Another Trainer   作:りんごうさぎ

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ブルーの冒険編
1.始まりは いつも必ず あの人達


「うう、おなかすいたー」

 

 シショーと別行動を始めて1日、恥ずかしさと悲しさを紛らわすために何も考えずに飛び出したせいで手持ちの食料が尽きていた。それに最後、ちゃんとシショーの顔も見ずに来ちゃったし、わたしのバカ、なんでこんなことに……。

 

 1人で落ち込んでいるとボールから出てきたフシギソウが心配そうにわたしをうかがいながら慰めてくれた。

 

「わたしってバカよねー。はぁー」

「ソウソウ」

「ありがとね、心配しなくても大丈夫だから。でもその鳴き声はわたしがバカだって肯定しているみたいに聞こえるんだけど、ちゃんと励ましてるのよね?」

「フ、シッシ!」

 

 問いかけにはニッコリと笑顔で返された。悪意がないのはわかるけど、その声は嘲笑にしか聞こえないんだけど。気にし過ぎかしら。でもおかげでなんか気分が暗くなっていたのもバカらしく思えてきちゃった。気持ちは前向きに行こう。

 

 とはいえ、現実問題として今わたし達の食料事情は厳しい。何とかしないとね。一応そんな中でもポケモンにはちゃんとご飯をあげている。わたしのせいでこの子達にまでひもじい思いをさせたくないから。わたしは……だ、ダイエットも兼ねているから。うう、自分で言っていてむなしいわね。

 

「ピジョッ!」

「えっ! 町があったの! よし、急いで案内して! これで何か食べるものを買えるわ!」

 

 先行していたピーちゃんが合図している。まだわたしの運も尽きてないみたい。助かったわ。とにかく何か食べたい一心で底力を出して駆け足で町に向かった。自分でもどこに残っていたのかびっくりするくらい力が出た。

 

 ◆

 

 町に着いて腹ごしらえをした後、改めて旅に必要なものを買うためにショップへ向かった。1人旅の時は当たり前だったけど、シショーといるようになってからは、いつのまにかわたしは全部シショーに任せっきりになってしまっていたことにいまさらながら気づかされた。こういうところも考えて1人で行かされたのかな。それに……。

 

「お金がなーい!」

「フシィ……」

 

 フシギソウとがっくりと肩を落としているといきなり知らない人に声をかけられた。

 

「君、大丈夫かい? 見たところかなりイイ感じだな。良かったら僕がいいことを教えてあげようか?」

 

 げ、エリートトレーナーじゃない!? わたしエリートは苦手なのよね。それになんか危ない空気が漂い始めた気がする。わたしまだ13なのだけど……。考え過ぎよね?

 

「あ、いや、大丈夫ですから」

「そうは見えないけど……。腕に覚えがあるなら、もうすぐ始まる大会に出たらどうだい? 受け付けはまだやってるし」

「大会? この町って大会とかしてるんだ。いつもやっているものなの?」

 

 危ない話ではないみたい。イイっていうのはバトルの方だったのね。わたしをまじまじと見ていたから勘違いしちゃった。良かった……。うん、わたしの考え過ぎだったわね!

 

「ここではいろんな大会があっていつも盛り上がっているよ。最近はすごいポケモンが出てくる虫取り大会とかもあったね。これから参加するならポケモンバトルの勝ち抜きバトル大会があるはずだ」

「へー。すごいポケモンかー。ちょっと気になる!」

「残念だけど、もうそのポケモンはいないよ。ものすごく強いストライクなんだけど、この前フラッと来た旅のトレーナーが捕まえちゃってね。僕も狙っていたんだが、全然歯が立たなくてね」

 

 へえ、ストライクか。シショーのアカサビさんとどっちが強いのかな。惜しかったな、おつきみやまで足踏みしてなければ……いや、そのおかげでシショーと会えたわけだし言っても仕方ないわね。

 

「そのトレーナーってどんな人だったんですか?」

 

 何気なく興味本位で聞いたら驚く答えが返ってきた。

 

「それが、最初見たときは初心者同然でね。虫取り大会なのにポケモンの捕まえ方も知らなくて、僕が優しくレクチャーしてあげたんだが、ポケモンの方は恐ろしく強くてね。たしか、ウインディに乗っていたな。いやー、あの2匹を持ってたら、もう向かうところ敵なしだろうなぁ。まぁ、半分はいいレクチャーをした僕のおかげでもあるけどね」

 

 なんだろう、その組み合わせはものすごく覚えがあるような。でも捕獲の仕方を知らないなんておかしいわよね。あの人はなんでも知っているのに。まさかわざと知らないフリをしたとか? いや、見ず知らずの人にすることじゃないし、そもそも本人と決まったわけじゃないわ。

 

「ねぇ、その人って、丁度このくらいの時期にここにきたんじゃない? で、こんな感じの人じゃない?」

「あ、そうだねそんな感じだね。でもなんで君がそんなことわかったんだい?」

「……あ、わたし、その大会の受付に行かないと。場所教えてもらえませんか?」

「ん、いいだろう。僕が優しくレクチャーしてあげよう」

 

 レクチャー好きの人から教えてもらって大会には無事に参加できた。この大会はアマチュアオンリーみたいで、ランク6以上のトレーナー、つまり‘壁’を超えたバッジ5個以上のエリートは参加できないらしい。だからあの人は自分が出られないから教えてくれたのね。わたしは一応バッジ3つでランクは4だから参加OK。敵も弱いから簡単に優勝できたわ。

 

 賞金もゲットして、しばらくは困らないわね。でもこれからはお金の工面も大変だなぁ。それにシショーのことも気になる。どう考えてもここでアカサビさんを捕まえたみたいだし。ま、どうせ本人に会えるしその時に聞いてみればいいか。そうと決まれば、さっさとタマムシまで行っちゃいましょうか。フーちゃんもピーちゃんもバトル後だけど余裕みたいだし。

 

 ◆

 

 軽い足取りでどんどん進み、出会った野生のポケモンもばっさばっさと倒して、タマムシまで後少しのところへ来た。ピーちゃんのおかげで道に迷ったりしないし、順調そのものね。これじゃ1ヶ月どころか1週間かからないわね。

 

 そんなことを考えて気を抜いていたせいか、わたしは重大なことに気づかずにいた。

 

 ブロロロロロッッ

 

「あれ? これ何の音?」

「フシーッ!」

 

 ものすごく警戒している。まさか敵? ……あ、これバイクの音! ってことはまたぁ!?

 

 地下通路の再来。最初の試練の予感がヒシヒシとする。わたしの予想外れて!

 

「おう、嬢ちゃん、痛い目見たくなかったら通行料を置いていきな」

「やっぱりまたあんた達なのっ!?」

 

 カントーって暴走族多過ぎでしょ! おかしいわよこんなの! 他の地方もこんなもんなの? 絶対違うわよね?

 

「へへ、お好みなら、少しおとなの教育をしてやってもいいんだぜ?」

「チビだが、顔は悪くないしな。おっと、お前みたいなガキんちょにはまだわからないか。今日は身包み剥がすぐらいで勘弁しといてやるよ」

「「ガハハハッ!」」

 

 ブチッ! 

 

 今の言葉でわたしの中の何かがキレた。こんな不潔な連中は、何人だろうと叩きのめす! 毎日シショーにしごかれて、とんでもなく強いジムリーダーを倒してきたのに、今更こんなチンピラにビビるもんですか!

 

「どうしても通さないなら……力ずくで押し通るまでよ! あんたら全員まとめて倒してやるから覚悟しなさい!」

「ヒューー、威勢のいいガキだ。俺達にバトルを挑むとはなぁ。だったら遠慮なく泣くまでいじめてやる! まずは俺からだ。出てこいワンリキー!」

「いくわよピーちゃん」

 

 敵は5人。ワンリキーはレベル20、いや25ぐらいってところね。わたしのピーちゃんは29、フーちゃんは30ある。十分勝てる。連戦になるからいかに消耗しないか、だけね。

 

「からてチョップ!」

「避けてつばさでうつ! 反撃には気をつけるのよ!」

「リキッ!」

「チッ、もたついてんじゃねえ、けたぐりだ!」

「バカね、飛んでいる敵に蹴りだなんて。態勢崩したところにつばさでうつ! これでトドメよ」

 

 あっさり倒せたわね。やっぱりわたし達は確実に強くなっている。こんな奴ら、ものの数じゃない。この後も順調に敵を減らしていったけど、負けそうになると次から次へと応援が来て数が減らない。これじゃキリがないわ。

 

「くそっ! こっちは総出で向かってるのになんで倒せねぇんだ。こんなのまるであんときみたいじゃねーかっ」

「ムダだってわかったならいい加減諦めたら?」

「へっ、こっちにもメンツがあるんだよ! ここで終われっか!」

 

 そこに拘るならそもそも女の子相手に総がかりなのは何とも思わないのかしら。そこにはプライドとかないの?

 

 いや、そんなことよりこっちもヤバイ。2体とも頑張ってくれているけど、さすがにこの数はキツイ。フーちゃんの“やどりぎのタネ”で上手く回復しながら凌いでいるってだけで、もう気力が限界に近い。こんな時シショーならどうするのだろう。もう、なんでこんな時にいないのよ!

 

 ―困ったら必ず開けろ。絶対に助けてやる―

 

 そうだ! あの袋があった! シショーのことを考えて別れ際の言葉を思い出した。今まさにその時よっ! 「必ず開けろ」って言っていたし、もうこれに頼るしかない。一か八かよ。お願いシショー……助けて!

 

 ……急いで紙を広げて読むとこう書かれていた。

 

『まず、今暴走族に襲われているならすぐにこう言え』

 

 これだっ!

 

「あんた達、まだこんなところで走り回って街に迷惑かけてるの! そんなことしてたらまた橋を締め出されるわよ」

「あ? いきなり何言ってやがる。いや、そもそもなんでお前が橋のことを知ってやがる? どこでそのことを嗅ぎ付けた?」

 

 知らないわよ、こっちが聞きたいんだから! ただここにそう言えって書いてあるだけなのよ! でもなんか効果があるみたいだし、もう最後までやってやるわ!

 

「あんた達、昔言ったことを忘れたわけじゃないでしょうね。こんなことしていたら、シショー……レインに言っちゃうわよっ!」

「げえっ!? なんでその名前を! お前何モンだっ!?」

「え、わたし? わたしは……」

 

 手紙の先を見ると続きがある。わたしのことを聞かれるだろうからこう言え……これね。何気に相手のこの反応まで想定済みなのね。

 

「レインに言われてあなた達の様子を見に来たのよ。なのによりによってそのわたしを襲うなんて、あなた達舐めたことしてくれるわね」

「そんなのはデタラメだ! レインさんにそんな知り合いがいるわけねえし、わざわざ様子を見に来させるなんて考えられねぇ。第一証拠がねぇ!」

「証拠はわたしのポケモンの強さを見ればわかるわ! なんなら一度バトルしてみる?」

「はぁ? もうしてるじゃねーかっ」

 

 やっば! 安心して書いてあること何も考えずに言っちゃった!

 

「あ、間違えた。でも、わたしの強さはわかったでしょ。強さこそが正義よ」

「くっ!」

「それに、レインから証明として伝言があるわ。えーっと、俺と番人との勝負、1ユンゲラー2ゴローン3ゴースト4ポリゴン5イワーク6ゴーリキーだって」

 

 すると暴走族がざわざわ騒ぎ始めた。今の伝言の意味はわからないし、なんでこいつらがシショーのこと知っているのかわからないけど、とりあえずなんとかなりそうね。でも、怖いぐらいに書いてある通りに進むわね。全部書いてある通りに言っただけなのにここまで上手くいくなんてびっくり。さすがに既に交戦しているとは思ってなかったみたいだけど、わたし自身もこんな無謀なことした自分に驚いているぐらいだし、それ以外はこの場を見て書いたかのような文章だわ。というか、暴走族に襲われることもわかっていたのね。

 

「す、すまなかった。頼む、今回のことだけはどうか見逃してくれ。さすがにレインさんに本気で怒られたら俺達タダじゃ済まねーんだよ、頼む!」

 

 ホントに謝ってきた。なんか怖いわね。さっきまで身包み剥がすとか言っていたのに。シショーのこと「さん」付けだったし、なんかあるのかしら。

 

「いいわよ。その代わり、これからあなた達のボスのところに案内してくれない? 話があるの。それで今回のことは水に流して黙っておいてあげる」

 

「おお! ありがてぇ。ゴウゾウさんに話があるってことは、やっぱり何か用があったのか。いいですぜ、レインさんには恩がある。その人の使いの言うことならなんでもしますぜ」

 

 本当に話通っちゃった。わたしまだ先の分まで読んでないけどホントにそんな人のところに1人で行って大丈夫なの? というかシショー、この人達に何したのよ!

 

 案内される道中色々考えたけど何にもわかんない。なんかこの人達シショーを恐れているけど、恩もあって、それで協力関係にある? なんでそうなったのか、何をしたらこんなことになるかがさっぱりね。あ! 今のうちに手紙を読んどけばいいじゃない!

 

「着きました。この方がリーダーのゴウゾウさんです」

 

 とりあえず一通りは目を通せた。ギリセーフ。顔を上げればいかにもボスって感じの暴走族がいる。気を引き締めておいた方が良さそうね。

 

「よう、あんたがレインの寄越したっていうトレーナーか。まさかこんなちっこい女が来るとは、レインの奴何考えてんだ? 様子を見に来たとか言ってたそうだが、そりゃ本当なのか?」

「わ、わたしはレインの弟子なの。トレーナー修行の面倒を見てもらっていて、ここにレインの仲間のゴウゾウって人がいるから困ったことがあればここに来いって言われてて。様子を見に来たっていうのは、まぁついでよ」

「だろうなぁ。あいつはそんなことする奴じゃない。要はただの方便だな。だが、お前がレインの弟子になったってのは信じられねぇな。あいつが赤の他人様に無償でそんな面倒なことするとは思えねぇ」

 

 その通りね。実際そう言って最初は何度も断られたし。やっぱりこの人もレインのこと良く知っているようね。

 

「……でしょうね。わたしも生半可な努力で弟子になったわけじゃないわ。それより、実は伝言もあるの。先に言っておくわ」

「いいぜ、聞いてやるよ」

 

「おほん!

『ゴウゾウ、まだ部下の躾がなってないみたいだな。暴走族がまた好き勝手していたぞ。それにどうせまだタマムシで暴れて問題起こしてばかりいるんだろ。番人にも愛想尽かされたら終わりだ、やめろとは言わんがせめて慎重に、バレないようにやれ。あと、最近タマムシはどんな感じだ? そっちでは今面白いことになっているんじゃないか? 街の奴らが慌てふためく様が目に浮かぶ。お前らも巻き込まれないようにしとけよ。地下通路の奴らとかも含め、ちゃんと手綱をにぎって団結しないと、面倒なことになったらどうなっても知らないぞ。それと、例の情報は役に立った。おかげでいいポケモンを捕まえられた。今後会うこともないだろうからな。今礼を言っとく』

 ……以上です」

 

 読んでいて思い出した。全体的にわたしにはわかりにくくぼかして書いているけど、地下通路のことはわかる。それにゴウゾウって名前はあの時も言っていた。この人がリーダーだからその名前を出していたんだ。とすると、この人かなりの人数の元締めなのかもしれないわね。

 

「なぁ、今の伝言はその紙に書いてあるのか?」

「え、ええ。そうよ」

 

 なんか怒っているみたいな感じね。でもお礼とかもあったのにどういうこと? 注意されたのが気に食わないのかしら。さすがにわたしにとばっちりがくるのは勘弁してほしいわ。

 

「ありえねぇ、ありえねぇよ。おい、お前、レインはタマムシのこと調べたりしてたか?」

 

 首を振って否定すると、「だよな」といってぽつぽつとしゃべり始めた。

 

「レインはこの町のことは毛嫌いしている。自分から関わろうとはしないはず。なのになんで俺達のことを見透かしてるみたいにそんなことがわかるんだ? あいつがエスパーだったって言われても驚かねぇ、いや驚けねぇぞ、これじゃあよ。おい、その紙、ちょっとこっちに渡せ。もう1回内容を見させろ」

 

 これには驚いた。なんで手紙をひったくろうとするのよ、どうして!?

 

「え!? ウソでしょ!? いや、でもなんでよ、まだ」

「いいから貸してくれ」

 

 本当に無理やりひったくられた。でも、こんなのって……。

 

「あ? まだ続きがあんじゃねーか。……な、なんだこりゃ!?」

「ゴウゾウさん、どうしたんですかい」

「は、ははは、はーはっはっは! 笑っちまうぜ、あいつには全部お見通しってことかよ! もう間違いねぇ。こんなふざけたことできるのもやるのもあいつだけだ」

 

『ここからはブルーは読むな。

 勝手にこれを読んでいるだろうゴウゾウへ

 ここからが本当の伝言だ。そいつは訳あって俺が面倒見ることになった弟子だ。リーグに出られるようになるまでは面倒見てやるつもりだったんだが、そこのバッジが必要になってな。俺はそこに行きたくないからそいつだけ行かせた。悪いがそこにいる間そいつが困っていたらお前が力を貸してやってくれ。逆に、やばいヤマに首突っ込んでいるなら、そいつと協力して事に当たれ。ああ、そいつの実力が気になるなら、一度バトルしてみるといい。相性はいいから、運が良ければお前でも勝てるかもな。そいつは俺と違って優しいから、適度に手加減もしてくれるだろう。あと、もしも、ないとは思うが、そいつに危害を加えるようなことをお前らの誰かがしたら、あるいはそいつが無事にヤマブキに来なければ、お前らもタダでは済まないと思えよ。一応差し入れにわざマシンを持たせてあるからブルーから受け取ってくれ』

 

 怖っ。何もかも掌の上のようで、シショーに操られているのではないかってバカな考えすら浮かんでしまう。ひったくることまで計算済みなんて、ポッポ肌立っちゃうわね。わたしは無言で袋の中にあったわざマシン(チラッと見たら貴重で高価な“れいとうビーム”のわざマシン)をゴウゾウに渡した。

 

「……」

「俺の言いたいこと、わかるか?」

「まさか、俺とバトルしろ、とか?」

「そのまさかだ。おそらくレインは俺がこうなるのを見越してあんなこと書いてるんだろうが、わかっていても俺のプライドがそれ以外の選択を許さねぇ。ここまでコケにされた以上、この場でお前をバトルで倒す。当然、受けるよな?」

「わたし、今100人ぐらいと戦ったばっかりなんだけど」

「ああ? 手加減してくれるんだろ?」

 

 あーあ、これはプッツンキレてる。断るのは無理ね。やるしかないか。この人を倒さないと先には進めないみたいね。

 

「わかったわ。受けて立つ。わたしだって勝ちを譲る気はないから」

「いい度胸だ。俺はさっきお前が倒した雑魚とは文字通りレベルが違う。いい気になっていると痛い目見るぜ?」

 

 どれぐらいの実力か、まずは見極めないと。ボールを構えて、同時に振りかぶった。

 

「お願い、フーちゃん」

「出て来い、パルシェン!」

 

 比較的HPに余裕のあるフーちゃんを先に出したけど裏目に出たわね。そういや相性いいからとか書いてあったし、“れいとうビーム”のわざマシンでこおりタイプがいるって気づくべきだった。しかもけっこうレベルは高そう。厳しいわね。

 

「先制のつららばりぃ!」

「すぐ右へ!」

「次はオーロラビーム!」

 

 一撃も受けるわけにはいかないから避けるばかりで余裕がない。このままじゃすぐにつかまる。どうすれば……交換しても意味ないし……。

 

「ちょこまかとめんどくせぇ! 逃げるしかできねぇのか?! ああ? だったら接近してシェルブレードをぶちかませ!」

 

 しめた! みずタイプの技なら受けても耐えられる!

 

「やった! 受け止めてギガドレイン!」

 

 効果は抜群、これでHPは五分にできるはず。後は隙を見て“エナジーボール”を当てれば……遠距離でいいから無理しなくて済むし、2体目も頑張れるわね。

 

「パルゥゥ……」

「ウソだろ、おい! パルシェン、しっかりしろっ!」

「へ? あれ、もう倒れるの? 次の手も考えていたのに」

「てめぇ……! 言ってくれるじゃねぇか。俺のパルシェンなんか相手にならねぇってことか。久々に燃えてきたぜ」

「あっ、いや、つい、びっくりして、思わず。そんなつもりで言ったんじゃないの、ごめんなさい」

「優しい、というのは残酷なまでに素直、の間違いだろ、レイン。ここまで強いとはさすがに思ってなかったぜ。やるじゃねぇか。だが、今度はスピード勝負だ。行くぜ、ドードリオ!」

「出た、ゴウゾウさんのドードリオ! 並みの相手ならワンパンっすよ」

 

 取り巻きのあの反応。こいつが切り札ってわけね。とすると2体で終わりかしら。発言からすると、速さが自慢、しかも攻撃力もあるようね。だったらフーちゃんよりは、同じタイプのピーちゃんがいいわね。

 

「ひこうタイプか。暴走族では意外なタイプね。ならこっちも交代よ。頼んだわよ、ピーちゃん」

「ピジョンだと? 真っ向からねじ伏せようってわけか。おもしれぇ。先手必勝、最速のみだれづき!」

「甘いわ。引きつけて空中からつばめがえし!」

 

 ドードリオはひこう持ちとはいえ陸上戦しかできない。空中に躱せば避けられない速さじゃないと思ったけど、その通りね。ギリギリで躱し、技を出した直後で動けない敵の後ろを取って技が決まった。うちの子だって速さはもちろん、技のキレにだって自信があるのよ。

 

「ウソだろ?! 初見でこれを見切ったのか! バカな!」

「もたもたしていて大丈夫なの? でんこうせっか!」

「つつく!」

「回り込んで!」

 

 くちばしを突き出して目線は前に寄っている。先制技なら後ろを取るのは難しくない。クリーンヒット。続けて“つばめがえし”を同じように放ち、そのまま勝利した。結局一人一殺で締めたわね。

 

「ドードリオ! くっ、戦闘不能だ。悔しいがお前の勝ちだ。お前もどうやらレインに劣らない程の腕っぷしみたいだな。よく育てられている。俺達の中じゃ強さこそが正義……認めざるを得ないな」

「あ、ありがとう。ゴウゾウも強かったわ。1番苦戦しちゃった」

 

 勝負の後は握手で和解。わたしのこと認めてくれたみたいだけど、シショーはこの人達の性格を踏まえて、わたしが舐められないようにバトルさせたのかも。シショーすごい。でも、この展開をわかっていたということは、シショーも同じことをしたってことなのかしら?

 

「あの、もしかしてシショーともバトルしたの?」

「ああ。俺の下っ端がレインのアジトを襲撃して、それに怒ったあいつがこいつら全員倒して俺のとこまで1人で乗り込んできてな。そんときサシの真剣勝負をしたぜ。もちろん俺が負けたが」

 

 この数を全部倒したの?! 頭おかしいでしょ! どんだけいたと思ってんのよ!

 

「シショーワイルド過ぎ! やっぱり昔は突っ張っていたのね」

「しかも、あの時は捕まえたばかりのウインディ1匹で俺に勝ったからな。信じられねぇ強さだぜ」

 

 そうするとその時はわたしのポケモンよりレベルが低くて、しかも1体だけなのに大立ち回りした可能性もあるの? どんだけー。ちょっとわたしもカッコよく暴走族をなぎ倒してボスにも勝って、シショーみたいな感じになったと思ったのに。

 

「ああ、わたしってやっぱりまだまだね。よし、じゃあシショーを超えるにはこのままジムを攻略するしかないわね。サクッといっちゃうわ!」

 

 メラメラと闘志を燃やしているとゴウゾウから呆れた声を出された。

 

「まだやるつもりか。さすがに休ませてやった方がいいんじゃないか? 俺が言うことじゃないかもしれないが。それと、ジムは今行っても無駄足だ。休業しているからな」

「え、ええええ!! 困るわよぉ! わたし、1ヶ月で合流しないといけないのに! これじゃバッジが手に入らない! どうしろってのよ!」

 

 これは深刻だ。期限に遅れたらシショーに迷惑かけるだろうし、離れる時間が増えること自体耐え難い。

 

「大丈夫だ。発作みたいなもんだし、何日か置きに再開しているからな。ジムが開いたら俺らが知らせてやるよ」

「それは助かるわ。ホントに頼もしいわね。じゃあ先に町巡りをしようっと。どこかいい場所って知ってたりする?」

 

 問題なさそうだし今のうちに町を見て回っとかないとね。シショーは重要なところは時間を取って必ず漏らさずに回っておくようにしていたし。

 

「まぁ、ベタなところだとデパートとゲームコーナーか。ただし、あのゲームコーナーはなかなか勝てないし、息抜きでも軽い気持ちで行くのはやめておけ。一応例外的に勝ちまくる人間もいるにはいるがな」

 

 そう言って手元のわざマシンを見ているけど、まさか……それ景品なの?

 

「わかったわ。じゃあ行ってくる。色々ありがとうね」

 

 暴走族だけどゴウゾウは割といい人みたいね。同じ暴走族でも色々いるもんなのね。

 




お助け袋さっそく活躍
レインはタマムシの内情を実際に見ている上ロケット団のアジトがあることを知っているので色々予測できていて、過去にも少しエリカ戦でのセリフなどで触れています
タマムシは実際にロケット団の悪事でめちゃくちゃピンチになっています
ゲームではシルフ乗っ取り以外たいして悪いことしていない印象なので、ロケット団は悪の秘密結社らしくもう少し暴れてもらいます
具体的には秘密結社なら密猟、ポケモンの生体実験、ヤバイ怪電波の実験とかをしていて、かつボスはかなり強いというイメージで書いてます(偏見)

ジムの休業は察し
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