Another Trainer   作:りんごうさぎ

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作者のトラウマナツメ登場
アニメのヤバナツメのインパクトが強過ぎてそのイメージでしか書けず、この人だけ完全にゲームのキャラとかけ離れてます
「たたかうの すき じゃない けど」ってこれ誰ですか?

ポケモンのデータ中の「@メタルコート」は持ち物がメタルコートという意味です
メタルコートが道具なのでまあわかるとは思いますが補足しておきます



5.恐怖再来! 負け即人形!? 超能力を見極めろ!

 さて、ブルーと一緒にいるのも懐かしい気分だが、落ち着いたところでさっそく町へ出て主要な場所をグルっと見て回ろう。

 

 まずは格闘道場に足を運び道場破り。ユーレイを使うと簡単に完封できた。基本ノーマル技とかくとう技しか使わないからな。ポケモンはもうレッドとグリーンに2体とも持っていかれていた。この短期間で何度も看板を持っていかれそうになっていることを思えばなかなか災難だな。ほしいものもないし経験値稼ぎにはなったから珍しく何も取らず許してあげた。

 

 次はモノマネむすめも見に行き、技を見せてもらった。ものまね芸もついでに見た……というか見せられた。異様に腹の立つものまねでブルーが爆笑しただけだったが。

 

 最後に……ナツメの親父さんに会ってナツメについて情報収集をすることにした。

 

 そう、思い出すのはタマムシを脱出する前の頃。俺は昔一度ヤマブキに来た際にナツメに見つかりイヤな言葉を残されている。エスパーはどうしても少し、いや結構、むしろかなり……苦手なんだよな。だからこそ先に情報を仕入れて対策を打つ。

 

「はっきりという あいつは 強過ぎる もうダメだ 私の手には 負えない」

「……」

「お父さんでもどうにもできない異端児って噂は本当なのね。ちょっと怖い」

 

 ナツメ、お前ミュウツーみたいなこと言われているぞ。ほぼセリフそのままだろ。むしろナツメがミュウツーなんじゃないか? ……今すごい説が爆誕したな。

 

 結局エスパー親父はなんの役にも立たなかったので、腹を括ってやけくそでジムに乗り込んだ。

 

「おーい、ジム戦に来た。誰か……いないな」

 

 どういうわけか中は無人。しかも受付すらない。人がいないとかではなく受付そのものがない。ここほんとにジムだよな? 看板にはたしかにエスパー少女ナツメ、と書いてあったはずだし。

 

「どういうことなのこれ?」

「おかしい。エスパーだから本人が待ち構えているパターンまでありえると踏んでいたんだが。逆になんもないとそれはそれで何かありそうで怖いな。あなたの来る予感は3年前からあったのよ、ぐらいは言われる展開を期待していたが、当てが外れたな」

「そのセリフ、なんかエスパーなら本当に言いそうな気がするわ」

 

 まあ本当に言うセリフだからな。全く、こっちは散々警戒していたのに肩透かしで気が抜けた。

 

「当てが外れて悪かったわね」

 

 油断していたら図ったようなタイミングでいきなり背後に気配が!

 

「出たぁ!?」

「げえぇぇ!!」

「失礼ね。ゴーストポケモンを見たような声を出さないで。私がナツメよ。ついてきなさい」

 

 むしろゴーストタイプ(ユーレイ)みたいな声が出たわ! 気を抜いた途端出てこなくてもいいだろ。マジで心臓に悪い。

 

 前を行くナツメは淡々と歩いて何も言わず奥に向かって歩いている。フィールドへの道中なんか言われるかと思ったが何も無いな。前は気分が悪くなったし、ここに来るにあたってそのこともだいぶ警戒していたが特に調子も悪くはならず取り越し苦労だったか。

 

 ……と思ったタイミングでナツメが急に振り返って口を開いた。なんでそう一々こっちが気を緩めた瞬間瞬間を狙い撃ちしてくるんだ。

 

「やっぱり……あなたはここに来たわね。ここに来る時刻を予知できなかったのはあなたが初めてよ。思った通り、あなたは普通じゃない。久々に面白い人間を見つけた。期待しているわ。ちゃんと私を楽しませてね」

 

 “やっぱり”と言っているから完全に顔を覚えられていたようだな。もう忘れとけよ! ジムって毎日いくらでもトレーナーが来ているんじゃないのか?

 

「やっぱりバレてるか。忘れろよな」

「あれ、シショーナツメさんと知り合いなの?」

「いいや、一度一方的に絡まれたことがあるだけだ」

「私はずっと待っていたわ。あなたのようなオーラは見たことないもの。なんでも先のことが分かってしまうのにも退屈していたし。ねぇ、前も聞いたけどあなた何者? やっぱりただの人間とは思えない。実はポケモンだったりとかじゃないの?」

「ええっ! ここにきてシショー実はポケモン説が出るの!?」

 

 適当に言っているだけなのだろうが、なんとなく外し方がイヤな感じだな。下手したら俺がこの世界の住人とは違うことに気づくんじゃないか、こいつ。聞かれたらその時点でウソが言えないから詰むのが怖い。やっぱこいつマジもんのエスパーだな。ほんとに勘弁してくれ。

 

 それにさっき、ここに来る時刻が~と言っていたから、チャレンジャーがいつここに来るか分刻み、あるいは秒刻みでわかるんだろうな。

 

「なるほど。予知できるから受け付けもなしか。いつもは自分でチャレンジャーを出迎えて、そのまま対戦すると。弟子も居ないのか?」

「そんなの居ても仕方ないでしょう? 予知能力のある私なら1人で十分なんだから。さ、着いたわ。どっちから来るの?」

「シショー、ここは私から行かせて。ランクは7にして」

「いいわ。じゃ、使用ポケモンは2体。審判は私自身がする」

 

 さりげにランク7にはノーリアクションか。しかも審判なしと来た。

 

「え、それってどうなの?」

「審判は不要でしょう? 私にはポケモンの状態がハッキリわかるから」

 

 そういう問題じゃないだろ。こいつ、性格が抜き身過ぎる。こういうところが異端児と言われる所以なのだろうな。

 

「まあいいや、それじゃいくわよ! レーちゃん!」

「ヤドラン」

 

 ヤドラン Lv40 ひかえめ

 個 10-2-27-31-31-1

 努 0-0-0-252-252-4

 

 レアコイル Lv32 アナライズ

 実 104-47-69-122-58-48

 技 10まんボルト 

   でんじは 

   かみなり  

   でんじほう  

   ソニックブーム 

   きんぞくおん 

 

 相性はいいな。……そういえばヤドランはハナダでも見たな。ジムのポケモンがダブっているのはいいのか? ナツメの場合尋ねてみても他人の事なんか我関せずって感じの答えを返してきそう。

 

「10まんボルト」

「……」

 

 ナツメは何の指示もしないがヤドランはいきなり“サイコキネシス”を繰りだした。技は相殺。それを見てブルーが一言。

 

「シショーみたいに悟らせないタイプか。ならまずは先に“でんじは”よ!」

 

 いやいやいやっ!! ちょっと待て!!

 

 ちょっとブルーさん、なんでそんなあっさり受け容れてんの?! 俺のせいなのは間違いないだろうけど、その俺でも物凄く驚いている。こんなに冷静に対応できるのはさすがにブルーだけだろう。慣れってすごいな。

 

 ナツメは合図している様子すらないから、おそらくテレパシーを使っているとかそういうオチだな。こりゃ反則染みているぞ。だが攻め方は単調。ずっと“サイコキネシス”を連打するだけ。レアコイルはダメージを負うもののしっかり受けきって“でんじは”で相手をまひさせた。

 

 基本的にブルーは“サイコキネシス”を全て“10まんボルト”で受けて、後はしびれた分だけターンができて順当にブルーが勝った。ずいぶんあっさりした内容だな。

 

「ふーん。それなりにやるわね。次はフーディンよ」

 

 フーディン Lv41 ひかえめ

 個 4-6-7-31-31-26

 努 0-0-0-252-252-6

 

 こいつ……さっきのヤドランもだが、何気に特攻と特防の個体値がVだ。しかもそこを狙ったかのように極振り。ここまで完璧な育成は初めて見たな。2連続となればまぐれでもなさそうだし、振り方そのものはあれだが努力値の効率は最高。この世界で間違いなく最も良い育て方をされている。

 

 特殊に拘るのはエスパーだから特殊能力を高めたのか? あるいは“めいそう”が関係しているとか? いや、もしかすると偶然の産物で狙ったわけではない、ということもあるか。偏った相手とばかり戦闘すればこうなるからな。戦い方自体はエスパーのくせに攻撃一辺倒のノーキンだし、ナツメがこのシステムに気づけるわけもないか。

 

 だがタケシの例もあるしジムリーダークラスなら育成に近いことをしているパターンもあるのかも。驚いたが、これからはこの程度はありえるものと思っておく方が動揺もしないか。チャンピオンぐらい簡単になれると高を括っていたが、俺の考える程甘い世界でもないらしい。

 

 ……

 

 ここまでしっかりした育成を見るのは初めてだったのもあり、あれこれ努力値振りについて考えこんでいると勝負中のはずのブルーから声をかけられた。

 

「ねぇシショー、みたみた? とうとうピーちゃんまでピジョットに進化したのよ! もうわたしのパーティーすごくない?!」

「……ん、そうだな。けど、相手が攻撃一辺倒じゃなきゃこうはいかないから、まだ……」

「フフ、オーラが乱れているわよ。何食わぬ顔で答えているけど、あなた今試合見てなかったわね」

「え、ウソでしょ!? シショーひっどーい。久々にシショーの前だから張り切ったのに! そんなんだったらわたしも応援してあげないからね!」

「そういやエスパーにはウソがバレるんだったか。ちなみになんなんだそのオーラって」

 

 今日初めてウソを言ったがすぐに指摘された。演技は悪くなかったはずなのに……恐ろしい能力だな。ブルーは俺の方を見ないでむくれたまま観客席に上がった。……褒めてほしかったんだろうな。

 

「あんたみたいな人間に言ったところでわかりはしないわ。私はムダなことはしない主義なの。そんなことよりさっさとリングに上がりなさい」

「さっさと始めて、シショーなんか負けちゃえばいいのよ!」

 

 ブルーはまだ観客席でも怒っているが、まさかこんなに早く決着がつくとは思いもしなかったんだから仕方ないだろ。進化まで見逃したことは完全に不覚としか言いようがないが。

 

 ……いや、ナツメがわざと手を抜いたのかもしれないな。最初少し見た感じではあっさりし過ぎていた。どうにもナツメは俺とのバトルにご執心らしい。こんなヤバそうな奴に目をつけられるとはな。別に普段の行いは悪くないのに。

 

 オーラについては以前も聞いた気がするし、出来たら教えてもらいたかったがこいつには聞くだけムダだろうな。さっきの物言いは若干イラッと来たが。

 

 ランクは7に上げたいがそれは現在戦闘不能になっている。6で我慢しておくか。

 

「ランク7……は無理だろうからランク6でやってくれ」

「遠慮はいらないわ。ランク8のフルバトルで戦ってあげる。あなたいつもランクを最大にしているでしょう? 私も全力でやってみたいと思っていたの。いつもつまらない勝負ばかりだから。これでもあなたにはものすごく期待しているの。楽しませてもらうわ」

「なるほど、さすがエスパーだな。ランクを変えることまで予測済みか」

「勘違いしているわね。これはエリカ達から聞きだしたの。あなた、あの時タマムシへ向かっていたでしょう? どうせいつもランクを上げているのなら最初からランク8まで上げればお互いWin-Winじゃない?」

 

 わざわざ行き先を考えて聞き出したのはホントに俺の予知ができないからと見るべきか。そこが唯一の救いだな。

 

「規則ではランクは上限が7までらしいがいいのか?」

「そんなつまらない規則どうでもいい。私は自分の力を高め、自分に足りないものを探し、エスパーの技を極めるためにわざわざ面倒なジムリーダーの仕事をしている。なのに、ランク8でここに挑戦に来るのはやわなトレーナーとポケモンばかり……しかも負けたら最後、二度と誰もこない。最近じゃ低ランクの相手ばかりでつまらなかったの。あなたはどうかしら? まぐれでもいいから、私が本気を出しても大丈夫だと嬉しいのだけど」

 

 何か所々どっかで聞いたようなセリフだな。ジムリーダーにも色々いるが、ここまでハッキリと自己中心的な奴は初めて見た。完全にバトルジャンキー。逆に清々しいぐらいだ。もちろん、チャレンジャーとしては迷惑この上ないだろうが。

 

「異端児って噂は本当のようだな。規則破り上等、トレーナーは全員再起不能か。なあ、もし俺が勝てなかったらランクを下げてもいいのか?」

 

 本物のバトルジャンキーがどんな反応をするか一度見てみたくて興味本位で言ってみた。しかし俺はすぐにこの発言を後悔した。

 

「は? どういうつもり? まさか怖気づいたの? ……失望させないで。いまさら遅い。もうランク8以外での挑戦は認めない。勝つまでやれ。試合放棄すれば人形にしてやる」

「え……」

「ナツメさん、シショーと同じぐらいこわぁぁ」

 

 人形……ナツメ……ものすごくイヤなことを思い出した。まさかこいつも人間を人形に変えることができるのか……。そうなればもう助からない。ずっとこいつのおもちゃにされる。

 

 まるでかなしばりにあったかのように体が動かない。これはエスパーの力じゃない。恐怖で体が竦んでいるんだ……!

 

 何も言わなくなった俺を見てナツメは語気を強めた。

 

「どういうつもり? 黙ってないで何か言いなさい。まさか本当に試合放棄するつもり? なんなら今あなたを操り人形にしてあげましょうか? 冗談で言ってるわけじゃないからね。私ならサイコキネシスでその程度造作もないわよ」

「あ、そういう意味か」

 

 人形って、操り人形かよ! 紛らわしい! 脅かすなよ! 第一、人を無機物に変えるなんて簡単にできるわけないんだ。さっきはどうかしていた。

 

 だいたい昔の記憶に囚われるなんて愚か過ぎる。今目の前にあるもの、それだけが俺にとっての真実。それ以外は所詮幻に過ぎない。ナツメの言葉も、単なる脅しなら何も怖くない。

 

 気持ちが弱気ではダメだ。あの頃を思い出せ……負け即人生終了の絶望的な戦いの連続。あの頃の感覚を呼び起こすんだ。今回は本当に藪をつついて何とやら、余計なこと聞いてしまった。だがこれでもう臆した気持ちは吹っ切れた。あの頃のように、命を懸ける覚悟でエスパーを倒す。

 

「は? なにか言ったかしら?」

「……ナツメ、俺は逃げも隠れもしねぇ。ここでお前を倒して、エスパー恐るるに足らずって証明してやる! 俺が負けたら操り人形でもなんでも好きにしな!」

「あら、今度は一転して威勢がいいわね。さっきまで臆して体が動かないのかと思ったけど、案外根性はあるようね。まぁ、始めから期待外れな結果ならタダではすまさないつもりだったけど。あなたがどの程度持ちこたえられるか、見せてもらおうかしら」

 

 まさに絶対零度の視線。言葉にも棘がある。次に下手なこと言えばどうなるか……。一応俺はまだランク8にしてくれとすら言ってないはずだが、勝手に強制される流れだし……。

 

 だがこれでいい。楽に勝とうなんて気はサラサラない。上から目線のこいつを地べたに這いつくばらせてやる。

 

「上等! ランクも8で結構。今のはお前の反応を試しに見たかっただけだ。それに、俺は微塵も負けるとは思ってない。お前に膝を着かせて参りましたと言わせてやるよ」

「ふーん。ウソ……ではないわね。本当の私に対峙した人間は皆恐怖で身が竦むか逃げ出すかのどちらかなのだけど、心の底から勝つ気でいるトレーナーはあなたが初めてよ。やはりいいものを見つけた。……さぁ、早くボールを出しなさい。さっきと同じ、審判はなしよ」

「いいぜ、俺も審判はいらないと思っているクチだしな」

 

 合図なしで同時にポケモンをくりだした。

 

「バリヤード」

「頼んだグレン」

 

 グレン Lv37 

 実 123-121-72-87-63-121

 技 1かえんほうしゃ 

   2かえんぐるま 

   3しんそく 

   4かみなりのキバ 

   5まもる

   6みがわり 

   7オーバーヒート 

   8こうそくいどう 

   9ひのこ 

  10おにび

 

 バリヤード Lv46 ひかえめ

 個 4-6-5-31-31-24

 努 0-0-0-252-252-6

 実 94-49-67-154-158-91

 

「恐ろしいな」

「何を驚いているの? ランク8なのだからレベルが高いのは当然でしょう?」

「レベルじゃなくて特殊能力の高さに感心したんだ……マジに全員最高なのか」

「サイコパワーのこと? 私はその力を最大限に高める修行をしている。私の育てたポケモンはすべて限界までサイコパワーを高めてあるわ」

「偶然ではなさそうだな。とすると、間違いなくあんたが最強のエスパー使いだ。こんな芸当を狙ってできる奴は初めて見た」

 

 タケシも防御に極振りはしていたが個体値はVじゃなかった。それに全員が個体値Vとなるとゲットのほうの腕もヤバいな。こいつが排他的な人間じゃなきゃ育成ノウハウが何百年分も進む革命が起きていただろう。

 

「あなた、ちゃんとサイコパワーがわかっているの? まさかあなたもサイコトレーナーなのかしら。……まぁどうでもいいわ。始めるわよ。このコインが落ちたら開始よ。いいわね」

「その方法で構わないが、それが落ちるタイミングを超能力で変えたりできないのか?」

「もちろんできるわ。でもそんなつまらないこと私がするわけないんだから、問題ないでしょ」

 

 こいつ性格が抜き身過ぎる。ウソは言えないのが当たり前っていう感覚が根付いているのか、本気でそう思っているのか。いずれにせよ、こんな性格じゃ周りとの軋轢は避けられないだろうな。

 

「……軽い冗談みたいなもんだ。本当にできるとは思わなかったが」

「そう」

 

 短く答えるとすぐにコイントスをした。開始の一言もなしとは、ムダなことは徹底的にしないらしい。ピン、とコインが弾かれて、ゆっくりと地面に落ちた。

 

「6」

「……」

 

 空気が歪んだと思ったらもう“みがわり”が消えていた。技の出が早い! しかも攻撃が見えない?!

 

「なにっ!?」

 

 驚いているうちにすぐ2発目が当たって壁と激突、戦闘不能になった。さっきの試合では“サイコキネシス”は可視光線だったが、消すこともできるのか。厄介だな。

 

 このジムは“サイコキネシス”を研究しているというわけか。たしかもらえるわざマシンは“めいそう”だった気がしたが鍛えようがないからこっちを鍛えているのかもしれない。

 

「うそっ! グレンちゃんが何もできずにやられるところなんて初めて見た!」

「ふぅ、大したことないわね。やっぱりしょせんはその程度なのかしら」

「言ってくれるな。こんな初見殺しかましといてよく言うぜ……。一応言っとくが、二度は同じ手はくわない」

「そうでないと困るわ。簡単に潰れないでね?」

 

 よほど期待されているらしいな。今のも俺を試すためにわざと挑発している感じだ。あっちはまだまだ余裕みたいだが、あぐらをかいていると勝負は一瞬で決まるぞ?

 

 ここはさっさと切り札を出したいところではあるが、勝ち急ぐと自滅する。俺はここまでまだ相手の手の内をほとんど見れていない。ならば確実に勝ちにいくなら少しだけ様子見しておくか。こいつは何してくるかわからない怖さがあるし。

 

 この勝負、“サイコキネシス”の見極めが勝敗をわける。トレーナーの腕の見せ所ってわけだ。

 

「いけ、ユーレイ」

 

 ユーレイ Lv30 

 実 83-51-48-122-45-99

 技 1シャドーボール

   210まんボルト

   3きあいだま

   4さいみんじゅつ

   5まもる

   6みがわり

   7あやしいひかり

   8みちづれ

 

「出た、シショーのネーミングセンス」

「ゴーストタイプ! 幽霊ポケモンを使うなんて、面白いじゃない……!」

 

 こいつ、若干イヤそうに見えるなぁ。やはりゴーストは弱点だし、苦手意識はあるのかもしれない。あとそこの外野、聞こえてるぞ。

 

「……」

 

 これだ。技が来た! 

 

「下へ、6,1」

 

 今の感じ……俺の考えが正しければ、やはり“サイコキネシス”にも弱点はあるな。もう少し検証するか。

 

 地面に潜って撹乱しながら隙をみて地上に上がり“みがわり”を張り、それを盾にして無理やり“シャドーボール”を叩き込んだ。バリヤードはうまく“ねんりき”を自分にかけて軟着陸したが、その間に張り直し、また同じ手で攻撃を当て気絶させた。

 

 さすがに“みがわり”を地中で使うことはできないが、すり抜けを使えば隙を作ることはそこまで難しくない。ユーレイにはこの戦術がかなりマッチしており、自分より遅い相手ならほぼ“みがわり”だけで勝てる。

 

「どういうこと? ……攻撃がちゃんと通らない。何をしたの? ゴーストお得意の小細工?」

「どうした、一体やられただけでえらく余裕がないな。次は何で来るんだ?」

「……いいわ、今度は全力で叩き潰して壊してあげる。次はこれでどう?」

「ジュワッ!」

 

 ここに来てスターミーか。割とガチなポケモンが来たな。能力も高い。一旦様子見しておいて正解だったか。こいつの手持ちはフーディン使ってたの以外はモルフォンぐらいしか覚えていないが、こんなの絶対に使ってないだろ。エスパータイプがついていればなんでもアリなのか? 

 

 スターミー Lv45 ひかえめ 

 個 10-0-4-31-31-28 

 努 0-0-0-252-252-6

 実 113-64-83-150-123-122

 

 さすが、4振りでこの速さか。能力はかなり理想的だな。結構手強い。まともに勝つのは厳しいか。

 

「考え事とは、なめられたものね」

「しまった!」

「シショー何してるの、危ない!?」

「もらったわ!」

「……なーんてな、8」

 

 “サイコキネシス”直撃で戦闘不能になるが、ユーレイの影が伸びてスターミーにまとわりつき、あっという間に両者戦闘不能となった。ユーレイで素早くてめんどくさいポケモンを消せたのは幸先いい。

 

 今使った技は“みちづれ”。この技を使った直後戦闘不能になると相手も同時に戦闘不能にする。これで2体目……。

 

「ソォォォナノォォォオオオーーーッ!!!!」

「うん、ソウダナ……って、何事だよ?!」

「なんで私のスターミーが!?」

「え、タマゴから孵って、いきなり進化するの!?」

 

 一度に色々起こって全員が混乱状態だな。何があった? ナツメを驚かせてユーレイを満足させてやろうという意図も“みちづれ”にはあったが、逆に自分がびっくりしたわ!

 

「ガガガガ!」

 

 当のユーレイは倒れながら大爆笑。しかしなぜかナツメじゃなくて俺の方を見てないか? やたらと腹の立つ笑い方をするなぁ、ユーレイさんは。喜んでくれたらこの際なんでもいいけどさ。

 

「ブルー何やってんだ? 応援しないとはたしかに聞いたが、まさかそっちでポケモンを進化させるとは思わなかったぞ。どういうことか説明してくれ」

「わたしだってわっかんないわよ! バッグが光りだしたから開けて見たらいきなりポケモンが生まれて、しかも勝手にリングの方に降りちゃうからわたしもそっちに降りようとしたらご覧の有様よ!」

 

 ツッコミどころしかないが……解釈すると、愚かにもこいつはバッグにそのままタマゴを突っ込んで今の今まで放置。いきなり生まれてびっくりし油断した拍子にポケモンが飛び出して、丁度ダブルノックアウトした2体の経験値がそのまま全て格上補正付きでソーナノに転がり込んであっという間にソーナンスに進化したということか。

 

 よし、状況は把握した。

 

「要するにお前の管理不徹底だな。あとで厳重注意」

「なんでそうなるの!」

「なぜそんな結論になるの? 生まれていきなり進化なんて尋常じゃない出来事よ。少なくとも私はそんな話聞いたことない。レベルもすでにかなり高い。その上、そのポケモンエスパータイプみたいだけど、サイコパワーが全く感じられない……こんなエスパーポケモンがいるなんてとても信じられない。何から何までおかし過ぎる」

「別になんでもいいだろ。あんた、バトルジャンキーだから勝負以外は興味ないんだろう? ポケモンやられたんだから次を出せよ、俺はそれ見てから出すから」

「なっ!? 威勢がいいわね。しかもチャレンジャーのみ交代できるからってそこまで露骨なこと考えるなんて……あなたやっぱり普通とは違うわね。ここに来る奴は、フルバトルする場合は2体目がやられた辺りで泣いて降参し始めるものなのだけど、あなたはタフみたいで楽しいわ。もっと楽しませてちょうだいよ? 最後にどんな表情になるか……期待してるわよ」

「期待ってそういうことなの!? ナツメさんってS極振りで性格も補正つき!?」

 

 S極振りってなんだよ。努力値のことをやんわり説明した影響なのか、そんなところまで廃人用語を使わんでいい。

 

「そういえば、ランク8でここに来て負けたら二度と来ないとか言っていたが、他のジムに変えられないから、リタイヤした連中は絶対マスターランクになれないんじゃないか? なかなか鬼畜なことをするな」

「フン、どのみちここで勝てないならリーグに行ったって大した成績は残せやしないわ。だったら別にいいじゃない」

「それは立派なお考えだ。絶対お前は指導者には向いてないな」

「自分が1番わかってる。あなたは私に勝つことだけ考えたら? 次行くわよ、ナッシー!」

「それもそうだな……イナズマ!」

「ナッシーィ」

「ダース!」

 

 ナッシー Lv45 142-81-88-174-105-68

 

 イナズマ Lv36 100-45-49-116-82-145

 技 110まんボルト

   2めざめるパワー

   3あくび

   4バトンタッチ

   5まもる 

   6みがわり

   7こうそくいどう

   8シャドーボール

   9かみなり

  10あまごい 

 

 ナッシーもこれまで通りの能力だな。おかげで特攻がかなり高い。だがここで鈍足はラッキーだ。こっちも余裕ぶってはいるが、バトンを決められなきゃかなり苦しくなる。負けたらヤバいし、いい加減こっちも気を引き締め直さないとな。

 

「“頼むぞ!” 攻撃だけきっちり避けろ」

「……」

 

 やはり“サイコキネシス”が飛んでくる。ナツメは今までこれ以外の技を一度も使っていない。おそらく絶対的な自信があるのだろう。だが、俺はすでにあの技は見切っている。さっきのバリヤード戦で全てわかった。ユーレイならほっといても簡単に避けてくれるから観察に集中できていた。

 

 まず、“サイコキネシス”は必ずポケモンの目の向いている方に飛んでくる。たぶん狙いをつけているのだろう。そしてそれを放つ直前、ポケモンは完全にモーションが静止する。技の発動に集中しているとかだろう。“めいそう”するとサイコパワーが増すような世界だし。この2つに注意して俺が避ける方向を指示すれば不可視といえどイナズマの速さなら避けるのはそこまで難しくない。

 

 こんなに簡単にわかったのは一言でいえばナツメの攻め方が単調だから。一本調子でフェイントのひとつもない。たまに視線を外すとかされたら気づけなかった可能性もある。

 

 ナツメは育て方と能力だけはダントツだが、それに伴うべき技術がない。きっと、今まではその強すぎる力と恐怖が対戦者の目を曇らせていたのだろう。だが一度わかってしまえばこんなに簡単な敵はない。

 

 イナズマはうまく避けながら接近して“あくび”を決めた。さて、お膳立ては整った。あとは時を待つだけ。

 

「ナシーzzz」

「な、どういうこと!」

 

 眠ったな。イナズマにはバトンさせるとき最初に「頼むぞ」と合図するように決めていた。だから俺の指示なしで勝手に「みがあくバトン」を実行する。相手からしたらどうしていきなり眠ったのか皆目見当もつかないはずだ。技名がなければ戦闘中の“あくび”に注意する人間はいない。これが技だなんて思うわけもない。

 

「ここで真打登場! いまこそ真の姿を見せろ……来い! アカサビ!」

「ッサム!!」

「え、すご! アカサビさんなの!? どうしちゃったのよそれっ! まさか進化したの?! ストライクって進化系がいたんだ」

 

 アカサビ Lv37 @メタルコート

 実 110-148-88-48-72-85

 技 1バレットパンチ

   2でんこうせっか

   3むしくい

   4つるぎのまい

   5まもる

   6みがわり

   7とんぼがえり

   8つばめがえし

   9こうそくいどう

  10かわらわり

 

「……?」

 

 ボールから現れたのはメタルコートの力でようやく進化し、ハッサムへ姿を変えたアカサビ。やっとメタルボディになったな。進化により鋼タイプが追加され、合計は変わらないものの、種族値の配分が大幅に変化。タイプ一致の強力な先制技“バレットパンチ”を引っさげて満を持して登場だ。

 

 持ち物のメタルコートは進化だけでなく、鋼タイプの技の威力を1.2倍に高める力もある。なので“バレットパンチ”の威力は特性なども合わせて108になる。その恐ろしさをナツメには存分に味わってもらう。

 

 あちらさんはこっちが仕掛けないから不思議で仕方ないって顔だな。アカサビにもバトンされた場合はすぐに“つるぎのまい”を積むように言ってある。だから出だしが早くムダがない。積み終わったら俺の勝ちだ。

 

「ナッシー!」

「あなた、やる気はあるの? もうナッシーの目も覚めた。何をしていたの?」

「勝つためのことだ」

「あーあ、ナツメさん油断したなぁ。これじゃシショーの勝ちね。ホント容赦ないなー」

「なんですって?」

 

 ブルーの言葉にウソがないとみて警戒を強めたか。だがもう遅い。

 

「3」

「……」

「サムッ」

 

 すさまじい速さで後ろを取って、“むしくい”の一撃でひんしに追い込んだ。イナズマがすでにこうそくいどうを積んでいるからそれを受け継いでいる。素早さは行動の速さに直結するから、バトンするときは“みがわり”よりも先に素早さを上げている。

 

 今のアカサビは攻撃3倍かつ素早さ2倍。もう止まらない。

 

「ひんし!? なんなの今の速さ、レベル30台の動きじゃない!」

「わかりやすいだろ? 相手より速く動いて、一撃で倒す。これが俺の考える最強のポケモン。あんたじゃアカサビには勝てない」

「なら、こっちも速さよ、フーディン!」

「シェェイ」

「甘い甘い。1」

「!?」

 

 動く間もなく戦闘不能。わざわざ計算どころか、レベル以外見る必要もない。種族値で十分予想がつく。ナツメの言う素早さも、先制技の“バレットパンチ”の前には意味を成さない。今のフーディンがレベル48だし、これ以上のポケモンは出てこないだろうな。続けて出て来たヤドランも簡単に“むしくい”で倒し、最後の1体を残すのみ。

 

「こんな、ありえない……私が負けるわけない、負けるわけ……フーディン!」

 

 

 フーディン Lv58 ひかえめ

 実 140-61-63-237-169-162

 

 

 レベル58!? いきなり上がり過ぎだ! まさかまだ本当の全力ではなかったのか?

 

 最初からこんなのが来ていたらヤバかったんじゃ……。それぐらい能力は高い。バトンしていなければアカサビの“バレットパンチ”2発で倒せなきゃ勝ち筋がなかった。

 

 試しにざっと計算すると……0.336→1/3、100、150として5000だから2発で10000……あ、耐久指数余裕で超えてる。アカサビ強っ!! 問題なかった。

 

「勝ちなさい!」

「残念だが、それでも勝てない」

 

 俺が指示するまでもなく“バレットパンチ”を放ち、一撃で勝負はついた。“つるぎのまい”1回で十分のところを2回積んでいるから当たり前だな。フーディンはアカサビに何もさせてもらえないまま倒された。

 

「そんな……!」

 

 やっとだ。やっとアカサビの真の姿が解放された。ハッサムはとてつもなく強い。これを待っていた。先制技で有無を言わさず敵をなぎ倒す、最強のエース。俺の理想!

 

 ……もうエスパーなんか怖くない!

 




(操り)人形にしてやる!

人形化はアニメで実際にしていました。ナツメに負けたことでカスミとタケシが本当に人形の姿にされておもちゃにされます

作者はその回とミュウツーのせいでエスパー最強説を唱えるに至り、本作の独自設定の大半は元を質せばナツメに行きつきます
付加設定はだいたい全部エスパーの一言で説明できます

ミュウツーがねんりきで相手を拘束する演出見たときはどうやったらエスパーに勝てるのか皆目見当もつきませんでした
なお、今でもねんりきの攻略法は思いつきません

とにかくエスパーはヤバいです
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