「バカシショーッ!! こんなにしんどいなんて聞いてないっ!」
「安心しろ。俺だって聞いてねーよ。こっちもアカサビさんが進化してなかったらきつかった」
なんとか全員に勝ってセキチクに辿り着いた。実際には流れ着いたって感じだったが。発電所の時の経験が活きた気がする。町に着いた日はさすがに疲れてすぐにぐったりとベッドに倒れこんでしまったが、翌日からは元気に町の探索を始めた。
「シショー、昨日の今日でよくそんなに元気が出せるわね。ちょっと頭おかしいんじゃない?」
「辛辣だな。だがお前は何もわかってない。ここに来ることがどれほどの意味を持つか。そしてここでやるべきことのために全ては準備されていたことを知れっ! そのためなら多少の疲れなどあってないも同然」
「ど、どういうことよ。簡潔に……十文字以内で説明して」
「こ こ は サ フ ァ リ が あ る」
「きっちり10ね。でも句点が抜けてるわよ。減点」
「お前……けっこう厳しいのな」
しゃべっているうちにサファリに着いた。この町は入り組んでいてサファリの建物探すのに少し手間取ったが、ようやくここまで来たな。
ゲームならここで“なみのり”ゲットでカメックス超強化、お手軽にレベル30越えのニドキング、ふしぎなアメ、しあわせタマゴ、技教え用のキノコ、唯一のドラゴンポケモンハクリューなどゲットできるものが目白押しだ。スロットの景品系のポケモンが集まるのもいい。
そういや、“かいりき”のひでんマシンもセキチクか。ほんとに重要なところだ。で、今回の狙いは2つ。ラッキーの持っている“しあわせタマゴ”とハクリューだ。これでレベル上げは効率化されるし、あわよくば手持ちも増やせる。
「ここがシショーの楽しみにしていたサファリね。どんな感じなのか気になるわ」
「気を取り直して中に入ろうか。どんなところなのかは説明があるだろう」
さっそく中に入ると営業スマイルの店員から声をかけられた。
「こんちわ! サファリゲームは初めて?」
「ああ。とりあえず、どんなところか説明してくれ」
「わかりました。じゃあ説明しますね」
その後の説明は驚くべきものだった。ゲームの時とは全く勝手が違ったのだ。ブルーも一緒に驚いていたので何も言われなかったが、その驚きの意味は全く異なっていた。
まず制限時間が歩数でなく時間。リミットは3時間らしい。まあ当たり前だろうな。歩かなければ延々居続けられるのはおかしいし、居座って回転し続けて半永久的に粘る作戦はやはりできないようになっていた。
そして値段。なんと10倍の5000円。500に慣れていた身としてはかなり高く感じたが、500がおかし過ぎるレベルで安いから妥当といえなくはない。高いと言ってもポケモンと引き換えだからそう思えば安いとも言える。ゲームコーナーは何十万とかだし。
さらにボール。これは持ち込み制で自己負担のようだ。500円で20個支給などという甘えはやはりゲームだけらしい。現実は厳しい。だが、これに関しては(図らずも)買いだめしてしまった備え(ハイパーボール)があるので問題なかった。ついでに餌も有料らしい。ポケモンを捕まえやすくなるからぜひお試し、とのことだが……。
そして1番意外だったのがポケモンを1体持ち込めること。よく考えたら当たり前で、ポケモンなしで草むらに入るのは危険なのが常識なのだから手持ちなしで放りこむわけがなかった。昔素手でガーディとやりあったせいでありえると考えていた俺がおかしかったらしい。
イメージはアカサビを捕まえたあの大会と同じだ。ただ、それと違うのは、このサファリの内部ではこっちからの攻撃は認められていないことだ。だから攻撃されたら基本サンドバッグ、状態異常は「どく」「やけど」「こんらん」はNGで、それ以外ならかけてもオッケー。ポケモンがやられたら最初に渡される“だっしゅつボタン”でここに強制送還されるという話だ。
だっしゅつボタンというのはポケモンに持たせられる道具の1つ。戦闘で技を受けたら控えのポケモンと交代できるというもの。使い方としては天候を変えるポケモンに持たせてスムーズに天候エースに交代するとか、あるいは“ほろびのうた”を使って即座に控えと入れ替わるなどがある。両方できるポケモンにニョロトノがいてよく持っていた。
今回は戦闘用ではないが道具をうまく活用していて地味に感心した。“あなぬけのヒモ”が無能だと判明しているだけにこれは参考になった。ここは道具に対して独自に若干改造しているようだがどんな仕様なのか気になる。さすがに実験する余裕はないが。
「ということで、普通は皆さん耐久力に自信のあるポケモンを持っていく方が多いですね。あと、ランクが低い方は危険ですので従業員が付き添って、行動エリアを制限させてもらっています。ランクが6以上なら問題ありません」
「良かった、わたし達は6だからギリセーフね。ねぇ、面白そうだし、さっそく行ってみましょうよ!」
「いや、待て。ここの地図はあるのか?」
「残念ですが、地図の類は用意しておりません。帰還はボタンがありますので」
「……」
「ねーねー、どうしたのよ。急に考え込んじゃって。わたし早くサファリ見たいー、ポケモンと触れ合いたいー、餌をあげたりしたいー」
「あーもう、考えてるのにうるさい! だいたい、直に目の前といっても野生のポケモンもそうだろ! しかも触れ合いも餌やりも毎日手持ちのポケモンにしてるだろ!」
「あ、言われてみればそうね。でもシショーだってめっちゃ楽しみにしてたじゃないのっ。まさかお金がないとか言うんじゃ……」
「なわけないだろ。いくらでもある。が、ここの条件が俺の予想とかなり違ってたし、これは少し考える必要がある。いったん出直すぞ」
「え、ちょっと、いきなり!? 待ってよっ!」
いったん出直すことにして、帰り際足で情報を稼ぎ、一通り聞いて回れたところでまずは作戦会議を始めることにした。お預けをくらってむくれるブルーをなだめながら、まずは自分の考えをまとめた。
第一印象としては、ここのシステムはかなり上手い。長いことやってきて絶妙なラインを見つけたのだろう。ゲームみたいに適当にやっていると金がなくなるし、捕まえ過ぎでポケモンが減り過ぎないようにも気を配っている1つずつ検証しよう。
まず、5000円で3時間という値段だが、これは少々高いが、トレーナーなら全く手が出ないわけではない絶妙なラインを突いている。だが実際にはサファリはかなり広い上、他の出費も嵩むから結局何回も来ると高くつくし、完璧に自分でマッピングできる程籠り続けるのは旅のトレーナーの資金では厳しいだろう。つまり何回かリピートしたくなるが大量に捕獲出来る程籠り続けることはできない。
情報収集した内容だとアイテムが落ちていたりもして、隠されたレアアイテムも存在し、それ目当ての客も多いとか。捕獲失敗したボールが転がっていることもよくあるらしい。モンスターボールもこの町では他の町よりも高騰しているようで、あまり多くは用意できず、これもサファリの思うツボだ。案外ショップと提携していたりしてな。
そして1番感心したのが“エサだま”の販売。割高だがポケモンを留める効果覿面で飛ぶように売れているらしい。経営的には餌代は浮くし、ポケモンは捕まえにくくしてボールを消費させられるし、とにかく恐ろしい罠だ。“いしころ”拾うのが安定だな。そういや、サファリはほとんど人の手を加える必要がないらしいし、ゲームコーナー並みの収益を出してそうだな。
「ねぇ、それでどうするの?」
「楽にいけると思っていたが、想像以上に相手はかなりのやりてらしい。もしかしたらゲームコーナー並みのヤバさだ」
「え、それってあの!? そんなになの?」
「ああ。だからサファリには総力戦で挑む。まず、今日1日は下見だけにする。ポケモンは捕まえない」
「え、なんでそんなことするの!? もったいない!」
まあ普通はそう言うだろうな。サファリもそこまでわかっていてこんな仕様になっているんだろう。だが、最初の様子見が後々大きな役割を果たす。目先の数体のポケモンに目を取られるようでは
「いいか、よく聞けよ。サファリは区域によって出るポケモンが違う。だから狙ったポケモンがどこで最も良く出るか先に調べたほうが効率的だ。それに、マッピングしがてらアイテムを探せば多少は儲かる。普通ならこんな金のかかることはできないが、そこは俺が用意できるから安心しろ」
「さすが、すっごい力業ね。で、狙いはなんなの?」
「基本的にはラッキーを狙う。これには理由があって、ラッキーがまれに持っているある道具が目当てだ。あと、その他のポケモンは俺が良さそうなのを見つけたらその都度捕まえる。こんなところだ。サファリは一見さんには絶対捕まえられないようになってるし、餌とかは罠だから、お前1人で来るのはやめた方がいい」
ブルーだと調子に乗ってハマりそうだから一応釘を刺しておいた。ゲームコーナーもまさか行って遊んでないだろうな。リアクションが怪しかったが。
「え、ゲームコーナーでもシショーは儲けていたらしいけど、なんかコツとかあるの?」
「餌はポケモンを留める効果はあるからそこはいいんだが、代わりに捕まえにくくなるデメリットがあって、それを使うとポケモンは捕まえられてもボールはすぐ減るから大量に捕まえられなくなる」
さすがにゲームコーナーのことはゴウゾウから話を聞いただけみたいだな。今回のいしころはコツというか裏技に近いが、こんなことゲームをしていなければ絶対に思いつかないだろうな。
「ウソ! そんなの詐欺よ! じゃあ、どうやって捕まえるのよ!」
「それは考えてある。コツというか、ちょっとしたものを使えば簡単に捕まえられるようになる。で、つれてくポケモンだが、お前はピジョット、俺はグレンをつれていく。“こうそくいどう”を使って素早く見て回るが、マッピングはお前がメインでしてくれ。上からの方がやりやすいだろうから。今回お前にはかなり手伝ってもらうことになるがいいか?」
「わかったわ。シショーのためならわたしなんだってするわ。少しはわたしも役に立ちたいもん」
「頼りにしてるからな」
ブルーが協力的なのは大きい。2人なら効率もぐーんと上がる。ホントはユーレイにトリックを覚えさせていたらてっとり早かったんだが、実戦で使えなさそうだから覚えさせる気が起きないんだよなぁ。どのみちラッキーは全て捕まえるつもりだし。
さっそくサファリに行ってマッピングを始めた。一応また来たときのことも考えて全体のマップを完成させておくつもりだ。
「うっわぁ、いっぱいポケモンいるじゃない!」
「だろ? その辺の用のないポケモンが多くて、本命探すのはかなり大変なんだよ」
「そういや、ラッキー狙うって言ってたけどそれって超レアポケモンよね。ほんとにこんなところにいるの?」
「むしろ、確実にいるのはこのサファリしかない。さっさと技を積んで早くするぞ。時間は限られているからな」
9時間休憩を挟みながら居続け、あらかた見て回ることができた。途中でリタイヤしたらそこで終わりだし、3時間終了ごとに延長する場合一度受付に戻されるという最悪な仕様のせいでこんなことになった。
まさか休憩小屋がありがたいと思うことになるとは思わなかった。昔はなんであるのか存在意義が怪しかったのに。基本的に園内の形などは自分の覚えてた通りだが、さすがに分布などまでは覚えていない。もう後何回か来てポケモンの出方を調べないとな。
帰る前に先に受付前のスペースでブルーからマッピングした地図を受け取ることにした。
「あー疲れた。1日中居たもんね」
「そうだな。じゃあマッピングした分を見せてくれ」
「はい、存分に使ってね」
渡れたのは何を書いているのかわからない落書きだった。
「ブルー、地図を渡してくれ」
「ん? だからそれよ。ちゃんと書いてるでしょ?」
「……」
こいつ、地図書くの絶望的に下手だな。ブルーはバトル以外何もできないことを忘れていた。とりあえずこいつに任せたのが間違いだったな。
「ブルー、無能、クビ!」
「えーーーっっ!! 頑張ったのに!? はぁぁぁ、がっくし」
本人はふざけないで全力でやっていたらしい。だとしたらなおさら悪い。
「ファファファ、失敗は人の常、気を落とすことなかれ若人よ」
「え、あ、はい、どうも。あなたは?」
「あ。忍者だ」
渋い人がいきなり話しかけてきて驚いたが、なんてことはない、この町のジムリーダーだ。こんなところで出くわすとはな。
「む? ファファファ……拙者の正体を一目で見破るとは、お主できるな」
「あ、キョウさん、ご苦労様です」
従業員がそう言うのを聞いて思い出した。そういやキョウはときどきここに来て見回りをしているって話がゲームでもあったっけか。
「礼には及ばぬ。これも我が町のため。中に異常はなかった故、これにてお役御免」
「そういやここの見回りをしてるんだったな、ここのジムリーダー」
「え、ジムリーダー?」
「いかにも! 拙者こそ、イガニンジャの子孫にしてセキチクジムのジムリーダー、キョウでござる。拙者の得意タイプは毒、お主に我がジムを攻略できるかな?」
「ジムリーダーさんだったんだ。それにわたしがトレーナーだってわかるのね。あ、そうだ、聞きたいことがあるんだけど、このサファリのどこでラッキーが出るか教えてくれない?」
「ほう、ラッキーを探しておるのか。なかなか捕まえるのは大変だが、目撃者は多い。チャンスは十分あるだろう。見たものの話では、案外入ってすぐの場所などでも見たとか。なのでランクが低くても捕まえた者はいるそうだ」
「へぇ、そうなんだ。ありがとうキョウさん」
「なんのなんの。お主達はなかなか筋が良さそうだ。挑戦に来るのを楽しみにしておるぞ。では、この後は娘の稽古があるのでな。これにてドロン!」
ボン!
「消えた! すっごーい、本物の忍者みたい!」
「みたいじゃなくて本物だ」
「あ、そっか。でも娘さんなんかいるんだね。そこはなんか忍者っぽくない」
「忍者の跡継ぎなんだから別におかしくないだろ。それより、作戦を練り直して明日出直すぞ。お前にマッピングを任せられないからな」
「はーい。って、ホントにクビなんだ……」
面白い奴に会ったが、意外といい情報を残してくれた。ここのサファリ、まだカラクリがあるようだ。
たしか、ゲームではラッキーは2ヶ所に出たはず。ここもおそらくそれは同じ。片方は奥のどっかだが、もう片方はゲームでもたしか最初のエリアだった気がしてきた。ただし出現確率は奥の方が格段に高かったはずだ。
だが最初のエリアも少しだけラッキーが出現することで客引きになっているのだろう。よく考えられている。
そうなると、軽くマッピングして、後は1回でもラッキーを見つけたらそのエリアで張り込めばいいことになる。統計を取ったりして出現率の違いまで調査する必要はなくなったな。そうとなれば俄然作業が楽になった。
今度はポケモンを変え、俺はユーレイにしてブルーと一緒にピジョットに乗ることにした。ユーレイ抜擢はポケモンに襲われたら“さいみんじゅつ”が使えるからだ。
「ほへー、シショー地図キレイに書くわね。わたしより上手いかも」
「お前の落書きと比べるな。ホントお前はバトル以外のことはからっきしだな」
「あははー。あ、あそこになんかあるわよ?」
「……全くお前ってやつは。あ、きんのたま。ラッキー」
そんなかんじでマップも完成。出てくるポケモンの種類をざっくり埋めるのにさらにもう1日、結局下見で3日使ってしまった。
「今日はどうでしたか?」
「ん、収穫ゼロよ」
「坊主だ」
「……そうですか」
店員からは奇異の眼差しを向けられていたが、最近は若干イヤな予感がしているようだ。そりゃ露骨に下見している感じだもんな。そしていよいよ実践。今日からは持っていくポケモンをまた変えて俺はイナズマ、ブルーはフシギバナだ。ブルーにはハイパーを十分に渡しておき、これで準備完了。
「あ、出て来た!」
「さっそくか。幸先いいな」
「ラキ、ラッキー」
ラッキー。でも道具は持っていない。持ってはいないが、捕まえない理由はない。
「最初は俺が手本を見せる。イナズマ、でんじは!」
「ダスッ」
「ラ、ア、キッ」
うまくしびれたな。さすがイナズマさん、いい仕事をする。
「まずは状態異常にして動きを封じつつ捕獲もしやすくする。これは基本通りね。でもサファリではダメージは与えられない。ならここでハイパー?」
「いや、ここでこいつを使う」
「それはさっき拾っていた石?……まさか!」
にっこりと笑ってブルーに言った。
「そのまさか! くらえいっ!」
「ラキー!」
よし、狙い通りだ。うまく怒らせたが、相手はしびれているから動けない。この隙にボールを投げる!
……カチッ。
「すごーい! 簡単に捕まえた! でも石投げていいの?」
「ポケモンで攻撃するなとは言われたが、俺達がやる分には何も言われてない。それにこれはダメージ狙いじゃない。あくまで怒らせて捕まえやすくするのが狙いだ。そこを勘違いするなよ。これをすると捕まえやすくなる分逃げやすくもなるが、しびれさせれば怒ったまま動けなくできるし、しびれた分もさらに捕まえやすくなる。あえて眠らせないのは怒らせるためというわけだ」
言い訳、もとい種明かしをするがあまり納得はいかないらしい。
「悪魔の手口ね。まさか拾ったいしころでこんなことができるなんてとんだ裏技ね」
「お前もフシギバナでしびれさせて試してみろ。こっからは二手に別れてやるぞ」
「オッケー。じゃ、どっちが多く捕まえるか今から勝負よ。たまにはわたしもすごいってところ見せてあげるわ。ちゃんと捕まえ方の勉強はしていたからね(虫取り大会でシショーの捕獲技術はあんまり高くないことはわかっている。ひんしにできなければわたしの方がうまく捕まえられる可能性は高い!)」
「面白いな。勝った方が肩揉みね」
「乗った! 絶対勝つ!」
結果は勿論俺の勝ち。探知範囲が段違いだからな。この捕獲方法なら誰がやってもほぼ確実に捕獲はできる。ならば勝敗をわけるのは遭遇した回数。より多く見つけた方が勝つに決まっているんだから俺が勝つのは当たり前だ。
「そんな、ありえないわよ! こっちはあまいかおりでおびき寄せて目当てと違うのは眠らせて大量にポケモン集めたのに! なんで?! これ以上わたしに何ができるのよ?!」
こいつ、かなりのガチ勢だな。“あまいかおり”まで使うとは。それは忘れていた。しかも他のポケモンが寄ってくるのも“ねむりごな”を使って上手くカバーしているし。ブルーってポケモンに関してはやっぱりセンスのカタマリだな。
「まぁ2体と3体の差だし、偶然ってこともある」
「ううう! 悔しい! 明日もやるわよ!」
肩揉みをさせられながらブルーはリベンジを誓い、それから俺に毎日勝負を挑むが全て俺の勝ちだった。ブルーは力だけは強いから案外肩揉みは悪くない。ブルーの方はかなり疲れるみたいだが。
◆
今日もいつも通り俺が圧勝。ブルーは懲りずに勝負を続けて来るが、いつになったら勝てないとわかるんだろうねぇ。
「あ、ありえない……」
「気を落とすな若人よ」
つい調子に乗ってよくわからん発言が出てしまった。いやぁ、やっぱり勝負に勝つと気分がいいなぁー。
「むう、キョウさんみたいなこと言わないでよ! はぁ、やっぱりシショーってすごいわよね。なんだかんだわたしの倍近く集めているし。これなら絶対勝てると思ったのになぁ。わたしにはゲットの才能はないのね」
「……いやいやいや、お前より効率いい集め方はないだろ」
「でしょ!? じゃシショーはなんなの?! やっぱり仙人? 妖怪?」
しまった、今のは巧妙な誘導か。どこでこんなこと覚えて……言うまでもなく俺の影響か。だんだんブルーが黒くなる。
「バカ言ってないで帰るぞ」
「ま、待って下さい!」
いきなり従業員から呼び止められた。そろそろ捕まえた数もバカにならないほど増えてきたし、とうとう来るべき時が来たか。
「どうしました?」
すっとぼけて答えるがもちろん用はわかりきっている。
「あのー、お願いですからそろそろラッキーの乱獲はやめてください! これじゃうちは倒産しちゃいます!」
やっぱりな。さすがにヤバいことになってきたことに気づいて尻に火がついてきたか。
「んー、そういわれてもなー。別にルールに従ってやっているんだし、乱獲なんて心外だなぁ。でも、どうしてもというなら……ゆっくり“お話”をしてもいいけど」
お話というところを強調すると食いついてきた。
「ぜひお願いします!」
「仕方ないなー。じゃあそういうことだからブルーは先に帰ってろ」
へっへっへ、こっちでビジネスのお話でもしましょうか。じっくりたっぷりお話させて頂きますよ。
「えー」
なんで駄々をこねるんだ。お前は駄々っ子か! これを逃したくないし、なんとか適当に言い包めないと。
「じゃ、今日の負けた分はチャラにしてやる」
「わかったわ! シショー頑張ってね」
ブルーはものわかりが良くて助かる。
その後ラッキーをサファリが買い戻す交渉が始まり、さらに今後俺達はラッキーを捕まえない契約が結ばれ、ラッキーショック(ブルー命名)は終了した。
「まさかそんなことになってるとは。シショー、最初からこれ狙いでずっとラッキー捕まえてたのね。で、いくらで売れたの?」
ブルーも今となっては慣れたもので、かなり悪い顔をしながら聞いてきた。お主もワルよのう。
「俺はちょっと機会があって裏の相場にも詳しくてな。その倍以上で売れたよ。数が数だったし釣り上げて、今後捕まえない取り決めもしたから」
「裏相場……って、それよりもうやめちゃうの?! ラッキーはともかく、シショーの言っていた道具が取れなくなっちゃうのはマズくない?」
驚くのもわかるけど、その点に関しては抜かりない。
「ああ。目的の道具は十分集まったからな。それに追加で道具を集めるだけならトリックで集められるから、実際にはあの取り決めは俺にとっては全く効果がないんだよな。もちろんそれを始めから織り込み済みで話を進めてたんだが」
そうなんだよな。ポケモンの持ち込みができるのがやはり俺にとっては大きくて、キノコ集めとかもかなりスムーズにできそうなんだよな。ポケモンさえいれば基本何でもできる。
「トリック? なにそれ?」
「お前はもうちょっとお勉強しとくか?」
「あ、そういえば目当ての道具って何なの? わたしも手伝ったんだから見るぐらいはいいでしょ?」
ブルーはすぐに話題を変えようとするなぁ。
「仕方ない奴だなぁ。これだ。“しあわせタマゴ”っていうんだが、すごい効果があるんだよ」
「へー、これが。こんなの見たことも聞いたこともないわね。どんな効果なの?」
「聞いて驚けっ。なんと、ポケモンに持たせておくと経験値が1.5倍になるというスーパーアイテムだ!」
「え、えええええ!!!!!」
「はっはっは!! 全てのトレーナーが夢にまで見た奇跡の一品だ。すっげーだろ?」
「マジなの!? マジマジマジッ!? すっごーい! こんなのあったら簡単にレベルが上がっちゃうじゃない!」
テンションがヤバイな。いやーその反応を見れただけでも満足だ。実際本当にヤバイ道具だからな。ブルーもわかってくれてなにより。
「そういうことだ。これをいかに早く手に入れるかでだいぶレベル上げの効率が変わるからな。これだけでもサファリに来る価値はある。それにだいぶ儲けられた」
「うわぁ、いいなぁ。シショーってなんでそんなこと知ってるの? こんなの知れたら絶対に皆ラッキー探しに躍起になるわよ。むしろラッキー絶滅までありえるわね」
「そうだな。まぁわかっていてもこんなに大量に捕まえるのは無理だし、俺達がだいぶ回収したから今は道具の方はもうほとんど残っていないだろうけど」
「そっか。それもそうよねぇ」
ブルー急に元気なくなったな。なんでだ?
「えらく元気がないな。嬉しくないのか?」
「だって、そんなの聞いたらわたしも欲しかったんだもん」
「おいおいおい、まさか俺がこれを独り占めすると思っているのか?」
「え、しないの? まさかとは思うけど、ひょっとしたら、もしかしてくれるの!!」
「けちんぼ」だの「守銭奴」だのといつもよく言われているが、こいつマジでそう思っていたのか。十分過ぎるほど気前よくしてきたつもりなのにびっくりだな。自分が教わっている知識がどれほどありがたいものなのか絶対に理解できていない。……一生理解しないでいてくれた方が都合はいいんだけど。
「当たり前だろ。お前も手伝ったんだからお礼ぐらいはする。なんでそんなに自信ないんだよ。はい、お前の分」
「うわはは、やったー! しかも2個くれるなんて!」
「ダブルバトルだと2個いるし、予備の意味もある。大事にしろよ。なくしたら一大事だからな」
「当ったり前よ! あぁ、シショーありがとう! わたしずっとついていくわ!」
「いや、ずっとは来なくていい」
思わず反射的に言っていた。前にも言ったなぁ。
「ええー、なんでよっ! そんなつれないこと言わないでよ、わたしはこんなに感謝してるのに」
「お前が言うとストーカーみたいだし」
「だーかーらー、ストーカー言うな! 隙あらばストーカーって言うのもういい加減勘弁してよ! で、もう道具は集めたし、次はジム?」
「何を言ってるんだ? まだサファリは終わっていないぞ?」
「え、まだなんかする気なの? あの店員さん、そろそろ本当に泣いちゃうわよ?」
ブルーじゃあるまいし涙目にはならんだろう、さすがに。
店員「こんちわ!」
ラッキーの生息地がサファリの陰謀説は作者がプレイしていて実際に思ったことです
さすがに狙い過ぎだと思うんですよ
客引きで少し見せて本命は常連しか行けない場所に
そこからサファリは黒いという前提で色々設定加えました
それでも結局レインには逆手に取られていますが