Another Trainer   作:りんごうさぎ

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若干設定などに関わる話が多いです
主人公ひとりだけということもあり地の文多いですね
地の文地獄は最初だけなので許してください
書く方も会話文の方が楽なんで本意じゃないんですよ

途中ポケじゃらしとか完全にゲームの説明文無視していますが気にしないでください
多分バグか何かでしょう

……ホントは同じ効果の道具とか存在意義が謎なので使い分けたかったんですよ!


ポケモンの能力を調べる際に表示には略記があります

以後

 個体値→個
 努力値→努
 実数値→実

と表記します


服装関連の内容は後から書き足しました
ぼんやりしていたのでイメージつけるためですね
今後もちょくちょく挟んでいきたいです
顔はポケモン主人公っぽいビジュアルでちょっと目つきが鋭いぐらいでアバウト
頭にはレーダーがついています()



3.見つけた見つかった エスパーと運命の出会い

 金に不自由しなくなり、これで一気にできることが増えた。まずは手持ちポケモンと道具だな。これからの旅の用意も必要だし一度ヤマブキへ行くか。タマムシだと俺はゆっくり買物しにくいからな。大量に買い込むし回復道具などは生命線、あいつらに任せるわけにもいかない。大金を渡せるほど信頼もしてないし。

 

 3人にヤマブキへ行くので留守にすることを伝えて町を出た。ここはゲームと違い小さな町はタマムシとヤマブキの間にもあるし、バスなども通っていることが3人組を使って調達したタウンマップですでに確認できていた。なので町をバスで渡りながら人から話を聞いたり、店を回って相場を調べたりを繰り返しながらヤマブキへ向かった。

 

 移動中は本屋で買ったトレーナー入門書のようなものをかいつまんで読んでおき最低限の常識は身に着けた。一応常識のすり合わせのためだ。自分以外の人間の考え方を知っておくことは役に立つはず。

 

 トレーナーならばポケセンが無償なのは同じで、宿もあるらしく、これも依頼事業の収益などで上手いことやりくりされていてタダらしい。その代わりトレーナー修行に出るためにはスクールの成績など実力を示すものがいるらしい。そしてバッジを得る度にトレーナーのランクというのが上がり、受けられる依頼のランクも一緒に上がるそうだ。

 

 トレーナーを仕事にしている人間はこの依頼をこなすことで稼いでいる。プロになると試合に出たらファイトマネーが入るようだがそういうのはごく一部らしい。依頼とかランクとかどこぞのダンジョンRPGのようなシステムだが、意外と合理的で感心した。要するに稼げない奴はリタイヤしていくらしい。ホントにリアルで世知辛い世の中だなぁ。

 

 ただ、なんでも取り寄せられる四次元パソコンや見た目の何倍も容量のある四次元バッグなど不可思議な道具もあったのでそのへんはファンタジー感もあった。

 

「さて、とりあえずヤマブキに着いたか。まずは……この恰好じゃ満足に買い物もできない。身だしなみからだな」

 

 自分で言うことではないがひっどい格好をしている。銭湯で体を洗って清潔にした後、ヘアサロンとブティックに行って外見を整えた。

 

「この飛び出しているのはどうしま…」

「ほっといてください」

 

 切ってなくなる程度のもんならとうになくなってんだよ! どうしようもねーんだってのっ!

 

「こちらのもっと明るい服はいかがで…」

「こっちの服でいいです」

 

 あそこじゃ目立つことはできないし、そうでなくても俺はハデな服はキライだ!

 

 鏡をのぞけば見違えた姿の自分が見える。少しはマシになったか。これで心置きなく買い物ができる。先に必要なものは考えてリストアップしてある。順番に店を回っていこう。

 

 予算にものをいわせモンスターボール各種や回復道具、旅道具などを大量にそろえてパソコンにしまい、今回の目玉を探すことにした。……パソコンを持てばいくらでも持ち歩けるため食料系以外買い過ぎた感も否めないが気のせいだろう。物価がゲームより高かったせいで出費は馬鹿にならなかったが。

 

 やって来たのは大手シルフカンパニー。ここで育成必須アイテムのドーピングやギブス、パワーキットそしてきのみを探した。しかしここでは努力値下げのきのみはないらしく、タマムシデパートでホウエンから取り寄せるしかないらしい。パワーキットやギプスはあったからよしとするか。

 

 自分で作ったメモのリストに目を通し必要な物を全てそろえたことを確認して帰ろうかという時、ゲートに見覚えのある人物がいることに気づいた。この町のジムリーダー、ナツメ。たしかにヤマブキならいてもおかしくはないがジムでチャレンジャーを待っていなくて大丈夫なのか? あんまり関わりたくはないな……。

 

 小耳に挟んだところでは、こいつは相当な異端児でポケモン協会だかなんだかというリーグを運営してる組織でも手を焼いているとか。幸い向こうはこっちのことを知らないし、知らんふりで横を通り過ぎよう。ヤバイ奴なら関わらない方がいい。何食わぬ顔で横を通るといきなり後ろからがっしりと肩をつかまれた。

 

「ッ!」

「あなた、見ないオーラね。不思議……何者?」

 

 いきなり何意味不明なこと言ってんだ、こいつは。オーラだって? 電波なのか? エスパー少女じゃなくて電波少女なのか? それに、なんか急に気分が悪くなってきた。なんだこの感覚? まるで自分の心がかき乱されるような、そして圧迫されているような感覚。本能的にここにいてはマズイと感じた。

 

「急ぎなんでな、用がないなら失礼する」

 

 無理やり立ち去ろうとするもさらにがっしりと肩をロックされた。……振りほどけない!

 

「ウソね。むしろ今用事が済んだところ。あなた旅のトレーナーかしら? いいえ、違うわね。私でも読めないなんて……ただのトレーナーじゃない」

 

 これがエスパーか。こいつ確信を持って俺のウソを見抜いてやがる。ナツメの目を見ているとまるで心の奥底まで見透かされているような錯覚に陥る。それにつかまれた肩からヤな感じがして本格的に気分が悪くなってきた。何かと厄介な奴だ……今の口ぶりだとわからないこともあるみたいではあるが。

 

 そういえばこの肩にかかる力も少女のものにしては強過ぎるし、おそらくサイコパワーみたいなものが働いているのだろう。つくづく面倒な奴に絡まれたな。

 

「ならはっきり言う。迷惑だ。道を通せ」

「私が誰かわかって言っているの? こんなに震えているのに強がり言っちゃって。ふふ、いいわ。今日は見逃してあげる。でもあなたは遅かれ早かれ私のところへ来ることになる」

「……」

 

 なんとかその場を離れられたが心臓に悪い。この世界のエスパーはかなり面倒な人種で間違いない。本当に何が起きるかわからない。ある意味精神的には今までで最も危険を感じた。

 

 気を取り直し、帰りは歩きで野生のポケモンを探しながら草むらを進んだ。そこで俺は気になっていたことを色々と実験していった。

 

 

 ~実験中~

 

 

1.ポケじゃらし

 まず、ダイパ冒頭のムックル襲撃の二の舞はごめんなので安全確保のために“ポケじゃらし”と“ピッピにんぎょう”が有効なことを確認し、成功。町に戻り大量に買い込んだ。一生買い足さなくていいだろう程に。これは持ち過ぎて困ることはまずないと思われる。それぐらい便利で汎用性が高いと判断した。

 

 

 

2.モンスターボール

 試しにポケモンを捕まえようとするがHP満タンではハイパーボールでも全て失敗。それどころか残り1割程度でも捕まらなかった。しかもほっとくとHPが少しずつだが自然回復するので悠長にできないし生き物だから不利と悟れば戦闘から逃げ出す。最も簡単と思っていたところで予想外の壁に当たってしまった。

 

 さらに調べると、ダメージの乱数の幅が大きいことに気づいた。ガードしたりすればゼロに近づけることもできるようだ。現実の常識が当てはまる部分が多く確率だけのゲーム脳だけでは通用しなさそうだった。早めに気づけて良かった。

 

 

 

3.ポケモンの技

 レベル不相応なものを覚えている奴がチラホラいて、技の覚え方もゲームのようなきっちりした基準はなさそうだった。最初のポッポも“エアカッター”を覚えていた。運よくバトルでは使われなかったがあれは間違いなくタマゴ技だ。

 

 

 

4.自身の不思議な能力

 重要な戦力になるはずなのでじっくり検証した。まず辺りに何かポケモンがいないか探ろうとすると、半径数十m範囲で探知ができ方向と名前がわかった。さらにそのうちの1匹に集中するか直接目で捕捉して集中すると、その能力が確認できた。見れる能力は自分が見たいと思った能力を切り替えて表示することもできたのでかなり便利な力だった。まるで自分の願いが具現化したようだ。

 

 とりあえず名前があった方がいいと思い、探知能力をサーチ、分析能力をアナライズと呼ぶことにした。あまり使い過ぎると疲れるし、サーチ範囲も調子などで上下するがおいおい鍛えていけばいいだろう。

 

 ちなみに自分のステータスは鏡などで自分を調べても見えなかった。この力はさすがにポケモン限定らしい。最初に鏡を見た時には容姿が昔の自分そのものだったので驚いて複雑な気分になったりした。鏡に写る見慣れた顔。黒髪黒目、目つきは鋭く、キリッとした男前……自分で言っておいてだがむなしいな。

 

 ……どうせ変なところに連れてくるなら顔ぐらい良くしろよ。服装も最悪だったしひっどいなぁ。いや、それはおいといて。

 

 自分の強さに関してはレベル20のポケモンまでけっこう余力を残して倒せたので野生で言えば20台後半程度の水準だろう。このまま俺が戦い続けたらもっとレベルが上がっていくのだろうか。あんまり嬉しくはない。

 

 

 

5.キズぐすり

 自分、つまり人間に対しても使えて効果は数分で現れたが、さすがにバトル中使えるほどの速さはなかった。まあ十分異常だが。ポケモンにオレンを食わした場合はすぐに回復したのできのみは戦闘中でも使えそうだ。きのみは回復量こそ少ないが即効性がある分緊急時の万能薬的な使い方もできそうだ。効果は初日の自分で実証済み。きのみは道端に割とあるが入門書によれば素人は毒入りなどと見分けがつかないのであんまり手を出さないらしい。ゲームで見た目を知っているきのみだけ食っていたことに遅過ぎる安堵をした。

 

 

 

6.努力値・物理と特殊

 戦闘後の休憩中、バトルについて書いてある本も読み終わりあることに気づいた。努力値などの言葉が出てこないのだ。読み返して、さらに他の本を見てもない。おそらくこの世界にはそんな概念自体がないのだろう。考えてみればそんな数値視えるのは俺だけだし、実験しても簡単に発見できるわけもない。あるという前提を知らねば気づく術はない。つまり誰も知りようがないということだ。とすると、チャンプですらまともに育成できてないポケモンを使っているのか?

 

 気になった俺は翌日最寄りの町の本屋で詳しく調べたが、どうも攻撃と特攻や、防御と特防の違いすら理解されていないらしい。例えば“かえんほうしゃ”を挙げると、上級者だと経験的にパルシェンには良く効くがラッキーには効きにくい、というようなことはわかったりするらしい。だがそれがなぜかまではハッキリわからないわけだ。

 

 また、物理技と特殊技の分類は第四世代以降の基準に基づいていることも何度も技を受ける中で確認できた。何かの間違いで第三世代以前の仕様だったなら、ドラゴン、ゴースト、悪がメインウエポンを失ってご愁傷様、フーディンはめざパがわりに三色パンチ攻撃を始めるカオスなことに。一応確認しないと何があるかわからないからな。

 

 ともあれ、これらの情報は俺にとっては朗報だ。周りがここまで原始時代なら自分の知識があれば冗談抜きにチャンピオンを超えられる。もう泥をすするような生活とはおさらば、サヨナラバイバイだ。この目と知識がそろえば死角はない。

 

 ◆

 

 ここまでわかってきたら知識面はもう十分。後はまず1体信頼できるパートナーが欲しい。そこで俺は厳選とも呼べる、ポケモン探しの旅を始めた。アナライズが出来なきゃこんなこと絶対しないけどなぁ。これが廃人の悲しい性か……。厳選せずにはいられない、この作業は終わらない! 結局何日も野宿を繰り返して探すがなかなか見つからない。早くも妥協も視野に入れだし、心が折れそうになる頃、奇跡的な出会いをした。

 

 

 ガーディ♂ LV20 むじゃき

 

 個 25-31-23-22-18-31

 実 47/57-39-25-37-26-38

 技 ひのこ 

   にらみつける 

   かえんぐるま 

   たいあたり 

   とおぼえ 

   かぎわける

 

 

 大当たりだ。キタキタキタ――!! 

 

 2V……まさに1000に1つの逸材。性格も補正的な意味でいい。こっちにきて初めて大騒ぎ。絶対に捕まえてやる。これを逃すのはありえない。今までの実験でピッピにんぎょうとかの使い方や、ポケモンの誘い込み方もわかってきている。ボールも惜しまない。ハイパーも大量に用意してある。

 

 まずは先手必勝! 静かに近づいて不意打ちを狙った。だが間一髪で躱され、逆に“ひのこ”を放ってきた。いい動き……! ますます捕まえたくなる。ここは無理せず後ろに引いて攻撃をやり過ごした。

 

「おっと、やるなぁ」

「グウゥゥ」

 

 警戒されたな。油断なくこちらをうかがい、相手の構えにはムダがない。さっきの動きも今までの奴らよりも格段に良かった。一筋縄ではいかないか。さてどうする? 相手の隙がないならこっちから能動的に隙を作るしかないか。

 

「ほら、いい子だからこっちにおいで?」

「ガウッ」

 

 ピッピにんぎょうを投げて気の逸れたうちに蹴りをかます。クリーンヒット。かなりいい感触。20入った。

 

 ピッピにんぎょうはポケモンの気を引き付ける。逆にポケじゃらしは遠ざける効果があり、その結果戦闘から逃げられる。同じ結果でもからくりは違うことがわかっていた。今回はそれを利用した。先に色々実験したのが活きたな。

 

「油断したな。その程度か?」

「グオオォォン」

 

 左右にステップしながら“かえんぐるま”を繰り出した。やはり単調な普通の野生ポケモンとは違う。真っ直ぐには来ないでフェイントモーションを入れてきたか。だが俺には届かない。この程度なら簡単に動きが読める。

 

 慌てずによく見れば左右で微妙に動きに違いがあった。フェイクは当てる気がないせいか動きがやや浅い。フェイクも攻撃時と同じ動きでなければクセを見抜かれ騙すことはできない。まだ訓練が足りていないな。右がフェイク。左からの攻撃を堂々と右に躱した。

 

「!」

「お返しだっ」

 

 パンチをかますが見切られて距離を取られた。体がこんなんだと致命的にリーチが足りない。読み切ってなお当てられない。人間の限界か。これじゃ動きを完全に止めるぐらいの隙を作らないとまともに攻撃できないな。どうしようかねぇ。

 

 考えを巡らせていると、相手は攻撃のメインを“ひのこ”に切り替えてきた。こっちの攻撃を見て有利なリーチを学んだか。なら接近してこっちの間合いに持ち込むまで。

 

 一気に距離を詰めると俺の動きに合わせて素早く“たいあたり”をしてきた。いい反応、しかも鋭い攻撃だ。やみくもに突っ込んでいれば自分の勢いを殺せずに直撃コース。だがこれも甘い。こいつなら俺の行動に合わせてこれぐらいはするだろうと思っていた。

 

 こいつが黙って近づくのを許すわけがない。甘い行動をとるはずがない。もちろん他のポケモン相手ならこんな読みはしなかっただろう。だが読みは相手のレベルに合わせてその裏をかく、これが極意。故に予想通り。

 

「お前はたしかに強い。でも独りだけではまだ足りない!」

「ガウアッ!?」

 

 俺は“たいあたり”を避けながら、ピッピにんぎょうと一緒にあらかじめバッグから取り出して手に持っていたポケじゃらしを相手の“たいあたり”の軌道上に投げた。するとどうなるか。

 

 ガーディは反射的にポケじゃらしから離れようと、思わず動きを止めてしまう。注文通りのチャンス到来! そのタイミングを見計らって渾身の一撃を放った。しかし驚くべきことにこれに対応してガーディは身をそらして攻撃を軽減し、さらに受け身をとった。

 

 見事な体裁き。だが残念、無理な動きで体勢が大きく崩れてしまっている。そのまま容赦なく追撃しさらに削りを入れた。残りHP5。頃合いか。モンスターボールを構えるが急に様子が変わり何かを訴えかけるように吠えた。

 

「ガッガウアッ、ガウウア!」

 

 鳴き声では何を言いたいのかわかるわけがない……はずなのだが、なぜかこのとき雰囲気から言わんとすることがわかってしまった。気持ちを感じたというのだろうか。不思議な感覚だった。

 

「何かやるべきことがある、だから待て……と言いたいのか?」

「ッ!」

 

 コクン、と頷き、驚いた表情を見せた。必死にアピールしていたが通じるとは思ってなかったのかもしれない。そういえばこいつは最初からHPが減っていた。それが関係するのか?

 

「なぜ体力が最初から減っていた? 用と関係あるのか?」

「ガウアウ、ググゥ、ガーウ」

「……バトルのため、か。つまり倒したい奴がいると。ふぅ、おかしなことばっかだ。この目も、そして今度はポケモンの言うことがわかるなんて、どう考えても普通じゃない。でもポッポとかは何考えているのかわからなかったな」

 

 なぜこのガーディとは意思が通じたのだろうか。なにか浅からぬ因縁があるとか? それは考え過ぎか。でもそう思いたい気持ちになっていた。

 

「……」

 

 ガーディは不安そうに黙ってこっちの様子を見ている。本当はこんな逸材逃したくないが、ここはゲームじゃない。それを十分思い知ったし、相手にも感情はある。無理に捕まえても仕方ないし、なにより今はこいつを気持ちよく送り出してやろうという気になっていた。

 

 不思議と考えが読み取れ気の合うこいつの前では、どうしても欲しいという下心を見せずに、器の大きさを見せるため見逃してやろうと思ってしまった。そして何より、このガーディとはまた会えそうな気がした。

 

「安心しな。お前は強いし仲間にしたいが、無理にとは言わない。大事な用なんだろ? 野暮なことはしない。ほれっ」

 

 そういって“オボンのみ”を投げて渡した。不思議そうな顔をするガーディに、餞別だと言い残して、その場を立ち去った。

 

 …………

 

「かぁーーーっ! 出てこねーっ! なんであんなカッコつけたんだ、アホ! 俺のアホォ!」

 

 一時の感性に任せてよくわからない勘に従った結果、当然の報いを受けて途方に暮れることとなった。もうその時の不思議な感覚はきれいさっぱりないし、予感めいたものも消え失せていた。端的にものすごく後悔した。

 

 しかし何の因果か、そのガーディとはすぐに再会することになる。

 

 ◆

 

 その日の晩、爆発音と光に目が覚め音の方へ様子を見に行くと、例のガーディがその他大勢の同種とバトルしていた。驚く俺をよそにそいつはばっさばっさと敵の群れを倒していった。

 

 用事はこれか。あいつここのガーディじゃないのか? 縄張り争いでもしているのだろうか。敵はとうとう1匹になったがすごいのが出てきた。目に傷があり、他の奴よりも若干大きい。雰囲気的には群れのボスってところか。

 

 アナライズすると、レベル21、攻撃の個体値がV、性格いじっぱり、“かみくだく”持ちか。……タマゴ技だろうな。等倍だからこれは効く。逆にあいつのメインの“かえんぐるま”は半減で通りにくい。厳しいな。手助けしてやりたいがよそもんの俺が口出しすることじゃない。見守るだけにするか。

 

 案の定結果は敗北。しかし驚異的な粘りを見せてもう少しのところまで追いつめていた。だが時間がかかったせいで周りの奴らが回復してしまっている。起き上がって攻撃体勢の奴らを見てまさか……と思っていると、本当にいきなり全員で“ひのこ”の一斉放火を始めた。

 

 思わず息を飲んだ。あいつはもう気絶している。いくら“こうかはいまひとつ”でもあれを食らい続けたら……。

 

「死ぬ……!!」

 

 ここはゲームであってゲームじゃない。現実の中の出来事なんだ。だから敗北は即座に死につながる。それをこれまでの日々で実感していたからこそ、いてもたってもいられずに走り出していた。

 

 走りながら手も動かし、ピッピにんぎょうを遠くに放り、ポケじゃらしは目の前に投げつけた。強引に道を開けて“ひのこ”の中に飛び込み、ガーディをしっかりと抱きしめて脱出を試みた。

 

「ガルル、ガアアアア!」

「グルァッッ!」

「チッ、囲まれたか。まさか夜は道具の効果が薄いのか……? クソッ、こんなときに」

 

 さすがにここまでは実験でも想定していなかった。危険予測が甘かったか。だが悔いても仕方ない。何か手を打たないとここで野垂れ死にだ。全方位360度敵意剥き出しのポケモンに囲まれるとさすがに威圧感がある。だが泣き言をいっている場合じゃない。こんなところで終わるわけには……。

 

 ガーディの敵意を込めた“いかく”に体が否応なしに竦む。攻撃を1段階下げる特性の効果だってことは百も承知だが、まるで自分が臆しているかのような錯覚に陥ってしまう。一度に大量の“いかく”を受け過ぎたせいかもしれない。おそらく俺の攻撃力は最低値まで下がっている。力ずくの突破も不可能という状況……いよいよ以てヤバイ。敵も臨戦態勢でもう待ったなし! 

 

「クゥゥン……」

「しっかりしろ! 絶対助けてやる! だからもうしばらくこらえろ!」

 

 抱えているガーディからは生気がほとんど感じられない。弱弱しい鳴き声が漏れた。これ以上グズグズもしていられないか。早く手当てして絶対に助けてやらないといけない。俺もこいつもここで終わっていいはずがない!

 

 “たたかう”ダメ。“ポケモン”いない。“にげる”不可。残りのコマンドはもう“どうぐ”しかない! 何かないかと祈りながら急いでバッグを探すと面白いものを見つけた。ピッピにんぎょうが夜ダメなら、これは夜にこそ真価を発揮するかもしれない。

 

「一か八か……くらえっ! けむりだま!」

 

 ボワッッ!!

 

 暗黒が広がり敵は全員算を乱して統制がとれなくなっていた。しかもこっちはサーチのおかげでポケモンのいる方向は視えているので支障がない。

 

「とっさだったが、どうやら大正解を引き当てたらしい。ギリギリもいいところだが、俺の悪運もまだ尽きちゃいねぇな」

 

 だが油断はできない。奴さんらは鼻が利く。ジュンサーがよく捜査のために手持ちにしているぐらいだし警戒した方がいいだろう。そこで買いだめしていたこしょうをつぶして靴の裏に塗りたくり、においでの追跡を予防した。そしてそのおかげなのか追っ手に見つかることもなく朝を迎えた。

 

 とんでもなく高価な“げんきのかたまり”を惜しまずに使い、オボンとチーゴを食べさせたが一向に目を覚まさない。万能薬に近いこれらのアイテムでダメだとすると手遅れだったのか……。

 

「しっかりしろ! 根性見せろ! 生きろ! お前は強いだろ!」

「ガゥゥ、グゥゥグァーッ……」

 

 まだ苦しそうだ。相当なオーバーキルだったはずだし無理もないか。ここで力尽きれば本当に命が危ない。ガーディの苦しみを少しでも肩代わりして和らげてやりたくて、やさしめに抱き上げて体をゆっくりとさすってあげた。気休め以外の何物でもないが、何もせずにいるなんてできやしない。ずっとそうしたまま時間だけが過ぎていった。日が昇る頃には不眠とオーバーワークが祟り自分までガーディを抱きとめたまま眠ってしまっていた。

 

 ◆

 

 ―ガウガウ―

 

 ん?

 

 ―ガブッ―

 

 ん!?

 

「いたっ! 何すんだっ! ガブッといくのはダメだろ!?……あっ、お前っ。もう良くなったのか!? ちょっと、うわっ、ちょっと待って!」

 

 痛みで目を覚ますと眼の前に助けたガーディがいて、俺が起きて嬉しいのかそのまま顔中をなめられびっしょり濡れてしまった。けど喜んでいる気持ちが伝わってきて悪い気はしない。

 

 頭を撫でると目を細めて頬ずりしてくる。あったかい。ほのおポケモンだからだろうか、心の芯まであったかくなる。あれ、心っていうのは変か。でもなんか体というよりは心って感じがする。

 

 手当をしている間は余裕がなかったが、改めてこうして触れ合っているとすごく感慨深いものがある。こんなにかわいい生き物が現実にいて、こうして直に触れられるなんて……。知らない場所に飛ばされてひどい目にあったけど、今はこっちの世界も悪くないって思える。

 

「よし、おいで」

「ガーウーッ!!」

「おっと! んー、よしよし。ホントにかわぃぃ……」

「クゥゥ……」

 

 手招きして両手を広げると勢いよく飛びついてきた。元気過ぎてこっちが倒れそうになる。素直で人懐っこくてあったかくて……幸せ過ぎてなんか色々ダメになりそう……。嬉しくてつい思いっきり抱きしめてしまった。力を入れ過ぎたかと思ったがガーディも嬉しかったようでこちらに体を預けてくる。うわぁ、めっちゃいい子……。

 

 惚けてばかりもいられない。ガーディの様子を見ると顔色は良好。体力も全快しているようだし、体調は大丈夫みたいだ。日はもう高く上がっている。あれから結構時間も経っていたようだな。あのときはヒヤヒヤしたし、今でも思い出すと寒気がするが間に合って良かった。

 

 キュルキュルゥゥゥ

 

「ガウゥー」

「あーそうか、結構時間が経ってるもんな。今日は大変だったしお腹も減っただろう。これ食べて」

 

 腹の虫が鳴ったので、念のためチーゴとオレンを選んでガーディにあげた。割と好物なのか、目を輝かせて喜んで食べた。見てるだけで口元がにやけてしまう。なんとなく食べている姿からなつきアップのテロップが見えそうな気がした。やっぱり食べ物でなつかせるのは基本なんだな……。いいことを覚えた。ちなみになつき度はアナライズしてもわからないままだ。そういう指標はこの世界にはないのか、あるいはこの能力の限界なのか……それはまだわからない。

 

 そういや、こんなにいい子なのに一度は逃がしてしまったんだよなぁ。冷静に考えると暴挙過ぎた。また会えたのは幸運としかいいようがない。めちゃくちゃ後悔していたが、結局これで良かったのかもしれない。俺の直感も捨てたものじゃないな。今度こそは絶対に仲間にしたい。

 

「なぁガーディ、話があるんだが」

「ガウ」

 

 食べるのをやめて行儀良く俺の話を待ってくれる。最初あった時は鋭く周りを寄せつけないような雰囲気だったのに、素直でお利口でいいポケモン。

 

「改めて聞いてみたいんだけどさ、どう? 俺の最初のパートナーになってくれない?」

「……ガウーン」

 

 あんまり芳しくない感じの返事だな。けっこう懐いていると思ったんだが……まだ押しが足りないのか。いや、昨日のようにまた何か理由があるのかも。

 

「あの目に傷のあるボスガーディ、あいつに勝つまで諦めきれないのか? お前、なんであいつらと無茶な勝負をしたんだ。わからないことじゃないだろうに」

「グゥゥ、ガウガウガ!」

 

 聞けば、このガーディは昔ここの群れを追い出されて、強くなったから見返すためにあんなことをしたらしい。たしかにガーディが出てくるのはこの辺りじゃ他にはない。まさか俺と似たような境遇のポケモンがいるとは。

 

 ……さりげなくまた言葉はしゃべれないのに感覚で言いたいことがわかったな。本当になんでだろうな。いや、今は勧誘が先か。

 

「そうか。実はさ、俺も似たようなもんなんだよ。自分の町の奴らに嫌われている。しかもどん底生活付き。でもな、俺は絶対に這い上ってこの地方、いや、世界で1番強くなるつもりだ。だからこんなところでグズグズ立ち止まっている暇はない。そのためにお前の力を貸してくれ。お前は一目見た瞬間からすぐわかった。モノが違う。すごい才能が眠っている。それにバトルのセンスもある。強くなりたい志もある。ただ、今はそれを御しきれるトレーナーがついてない。自分を活かせてないからあいつに負けたんだ。能力では負けていなかったし」

「……グウーン」

 

 悔しさからか低く唸り声をあげたが、俺の言葉に思いあたるところはあるらしい。何も言わないな。

 

「ここを出よう。ここを出て色んな所に行こう。俺が世界を見せてやるから、一緒に来いよっ! お前とは気が合いそうだし、きっといいパートナーになれる。だから……」

「ガウアッ」

「ん、なに? うわっと、待て待て! ちょっと待ておいっ!」

 

 その先まで言うことはなかった。いきなりじゃれついてきて戸惑ったが、これはガーディなりのOKの返事らしい。聞けば、自分を倒した実力と命を救われた恩があるから最初からついてくる気だったらしい。倒れていた間もうっすらと意識はあったようだ。それならなんで最初からすぐにじゃれてこなかったのか尋ねると、真剣に誘われて嬉し過ぎてずっと聞いていたかったが、さっきは耐え切れずにあのように飛び出してしまったということらしい。

 

 拍子抜けしてしまったが、最初の仲間ができて今までの中で最も嬉しいのは間違いない。そういえばガーディといえば忠犬ポケモンだし、恩は忘れないトレーナー思いのポケモンなのかもなぁーと昔の記憶の知識を思い出しながら、ガーディと改めて握手した。

 

「よろしくな」

「ガウガウ」

 

 ガーディは前足を出してがっしり握り合った。やっぱりポケモンでは最初の1体ってすごい大事。

 

「そういや、ニックネームをつけてやろうか。ポケモンといえば、だしな」

「ガウンッ!」

 

 その提案にすぐに頷き、期待に満ちた表情で尻尾を振って目を輝かせている。ここまでされたら張り切らざるを得ない。さて、どうしたものか。ガーディと言えばなんだ? ほのお、いぬ、……いぬぅ……。

 

「犬なら、ハチ公?」

 

 ガブッ

 

「いだぁぁ!?」

 

 いきなり飼い犬に手をかまれた! 冗談にならないレベルで痛いんだけど! まさか“かみつく”使ったのか! それはダメだろ! こっちは平凡な人間だってことお忘れか? いや、1回戦闘しているからセーフと思われているのか。できたらもうポケモンと自分がバトルなんてやりたくない。

 

「ガウアウア!」

「ごめんごめん、怒るな怒るな。もうふざけないから大丈夫だって。いや、ふざけたつもりは別になかったんだけどな。んー、じゃあ無難にポチでいっか……あっ、今のはウソだって! ちょっと、逃げようとするな! ごめんちゃんとよく考えるから!」

 

 冗談のつもりなのだろうが森の中に消えようとするのはやめてくれ。それは俺に効く。よく考えたらまだボールに入れてすらないし洒落にならない。とはいってもニックネームなんて思いつかないんだよなぁ。一旦犬から離れた方がいいかもしれない。ほのおか……。そういやいい毛並みだな。まるで燃えているように見える。……これいいかも!

 

「じゃあ、ほのおタイプで毛並みも燃えているみたいだから、グレン(紅蓮)でどうだ?」

 

 ウウウ、と唸りながら飛びかかるかやめるか何度もポーズを変えておどかした後、満面の笑みで飛びついてきた。とりあえず前見えないから顔から降りてっ。

 

「わかったわかった。気に入ってくれてなにより。ったく、大げさだなぁ。じゃ、これからはグレンって呼ぶからな」

「ガウアッ!」

「こっちこそよろしく、グレン。まさか最初にこんな出会いがあるなんて、ほんとに運命的なものを感じる。これからもこんな運命的な出会いがたくさんあればいいなぁ」

 

 ――ッ!!――

 

 あれ、今何かいたような……気のせい?……なんかちょっと頭が痛い。最近木の上生活でよく寝れていないしそのせいか。まぁともあれ、ようやくこれでこの世界のトレーナーとして第一歩を踏み出せた。

 

 ◆

 

「グレン、トドメ!」

「ガウッ!」

「ポポッポォ」

 

 よし、一丁上がり! 俺はあんなに苦労してようやく倒したのに、グレンは簡単に倒しちゃうな。ものすごく楽になった。これが普通なんだよな。

 

「さすがだな。グレンこっちにおいで」

「ガーウ」

 

 ご褒美代わりに頭を撫でてあげてから傷の手当てを行った。その間、グレンが仲間になりいい機会なので、ついでに気になることを色々聞いてみた。

 

「なぁ、ボールの中ってどんな感じ? 窮屈だったりしない?」

「ガウガー」

「ふーん……」

 

 ボールの中の居心地は悪くないようで、外の様子もうかがえたりするらしい。快適になるように配慮はされているようだ。外も見れるというので試しにその日の夜に出してみたら就寝中だったのでいつでも外を見ているわけではないようだった。

 

「ガウガッ! ガウガウガウー!」

「ごめんごめん、つい気になって。もうしないから許して」

 

 安眠を妨げられてグレンはご立腹だな。不必要に起こすなと注意されてしまった。また“かみつく”でもされたらかなわないので抱き上げて頭を撫でてあげると、すぐにおとなしくなってそのまま眠ってしまった。俺の腕の中って寝心地がいいのかな……。

 

「グゥゥー……zzz」

「戦っている時とは打って変わって無防備でかわいい寝顔。安心しきっているのかぐっすりだな。冗談でかみつかれたりはしたけど、本当は俺の事トレーナーとして信頼してくれているのかも。俺を信じてついてきてくれたんだもんな。はぁ……トレーナーってのは責任重大だな。グレン……一緒に頑張ろうな」

「ガーウ……zzz」

 

 こんな形で期待されていることを知ってしまったら、イヤでもその重みを感じてしまう。バトルに勝つだけじゃない。ちゃんと育てて面倒も見てあげないといけない。口では簡単にトレーナーになるといってもそれに伴う責任までは深く考えてなかった。

 

 ここじゃまだまだ俺も初心者なんだな。初心者だっていうなら別にそれでいい。グレンと一緒に成長していけばいいんだから。

 

 グレンとは話が大まかには通じるので、唯一の話し相手ということもありよくしゃべった。とても賢いようで、グレンは物覚えがいいのでバトルの基本、タイプ相性や三値のおおまかな説明をしてみたり、こっちの世界に来てから考えた戦術なども教え、技の修練や実験などを同時並行で進めながら急ピッチで努力値の振り分けを進めた。下手な調整はここじゃ無意味だろうし、個体値と性格を踏まえればH4AS252がベストか。丁度この辺りのポケモンは攻撃と素早さの努力値を獲得できる奴が多い。

 

 しかし努力値稼ぎがなかなか進まない。現実となったことで野生ポケモンを探すのも一苦労という感じで作業は難航していた。無限にポケモンがいるわけじゃないからなぁ。だが目に見えて強くなっていったのでグレンもやる気を出し、充実した日々を過ごしていた。

 




メタな話ですがこれの原案を最初に書いたのはだいぶ昔、確かプラーズマー団が暴れていた頃です
その時は野生のポケモンがタマゴ技を覚えたりはしなかったはずですが、今は覚えるみたいですね
主人公の知識もそのときの作者と同じでクリムガンまでと思ってください
ケロマツ辺りから怪しいです(作者は当然わかっています)

その影響でフェアリーとかいう謎タイプは国内、つまり素敵ファッションがいるところまでの範囲では確認されていないという設定にします
ピクシーのフェアリー属性とかは海外限定のリージョンフォルムみたいなイメージです。

題材がカントーの時点で作者が化石なのはお察しですし
昔のポケモンをプレイする気分で見てもらえれば
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