Another Trainer   作:りんごうさぎ

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6.ねんりきは エスパー少女の スキンシップ

 勝敗は決した。ナツメはバタリと膝をついて動かなくなり、声をかけても反応がない。最初に宣言はしたが本当に膝をつくとは。ナツメは覚えてなかったんだろう。

 

 なお、審判がいないから当然勝者のコールもない。この後どうすればいいんだ? バッジがほしいんだけど……。

 

「あーあ、シショー大人気ないなー。いくらナツメさんが強いからってバトンはズルイわよ。初見殺しがどうこう言うならそれが1番ヒドくない?」

 

 ブルーが下りてきて開口一番に戦術批判かましてくるが、こいつはソーナノの件忘れてないか? この後ちゃんと反省してもらうからな。タマゴがもし割れたらどんなことになっていたのか……あんまり考えたくはない。四次元バッグじゃなければヤバいことになっていたのは間違いない。

 

 ブルーがこんなこと言うのは以前バトンとか技の説明のついでにそれに関する戦術も若干教えてしまったから。黙っていた方が良かったかもしれない。前はシショースゲーしか言わくて素直だったのに……いや、割と最初の方からドン引きはしていたな。クチバジムの催眠の時とか。

 

「こういうのは俺らの世界じゃ対策しない奴が悪いんだよ。それにブルーにはまずタマゴの件を反省してもらわないとな。お前はタマゴをあろうことか何も考えずそのままバッグに入れていた上、孵った後も危ないリングに近づけるし、扱いが雑過ぎる。トレーナーならもう少しポケモンの命を預かる責任感を持て!」

「ぐぅっ! そ、そんなに怒んなくてもいいじゃない! タマゴなんて初めてだからよくわかんなかったんだし。だいたいシショーの世界って何よ、そんな業界知らないわよ。……もしかして裏組織の世界?」

「違うからな。下手したらタマゴがバッグで潰れていたかもしれないんだぞ? 結果的に大量の経験値を得て進化したからお前にとってはかなりラッキーだったが」

「シショーはさっきの進化した理由はわかるの?」

「格上補正だな。普通じゃこんなの無理だ。そいつはソーナノの進化系でソーナンスという名前なんだが、前も言った通り攻撃技を覚えないから最初のレベル上げが鬼のように厳しい。そこを一気にショートカットして今レベル27まで上がっているから、ここからならお前でも比較的楽に育てられる」

 

 “がくしゅうそうち”があれば大変でもないが、この世界にはないみたいだからな。ホントにどう育てているのか皆目見当がつかない。俺がブルーの立場なら、ジム戦で“やどりぎのタネ”とねむり状態の複合で上手くソーナノの交代した瞬間に倒れるようにしてレベルを上げるとかできるが、HP調整が難しいからブルーにはできないだろうしなあ。

 

「うそっ! もうそんなレベルなの!……あ、ホントだ! すっごい!」

 

 ……何気に今ブルーの奴見ただけで判断した。レベルの判定ができるようになっているのか。どうやっているか今度聞いてみたいな。ブリーダーの真理を見られそうな気がする。

 

 と、どうでもいいことを考え始めた時、突然手首が引っ張られてナツメにものすごい剣幕で詰め寄られた。また油断していた!

 

「レイン! あなた、どうやったの! 教えなさい、どうしてあなたは私に勝てたの! 私が負けるなんてありえない! どうやったの、早く答えろ!! 早く!!」

「痛い痛い!!」

 

 さっきまで魂の抜け殻と化していたナツメがいきなり起き上がって、俺に大声を上げながら超能力的なもので手首に圧力をかけてきた。恐ろしい力だ、ブルーの馬鹿力よりも強い。

 

「言いなさい、私はなぜ負けたの! 言わなきゃその手首をへし折る!」

「ええっ! ちょっと落ち着いてよ、どうしちゃったのよナツメさん!」

「いいから言えっ! 早く!」

「わかった、言う通りにするからこれをやめろ! 痛くてしゃべれない!」

 

 なんとかブルーの取り成しのおかげもあって、手首は致命傷で済んだな。……次もう一度くらうわけにはいかない。即座にボールに戻さずにそのままだったアカサビの後ろに隠れた。

 

「なっ! 卑怯よ!」

「エスパーで人を痛めつけるお前には言われたくない! 次変なことをすればもう黙ってないからな!……アカサビさんが」

「シショー……よっぽど痛かったのね。他力本願過ぎてカッコ悪い」

「体裁よりも手首の方が大事だ!」

「……なら、言わなければバッジは渡さない」

「なん……だと……! くっ、こいつ!」

 

 そういった瞬間満面のドヤ顔で俺を見下してきた。ナツメが俺より身長が高いせいで自然とこっちが下になっているのが表情と合わせて腹が立つ!

 

「どう、しゃべる気になった?」

「……なんで負けた原因なんか聞く? 仮にもジムリーダーのクセに」

「私は、昔ある人に負けてからずっと自分に足りないものを考えていたの。だから、私に勝てるような人がいれば、その答えを知っていると思ったわ。でも、私の未来にそんなトレーナーはいなかった。だから私は絶望の中で淡々とジムリーダーをしていた」

「なるほど。そこに俺が来たと。それでそんなに必死なのか。ふーん。俺しか頼れる相手がいないのかぁ」

「うわぁ、シショーその顔はめっちゃ悪いこと考えてそう。S勝負なら負けてないわね」

「ねぇ早くしなさい。早くしないとバッジは渡さない」

「いいぜ。一言でいえば戦略の差だろうな。俺は必勝の戦略をうって、お前はその対策を怠った。だから負けた。確かに攻撃技は強力だったが、サイコキネシス一辺倒で補助技を使わないんじゃ、いくら強くてもそれは頭打ち、限界を迎える。まさに今のお前だ。もうここが自分の限界だって薄々気づいているからそんなに必死なんだろ?」

「……どういうことよ。わかるように、そして詳しく教えなさい!」

「悪いけど、お前に言ってもどうせわかりっこないな。お前みたいなド素人同然のトレーナーには、この話は難し過ぎる。ムダなことはしない主義なんだろ? じゃあ、言う必要もなさそうだな」

「っっ!!」

 

 きいてる きいてる !

 

 今のはただの嫌がらせじゃない。紛れもない俺の本心。だからこそ、それがわかるナツメには余計に堪えるはずだ。本当のことがわかってしまうというのも考え物だよな。

 

「シショーさっきのこと根に持っていたのね。でも、そこまで言う必要はないんじゃない? ちょっといい過ぎよ。シショーの言葉には棘があるし、かわいそうだわ」

「それはどうかなぁ? 俺はバカ正直に思ったことをそのまま述べただけだ。別に悪意があってこんな言い方になったわけではない」

「それって……あ、もしかしてわざと! ナツメさんが本心かウソかすぐにわかるから!……お、鬼!」

 

 なかなか察しが良ろしい。鬼呼ばわりは心外だが。

 

「……私が、ド素人……? そんなわけない……」

「ん? そうだろ? バカの1つ覚えで攻撃技ばかり。それどころか“サイコキネシス”しか使ってなかったんじゃないか? 攻め方も単調。何の工夫もなし。こっちとしては興醒め。倒すのが簡単過ぎて面白くもない。やること為すことまるでポケモンバトルを始めたばかりの子供同然。昔負けた時も補助技使いに負けたんだろ。恐らくゴースト使い辺りに」

「なんでそんなこと!?」

「図星? ホントわかりやすいな。人のオーラは読めても、自分が読まれるのは慣れてないらしい。お前、顔は無表情でも案外態度に出やすいぞ? だから勝負の駆け引きにも負けるんだよ。一からバトルの勉強をやり直した方がいいんじゃない?」

「この私が、一からですって? 今まで公式戦で1回しか負けたことなかったのに、そんなこと言われるなんて……なんで? 何が足りないの? あいつの言っていた足りないものって何?……私はダメなの? やっぱり未来予知の通りこのままで終わるの?」

 

 独白の中でサラッと何気にすごいこと言ったが、ここで畳みかけないとな。

 

「そうそう。どうせ俺には一生勝てないから、早いところ潔くバッジを渡してくれない?」

「くぅぅぅ! ぐぐぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 この一言がトドメになった。みるみる涙目になって顔が真っ赤になった。ずっと高飛車な態度だっただけにブルーみたいな反応で若干めんくらってしまった。

 

「おいおい、急にどうしたんだよ。さっきまであれだけクールだったのに、いきなり泣くことはないだろう。それとも、意外と泣き虫だった?」

「ぐぅぅぅ!」

 

 ものすごい目つきで睨んでくる。視線で人が殺せたらって思ったことはあるが、こいつの場合ほんとにエスパーで人が殺せそうだからシャレにならないな。

 

 ……ま、そうはいってもしょせん人間。うちのアカサビバリアが発動しているうちは安全だから全く怖くないんだけど。

 

「シショー! いくらなんでも口が過ぎるわよ! ウソじゃないってわかるのを利用してこんなことするなんて、まずなんでこんなこと思いつくのよ!……というか、シショーっていつも心の中ではそんなこと思っていたってことよね。……まさかわたしのこともそんな風に思ってたの?!」

「さ、最初だけな」

「ガーン!! いや、それより、ナツメさんどうするのよ! あんなに自信家だったのにこんなにしょげさせるなんて……少し涙目だし。女の涙は安くないのよ!」

「お前、まさかいきなり人の手首を折ろうとした挙句規則破ってバッジを人質にとる奴の肩を持つのか? 今だから言うけど挑戦するときから今までずっと俺は命の危機を感じていたんだぞ?」

「それでもよ! こうなったらもうシショーしか慰められないでしょ。ちゃんと謝ってあげないとかわいそうよ。 シショーにされるとものすごく堪えるのよ!」

 

 経験者の言は違うな。ものすごく気は進まないがバッジのこともあるし、頼まれたことぐらいは教えてやるか。……どうせ何も理解できないだろうし、それで気が済むならいい。今もこっちを睨みながら半泣きのナツメに声をかけた。

 

「仕方ない。どうしても、というなら教えてやってもいいけど? だからもう泣くな。な?」

「ないいぇない! お、お前を睨んでるだけだっ!」

 

 びっくりした。さっきまで音量は大きくはないけどよく通る冷たい声だったのに、子供みたいな大きな震え声になっていた。呂律もちょっと……。いきなりこんな声出されたらビビる、さすがに。

 

「……わかった、俺が悪かった。さっきのは冗談だから、ホラ、もうそんなこと思ってない。だからもうそんなに俺の事睨まないでもらえる? こっちもけっこう怖いから」

「……」

 

 これでもまだ親の仇でも見るような目つきはやめない。手首が怖いが埒が明かないのでアカサビの後ろから出てナツメと正面から向かい合った。

 

「1回落ち着いて、ゆっくり話をしよう、な? ちゃんとお前でもわかるように説明するから」

「絶対そうしなさい。じゃなければ何が何でも手首をねじ切る」

「…………わかった」

「よし」

 

 うわぁ、やっちまった。「よし」の一言で返事したことに対して凄まじい後悔を残した。悪魔との契約だ。最悪な言質をとられた。言質とったらケロッとして表情も声も元に戻っているしあんまりだな。

 

 まさか今のは演技? 女優かお前は!……そういえば後々本当に女優かなんかになっていた気がする。じゃあエスパーの直感で一番効果的な方法を悟って泣いている演技をしたとか?……泣き落としって言葉が脳裏をよぎった。本当にエスパーは最悪だ。

 

「シショー、死なないでね」

 

 言葉とは裏腹にブルーは笑っていた。こいつ楽しんでやがる! こっちはマジでヤバいのにっ。こいつこそ試合を見てなかったのをまだ根に持っているだろ!

 

「覚えてろ……!」

「わたしは忘れっぽいって前も言ったでしょ?」

「レイン、あなた早くこっちに来なさい。私が瞑想する部屋があるから」

「イダッ!? お前、場所を移すのはいいがなんでわざわざ超能力でしかも手首を引っ張るんだ!」

「そこが1番ねんりきをかけやすい。これは私のようなエスパーにとっては軽い挨拶……いや、スキンシップみたいなものよ」

 

 最悪な理由だ! もう絶対にエスパーとはお近づきにはなりたくない!

 

 拉致された後ほんとに根掘り葉掘り聞かれてすごくしんどかった。主に精神的に。なんせウソが言えないからいつもみたいにごまかすのもしんどいし、エスパーだからか鋭い指摘も多い。もうかなり疲れた。

 

 やっとジムを出て外の空気を吸えた時には外は暗くなっていた。案内されたあの部屋真っ白でなんにもないから自分の感覚が全部狂わされてどれぐらいの間いたのかもわからなかった。だが、悪夢は終わったのだ。

 

「それじゃ、約束通りバッジを……」

「じゃ、続きは明日」

「え」

 

 やめろ……それだけは……聞き間違い、聞き間違いであってくれ……。

 

「明日も今日と同じ時間に来なさい。じゃないとこれは渡さない」

「てめぇ……! じゃ、それでも来ないと言ったら?」

「ううぅぅぅ!」

「ああっ!? わかった! ちゃんと行くから!」

「絶対そうしなさい」

 

 また一瞬で元に……! 切り替えが早い。やっぱり演技なのか。でも戻る前は全くそうとは思えない。真に迫るというか、感情が込められているというか……。こんな攻撃バカのノーキンに翻弄されるなんて……。

 

「ぷぷ、シショーって泣き落としにはかなり弱いのね」

「お前がしたらほっていくがな」

「いじわる!」

 

 結局3日ジムに来させられ、その間ナツメのいいなりだった。本当に散々な毎日だった。会うたびにスキンシップだかなんだか知らないが手首を捻じられるし、教えている間ずっと無表情のまま微動だにせず俺の顔……というか目をずっと見てきてかなり怖かった。あれは絶対俺がウソを言えないように無言の圧力をかけていたに違いない。それになまじ顔が整っているだけに無表情はマネキンみたいで怖かった。かといって油断すれば教えたことの出所をいきなり聞いてくることもあるし。なんで俺だけこんな罰ゲームを……。

 

「はい、これがバッジ」

「…………やっとか。まあ手に入ったから良しとするか。手首も無事……といえなくもないし」

「良かったわね、シショー。それに、意外とナツメさんとも仲良くなったわよね」

「はあぁ!? 何言ってんのお前!? 目ん玉節穴か?!」

 

 このドアホいらんこと言うな! これでストーカー増えたりしたら冗談じゃなく(手)首が飛ぶ!

 

「だってそうじゃない。色々あったけど、ナツメさん今じゃ、シショーのことかなり頼りにしているというか、興味がありそうというか」

「それはあれこれ教えてやって、まあ知識だけはあるし、あと自分の予知の外だからだろ。退屈だーとかいってたし。そ、そうだよね?」

「……あなたと関わってから、私の予知能力がおかしくなっているの」

「え、なにそれ怖い。どういうこと? そもそもなんで急にそんな話に?」

 

 この電波いきなり関係ない話始めたけどなんなの? やっぱり頭イタイ系の人なのか。質問に「はい」か「いいえ」で答えられないの?

 

「おそらく不確定要素が入ったおかげで未来が変わったからだと思う。未来が分岐したとでも言うのかしら。こんなこと私でも初めてだから上手くは言えないけど……こうして色々話を聞くだけでも私の未来はどんどん変わっていった。私は決まりきった未来には飽き飽きしてた。だから変わっていく未来に夢中になってしまった」

「それであんなに……」

「ちょっと強引だったもんね」

 

 あれはちょっとで済むレベルじゃないと思うが。内容は完璧に脅迫だし。

 

「だから、できたらこれからもこうして私に会って話をして。それと、私の友達になってほしい」

「ブーーーッ」

 

 今度は爆弾かよ! 冗談じゃねーぞ! だいたいお前そのクールさで友達とかなんなの、ギャップ狙い?

 

「うわっ、シショー何吹き出してんのよ! もう!」

「いや、だって、いきなり友達って、ナツメってそんなこと言うタイプじゃねぇだろ!」

「わかってるわよっ。 私には友達なんていないし、私なんかと関わりたくないって思っているんでしょ、どうせ」

「……」

「はぁ、何も言えないってことは図星か。そうよね。昔からそうよ。私を見た人間は皆例外なくそう。この強過ぎる力に怯え、恐れ、決して近づこうとはしない。私を見る者の目にはいつも私への純粋な恐怖や憎しみだけ。およそポジティブな感情には程遠い、非友好的なオーラばかり。予知でも、今後も私はずっと1人きりだって出ていたわ」

 

 さりげなく言ったがその予知は悲しいな。ある意味ほんとの孤独だな。黙ったのは図星というより唐突なぼっち宣言に戦慄していただけなんだが……話を聞く程こいつやべぇな。

 

「なんかかわいそう」

「いいのよ。とうの昔からわかっていたことだし、もう慣れているわ」

「そりゃまぁ、言ってみれば親にさじを投げられるぐらいだしな」

 

 この一言がナツメの琴線に触れたのか、いきなり表情が一変した。こんな必死な表情もあるのか。

 

「でも!! あなたはっ、私の予知になかったっ!! 最初は途中で私に恐れをなして逃げ出したり途中で音をあげてしまったらバッジは渡して諦めるつもりだった。過度な期待もしていなかった。でもあなたは最後まで私に付き合ってくれたし、教えてくれるときに限っては丁寧だし、意味不明なこともあったけど思ったよりはわかりやすかったし気遣いも感じた……。何より、あなたは目が違う! 私に対する恐れはまだあるけど、単に痛いのがイヤという感じにも見える。少なくとも私の存在そのものを否定するような恐怖ではない。育て方なんかについては私のことを認めているようにも思えた。私を認めてくれる人間は初めてだし、サイコパワーを高めていることをわかってくれる人はいなかったからそのことは正直に言えばかなり嬉しかった。私を理解してくれるのだから、きっとあなたも私と似たところがあるはず。だから、なんとなくあなたとは気が合いそうだと思うの!……エスパーの勘で」

 

 いきなり口調を強めて激しく詰め寄ってきて、驚く間もなくマシンガンのようにまくしたてられ、次々と信じられないようなことを言われた……エスパーの勘って何?! なんでそんなに俺に好印象なの?! 心外だから勝手に同族認定するのやめてもらえる? あと、痛がっていることに気づいていたなら毎日手首引っ張るのはいい加減やめろや! いや、それよりも先に確認すべきことが。

 

「ちょ、ちょっと待て! それじゃまさか、執拗に手首を折ろうとしたり強引に俺を逃がさないようにしていたのは、全部俺を試していたのか!」

「そりゃそうでしょ? じゃなきゃ私だって誰かれ構わずあんなことしないわ。度が過ぎればここから追い出されてしまうだろうし」

 

 そりゃそうでしょ……じゃねぇよっ! 俺がおとなしくギブしたらすぐに終わっていたのかよ! じゃあ自分からアカサビバリアとかして事をややこしくしていたってことか! こんな最後の最後に最悪なタイミングで知らされるとは。エスパーってほんとにタイミング最悪だっ。

 

 そもそもこの異端児に常識的な発想があったことが驚きだった。今までの所業を顧みればまさか夢にも思うまいよ。ナツメなら何をしてもおかしくない、と思わされた時点で俺は負けていたんだな。

 

 ……もう関わりたくない。すでにストーカーみたいなのが近くにいるのにこれ以上はさすがに……もちろんほっとくのはかわいそうな気はする。言っていることが本当なら、ナツメを助けてやれそうなのは俺しかいないことになるし、実際話しているとき目が本気だった。でもやっぱり自分の(手首の)方が大事だし、ナツメは過度の自己中だし、上から目線だし、イタイし。

 

「そういうことだから、レインくん、私の友達になって。いやなれ」

「友達になることを強制する人初めて見た」

「なろうっていってなるもんでもないと思うしねぇ」

「まさかレインくん、断るつもりじゃないわよね? もし断るなんていったら……道連れよ」

 

 なんの道連れにするんだ……怖過ぎる。こんな勝手に追尾してくる地雷とか聞いたことないんだけど。どうやって回避しろと? 急に君呼びしてくるところも怖い。友達になれっていう圧力に思える。諦めるしかないのか。これから毎回こいつと顔を合わせる度に手首グキーがデフォルトになるのか。

 

 いや、俺はトレーナーだ。どんな技でも、たとえそれが必中技であっても、躱さずにやり過ごす術を知っている。対処できない攻撃なんて存在しない。

 

「よし、わかった。お前の気持ちはよーくわかった。そこで、俺からひとつ条件がある」

「条件……? なに? 変なことを言ったらホントに手首を折る」

「……条件は1つ、マスターリーグに出て俺に勝つこと。勝てば友達でもなんでもなってやるよ。負ければ残念だけど縁がなかったってことで。これでどうだ?」

「ふぅん、面白いわね。乗ったわ。絶対に友達になる!」

 

 やっぱノーキンだこいつ! チョロイ、チョロ過ぎる。これで地雷は回避した。追尾してこようがなんだろうが見えている地雷に引っかかる奴なんていやしないのだよ。

 

「よっしゃ! ……オホン。じゃ、約束だからな。忘れるなよ。次はリーグで会おうぜ」

「必ずよ。あなたが来なかったら強制的に友達にするから! 来れなかった場合も同様よ」

「わかってるわかってる!」

 

 よっし! エスパーは撒いた! やっぱりこいつバカだ。俺に勝てるつもりでいる。補助技も使えない奴が勝てるわけないだろ。頭エリカで助かった。ようやくジム戦終了。次はセキチクだな。ナツメから逃げるようにして急いでジムを出て町からも出た。

 

「シショー、“どうせ一生俺には勝てない”とか思いながらその条件を出すのはどうなの?」

「ほう、ブルーよく覚えていたな。ま、知らぬが仏。黙ってろよ」

「わたし、やっぱりシショーが良い人か悪い人なのかわかんないかも」

「俺が良い人なわけないだろ。いまさら何を言ってんだか」

「ダース!?」

 

 げ、イナズマ!? いつの間に出てきたんだ。ジム戦が終わったから構ってほしくなったのか。

 

「……じょ、冗談に決まってるだろイナズマさん?」

「ポケモンには弱いわよね」

 

 うるさい! なんかブルーにも性格バレてきているせいかお見通しって対応が増えたな。師匠の威厳もへったくりもない。なんか悲しいなぁ。

 




エスパーは撒いた!(再登場確定)
……やること為すこと全部墓穴なんだよなぁ
逆にすごいですね
ちょっとだけゲームの設定使いましたがゲーム通りなのはまぁ多分そこだけです

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