これはさすがに長すぎると判断し分けます
「審判は我が門下のアンズが務める。使用ポケモンは4体、交代はチャレンジャーのみ可能とする。良いな?」
え、いつの間にかもう1人増えている。さっきまで俺、ブルー、キョウの3人だったのに。忍者恐るべし。気配を殺しているな。
名前を呼ばれペコッと頭を下げる審判。アンズと言えばもしかしなくても次期ジムリーダーじゃん。これを見るとジムの審判は一番有望そうな奴がやるものなのかもしれない。コズエって1番弟子とかほざいていたがあれは本当だったのか。いまさら真実味を帯びてきたな。審判をさせるのはジムリーダーの仕事を直接見て学ばせる意図とかもあるのかもしれない。意外と奥が深い。
「ぐっ、自己紹介聞く限りめっちゃイヤな戦い方をしてきそうね。わたしはマサラタウンのブルー。ランク7を希望するわ」
「ファファファ! イヤと言いながらランク7に上げると? ますます面白い。よろしい。お受け致そう。では、いざ尋常に勝負!」
さぁ始まったな。前は見逃したし今回はじっくり見させてもらおう。
「両者最初の1体を」
「ピーちゃん!」
「ゆけい、マタドガス」
ピジョット Lv36 114-95-67-54-60-121
マタドガス Lv40 120-93-115-70-78-62
能力は目立ったところはないが、問題は技だな。厄介な補助技がずらっと並んでいる。
おにび おきみやげ どくどく どくびし いたみわけ
これはまともにいくとかなり厳しい。
「はじめ!」
「そんなポケモンすぐにやっつけてやるわ! つばめがえし!」
あーあ、ダメだ。悪いときのブルーのクセ。前のめりになって視野が狭いと攻撃が単調になる。これじゃ術中に嵌るな。
「おにびから」
相手は物理防御主体のポケモン。致命的なダメージには至らず逆にやけど状態にされていきなり機能停止。やけどすると攻撃力が半減するからだ。ブルーは幸先悪い。
「えっ、どくどくじゃなくておにびなの!? 話が違うわよ! なら、おんがえし!」
「まもる」
「そんな! こうなったら押せ押せよ! もっかいおんがえし!」
ゴリ押しは最悪だ。ダメージを多少は与えるが、“ヘドロばくだん”などで反撃も受けて、もうボロボロだな。やけどのダメージを考えて勝負を急いだのかもしれない。思ったよりは技のキレのおかげなのかダメージはたまっているがギリギリ相打ちになるかどうかというところ。
「もう一息よ! つばめがえし」
「おきみやげ」
「ドガァ……」
マタドガスは倒れた。だが今のはブルーが倒したわけじゃない。“おきみやげ”は自らひんしになることで相手の攻撃と特攻を2ランク下げる効果を持つ。つまり確実に相手を弱体化できる。
キョウのマタドガスへの見切りは抜群にいい。この“おきみやげ”はかなり厳しい一手になる。しかも“おきみやげ”を始めから狙っていたならばわざと手加減して攻撃力の落ちたピジョットを生かした可能性もある。キョウ……想像以上の手練れかもしれない。
「やった! まずは1体先制よっ」
「これはぬかった」
……上手いな。もちろんブルーではなくキョウが。相手が自分で倒したと思わせるタイミングまで狙ったのか。“おきみやげ”なんて絶対マイナー技で知られてないだろうし、今の言葉と合わせてまず騙される。
場にはほとんど何もできなくなったピジョット。こいつのいる間は能力を上げ放題になる。キョウ、さすがにあの恐るべき罠を仕掛けただけのことはあるな。今こうして起点を作った以上、次に何をしてくるかで実力がわかる。
「ブルー、落ち着け。単調な攻めだと術中に嵌るぞ」
「え、どういうことよ?」
さすがにそこまで教えるつもりはない。もしかすると被4タテもあるかもしれないな。
「ファファファ、あちらの御仁は用心深い性格のようだな。良いことだ。お主はどうかな? ゆけい、ベトベトン」
ベトベトン Lv40 150-100-79-60-108-53
えげつないなぁ。真っ先に積み技を探したら“ちいさくなる”があった。“どくどく”と“ちいさくなる”による嵌め殺し狙いか。ただの“どく状態”ではなく“もうどく状態”ならば割とすぐに倒れるから効果的な作戦だ。
「げ、ベトベターの進化形じゃない! ピーちゃん、おんがえしでやっつけて」
「ちいさくなる」
「ジョッ……トッ!?」
「避けられた?! なにこれ、ヤバイ!」
「さらにちいさくなる」
「だったらつばめがえし!」
「ジョット!」
「必中技か。面白いが、ならば攻撃して相殺するまで」
攻撃力がないから簡単に捌かれている。ブルーどうする? もう“ちいさくなり”過ぎてベトベトンは要塞と化している。キョウならお得意の“どくどく”を外すことはないだろうし、俺が戦うとしてもこうなったらもうかなり厳しいな。
俺も“ほえる”をグレンに覚えさせておいた方が良かったかもしれない。あまり戦術のレベルが高い相手を見なかったからそういう対策用の技はあまり覚えていない。そろそろその辺も意識して技を調整した方がいいかもしれない。
「げ、これじゃキリがないじゃない! どうなってんの! 何回やっても倒せないし、やけどダメージに能力アップまで……」
(私に任せて下さい!)
「ラーちゃん? お、お願い、なんとかして!」
「ラー! ラァーーラァー」
ここで遅いながらも交代。何をするのかと思えば“ほろびのうた”か! やけくそで“ぜったいれいど”でも当てにいくのかと思ったが、これはいい技を覚えているな。キョウは交代できないから一変して追い詰めたな。
“ほろびのうた”は3ターン後に自分を含めその場にいたポケモン全てを問答無用で戦闘不能とする恐るべき技。ただし、交代すれば効力が切れるという弱点があるが、交代できない状況だと手の打ちようがない。
今回特に重要なのは“ほろびのうた”が命中率と回避率に左右されず必ず当たること。“ちいさくなる”で要塞化した相手にはうってつけというわけだ。
この技は“みがわり”も貫通し、滅び状態はバトンすると引き継いでしまうからバトン戦術、特にフワライドとかの「ちいさくなるバトン」には絶大なメタになる。扱いは難しいが持っていると案外使える技だ。
「そうか! ナイスラーちゃん、キョウさんは交代できないからこれは効く!」
「ほろびのうた! まさかそのような技でベトベトンを攻略するとは、お主なかなかの使い手のようだ。こちらも気を引き締めねばなるまいか。ならばどくどく」
「ラー」
先手を打って“しんぴのまもり”か。このラプラス相当賢い。むしろブルーより賢い可能性もあるんじゃないか? これはキョウにとってはかなり厳しい一手だ。
「やってくれるな。技の選択に隙がない。ならば正攻法、ヘドロばくだん」
「交代よ、レーちゃん!」
どくタイプの技は効果がない。上手いぞ。調子出て来たな。ラプラスがブルーのいいところを引き出している。というか、交代で味方のポケモンに受けさせるのはルール的にオッケーなのか。ここに来て俺は初めて知ったぞ。だったら交代はやりまくったほうが得じゃないか?
「鋼タイプを持っていたか。見事な手際よ。ならかえんほうしゃ!」
「まもる」
炎技に慌てることもなく冷静に対処して確実にターンを稼いでいる。“ほろびのうた”はきっちり3ターンで発動するわけではないようだ。微妙に俺の知識とずれている部分って多いな。どく状態とか同様仕様は調べておく必要がありそうだ。
「もう時間切れか。どくびし!」
「ベトー!」
倒れたか。だが最後に爪痕を残したな。ただでは死なないところが忍者らしい。……さすが忍者きたない。
「なにこれ? まあいいわ、これで2体目よ」
「あっさりやられるとは思わなかったが、まだ手は残っておる。いでよ、ラフレシア」
ラフレシア Lv40 130-60-80-110-99-70
「それはありなのか?」
「こっちも交代よ、ピジョット!」
キョウがラフレシア使うなんて違和感があるな。たしかによく考えたら毒は入っているし、ナツメもエスパーがないモルフォンとかゲームでは使っていたからいまさらだが、やっぱ違和感がなぁ。
「ほう、相性ということか」
「それだけじゃないわ。この子はもうやけど状態だからラフレシアお得意の“ねむりごな”とかの状態異常技は効かないわ。それさえ封じれば怖くないって知ってるもんね」
へぇ、ブルーの奴やるな。“かえんだま”ヘラクロスとかでキノガッサ対策をするようなイメージだな。あるいみ定石のような考え方だ。ブルーもかなり強くなってきている。もう侮れないな。
「なるほど、よくわかっているな。さすが、ランクを上げようとするだけのことはある。だがそれだけが戦い方ではない。まずは“にほんばれ”!」
そっちで来たか! これはすごいのが見られるかもしれないな。そういえばここは屋敷の最上階の屋上にあり、頭上には雲一つない晴天の空が広がっている。ここまで考えてここにフィールドを用意していたのか。単にカラクリを下の階に詰め過ぎたせいかなと思っていたが、この忍者屋敷を作るだけあって計画的に設計されていたらしいな。どこぞのくさタイプ使いよりよっぽど上手いラフレシアの使い方だ。
「にほんばれ? お天気が良くなるけど、何の意味があるの? 時間もないし速攻で終わらすわ。つばめがえし!」
「遅い、ソーラービーム」
「うそっ!? 速い、避けて!!」
あまりの速さに対応できずピジョットは直撃してしまった。攻撃の途中だったのもあるが、今のラフレシアの攻撃を初見で躱すのは無理だな。もともとダメージが蓄積していたこともありそのまま倒れてしまった。
「ファファファ、これぞ勝負の極意。じわじわと体力を削りつつ、好機とみれば一気に畳みかける。小技だけが拙者の戦い方ではない。油断していれば容赦なくその隙はつく。一部の隙もない戦術こそ我々の戦いの真骨頂」
すげぇ……ホントに理想的だな。“どくびし”“やけど”などで削りながらも、一転、“おきみやげ”“ちいさくなる”のコンボや晴れエースでの全タテも視野に入れている。お手本として真似したいぐらいだ。ステロまいてハッサムで全抜きとかものすごくやってみたい。
ナツメみたいな個体値努力値のヤバイ奴や、高レベル強力アイテムゴリ押しのサカキとはまた違うベクトルの強さだな。単純な力だけではない戦術と戦略。トレーナーとしての技量で勝負するタイプだ。
「どういうこと!? ラフレシアってこんなに速いの!? しかも威力もすごい。育て方で変わるもんなの?」
「ブルー、今のは“にほんばれ”が原因だ。そいつの特性は“ようりょくそ”、晴れ下では素早さが倍になる。しかも今の技ソーラービームは本来ために時間がかかる大技だが晴れ下だと連射できるんだ。そのラフレシアの技の威力はレーちゃんの“でんじほう”ぐらいだな。バトルにおいて天候の操作は大掛かりな戦術の最初の布石になりやすい。天候の変化には常に注意しろ!」
ポケモン名をぼかして特攻の高さを教えた。レアコイルはCがこいつより少し高いが“ソーラービーム”の方が威力は高いからだいたい同じになる。
「うそでしょ!? そんなヤバイのがポンポン簡単に飛んできたら勝てっこないじゃない! どうしろってのよ!」
「ほう、一目でそこまで見破るとは、侮れぬな。だがわかっていても対策が打てるとは限らぬのが世の常」
全く以てその通り。たしかに対抗策が手持ちにいなけりゃきついが、ブルーにはあれがある。問題は気づけるかどうか。
「こうなったら、こっちも同じタイプで勝負よ! たのむわフーちゃん」
フシギバナ Lv37 140-62-73-123-87-72
そっちかぁ。ソーナンスならあっさり勝てた可能性が高いが、さすがにそこまでの判断力はないか。“どくびし”で図らずもねむりは対策できるしミラーコートは読まれないだろうからソーナンスでも悪くないと思うがなぁ。フシギバナで4つの枠を使い切ったし、まだレベルが低いからレベル上げの育成段階のポケモンは控えということだろうな。一応フシギバナは“どくびし”を回収できるメリットもある。ブルーは知らないだろうけど。
「おお……見事などくポケモンよ。いい育て方をしているな。かなり自信があるとみえる」
「もっちろん、わたしの1番の相棒よ! 簡単には負けないわっ。それに同じタイプならソーラービームも怖くない。くさタイプの技でしょ?」
「いかにも。だがそれだけではないぞ? ヘドロばくだん!」
「やっぱりそうくるわよね。こっちもヘドロばくだんよ!」
同じ技、力と力の真っ向勝負。こうなればブルーのフシギバナに勝てるわけがない。
「ラフゥゥゥ!?」
「なぬ、力負けしたか」
「続けて攻撃よ! どんどん攻撃して!」
「バナァ!」
「くっ……押し切られた。これはやられた」
最初の攻撃はラフレシアが驚いたせいもあってか急所に当たったみたいだな。そのままブルーが力押し。案外あっさり勝ったな。力勝負に持ち込めばこんなものか。数値でゴリ押しできるレベルにまで上がってきている。
「ではこれが最後。いざ!」
出てきたのはモルフォン。さすがに“ちょうのまい”は覚えてないな。あったらあったで容赦しないにも程があるけど。
モルフォン Lv40 120-55-63-89-85-90
レベルは40か。レベル41はいなかったな。丁度今42に上がってしまったところなのかも知れない。なら以前は5体用意していた可能性もあるか。このジムやっぱりかなりレベルは高そうだ。ここは近くにジムもないし、旅のトレーナーは終盤に来ることが多いのだろうな。あのカラクリを初心者が凌げるとも思えないし。
最後の1体をブルーがどう料理するのか見ていると、ブルーがなぜか謝りだした。
「あの、ごめんなさい」
「ん? どういうことだ?」
「ラプラス出てきて、もう1回ほろびのうたよ!」
……。
「ファファファ。やってくれたな。お主、拙者よりも戦い方が巧みかもしれんな」
ホントそうだよな。さすがにあれはないわ。あの後は“まもる”と交代を繰り返して難無く勝ってしまった。俺でもないと思ったわ。ルールをついた戦法はさすがにやったことがなかったな。キョウはこれされて笑っているところがすごい。
交代なしだと強い技って考えてみれば多い。混乱とか、“やどりぎのタネ”“のろい”みたいな交代でしか外せない類、“アンコール”とかも。俺もさらにその辺の技を覚えさせてもっと考えれば……いや、ジム戦は途中経過、一々そのためだけに技を用意して対策をするまでもないか。
「なんかズルイことした気がするけどごめんなさい」
「何を言う。あそこまで有利な状況を作り出した時点でお主が勝っていたというだけのこと。遠慮はいらぬ。これが拙者を打ち破った証、ピンクバッジだ。受け取るが良い」
「ありがとうございます」
あんなことされて笑って相手を称えられるなんて大した人だな。さすがジムリーダーと言いたい。マチスはねむり連打で落ち込んでいたのに。
「うむ。しかと渡した。お主、攻撃一辺倒かと思いきや存外クセのある技を使いこなす。ポケモンの扱い方もしっかりしておるし、尋常ではない鍛え方をしておるのは一目でわかった。レベル以上の強さを感じた。きっとリーグでは大活躍するであろうぞ」
「ええっ!? あ、ありがとうございます! そこまで言ってもらえるなんて嬉しいです!」
ブルーはベタ褒めされて頬が緩みきっている。さっきまでカラクリに怒っていたくせにもう完全に忘却の彼方だ。まさかここまで考えて褒めたのか?
たしかに俺から見ても感心する内容ではあったが。もっとも感心したのはブルーというよりほとんどラプラスの“ほろびのうた”に対してだけど。ブルーの成長も目を見張るものがあるがラプラスも負けていない。どちらも凄いな。
ほろびのうたは若干変更
「よけろ」というコマンドがあるのでハードルを上げて、技の練度でターンも変わることにしました
ポケモンごとにターンが違うとそれはそれで面白いと思ったのもあります
使い手の耐久高いですし、最後までうまく残してラス1掃除用として使うならけっこう活躍するかも
あとは対シショー最終兵器としても良さそうです