たぶん大丈夫だとは思いますけど念のため警告
手紙を読んでやるべきこともはっきりしたわたし達は、さっそくまずはおちゃ探しを開始。聞き込みによってすぐにおちゃをくれるおばあさまがホントにいることがわかり、タマムシマンションに向かい、あついおちゃを手に入れた。
すぐに足早にヤマブキのゲートに向かうと、警備員に呼び止められて中に入れなかった。すかさず、半ばやけくそでお茶を見せてあげると、驚く程あっさりと通してもらえた。ダメだったら報酬のお金を使うつもりだったけど、使わずに済むならそれに越したことはない。
「狐につままれるってのはこんな感じなんだろうな」
「そんなことより、さっさと中に入るわよ。のんびりはできないでしょ。こっちの準備は万端なんだからいけいけで強行突破よ」
「いや、待て。正面から行くのは厳しい。数が違い過ぎる。物量は最も厄介だっておれ達は散々思い知らされた。それに前回監視されて痛い目見たのを忘れたか?」
「確かにレッドの言う通りだな。ならどうする? 見つかったら終わり、当然監視カメラは死角なし」
「レッド、考えがあるの?」
こういうときなんの考えもなしにこんなことは言わないはず。すると思った通り、レッドらしからぬ悪戯っ子のような笑みを浮かべて面白いことを言った。
「闇夜に紛れて潜入っていうのはどうだ? あいつらも予想していないだろ」
レッドが説明した作戦はこう。夜、でんきポケモンを発電所に送り込んで停電を起こし、無理やり監視カメラを使えなくして混乱した隙に中に潜入。自分達はシルフスコープで暗視して意思疎通はトランシーバーで行い、人質はポケモンを使って誘導して解放する。ちなみにヤマブキシティの電力源となる発電所は1つだけ。それもしっかり調べて事に当たった。
「悪くないわね。というか……トランシーバーはともかく、そのシルフスコープはどこで見つけたのよ! それを売ってるシルフが今相手の手に落ちているのに」
「アジトで拾った。丁度3つある。使い方はおれが教える。前にロケット団絡みで一度使った」
「用意がいいなレッド。でんきポケモンは丁度ブルーのレアコイルも増えているわけだし、意外と悪くねぇ作戦だ。なんか怪盗みたいでワクワクするな」
3人でにんまりと顔を合わせ、作戦に取り掛かった。いよいよ、敵の総本山へ乗り込みね。停電作戦が上手くいくか、これはもう賭けだったけど、戦力低下を補って余りある成果を叩き出した。入口は眠らせるまでもなく居眠りしていたし、指揮系統はぐちゃぐちゃみたいで、団員に見つかっても各個撃破。逆に情報を聞きだした。電力を絶っておいたのはかなり効果があったわね。それに早めに情報を吐かせた方がいいのは前回学んだもんね。
「人質は4Fの社員の人達と、地下のポケモンか」
「わたしが下に行く。あんたらは上に行って。地下は地図に載ってなかった。時間がかかるわ。あなた達の方がわたしより戦力があるんだから、先にいきなさい」
「わかった。単独は危ないが、時間もない。頼む」
「ノロノロしてると、オレ達で全部終わらしちまうぜ?」
そういってすぐに2人は階段を駆けて行った。わたしもすぐに応援に行けるようにがんばんないと。駆け足で階段を降りていくと、地下は意外と広く、ポケモンもあちこちに閉じ込められていた。みんな生体実験とかされていたのね。体に傷が目立つし、みんなぐったりとしている。なんてひどいことを……許せない。
“あまいかおり”で落ち着かせて外に誘導するつもりだったけど、これならボールに入れた方が早いわね。みんな眠らせて、片っ端から捕まえてボックスに転送した。終わるまでの辛抱よ。
「お前、何してる!」
「ヤバイッ……ってなんだ、シルフの人か。ここにも人がいたんだ」
ロケット団かと思って焦ったけど、研究員の人みたいね。
「……君はなんでここにいるんだい? ここは立ち入り禁止だよ」
「あなたも逃げて、今なら逃げれるわ」
「君は助けに来てくれたのか。そうかそうか。じゃあ外まで案内してくれ」
「いいわよ。こっち……」
言いながら後ろを向く途中、イヤな予感がして、とっさに距離を取ってフーちゃんを繰り出した。すると、丁度わたしがいたところに電流が迸った。あれはスタンガン! こいつ、話に聞いていた悪の研究員か。タチ悪いわね。
「チッ、今のを避けられるとはっ!」
「フーちゃん!」
驚いた相手の隙は逃さない。声掛けだけでフーちゃんは動いて研究員に向かって攻撃してくれた。
「うぎゃ!」
「ポケモンに罪はないもんね。悪く思わないでよ。先に手を出したのはそっちの方だし。ね、悪の研究員さん?」
「気づいていたのか! くそっ、始めから芝居だったのか!」
あれ、なんか勘違いされている……いや、全て計画通りね。
「そうよ、最初からあなたの姑息な考えなんてオ・ミ・ト・オ・シ! わざと勘違いしているフリをしたのよ。ホホホホホ」
「フッシッシ」
ぐ、めっちゃバカにした笑い方するわね。そんな声出したらバレちゃうでしょ!
研究員をそのまま締め上げると、まだ奥に研究中のポケモンがいることがわかった。もう全部回ったと思ったのに、まだいるのね。
「奥の部屋は特別で珍しいポケモンがいるからな。ラプラスってポケモンだ。あれは高値で売れるからなぁ。普段は脳波を調べてテレパシーが使えるか調べたり、生態調査が主だが、今はおそらく……あれをやっている頃だろうなぁ」
「な、なんなのよ」
「何、ちょっとした鳴き声を出させるだけさ。賢い、群れを成すポケモンはな、自分に生命の危機が迫ると、甲高い声で仲間を呼ぶんだよ。それさえ録音できれば、仲間も一網打尽ってわけだ。もうすぐあのボールも手に入るからな」
ウソでしょ!? それ、要するに群れのラプラスを乱獲するために、死ぬほど痛めつけてその鳴き声を出させているってこと!?
「あんたら、それでも人間なの!? この悪魔、鬼、外道! 許さない!」
「今だ!」
「フシッ」
パリン!
何、今の。注射器? 一瞬のことで目が追い付かなかった。フーちゃんに助けられたの?
「チッ! 邪魔が入ったか」
「……そうか、わざとわたしを怒らせるためにこんなことを言ったのね。大人ってホント油断ならないわね。手も縛っておくわ。いや、いっそここで気絶していてもらおうかしら」
フーちゃんが助けてくれなかったらヤバかった。もう毛ほども油断しない。こいつらは悪に魂を売った外道なのだから。
「好きにしろ。だがな、あそこに入るには俺達の指紋認証が必要だ。俺がいなきゃ入れねぇよ。あと、さっきの話は本当だぜ。ひひひっ」
こいつっ! ……落ち着いて。ダメよ、怒っちゃダメ。こいつの思うツボだわ。
「だったら最後までこき使ってやるわ。抵抗すればあんたは殺して代わりを探す。今なら人間ぐらい簡単に殺せそうな気分だもの」
研究員はその後はおとなしく言うことを聞いて、奥の部屋を見つけて指紋認証も上手くいった。中に入ると研究員が本当にラプラスを痛めつけていた。怒りはあるが今はグッとこらえて、即座に内部の制圧にかかった。
「キュウ、キュウゥゥゥゥ……」
「誰だ! なっ…がはっ!?」
すぐに近くにいた2人はフーちゃんとピーちゃんで押さえたけど、まだ1人残っている。向こうもポケモンを持っていたみたいで膠着状態になった。
周りを見れば怪しい計器がたくさん置いてあり、よくわからない数値を表示している。中央には大きな台の上にラプラスが乗せられていて、体中に拘束器具が取り付けられた上に高圧電流を流されて苦しそうにしている。あのコンデンサーみたいなのから電気流して痛めつけているのね。
「ほう、外が騒がしいと聞いていたが、ここまでネズミが迷い込んでいたとは。いきなり非常電源に切り替わるから何事かと思えば、やはりトラブルが起きていたのか。ここが何をするところかわかっているのか?」
「わかっているわよ。あんたらにもうポケモンを痛めつけるような真似はさせない!」
「ああ? なんだって?」
ギュイーン……バチバチバチッッ
「キュウゥゥッ、キュウ……」
「ラプラス! よくもっ!」
研究員が手元のレバーを引くと電流が強くなった。いきなり意味もなく電流を強くするなんてっ。わたしに見せつけるためだけに……なんてひどい奴! 絶対に許せない! ラプラスの必死に押し殺したような鳴き声から、痛みを耐えてなんとか声を上げないようにこらえているのが見てとれて、いっそう痛ましさを増していた。こんなことやっていいわけない。早く助けてあげないと!
「わははは! バカめ、お前になんと言われようと怖くはないのだよ。後でお前もこの苦痛を味わわせてやる。人間に使ったらどんな鳴き声を上げるのか、試してみたいと思っていたところだ」
こいつ……どこまでも人をコケにしてっ! いや、冷静になるのよ。こいつはわざと挑発している。しかも相手のポケモンはカイリキー。うかつに近寄ればヤバイ。間合いに入ったら最後、“ばくれつパンチ”が飛んできて1発でもくらったらアウトよ。
「どうした。怖気づいたか。お前もこんなポケモンなんかにムキになって、賢くないな。このポケモンもそうだ。さっさと鳴いてしまえばこんな痛い目に合わずに済むものを、どうしたわけか、頑なに声を抑えようとする。もう10まんボルトを何回も受けているのにな。テレパシーについてもわからないままだし、頑固で愚かで、どうしようもないポケモンだ。こいつが捕まった時も、群れのポケモンを庇って自分から捕まりに来たんだから、ここまで来るともう傑作だな。本当はこいつには大した知能はないんじゃないかと思い始めていたところなんだよ、くっくっく!」
こいつ、泣かす! 仲間のために必死で耐えて苦しんでいる姿を見て楽しむだけでなく、その思いまで愚弄した。わたしが天誅を下す!
「ラァッ!」
「!」
ラプラスの声が聞こえて冷静になって気を取り戻した。迂闊にも本当になんにも考えずに飛び込むところだった。感謝を込めて視線をラプラスに向けると、その目からとんでもない闘志を感じた。絶対にこんな奴らの思い通りにはさせないという決意がはっきりと伝わる。だからわたしを助けてくれたのね。このラプラスはやっぱり賢い。全部わかっているんだ。
「ふふふ」
「あ? 何笑っている!!」
怒ると思っていた相手が笑い出したら癇に障るわよね。悪いけど、こういう駆け引きに関してはもっとすごい人をわたしは知っているのよ。
「あら、ごめんなさい。あなたが間抜け過ぎて、つい笑っちゃった」
「なんだとお前! もっぺん…」
「後ろ、見なくて大丈夫なの?」
「なにぃ? まさかあれだけ痛めつけて動けたのか!」
バカな男ね。もちろんそのラプラスはもう動けないわよ。でも……その目を見て冷静でいられるかしら。
「ラァァッッ!!」
「ひぃっ!?」
「あなた達! 今よっ!」
ひるんだ一瞬の隙をついて、パチン、とわたしが指を鳴らすと2体はあらかじめ決めていた通り、1番の得意技でカイリキーに同時攻撃を仕掛けた。乱戦においてとっさに素早く技を出すことがいかに大切か散々味わった。だから得意技だけはすぐに出せるようにしておいたのよ。
“つばめがえし”と“エナジーボール”が決まる。どちらも使い慣れて技の出の速さも切れ味も抜群。使った後の隙も小さい。不意を突いてクリーンヒットすれば相手はまず耐えられない。
「カ、カイッ!」
「しまった!」
「そいつにもねむりごなよ!」
カイリキー戦闘不能。研究員も眠らせた。これで地下は制圧完了ね。
……そう思い、このとき勝利に油断して気を抜いたことがわたしにとって命取りになった。
「ラッ!?」
「動くな! 動けばこの猛毒でこいつを今すぐ殺す!」
「しまった! ラプラス! くそっ、油断した!」
さっき連れてきた研究員、いつの間にか縄を解いている。いったいどうやって……バトルに気を取られて完全に意識の外だった。そうか、ここまでおとなしくついてきたのも、目立たないようにして機会を待って、ここでこの子を盾にしてわたしを嵌めるためだったのね。どこまでズル賢い奴らなのよ! 大人ってホント汚い!
「さぁて、じっくりお礼はしてやろう。まずはそのポケモンを戻してこっちにボールを渡せ。早くしないとうっかり俺がこの注射器を押してしまうかもしれないぞ?」
こんなに悔しかったことはなかったかもしれない。自分が歯ぎしりする音が聞こえる。でも、こんなに優しい仲間思いのラプラスを見殺しにはできない。ごめんグリーン、レッド。わたしドジ踏んじゃった。応援には行けないわ。
ポケモンを戻して、研究員の足元にボールを投げた。
「へ、へへへ……いい子だ。ものわかりがいいじゃねぇか。これでもうこれは必要ないな。さあ、今までの分、たっぷりお返しをしてやるぜっ!」
パリンッ!
研究員はいきなり注射器を投げ捨ててわたしに殴りかかってきた。
「なっ! ごはっ!? うぐっ!!」
殴られてわたしが倒れたところをさらに踏みつけてくる。全然手加減してない。痛い……。でも、ラプラスに比べればこれぐらい何でもないっ。
「いいザマだ。やっぱりお前はバカだよ。子供は単純で……騙しやすくていい」
「!」
こいつ、今……。
「へへ、そうさ。さっきのはウソだ。お前はまんまと自分から降参しちまったのさ。愚かな奴め。ははっ、どうだ、最後の最後に騙された気分は? ああ、あのポケモンも反抗的でもう使い物にもならんし、お前と一緒に殺すとするか。ははは!」
「わかってたわよ」
「ああ? なんか言ったか」
「わかってたわよ、あれが毒薬なんかじゃないって」
わからないわけないでしょ。考えればわかる。わかっていたからこそ悔しかったのよ。
「何言ってんだ、お前? じゃあなんでおとなしくボールを手放した? ほら、言ってみろよ、ホラ吹き女」
ぐりぐり顔を踏まないでよ。こいつ、ホントにクズね。
「あんたが都合よく毒薬なんて持っているわけないでしょ。持っていても何に使うのよ、自分の研究施設で。ラプラスは貴重だし、殺そうとするわけもない。あんたが持っていたのは、鎮静剤か睡眠薬ってところでしょ。それぐらいわかっていたわ」
「なっ! へっ、じゃあお前はもっと大バカだ。わかっててあんな…」
こいつが言い終えるのを待たずに、わたしは叫んでいた。
「わかっててもっ! 99%わかっていても、1%でもラプラスが死ぬ可能性があるなら、わたしには選べない! 何があっても、こんなに優しいポケモンをあんたみたいなクズ人間なんかに殺させるわけにはいかないわ!!」
「ああ……あああっっ!! イライラするっ! 俺はなぁ、お前みたいな奴が1番気に入らねぇんだよっ! 死ね! 死ね死ね死ね、死にさらせっっ!!」
ぐうううう! 首が、絞められている。息が、もう、できない。でも……悔いはない。わたしは、トレーナーとして、自分の信じる道を、まっすぐ、進んできた。これで死んでも本望よ……。
「てめえっ、なんでそんな顔してる! もっと苦しめっ、もっと泣き叫べっ!」
目が霞んできた。もう何も見えない。音も消えた。だんだん感覚がなくなっていく。人間ってこうやって死んでいくのね。全部なくなって……無に……。
「がはっ! ゲホゲホッ」
急に締め付けがなくなって意識が覚醒した。感覚が蘇ってくる。なんで? 何が起きたの? まだ脳はいつも通りに働いてくれない。何もわからない。
(早くそこを離れて、早くっ!)
まだ頭が動かない。でもなぜか急にここを離れないといけない気がして、急いでわたしはそこから離れた。おぼつかない足取りで、必死に。
(私だけでなく幼い命まで弄んだ罪、その身で償え!)
「ラァァアアーーーッッ!!!」
「ぎゃああああっっっ!?!?」
凄まじい冷気で意識がはっきりと覚醒した。あれは“れいとうビーム”!
ラプラスが……怒りに燃えている。あの男は決してさわっちゃいけない竜の逆鱗に触れてしまったんだ。ポケモンが本気で怒り狂っているところなんて初めて見た。
ラプラスは最後の力を振り絞っているのだろう。体は震えているけど、眼だけは死んでいない。瞳孔が小さく定まり研究員をにらみつけている。できあがったのは氷の彫像。もうこいつは生きていないかもしれない。
研究員の末路を見届けてすぐ、事切れるようにラプラスは倒れた。それを見て一瞬ヒヤリとしたが、駆け寄って様子を見れば息はある。急いで回復薬をつぎこんで必死に治療した。治療の甲斐あってすぐに目を覚ました。嬉しくってラプラスの顔に抱きついてしまった。
「良かった、無事なのね。本当に良かった……わたしてっきり……」
(あなたの気持ちはずっと感じていました。気絶して眠っている間も、そして今も。あなたは私の命の恩人です。その上、私の誇りと一族はあなたに守られた。私にできる最大限の感謝をあなたに捧げます)
「そ、そんなっ、大袈裟よ。そこまで言われても、わたし結局あなたに助けられちゃったし、こんなひどいことされてたのにずっとなんにもできなくて、ホントにごめんね。こんなに傷ついて。わたしがもっとしっかりしてれば……早く助けに来てあげれたら……」
(いいえ、あなたは素晴らしいトレーナーです。そんなに気を落とさないで。あなたは最善を尽くし、身命を賭して悪に立ち向かってくれた。これ以上は望めないでしょう。もう一度、あなたには感謝の言葉を。ありがとう。本当に、ありがとう)
「あっ」
優しく包み込まれて、あったかい。ラプラスから深く、そして重い感謝の気持ちが伝わってくる。不思議な感覚。ものすごく幸せな気持ち。これがテレパシー?
(そうです。そしてこうして意思疎通ができるのもテレパシーの力)
「……ああっ! 今わたしあなたとしゃべってたっ! すごいすごい! ポケモンとおしゃべりできるなんて夢みたいっ!」
(気づいてなかったのですか?)
「なんかすっごく自然にあなたの声が受け入れられて、違和感が全くなかったわ」
(そうですか。やはり、あなたと私は波長が合っているのでしょうね。一目見た時から他人だとは思えませんでした)
「え? どういうこと?」
(……お願いです。私をあなたの手持ちに加えて頂けませんか?)
手持ちって、もしかして自分からゲットされたいって言っているの? なんでよ、仲間のためにあんなに頑張っていたのだから、また会いたいと思っているんじゃないのっ?
「ちょっと、いきなり何を言っているのよ! あなた、仲間がいるんでしょう? 帰らないとダメなんじゃないの?」
(あなたには私の気持ち、伝わりませんでしたか? 私の全霊をもってあなたに恩返しをさせてください。お願いします)
首を垂れて真剣にお願いする姿を見れば、冗談の類でないことはすぐにわかった。でもあんなに仲間のために一生懸命なところを見た後だけに、少し躊躇ってしまう。
「でも、ホントにいいの?」
(不遜ながら、私は自分の力には自信があります。役には立って見せます。それにあなたは今この組織と戦っているのでしょう? 少しでも戦力は増やしておきたいはずです。もう迷っている時間だってありませんよ)
その言葉でハッとした。さっきは諦めたけど、今こうして助かったんだから早くあいつらを助けに行かないと。回復に時間を使ってしまったし、もう別れてからだいぶ経つ。事ここに至り、迷いは消えた。この子にも手伝ってもらいましょう。
「そうだったわ。グリーンとレッド、あいつらの加勢に行かないと! よし、わかったわ。あなたも連れていく。ホントはね、わたしポケモンに乗って船旅を楽しむのが夢だったの。ラプラスって人を乗せてくれたりもするんでしょ? ……これからよろしくね。わたしの名前はブルー。あなたはこれからラーちゃん。……いや、ちゃんはないか。しゃべり方がわたしよりだいぶ大人っぽいし。ラーさん?」
(何でも構いません。我が主となるあなたの名前、たしかに承りました。これからはブルー様と呼ばせて頂きます)
「何言ってるの!? ダメよ! そんなのダメダメッ! わたしのことはブルーでいいわよ、いっつもそう呼ばれてるし。それにね、トレーナーとポケモンは、常に対等でないといけないの。だからそんな畏まったしゃべり方もしなくていいわ。わかった? わたしとは……そう、友達になりましょう。1番の友達」
お話もできるし、ポケモンの友達ってとっても素敵。いろんなことを想像して、楽しみでワクワクして、考えただけで嬉しくなっちゃう。自然と、わたしは今までで最高の笑顔でラプラスに笑いかけていた。
(対等……友達……。わかりました。ではこれで良いですか、ブルー? しゃべり方は私のクセなので諦めてください。あなたは本当に素晴らしいトレーナーです。私のことは最初に言ったようにラーちゃんと呼んでください。これからはどんなことがあろうと私があなたを一生お守りします)
「ありがと。あなたのこと大好き。ずっと大切にするからね。よろしくね、ラーちゃんっ」
嬉しくなって笑いかけると、ラーちゃんはすりよって顔をわたしのお腹のあたりにうずめて嬉しそうに身を捩らせた。
「キュウゥゥーー!!」
今のは? 甲高い声だけど、仲間を呼んでいる感じじゃない。なんとなく、テレパシーってやつのおかげか気持ちが読めるんだけど、これは……。ラーちゃんはわたしが聞こうとするとその前に話を変えてしまった。それにいつの間にかわたしからは離れている。
(上には仲間がいるのですよね。申し訳ないですが、他人には私の力については一切しゃべらないでほしいのです。たとえそれがどれほどあなたが信頼している人でも)
「え、なんでよ。テレパシーがあればものすごく便利になるのに、どうして?」
この力、さっきは単純に感動しているだけだったけど、実際すごい力のはずよ。技名を言わなくてもいいし、応用の幅はかなり広そう。普段シショーが技を悟らせないのを見ているから、そのメリットの大きさもわかる。あいつらロケット団が躍起になるのも当然だわ。
(誰もがあなたのように純粋で優しい心を持っているとは限りません。多くの人々に知られる程何かの弾みで悪しき者に伝わる可能性も高まる。秘密が世間の知るところとなれば私だけでなく一族の仲間にも危険が及ぶ。……身勝手なお願いなのは承知の上です。どうかお願いします)
「そっか。じゃ、わかったわ。わたしだってあなたが必死で仲間を守るところを見たのに、それを無下にはできない。そういうことなら仕方ないわ。あなた達の秘密は絶対漏らさない。きっとわたしなら約束を守るって思ったからテレパシーを使ったんでしょ? あなたがわたしのこと信用してくれたのがとっても嬉しい。今はそれで充分よ」
(ありがとうっ! あなたならそう言ってくれると思ってました。では、急ぎましょう。ブルーの仲間が待っています)
その通りね。わたしはうなずいてすぐに現状把握のためトランシーバーでレッドに通信を試みたけど、聞こえた声は予想よりも緊迫したものだった。
「ブルーヤバイ。今7F、劣勢だ」
ブツッ
すぐに切られたことから交戦中でかつ余裕がないことはわかった。これは本格的にマズイ。もしラーちゃんがわたしを助けてくれなかったら、わたし達ここで全滅なんてこともありえた。本当に奇跡的な巡り合わせね。
「レッドがこんなに焦るなんて……。ゆっくり休ませてあげたいけど、悠長なことはしていられない。悪いけど急ぐわよ」
(構いません。できる限り役に立てるよう頑張ります。早く向かいましょう)
頼もしい仲間が増え、希望を胸に階段を駆け上がった。待っていてよ2人ともっ! すぐに助けに行くから!
発電所については、金銀で部品1つでリニアが止まるという意味不明なことになっていたので停電ぐらいなら簡単に成功しそうという偏見です
あとここで出てくる発電所は金銀で出てくるやつの先代と思ってください
ないということはないでしょうからね
カードキーがないと開かないシルフのシャッターの描写がありませんが、これは停電の影響で機能せず全て最初から解除されていたと思ってください
シャッターというのは基本あっても邪魔なだけなので敵襲などの緊急時のみ発動するのが自然だと思います
なのでレインの下見の際は平常時なので影も形もなく本人はないものと勘違い、今回は電力不足でシャッターが上がった状態のまま動かないという感じです
非常電力は実験中の地下に全て持っていかれていると思ってください
なので地下だけ電流ビリビリしていたわけです
……本当はどっちも設定を忘れていました(小声)
でも後付けにしては割と筋が通ってるように思えますよね(震え)
ヤマブキにはまだレインは着いていません
いたら戦力になったんですけどね
悪の研究員がやたら卑怯ですが悪に手を染めたら手段なんか選ばないですよ
当然氷漬けの刑です
研究所に毒薬はないとか、首絞めで感覚が消えていく、とかは演出なので変だなーと思ってもスルーして下さい
最後の怒りの一撃は乱数が10割増し、2倍ぐらいになってるイメージです
このラプラスはキレると恐ろしい力を発揮します
本気で怒るのはブルーに危害を加えられたときぐらいなので限定的ですが
乱数はどっかで触れましたがゲームよりかなり幅が広がっています
0近くから1以上まで何でもありです
基本的には0.85~1.00の間ですが、ガードしたりすればいくらでも変えられるということですね
その辺はゲームよりも現実寄りです