手に対してはまず分析をして様子を見る。うかつに近づいて反撃されるなんて下の下だ」
「ぐっ、でもあんまり他の技もないのよ。そんなにガミガミ言わなくてもいいじゃないっ」
「“すなかけ”とか何かあるだろ何か。あと“とんぼがえり”とか。しゃーない、なんなら今度技の習得を手伝ってやるよ」
「ホントォ!? ありがとシショー!」
結局言いたいことが多くて、クチバ巡りは次の日になった。あと、先にダメ出しをするとブルーは拗ねる。人にものを教わるのはあんまり好きじゃなさそうだ。ならなんで弟子入りなんかしたんだと言いたくなるが、もうなってしまったものは仕方ない。ブルーがちゃんと話を聞くように話し方を工夫するしかないな。
◆
「おい、起きろブルー。朝だぞ、今日はクチバを見て回るんじゃないのか」
翌朝、ドンドン、とドアを叩くが起きてこない。中からは「昨日の疲れ」「あと5分」というような生返事ばかり。溜め息をつき、俺は諦めて戻ることにした。
「仕方ないな。せっかくいいものが手に入るところを教えようと思ったが俺がもらってブルーはまた今度にし……」
「いますぐ出発よ!」
バタバタと音がしたらものの数秒でブルーが出てきた。こいつの変わり身の速さは天下一品だな。
回るところは意外とあって、まずはポケセンの近くの釣り人の家。さすがにさっきの“いいもの”が釣り竿だと言おうとするとブルーは明らかに不満顔になったので俺がもらい、あとは地主の冷やかしをしたり、サント・アンヌ号を見たりしてその後本命の大好きクラブの集会所に向かった。
ここでは自慢好きの会長がいて、その話を最後まで聞き続けられたら自転車の“ひきかえけん”がもらえる。現実となったこの世界ではどれほどの長さになるか見当もつかないが、なんとか耐えきってみせる。ブルーにもよく言い聞かせてから覚悟を決めて中へ入るが……。
「はっ!? しまった、うかつにも意識が飛んでいた。今どうなって……」
「でね、シショーってホントにすごくて、育てるのもすごくて、昨日ジム戦した時にわたしのポケモンちゃんまでものすごく強くなってて……」
「なるほど、ではポケモンを強くする秘訣のようなものがあるのかもしれませんな。それにこのサンダース、色艶も申し分ない。きっと毎日きれいにけづくろいされているのでしょうな」
「すっごーい、わかるんだ、そういうことまで。シショーはブラッシングしてあげるのが大好きだって言ってたわ」
「それはすばらしい。私も自慢のポケモンちゃんの手入れには人一倍拘りがありましてな……」
この後さらに数時間続いた。俺はゆっくりと意識を手放した。
「おっと、もうこんな時間ですか。時間が経つのは早いものですな。あなたとはまたゆっくりとお話ししたいものだ。最後にこれを友好の証として差し上げましょう。遠い地方からの贈り物で、温泉好きのばあさまからもらったものです。珍しいポケモンですが、どうもこのポケモンは育てるのが難しく、まだきちんと育てられたトレーナーはほとんどいないので引き取り手に困っているのです。ですが、あなたなら上手く育てられるやもしれません。いかがですかな?」
「うわぁ、すっごい。わたしポケモンのタマゴなんて初めて見たわ! かわいい~! よし、任せてよ会長さん! このブルーちゃんが大切に育ててすごいポケモンにして見せるわ。本当にありがとう。旅が一段落したらこの子の顔見せにまた来るわね」
「是非に。ではお達者で」
「ん……終わったか。じゃ、お邪魔しました」
ギリギリ最後に意識が戻りなんとかバレずに済んだ。ブルーはえらく嬉しそうだからおそらく“ひきかえけん”はもらえたのだろう。これでここからは移動が楽に……。
「ブルー、ひきかえけんはもらえたようだな。それがあれば次に行くハナダで自転車がもらえるはずだ」
「えっ、何言ってるの? あー、やっぱりシショー寝てたでしょ。んもうっ、せっかく面白い話が聞けたのに。それに、もらったのはタマゴよ、タ・マ・ゴ! 珍しいポケモンが生まれるって言ってたわよ。わたし今から楽しみだわ~」
タマゴ? そんなイベントなかったはずだが。俺の知っているものとは別物になりつつあるのかも。自転車がないのは面倒だが、これはこれでいいものをもらったな。
「で、それは何のポケモンのタマゴなんだ?」
「あー寝てたことスルーした! ったく、もういいわ。なんでも、とっても育てるのが難しい遠くの地方のポケモンだって。あ、あと温泉好きのばあさまからもらったって言ってたわ」
わかる? と首をコテンと傾けながら聞いてくるブルーにドキリとしながらも、その内容に心当たりを見つけた。
「ホウエンに温泉で有名なフエンタウンというところがある。そこでタマゴをくれるばあさまが確かいたはず。そして育てるのが難しいという言葉から察するに、そのポケモンはソーナノだな。間違いない」
「え、すごっ、わかったの! これだけのヒントで!」
ものすごくキラキラした目でこっちを見てくる。今回に限ってはゲームの知識ありきでカンニングに近いから、すこし心苦しいな。前もこんなことがあった気がする。
「……育てにくい、といったのはそのポケモンが攻撃技を覚えないからだろう。レベル上げはかなり大変と思った方がいい。その代わり、ちゃんと育てて使いこなせば恐ろしい強さを発揮するが」
「なにそれ、そんなポケモンいるの?! なんかほんとにとんでもないポケモンをもらっちゃったみたいね。フフフ、燃えてきたわー!」
ずいぶん気合い入れているが、実際他のトレーナーはどうやってソーナノを育てているのだろうか。敵を倒すたびに体力を必ず失うから一気にレベルを上げづらい。格上とも戦いにくいし相性のいい相手、昨日乗ったディグダみたいなのを大量に倒すしかレベル上げの方法が思いつかないな。まあ、真っ当な手段に限れば、だが。
「ねぇ、さっき次はハナダに行くって言ってたけどもう行くの?」
「その前にもう1つやっておくことがある。これだ」
「そ、それはつりざお……!」
◆
やってきたのはクチバの港。もちろん釣りだ。ボロでもコイキングは釣れるんだ。個体値さえ良ければすぐに進化させて即戦力にできる。しかもどういうわけか人が全くおらず、のんびりと釣りを楽しめた。
「シショー、さっきからコイキングしか釣れてないじゃない。もうそれしかいないんじゃないの?」
「何言ってるんだ? ハナからこの竿ではコイキングしか釣れないぞ」
「はあっ!? じゃなんでずっと釣り続けてるのよ!」
「そりゃ、いいコイキングを待ってるんだ。たまに普通の魚も釣れるし」
「え、ええ……。大きさ比べってこと? そんなに釣りにハマってたなんて」
ドバーン!
なんか勘違いされているから何をしているか説明しようとしたとき、突然目の前の海が爆発した。巨大な水柱が上がって、それはそのまま俺達のいるところへ落ちてきた!
「ヤバイ! ブルーッ」
ブルーを抱えて横に飛びのき、回転を殺さずすぐに起き上がりボールを投げた。こんなのは自然に起こるものじゃない。直感的に敵の襲来を予感して、すぐに戦闘態勢をとった。
出し惜しみはなし。3体全て出した。まずは様子見だ。うかつに技を使えばその隙を狙い撃ちされるかもしれない。
ったく、いきなり戦闘開始とか、最初のポッポのときといい、やっぱりこのゲームバグってんだろ!
「え、えっ、どうなってるの?」
「敵襲だ、ボケっとするな! 戦え!」
未知の敵との遭遇による余裕のなさが言葉の荒々しさに表れてしまったが、おかげでブルーも気を引き締めて立ち上がった。
ドドドドドドッ!
しかし休む間もなく第二陣が来た。右、左と躱していくが、やはりこれは作為がある。俺達を狙い打っている。避けながら周りを視て回るがそれらしいポケモンの影はない。おそらく水タイプのポケモンが“たつまき”みたいな技を使っているんだろうが、俺の探知の外からとなるとかなりの使い手だ。
「きゃああ!」
ブルーが狙われた! ここからでは遠い。
「しんそく」
その一言で俺の言いたいことを察してくれたグレンはすぐにブルーを口でつかんで助けてくれた。相性は悪いがやっぱり出しておいてよかった。
「どうしよう、わたし!」
「大丈夫、心配するな。なんてことない。俺がなんとかしてやるから」
もちろん状況は厳しいが、足が竦んだら逃げることもできない。気持ちだけでも負けないためにブルーには笑って安心させた。
「うん」
「10まんボルト、海に」
「ダーッス!」
海水は電気をよく通す。周りのポケモンにも被害が及ぶがこれで……
ドオオン!
気絶したポケモンが何匹か浮かんでくるが攻撃はやまない。届かないか。
必死で攻撃を躱しながらなんとか状況を打開する手を考えるがブルーのフォローで手一杯で何もできない。これじゃジリ貧だ。
「チッ! 止むを得ない、ここを離れるぞ。戻れイナズマ、アカサビ」
後ろへ走り出すが水柱はそこに回り込むように突き刺さり、うまく内陸へ逃げられない。
「ひゃあっ、当たるっ!」
「くっ、もどれ!」
とっさにグレンがブルーを俺の方に投げて寄越し、動けないグレンはボールに入れてなんとか躱した。まさに緊急回避。もう次はない。
「ブルー、マジでヤバイ。こうなるともうこっちから相手を倒すのは無理だ。とにかく逃げるぞ。走れ」
水柱を避けながら内陸へ向かう。理不尽な暴力に対して何も反撃できないことが心をかき乱す。傷を負うことになっても一矢報いてやりたい衝動に最初は駆られた。だが、ここでブルーに危険な真似はさせられない。ブルーはもうただのお荷物じゃない。俺にとって大切な弟子なんだから、俺が守ってやらないといけない。俺はあいつの命も預かっているんだ……!
「シショー、ごめん、シショーだけ逃げて、わたしもう逃げきれない」
「何言ってるんだ、バカ! 諦めるな!」
「違うの、わたしさっき足をくじいて」
「くうっ、万事休すか……!」
足を止めてブルーの方に向きなおり、引きずってでも生きて連れ帰る覚悟で戻る。そのとき不意に何かの声が聞こえた。
――おいで、もっと遊んで――
「なんだ今の……声?」
それに一瞬気を取られたのが命取りだった。足を止めて思わず周りを見渡してしまい、ブルーに近づくのが一瞬遅れた。その隙に今までで一際大きな水柱がブルーに襲い掛かろうと迫った。
「こんなの、うそ、あたったら、死……」
「ブルーッッ!!」
遠い! ここからではブルーをつかんで避ける暇はない!
どうする、どうするっ!?
いや、そんなの考えるまでもない。選択肢は1つだ!
「死んでも助ける!」
迷わず死に向かって飛び込んだ。ブルーに覆いかぶさるように手をついて、ありったけの力を腕に込めた。
ドバアアァァンン!!!
「シショー!?」
「がはァァーーッ!!!」
体がバラバラになったのかと思うほどの衝撃。あっけなく潰れそうになるが、目の前のブルーの顔を見て思いとどまった。このまま潰れたら、こいつも一緒に押し潰されてしまう。それだけはさせない。
「ぐううおおっっ、っっらああああっっ!」
意味のない叫びを上げてひたすら耐えた。永遠にも思える時間。焼けつくような感覚。それがだんだんマヒして、もう何も、考え、られなく、なって……。
「おわった……ぐうぅ」
手足がガクガクと震えるが、なんとか耐えきった。これじゃもうさっきみたいに躱したりはできない。体を支えるだけで限界だ。
「シショー、ごめん、わたしのせいで、ごめん、こんなつもりじゃ」
ハッとして見るとブルーは罪悪感で押し潰されそうになって泣きじゃくっていた。だが、今はダメだ。なんとかこいつだけでも逃がさないと。
「バカ、こんなの……俺は平気だ。さっさと逃げるぞ」
本当は苦しくて弱音を吐きそうなほど辛い。それでも無理やり体を奮い立たせて立ち上がり、ブルーの手を引いて逃げようとした。だが敵は待ってくれない。
――逃げないで――
またあの声! 幻覚じゃない、なんなんだ!?
それと同時にまた水柱も襲い掛かってくる。避けられない! 腕をクロスさせてなんとか耐えようと覚悟を決めたとき、ボールからアカサビが出てきて水を切って“とんぼがえり”して相殺し、さらに交代したグレンが俺達を乗せてすぐにその場を離れた。
――あっ……――
相手も不意を突かれたらしい。もう追ってはこない。
――次は逃がさない――
混濁した意識でそんな声が聞こえた気がした。
◆
なんとか逃げ切った! さすがアカサビさんにグレンちゃん、目にもとまらぬ早業ね。
「ありがとグレンちゃん、もう大丈夫ね。シショー、ごめんね、無理させて。今度からはがんばるから、でもこれで……ねぇ、シショー、もしかしてやっぱり怒っているの?」
うんともすんとも言わない。こんなこと今までになかった。でも怒っているというより、様子がおかしい。
恐る恐る体を揺すってみても死んだように動かない。どれだけゆすっても、どれだけ語りかけても、全く反応がない。これ、まさか、イヤよ、冗談はやめてよ! ねぇ!
「すぐ止まって、動かないの! どうしようっ!」
自分でも何を言っているかわからないほどパニックになっていた。シショーはどれだけ揺すってもぐったりしたまま動かない。視界がぐにゃりと歪んだ。また涙が止まらない。後悔で頭が一杯になり、苦しくてどうにかなりそうだった。
シショーに触れている手が震えた。わたしは取り返しのつかないことをしてしまった。わたしがドジで足手まといだから……平気だって言ったのはウソだったんだ。能天気に真に受けて1人で安心しちゃってた。シショーにだけ無理させてたんだ。もっとわたしがしっかりしていれば……わたしの、わたしのせいでシショー……こんなことに……。
「ガウッ!」
ッッ! これは……空気の流れ……息がある!
「息……してるっ。生きてるっ! 急げば間に合う、すぐにポケセンに!」
グレンちゃんは素早く行動してくれた。わたしはポケセンに着いたら一心不乱でジョーイさんのところに駆け込んだ。後悔だけはしたくなくて、とにかく必死だった。その後はもう覚えてない。気づいたらシショーがベッドに寝ていて、ずっとそのそばで目覚めるのを待っていた。
◆
――ねえ、あそぼうよ――
誰だ、誰かに呼ばれている。
――はやくおいでよ、まってるから――
この声、前にも聞いた。お前は誰だ。なんで俺に語りかけてくるんだ。
――私のハウスにおいで――
おい、話を聞け。
――おきて――
え?
「ハッ、ここは……?」
「あっ、起きたのっ! よかった……もう、死んじゃうかと思ったでしょ! ばかっ、すぐに起きて返事してよ、ばかばかばかばか!」
ポカポカと俺を叩いてばかばかとつぶやき続けるブルー。どうなっているんだ? ここはどこ? 病院、ベッドの上。最後に、俺は……。
―死んでも助ける―
そうだ、決死の覚悟でブルーを助けようとして……。自分でもなんであんな無茶をしたのかわからない。とにかくブルーだけは失うわけにはいかないという強い意志に突き動かされていた。
「そうか、どうやら死なずに済んだみたいだな。あの後グレン達に助けられたのか」
「もう、何言ってるの! ホントに死ぬとこだったのよ! もう死んでも助けるなんて言わないで。ずっと一緒に……そばにいてほしいから」
そうか、ブルーにはだいぶ心配かけたみたいだな。本気で死んだと思ったのか、目は赤く腫れあがっていて、どれだけ心配してくれたのかすぐにわかった。
「ごめんブルー、心配させたな。ずっとここで見ていてくれたんだろ、ありがとう。もう大丈夫だから、お前も休め。疲れてるし、足もケガしてただろ?」
乱れた髪を撫でて、涙の跡を拭うように手を当てながら、ブルーに休むように言った。するとなぜかブルーは顔を曇らせた。……もしかして怪我が思ったよりひどいのか?
「ううぅ、ばか。なんでシショーが謝るのよ、足引っ張ったのはわたしなのに」
「……そうか」
責任を感じてたのか。ずっとここにいたのもそれか。変なところで気を遣ってくれる。
「あの、うぅ……んー、その……ごめんなさいっ! もう、わたしドジったりしないから。わたしもシショーに負けないくらい強くなるから、だから、許してっ。それと、もう絶対にあんなのは、何にも返事しないなんて、もうイヤだから、どこにもいかないで、絶対に死なないで」
返事がないって何のことだ? わからないけど今日は本当に大変だったし、優しくしてやろう。いつも以上に。
「おいで、ブルー」
「え、うん……んんっ!」
顔を引き寄せて左胸に抱き寄せて、頭を撫でてやった。
「ほら、伝わるだろう、心臓の鼓動が。ちゃんと生きてるから、もう昔のことにくよくよするな。俺は絶対に約束を守るまでどこにも行かないし、お前を置いて行ったりもしない。それに、お前のこと……キライじゃないし、キライになったりもしないから。だからもう謝るな」
最後の言葉にブルーがビクッと反応した。やっぱり、足引っ張って愛想尽かされたんじゃないかとでも思っていたんだな。前は散々拒絶していたから心配するのはわかるが、俺は最初に言ったはずなんだがな。
「お前は絶対一人前にする。それまで俺は死なないし、途中で止めたりもしないって、前も言っただろ」
「でも、やっぱりその約束があるからいてくれるだけで、本当はわたしなんか邪魔だって心の中で思ってるんじゃない?」
「別にそんなこと」
「でもっ! わたしはいっつもわがままだし、シショーみたいになんでもできないし、弱いし、すごくないし、今日も、ドジで、バカで、シショーに頼りっぱなしで」
内心では自覚があったんだな。明るく振る舞う人ほど、けっこう悩みを抱え込んだりするのかな。本当にブルーを見ているとなんだかなぁ。堪えきれず、俺は大声で笑っていた。
「ちょっと! わ、笑わないでよ。ひっどーい! わたしのこと本当にキライなの!?」
「バカだなぁ、ほんとうに……」
「うう、そうよ、どうせわたしは」
「……俺達は」
「ん、えっ?」
こいつと俺は実は似た者同士なんだ。だから、ブルーがバカなら、きっと俺も同じなんだろう。ここに来る前の頃の自分の姿が、今のブルーとダブって見える。呆けたままのブルーに、もう一度頭を撫でながらゆっくりと語って聞かせた。
「わかる、わかるさ、その気持ち。頑張って俺に釣り合うようになりたいのに、全然届かなくて、そしてその前に自分のせいで俺が死んじゃいそうで、もう心がぐちゃぐちゃになってたんだろ」
「う、うん」
「もういいんだよ、お前はお前だ。無理するな。俺は前向きに頑張ろうとしているブルーを見てるのが好きだから。ずっとそのままでいい」
「うん」
「俺はお前のシショーだから、今は俺に頼っていい。そうだな……今はこうやってまだ甘えていてもいいよ。怒ることや叱ることはあっても、お前の味方でいることは絶対に変わらない。だから安心してろよ。いいな?」
「うん、うんうん。ごめんね、ごめんね」
ぎゅっとしがみついて顔をうずめているブルーから安心した気持ちが伝わってきたような気がした。撫でてやるほどはっきり伝わってくる。忘れそうになるがブルーはまだ13。つまりまだまだ子供、甘え足りない年頃なのだろう。この前は甘えるな、なんて厳しく言い過ぎたのかもしれない。
「ブルー、そういうときはごめんじゃない。謝ってもらっても嬉しくない」
「え、じゃあ……ありがとう?」
「チッチッ、そこは惚れ直した、ぐらいの方がいいな」
「バッ! 何言ってるの! 言ったでしょ!! わたし、そんなんじゃないからっ! 最初から惚れたりしてないっ! いきなり変なこと言わないでよバカシショー!」
「そうそう、お前はそれぐらい元気な方が似合ってる。惚れてなかったのは残念だけど」
「えっ」
ひょいとベッドから起きて、そのまま外に出た。自分で言っといてなんだが、あの場に留まるのはさすがに無理だ。いくらなんでも元気づけのためとはいえ、少し調子に乗っていらんことまで言い過ぎた。お互いなんとも思ってないとはいえ、やっぱり多少は怒るもんなんだな。
その後、日を空けないですぐに動き回っている俺を見つけたジョーイから悲鳴を上げられ、安静にしてろとこってり怒られた。バツが悪くてなんとなく部屋を出たが、聞けばここに来たとき俺は重傷で、しかもブルーは泣いて俺を助けてほしいと必死だったらしい。
「ブルーさんの思いを無駄にする気なの? ちゃんと安静にして、一刻も早く回復するのが一番の恩返しなのよ」
「すいません」
戻ってゆっくり休んだ甲斐もあってか、次の日には全快。ジョーイさんは呆れ顔。まるで“じこさいせい”を使ったみたいだと言われた。
あの……これでも一応人間なんですが。
だが治ったなら好都合。一応しばらくは安静にしろという言葉は無視して次の町へ向かうことにした。“じこさいせい”は冗談にしても驚きの生命力だな。自分の体に感謝。
「ほんとに無茶だけはしないで、気をつけてね。例のみずポケモンに関しては、こちらでも調査と注意喚起をしておくわ」
「よろしくお願いします」
「ありがとうジョーイさん」
結局あのポケモンについては何もわからないまま。それにあの声……ブルーには何も聞こえなかったらしい。これも関係あるのか? 今は考えてもわからない。でも……。
「ん? どうかしたのシショー?」
「いや、お前もかわいいところがあるんだなって思い返してさ。あんなしおらしいブルーが見られるなら、たまには死にかけてみるのも悪くないな」
「なっ! ほんっとに、もう……ヵ」
「え? なんか言った?」
「バカーーーー!」
キーーンと耳鳴りがした。大声を出した後ブルーはさっさと先に行ってしまった。残ったジョーイと顔を合わせると、ものすごく責めるような眼差しを浴びた。この人目線だと俺完全にダメな人間に見えてそうだな。
でも……こうして平和に旅ができるだけでも幸せなのかもな。あの吹き溜まりから抜け出して、ようやく手に入れた自由なのだから。
主人公の昔のことに触れていましたが、掘り下げて書く予定はないです、やっても面白くないので
設定的には最初のブルーと似たような時期があった、ぐらいの認識で十分です
人間をポケモンセンターに運んじゃっていますが、ブルーは慌ててたので間違えたんでしょう
人間の病院がどうなってるか考えるのがめんどかったという説もありますが
けがの度合いはジョーイさんの反応から察して下さい
1日で回復は異常です、丈夫とかそういう次元じゃない
案外主人公は本当にポケモンかもしれませんよ
シショーポケモン説浮上!