Another Trainer   作:りんごうさぎ

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2.聞き込み 潜入 大儲け

 きのみをいくつかストックしてから路地裏に戻ってきた。誰かいないか探してみるが全然人がおらず時間だけが徒に過ぎていく。さすがに表通りにいくのは暴挙だしここで見つからないと厳しい。

 

 ずっと歩き回っているうちにいつの間にか太陽が真上まできていた。

 

「チッ。誰か1人ぐらいうろついていても良さそうなもんだがな。いや、人が寄り付かないからこそ今までここに居れたのか。ん? そういやこの体はこの世界では突然降って湧いたものなのか? 思い返せば町の奴らは俺を知っていたようだった。ならこの体は元々こっちにあってそこに俺が……」

 

 なんか今、かなり触れてはいけないことに気づいてしまった気がする。実際はどうなのかわからないし、ひとまず考えるのは保留だな。考え込んでうつむいていた顔を上げてみれば、いつの間にいたのか3人の子供が眼前に立っていた。

 

「あっ、てめぇ! 昨日絞ってやったドロボー野郎じゃねぇか。へっへ、意外と元気そうだな。俺の前にノコノコそっちから出てくるとは、まだ殴られ足りねぇようだなぁ?」

 

 なんだこいつ? これまたみょうちくりんな3人組だな。

 

 酔っ払いみたいに顔が赤いクリムガン野郎にチビとノッポ。今の俺と同じ中坊ぐらいの子供だが、因縁つけているというよりは本当に知っているらしい雰囲気だな。何モンだ?

 

 こいつらが誰であるにせよ話を聞けそうな奴に会えたのはラッキーだ。取り巻き含め相手は3人。ちと数は多いが他に当てがない以上こいつらから聞き出すか。当然力ずくでな。もう昨日の傷は完全ではないにせよ癒えている。この話しかけてきたボス面している顔面クリムガンをまず潰せば残りはなんとでもなるか。

 

「おい、てめぇ何シカトこいてんだよ。まさかビビっちまって動けねぇのか? まっ、無理もねぇか。昨日あれだけいたぶったからな」

 

 ピクッと体が反応した俺を見て図星と思ったのかクリムガンは気を良くしてさらに笑い出した。だが俺の心中は怒りでそれどころじゃなかった。よく観察すればこいつからは俺を見下した感情がはっきり伝わってくる。俺を殴るためのサンドバッグ程度にしか考えていないんだ……。

 

 今ここで屈したら俺は終わってしまう。これまでこんなバカみたいな奴に踏みつけられ、虐げられていたのか。そんなこと絶対に認めない、認められるはずがない! ここで……今ここで、その因縁を断つ!

 

「……てめぇか……」

「あ? 今なんか言ったか?」

「俺に傷をつけやがったのはてめぇかぁぁーーっ!!!」

 

 一気に踏み込んで距離を詰め、勢いそのままに顔面に拳を叩き込んだ。挨拶代わりの“マッハパンチ”ってところか。仰け反った相手の腹にそのまま蹴りを入れ、さらに屈んだところに上からエルボー、下から顎への膝蹴りでノックアウト。間髪入れずに呆けている取り巻き2人を両手で引っ張り、力任せに思い切り衝突させた後顔面クリムガンの上に叩きつけた。

 

 片が付いて3人とも俺の豹変ぶりにすっかり怯え、クリムガンにいたっては痛みで半べそだ。きゅうしょを突かれて意識があるだけ丈夫な方か。手加減なしでやったからかなり効いたはず。これならある程度おとなしくなるだろう。クリムガンの首根っこをつかみ、乱暴に壁に押し付けて低い声で言った。

 

「クソガキ、これ以上痛い目見たくなければ俺の質問に答えろ。聞かれたこと以外は言うな、いいな?」

「お、お前何なんだ、急に雰囲気変わって、ドロボー野郎のくせに、ガァァッッ!?」

 

 余計なことを言おうとしたので容赦なく指を曲げた。折りはしないが。

 

「……無駄口は慎め。俺は何度も同じことを言う気はない。次は……へし折るぞ?」

「いっ!?」

「まずお前らはなんだ、なぜ俺をサンドバッグ代わりにしていた? もちろん正直に言えよ? ウソはわかるからな」

 

 間をおいて、少し落ち着くのを待ってからさりげなく脈を見れるように手を首筋に添えた。

 

「何言ってやがる。それは、お前なら何しても町の奴がみんな何も言わねえからこうやって……。なのに急になんか変わって、イダッ」

「ずっとか? しかも町ぐるみで公認? どれだけ腐ってやがるんだ……チッ、ふざけたマネを!」

 

 バンッ、と壁を拳で殴りつけると3人は小さく悲鳴を上げた。その声でイライラ続きのまま感情的になっていたと思い直し一旦落ち着くことにした。よく考えたらこいつらのことなんかより先に聞くべきことはいくらでもある。だが騒ぎを誰かが聞きつけたのか表通りの方が騒がしくなってきた。場所を移すべきか。

 

「おい、場所を移す。どこか人目につかない場所へ案内しろ」

「え、そんな場所なんかありま…」

「案内しろ……!」

「は、ハイィィーッ!」

 

 ◆

 

 案内された場所は路地裏の奥、周りの森との境界上の秘密基地だった。こんなところにスペースがあったのか。そういえばゲームでは謎の空間があったような気もする。

 

「なんだ、案外いい場所があるじゃねぇか。しばらくはここを使わせてもらおうか」

 

 フーッと一息ついて、まずこいつらからどうやって話を聞くか考えた。何もわからない俺には必要な情報が多過ぎる。なら自発的に協力させた方が早いか。

 

「お、おい。聞きたいことってのを早く言ってとっとと出ていってくれよ」

「そう焦るな。お前ら、俺が急に様変わりして訳が気になっているんだろ? 気が変わったから説明してやるよ。ま、あくまで推測だけどな」

 

 少し雰囲気を和らげて、砕けたしゃべり方にした。

 

「訳だって? じゃあやっぱり何かあったのか」

 

 今しゃべったのはチビの取り巻き。初めて口をきいたな。

 

「俺はどうも記憶喪失って奴になったらしい。これまでの出来事を何も覚えてないどころかここがどこか自分が誰かもわからん。おそらくさっきの話しぶりからしてお前らに殴られた際に頭を強く打ったのだろうな」

「げ、やっぱりあれはヤバかったのか」

「りゅうさん、だから言ったんだ、気絶させるのはマズイって! やめとけばこんな目にあわずに済んだのに、無視して殴るから!」

「黙れ! 仕方ねぇだろ、あの時反撃してきたんだからよ」

 

 めんどくさいなぁ。クリムガンとノッポの取り巻き、こいつら俺の前で仲間割れするとかバカか?

 

「仲間割れなら後にしな。目障りだ。あと、もう俺は以前とは別人と思った方がいい。前程優しくはないと思うし、もう十分思い知ったろう?」

 

 睨みを利かせるとクリムガンとノッポはおとなしくなり、代わりにチビの方が俺にしゃべりかけた。

 

「じゃあ僕達のことすら何も覚えてないんだね。それであんなことを聞いたのか」

「そういうことだ。お前らのせいでこうなった以上きっちりその分働いてもらう。……そうだ、何か食い物持って来い。どうせ今まで俺から散々巻き上げてたんだろ? それぐらいはやれ。そうだな……さっきからピーピーうるさいノッポ、お前が持って来い」

「お、俺かよ。しかもノッポって」

「持って来い……!」

 

 強めに首を絞めてやると嬉し泣きしながら出ていった。2人と秘密基地を人質にして脅したから帰ってくるだろう。来なくてもきのみは一応持っているしな。これでうるさいのは追い払えた。

 

「それじゃ、まずは俺が何者か、わかることを全て話せ」

 

 クリムガンでなくチビの方に問い質した。こいつの方が雰囲気的に見て話がわかりそうだからな。

 

「君はここに住んでいる浮浪児。いつも盗みをしていたから町の嫌われ者だ。けど、たしか孤児として引き取られるはずがジムリーダーがほったらかしでなし崩し的にここに住み着く羽目になったはずだから、仕方ない面もあったと思うよ。親もいない子供1人じゃそれしか生きる術はないし」

「どういうことだ?」

「普通孤児は施設に送られるけど、君の親は相当な嫌われ者だったらしくて、その親が居なくなったとき町から君も見放されたのさ。当時ジムリーダーも忙しくて手が回らなかったから。本当はジムリーダーが手助けするべき案件なんだけど、気づいたらうやむやになっていたんだよ。君の親を嫌う人間も多かったから君には皆辛くあたって、君も復讐とばかりに盗みを重ねたのさ。もちろん君にすれば生きるためでもあっただろうけど」

 

 やっぱりこいつに聞けばスムーズだな。俺の聞きたいことをよくわかっている。ある程度機嫌を窺う姿勢から見ても頭は悪くなさそうだ。

 

「そうか。そしてそれを知っていたから俺を食い物にしていたと」

「あ、あははは」

 

 実際こいつらも相当ワルだよな。子供がこんなとこ出入りしてるだけでも大概だし。……おっと、自分も人のこと言えないか。

 

「ま、昔のことは今のところはいい。どうせ覚えてもないことだ。俺の名前はなんだ?」

「さっぱりしているね。名前までは知らないなあ。知っている人はもういないんじゃないかな。嫌いな奴の名前なんか知ろうとするはずないし」

 

 そりゃ道理だ。じゃあ名前は勝手に決めて問題なさそうだな。これはラッキー。知らん奴の名前を借りて生きるのも癪に障るからな。

 

「そうか。……………なら、これからはレインと名乗る。今までとの決別の意味も込めて名前を一新だ。あぁ、お前らは……クリムガン、チビ、ノッポで十分だな」

 

 レインはReign。つまり君臨、支配。間違ってもRain(雨)ではない。

 

「あ、そう……かな」

「俺の名前はき…なんでもないです。そんなに睨むなよ、痛ッ!」

 

 こいつらも納得したようだし次だ。

 

「質問を続ける。ここはどこだ? 日本か?」

「そうだね。カントー地方のタマムシシティ。有名なのはデパートとか…」

 

 やはりカントーだな。ポッポで予想はついていたが。これが判明しただけでも色々わかる。だいたいの地理はゲームと変わらないだろう。

 

「場所はわかった。年代は?」

「XXXX年の…」

「いや、聞き方が悪かった。そうだな……チャンピオンは誰だ?」

 

 これなら人名で特定できるからな。歴史で天皇や将軍の名前で時代判定する感覚だな。

 

「ワタルだね。ドラゴン使い。数年前にチャンピオンになってからずっと防衛してる」

「手持ちはドラゴンで固めているのか?」

「当たり前じゃないか。最強のドラゴンタイプを操るワタルの強さは歴代でも1,2を争うって噂だよ」

 

 手持ちがドラゴンだけなら対策すれば簡単に倒せそうなものだが……わかんねぇなぁ。とはいえだいたい今がいつ頃なのかはわかってきた。聞けばレッドとか目ぼしい名前は知らないらしいし、シルフで何も起きてないから物語冒頭以前の年代辺りか。これは偶然か必然か、なんにせよ自分の知識が活用できそうなのは悪くない。

 

 その後もこの世界の通貨が円であること、トレーナーの常識、いろいろ聞き出したが概ね自分の知る通りだった。ただ、カントーにもトレーナーズスクールがあること、物価が知っているのと違いキズぐすりが割高などの細かい差はあったが。どこかでしっかりと常識のすり合わせをしておく必要があるだろう。

 

 幸い戸籍はガバガバで上手くやれば俺でもトレーナーになれないこともないらしい。但し、今のままだと多少お金を積む必要はありそうだが。

 

 ポケモンの常識については、タイプ相性などを聞くとチビがスクールに通っていたらしく確認がとれた。こいつはスクール卒業後(ここでは12で卒業らしい)旅に出たがすぐに諦めたようだ。今は普通の学校に通っているとか。

 

「でも、なんで記憶がないのにそんなにポケモンのことは良く覚えているのさ」

「それを記憶喪失の人間に聞くか? 俺が知るわけないだろうが」

「確かにそりゃそうだけど、変だなぁ」

 

 適当にごまかしたがやはり初めから何でもかんでも知っているのは不自然だ。この先悪目立ちしないためにはある程度自分の知っていることは抑えて小出しにしていかないと。とはいえある程度はやむを得ないだろう。

 

 俺はこのままこんなところに留まるつもりは毛頭ない。いきなりこんな最底辺の人生を甘んじて受け入れるなんて絶対にできない。ここはポケモンの世界。ならばポケモンバトルで活路を見出す。

 

「とりま、今必要なのはお金と、ポケモンと、トレーナーカードってところか」

「本気でトレーナーになる気かい? 戸籍も身分も何にもない孤児からトレーナーを目指すにはコネでもないと厳しいよ。なんせトレーナー資格のために何かしら実力を示す必要があるからね。スクールの認定試験をパスするのが手っ取り早いけど、それにもお金と時間がかかる。そもそもスクールに行かずにいきなりトレーナーなんて余程の天才でなきゃ無理だし、できたとしてもすぐにってわけにはいかないだろうね。それに最初の1匹はどうするつもりさ? 君じゃおそらくもらえないよ? その上仮になんとかできて旅に出られても本当に大変なのはそこからなんだ」

 

 ゲームとは大違い。やっぱりここは現実なのだなと思い知らされる。が、その程度でへこたれている暇はない。この町の奴らを見返してやると己に誓ったし、そのためにはチャンピオンになることが手っ取り早い。俺には能力がわかるアドバンテージもあるしな。そうだ、ついでに普通はどんな旅立ちかも聞いとくか

 

「普通は博士から最初の1匹を貰うのか?」

「博士? 一般的には最初にトレーナー登録したポケセンでもらうけど? まれに野生のポケモンが勝手になついたり、竜の一族とか古いしきたりのあるところはそこでもらったりするらしいけど」

 

 ワタルやイブキか。そういや主人公組はド田舎のマサラ出身だからスクールに行ってなさそうだし、やっぱり天才なのかもな。トラブルメーカー的な意味でも。

 

 一通り聞き終わり、ノッポも来たので今日はお開きにした。着いてすぐ解散にノッポは物申したそうだったが結局何も言わなかった。言わせなかったともいう。

 

「ねえ、レインはいつまでここにいるの?」

「俺の飛躍への準備が整うまでだ。早く出てほしくば自発的に協力しろ。ただ、俺も鬼じゃない。最後には相応の礼はしてやる。ジム戦の賞金ぐらいはくれてやるよ」

「ジムの賞金? そんなのないよ? トレーナーは依頼をこなして生活費とかを稼ぐんだから」

 

 聞いてないぞ、それは!……賞金で簡単に金儲けとはいかないのか。やっぱ、この世界は思っていたのと全然違うな。もうちょっと簡単なゲームがしたかった。

 

 ◆

 

 3人が帰った後、本格的に金の工面が必要だとわかり頭を悩ませていた。とりあえずじっとしていても仕方ないので、この日は人目につかない夜を待ってからタマムシを徘徊することにした。この体の目が特別なのかわからないが夜目も利くようになっていたので夜の散策も容易だった。

 

 いくつか案はあるが、稼ぐ方法として1番いいのはゲームコーナーで稼ぐことだろうか。あるいは盗みをやるか。だが俺は常習だったらしいから警戒されている現状では難しいだろう。

 

 ふと気づけばジムの前まで来ていた。最南端だ。だがそこで衝撃的なものを見つけた。

 

「にひひ! このジムはええ! おんなのこばっかしじゃ!」

「のぞきじじい……!」

 

 ここはゲーム準拠で間違いない。パラメーターの辺りからそうかもと思っていたが思わぬところから証拠が出たな。こいつは絶対ゲームにいた奴だ。確信した。全く、こんな夜中までご苦労なことだ。

 

 さて、これならゲームコーナーで一稼ぎできるかもしれない。幸い稼ぐコツは知っている。これが通用すればいくらでも金の工面はできそうだ。

 

 しかしその考えは愚かだった。いや、結論からいえば勝ちはした。ただ、コインの換金は景品としかできない。なので、金には替えられない。しかも景品のレートが異様に高い。ボロ勝ちしても1回じゃそんなに大したものもらえないぞ。

 

 客はこのレート納得しているのか? 自分はゲームプレイ時は「れいとうビーム」に80,000円など完全にぼったくりなので散々文句を言っていた。……でもよく考えたらどうしようもないので渋々諦めていたし、案外納得するものなのかもしれない。拾ったコインを増やした後、最初は試しにわざマシンとコインを交換しておいた。げっ、使い捨て式か。まあいい、みんな苦労するなら平等だしな。

 

「かえんほうしゃ」「10まんボルト」「れいとうビーム」の3つをとりあえずもらった。もちろん店内では外見を変えて孤児とバレないようにしていた。面が割れたら叩き出されるまでありえるからな。ロケット団だと利益優先で気にしない可能性もあるが。

 

 ◆

 

「いいなぁ……1つくれよ!」

「ならやるよ、いくつでもとってこれるし。1つずつやる」

 

 秘密基地に戻ると俺の戦果を見てクリムガンがうらやましそうに言った。なんとなくクリムガン呼びしているが、クリムガンって“かえんほうしゃ”とか覚えたっけ。無理な気がするな、イメージ的に。普通ドラゴンは覚えるんだけどこの顔を見るとなあ。偏見か? いや、そんなことどうでもいい。

 

 ここでわざマシンをやることで気前がいいとでも思わせられたら儲けものだし、何事も飴と鞭だからな。まあ子供は単純だしこれで言うことを聞きやすくなるだろ。実際に渡してみればどえらいはしゃぎようだった。盆と正月が一緒に来たみたいな喜びようだな。俺はそれらが一緒に来ても別に嬉しくはないけど。

 

「こんなに簡単に手に入るなら俺もやってみるか」

「やめとけ。あそこはとんでもないぼったくりだ。絶対に勝てる方法を知らなけりゃ大損こいて泣きを見るのがオチだ」

「いや、だったらレインは何者なんだ?」

「さぁな……あいにく記憶喪失だし」

 

 まんざら全部ウソってわけでもないが、記憶喪失って便利な言葉だな。これがあるだけで余計な説明を省ける。

 

 一見順調そのものにみえる現状。しかし俺は焦っていた。なんの兆しもなくただスロットでチビチビと稼ぐだけの現状に。延々とこんな最底辺みたいなところで燻っていたくない。なんとかしてここから出て成り上がる機会はないものか。

 

 ◆

 

 毎日当てもなく町を彷徨い続けて、ヘドロや怪しい工場やお茶好きばあさんと色々見て回ることにも行き詰まりを感じた頃、どうしたものかと悩んでいたある日、転機は訪れた。

 

 夜、何かないかと歩き回っていると、怪しい黒服の男を見つけてこっそり後をつけた。怪しい雰囲気の家屋に入っていったので静かに屋根に上り、常備している道具を使って窓のカギをいじり、なんとかピッキングして忍び込んだ。屋内では天井裏に忍び込んで階下の会話を盗み聞きした。槍で突かれる忍者みたい状態だな。もともと盗人だったって話だし、こういう行為に罪悪感は全くなかった。

 

「けへへ……! スロットは大繁盛! 儲かって仕方ないわ! 今日の売り上げも上々、馬鹿な連中め、おかげでボロ儲けじゃ」

「景品がレアなポケモンってだけですぐに飛びつく。裏相場の10倍以上なのになあ。こっちはいくらでも増やし放題だというのに」

 

 そう、ゲームコーナーのイーブイ・ポリゴンなどはわざマシンと比較しても高額に設定されていて、とんでもない大勝ちをするかコインを買いまくらないと無理な上、そうして現金で買おうとすると何百万という値段になる。詐欺もいいところだ。

 

 つけている時からそうだろうとは思っていたが、やはりここはロケット団とオーナーの密会場所。景品は密猟されたポケモンってところか。当初は景品で1匹目をゲットすることも考えはしたが高過ぎるし、ロケット団のポケモンじゃ使い物になるとも思えずやめていたが正解だったな。

 

「次もしっかり頼むぞ。なんせ金のなる木だ」

「わかっている。景品はちゃんと用意してある。明日、同じ時間にここで。金を忘れるな」

「わかっとるわ」

 

 心臓がバクバクと鳴り止まない。俺はとんでもない場面に出くわしてしまった。明日取引が行われる。こうして忍び込めているように案外セキュリティは低い。ゲーム内の数々の盗難事件のことを考えてみればこの世界はセキュリティの意識が低そうだしそんなものなのかもな。上手く立ち回れば金の問題は解決するかもしれない。

 

 しかもすぐに滅びると知っているロケット団なら失敗してもリスクは小さい。ここでやらなきゃ俺は一生このままだ。ならば生きるか死ぬか勝負に出る。

 

「明日、俺は未来を勝ち取る」

 

 そうと決まればこうしちゃいられない。下準備と下見をしておくか。相手は無法者だからジュンサ―(実在するらしい、チビに聞いた)の出る幕はないだろうが、証拠は消すに限るし用意できるものはなるべくしておくに限る。

 

 ◆

 

 早朝、やってきた3人組に必要なものを買ってこさせ、来るべき時に備え休息に努めた。

 

 そして、満を持して取引現場にやってきた。ロケット団が家屋内に入るのを見てから手袋やバンダナをつけて昨日同様に忍び込み、用意した道具で穴を開け階下の様子を伺った。時間までまだ余裕があるはず。失敗は許されない。慎重に、かつ手早くことを済ませる必要がある。

 

 屋敷の中を静かに探して回っていると、足音が近づいてきた。音は目の前の十字路の左手からだ。戻って屋根裏に上がる暇はない。一か八かで十字路の交差点からやや距離をとった場所の天井の部分で手足をつっかえ棒にして張り付き息を殺した。ろうかの幅がせまく高いからこその荒業だ。

 

 そいつはオーナーらしい人物でそのまま俺の下でなく、反対側に曲がって奥の部屋に入っていった。気づいているそぶりはない。暗いし死角だからな。助かった。こっちに来たら、とびかかって実力行使する気だったがバレなかったな。

 

 いったん天井裏に上がり、人の気配が消えた後オーナーが入った場所へ向かった。そこには檻があり、いくつかの中にはポケモンが眠っている。ここが取引現場のようだ。恐らくここにあるな。探すとトランクが見つかり中には大金が詰まっていた。

 

「軍資金ゲット……」

 

 まだ余裕がありそうだ。もうすこし物色するか。そこでさらにポケモンの取引額などの資料を発見した。これを見る限り本当にあの景品はぼったくりだな。ぼったくりはゲームのときからだったが。

 

 檻のポケモンはレベルから見て野生の奴なんだろうが、もし孵化させたポケモンで儲ければすごい収入だな。タマゴの研究はまだなのかもしれない。それにラッキーとか景品になかったのも資料に出てきている。まだ種類を増やす予定なのかもな。持ち帰って後でゆっくり見よう。

 

 ひとまず目的を果たして屋敷を脱出。痕跡は目に付くところは消したし、この世界のレベルじゃ特定すら出来ないだろう。そもそも俺はタマムシの戸籍にないから調べられないけど。

 

 月明かりすらない外はまだ真っ暗。夜目が利かなければ満足に歩けもしない。その中を忍び足で進み夜のタマムシの闇の中に消えていった。

 




クリムガン「(かえんほうしゃで)満足させてくれよ!!」
一応覚えるようです
使ってるのを見たことはないですが
資金面は一気に解決してしまいましたがあんまりグダグダやるとテンポが悪くなるという事情も
次からようやくゲットとかポケモンらしいことをします
遅過ぎですがこのゲームバグってるので仕方ないですね
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