Another Trainer   作:りんごうさぎ

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5.感じる気配 解けゆく謎

「お主、ちいさくなるにはずいぶんと思うところががあるようだな。ひとまず拙者のベトベトンを倒したのは見事であった。だが、あと1匹と安心すること勿れ。拙者の頼りは端からこの最後の1体、本当の勝負はここからよ」

「何? 今のが切り札かと思っていたが……こんな展開、前にもあった気がする」

「出でよ、クロバット!」

 

 クロバット Lv56 206-116-106-77-102-223

 

 やっぱりナツメのときと同じか! 本気出してきた! とんでもないの隠し持っているな。しかもカントー地方のポケモンではない。さっき出て来たゴルバットの進化形だからアリってことか。

 

 目につくのは素早さ。アホみたいに高い。……ようきで個体値VのS252振りか! 完全に最速個体。こいつだけきっちり育てられている。全体的な個体値もかなり優秀。種族値のバランスが良くて速さが上だから、この前のレベル58のフーディンよりも厄介。それを能力アップなしで倒さないといけない。かなりハードだぞこれは。

 

 唯一救いなのは残りの手持ちがクロバットに対してかなり相性がいいこと。特にアカサビは体力満タンかつ毒無効。しかもこいつは“いかりのまえば”がないようだ。一応あれはタマゴ技だから不思議はないけど。こちらへの有効打は“つばめがえし”程度。補助技に気をつければ倒すことは不可能ではない。

 

「挨拶代わりだ、1」

「ニン!」

 

 先制技の“バレットパンチ”はあっという間に距離を詰めてクロバットを捉えた……はずだった。だが、技がまさに当たろうという瞬間、クロバットの姿が一瞬ブレたように見えた。圧倒的違和感。何かおかしい。

 

「サム?!」

「つばめがえし!」

「ガードしろ!」

 

 技後硬直を狙われて直撃。42減ったな。ガードしきれずいい乱数を引かれたようだ。3発でやられるのか。思ったよりも余裕はない。相手の方はどれぐらい減った?

 

 ……206/206!?

 

 どういうことだっ!? 減ってないっ?! クロバットの体力が満タンのまま! ありえない。完全に捉えて避けれないタイミング。しかもさっきのは先制技で命中率100%だ。外すわけもない。こんなことが可能になる技を俺は知らない。

 

「ファファファ。驚いたという顔だな。さてはもう気づいたか、今の早業。普通は何度か対戦してようやく気付くというものなのだが」

「やっぱりか。今完全に避けたな? あのタイミングで」

「ファファファ! その通り。拙者のクロバットは特別でな。その得意技、忍法変わり身の術の効果よ。お主のそのハッサムの素早さでは、たとえ先制技のバレットパンチでも当てることすらできはせん」

 

 なんてことだ。“ひかりのこな”でも持ってるのかよ。いや、持ち物はないけどさ。タワーで命中100%技外して100連勝逃したことを思い出してしまった。粉ドンファン……ぐっ! 頭が!

 

 どうにかしてこのトリックを見破るしかないか。とりあえずクロバットが避けているのが確定しているなら必中技を使えばいい。

 

「8」

「ニン!」

 

 今度は当たった! 驚いて受け身も取り損ねたな。それでもダメージは薄いが。今、ブレたときにアカサビが一緒に横にズレた。まさかあの一瞬で横に移動しているのか? アナライズではわからない。もう一度次はサーチで位置を探るか。

 

「今の番号はつばめがえしか」

「げ、番号覚えてんのか。……3!」

「……ニン!」

 

 忍者だから解読とかも得意なのか? あっちも番号解読してきているようだが、こっちも読めて来たぞ。しっかり気配を感じる。あの掛け声、「ニン」と言えば何か技を発動して左右に躱しているようだ。気配が完全に移動していた。

 

 ここまでわかれば後はどの技を使っているかだ。ジムリーダーがとんでもない技の使い方をするのはもう十分わかっている。消去法で探るしかない。

 

「つばめがえし!」

「こっちも同じ技で応戦しろ!」

 

 威力は同じ。攻撃力ではこっちが上! アカサビが相手をはじき飛ばした。

 

 ……変わり身として使う技はまず攻撃技はありえない。一瞬で使うから出の速い補助技に限定される。

 

「あやしいひかり」

「目を閉じて指示に集中!」

「変わった避け方をする。ねっぷう!」

「5、目を開けろ」

 

 技が多くて全部見切れない。ねっぷうとかもあるのか。あまり練度は高くなさそうなのが救いだ。十分“まもる”を使うだけで対応できるレベルだ。

 

 ……補助技の中でも相手に掛けるものも違う。“まもる”“みがわり”も使えるが違う。使った後の隙が大きいからすぐ反撃してきたことに矛盾する。能力変化の技も論外。とするともう候補になる技なんてなくないか?……いや待て。

 

「2!」

「ニン!」

 

 もう見せていない攻撃技は限られる。たぶんこれがラスト。次はもう相手も違う番号を聞いても避けてくれない。ここで見極める!

 

「……!!」

「クロバット、つばめがえし!」

 

 見えた! 俺が指示できずアカサビは相手の攻撃は受けて残り体力が厳しくなったが、あれは間違いない。先制技が来て相手が慌てた分1番見やすかった。ブレて見えたクロバットの正体、あれは幻影だ!

 

 ……謎は解けた!

 

「忍法変わり身の術見切ったり。つばめがえし!」

「受けきってからつばめがえし!」

 

 相殺もできず避けることもできないから諦めて受けきったか。反撃でアカサビは倒れてしまった。だが勝つ道筋はできた。まさかイナズマが攻略のキーマンになるとはな。

 

「ハッサム戦闘不能!」

「……アカサビは倒れたが、もう見切ったぜ、その技。いわば超高速のクロバットの素早さが可能にした奇跡。その正体はなんのことはない、ただの“かげぶんしん”だろう?」

「見事! 正解だ。やはり今の攻撃探りに来ていたのか。こちらの手がこうも易々と見破られるのは四天王のあの方以来だ。全く恐ろしい洞察力よ」

「恐ろしいのはあんたのその発想だろ。かげぶんしんは使えない技だと思っていたが……その性質を利用したな。かげぶんしんは一瞬で多数の幻影を生み出し本物をそのどこかに紛れさせる。あんたは幻影を作ることでなく、本体がランダムに移動することに目をつけた。そうだろう?」

「いかにも。クロバットは分身を一体に留めるかわり先制技同様の素早さで発動出来るよう鍛錬している。その上素早さを極限にまで高める修行をした。故に攻撃を受ける瞬間に使うことで一瞬で本体を移動させ、攻撃は必ず分身が受ける。これ即ち変わり身の術の極意なり」

 

 たまげたなぁ。気づいたのは“かげぶんしん”が積み技ではないことを思い出したからだ。さらにその後クロバットの分身が見えたことで確信した。

 

 そしてこのトリックは移動することが肝心。だからかげぶんしんを移動のために使ったことは予想できたが、実際に聞くととんでもないことだな。

 

 思えばたしかに“かげぶんしん”は移動手段として見ればこの上なく優秀に思える。最初にカスミと戦ったとき、ジュゴンは鈍足にも関わらず一瞬で本体は別の場所に移動していた。ジュゴンでも一瞬で難を逃れることができるのだから、最速のクロバットが本気を出せば移動どころか回避手段として使うことも不可能ではない。

 

 言うならばこれはテレポートに近いか。あれと違うのは移動技や先制技に付き物の技を使った後の大きな隙、あれがない。使いようによっては、これはテレポートの上位互換といってもいい。

 

 このミラクルを可能にしたのがクロバット。俺の今まで見た中で最速のポケモン。素早さを意図的に極振りしているのもすごいが、鍛錬と素早さで優先度を無理やり上げてしまうという離れ業はもはやルールすら逸脱している。あっさりとこの世の摂理が捻じ曲がってしまった。無理が通れば道理は引っ込むのか。意味違うけど。

 

 そもそも“かげぶんしん”を移動手段に用いるという発想そのものが忍者過ぎて俺みたいな普通のトレーナーでは絶対に思いつけない。こうなると本来の使い方そっちのけで強技認定される可能性まで出て来た。

 

「恐ろしいこと考えるな、ジムリーダーって言うのは。マスターは皆こんなのばっかりなのか?」

「お主はあまり技を極めるようなことはせんのか」

「まだ慣れないんだよなぁ。ずっと慣れ親しんだものを別の使い方にするのは」

「いずれお主も辿る道だ。すぐに慣れる。さて、そろそろ次の勝負と参ろうか。まさかここで打つ手なしというわけではあるまい?」

 

 いずれ辿るって、なんかイヤな予言だな。俺も“だいばくはつ”を“こらえ”たりする日がくるのだろうか。カオスな環境だな。

 

「冗談。見切ったって言っただろ。タネのわかった手品は通用しない。ただのかげぶんしんなら対処の方法はいくらでもある。イナズマ頼んだ」

 

 イナズマ Lv36 どく状態

 実 100-45-49-116-82-145

 

 技 110まんボルト

   2めざめるパワー

   3あくび

   4バトンタッチ

   5まもる 

   6みがわり

   7こうそくいどう

   8シャドーボール

   9かみなり

  10あまごい 

 

 対空戦用に用意していた技。まさにこういう屋外で飛行ポケモンと戦う場面を想定して習得した新たな技をここで初披露だな。変わり身に対しては出だしが肝心だ。俺はイナズマを出すと同時にすぐに指示を出した。

 

「10」

「……あやしいひかり」

 

 やっぱりな。避けるタイミングはキョウ自身が計っている。だから番号だと技をまず見極める必要があるから少し遅れる。攻撃したら躱されて損するだけだが、補助技なら相手の行動がワンテンポ遅れる分逆にこっちが有利になる。しかも“どくびし”のおかげで猛毒や催眠はくらわない。せいぜいが混乱。それも躱すのは容易い。

 

「イナズマ、少しの間目をつぶって!」

「これはあまごいか? なるほど、目をつぶっても差し障りないということか。ちょうはつ」

 

 目を開けたら今度はちょうはつか。変わり身戦術は補助技に弱い。そのための対策として“ちょうはつ”か。きっちり対策の対策まで用意しているということはやはりこの戦術はよく研究して練られているのだろう。抜け目ない。

 

 “ちょうはつ”を初手で使われたらかなり厳しかったがもう準備は整った。天候はどんどん崩れている。

 

「おや、補助技はお気に召さないらしいな。だがちょうはつは1手遅かった。変わり身戦術の弱点、それがこの技だ! やっちまえイナズマ! 9!」

 

  “あまごい”が成功した時点で俺の勝ちは揺るがない!

 

 天候を利用することは何もキョウだけの専売特許ではない。さっきまで晴れやかだった空は見る間に雨雲で黒く染まり、今天候は雨に変わった。

 

「攻撃技が来るとわかっておれば怖いものはない。ニン!」

「それはどうかなぁ」

 

 ゴロゴロゴロ……ピカッ!!

 

 光った!……と思った次の瞬間、まるで何かが爆発したかのような大きな音がして“かみなり”が落ちた! それは吸い寄せられるようにしてクロバットに命中。一撃でクロバットは地に堕ちた。

 

「!?」

「クロバット!!」

 

 クロバットはアカサビとの戦闘で体力を半分程消耗していた。そこに今の技、“かみなり”が直撃した。一致抜群、威力360!……確定1発!

 

 クロバットは声を上げることもできず気絶してしまった。

 

「忍法変わり身の術……破れたりっ!」

「……あっ! クロバット戦闘不能! 勝者、チャレンジャーレイン!」

「よっしゃ! よくやったイナズマ! よーし、おいで?」

「ダァー!」

 

 飛びついてきたイナズマを撫でてあげると、“あまごい”による雨もすぐに止んだ。時間的に早いからイナズマが止めたのかな?

 

「おお、まさか拙者が負けるとは。お主、やりおるな! 持てる全てを出し尽くした。拙者もまだまだ精進せねばならんな。うむ。実に素晴らしい内容のバトルだった。お主ならリーグは無論、マスターでも通用するであろう。レベルを上げてゆけばとんでもない成績を残すはずだ。そら、ピンクバッジを受け取れ!」

 

 キョウはそういって巻物をスルスルと開き、俺はその中にくっついていたピンクバッジを受け取った。忍者らしさに拘るな。

 

「ありがとう。今までの中で1番嬉しい誉め言葉だ。戦い方もかなり参考になるものばかりだったし、ここで貴重な経験を積めて良かったよ」

 

 これは心からの言葉だ。戦術なら今まででダントツに手強かったし、反省することも多かった。俺もこれからさらなる精進あるのみだな。

 

「それはジムリーダー冥利に尽きる。お主はカラクリの才能もあるようだし、是非とも我が門下に欲しいぐらいだな。ファファファ」

 

 ……弟子になったら俺でも忍者になれるのか?

 

「なんかすごいバトルだったわね。わたしずっと内容についていくだけで精一杯だったわ。シショー、最後のあれって“かみなり”よね。キョウさんは“かげぶんしん”で避けたはずなのにどうして当たったの?」

「おお、拙者もご教授願いたいな」

「え、ブルーはともかく技に詳しいあんたまで知らないのか? 自分も晴れソーラービームとかしてただろ。あれと同じで天候の隠された効果の1つだ。雨特有の効果で、あの時は“かみなり”が必中技になっていた。だから分身を出そうが本体に直撃したってわけだ」

 

 やけにあっさり通ると思ったらそういうことか。キョウが“あまごい”を見ても呑気だからいけそうな気配は感じていたが、まさか本当に知らないとは。

 

「そんな効果が! なるほど、理解した。そのような隠れた効果は世に出回っているものはなかなかない。自分で見つけるしか知る術はほとんどないのだ。拙者の“にほんばれ”戦術もリーグでは使っておらんからあまり知られてはおらん。お主はよほど研究熱心なのだろう。拙者でもここまで技の効果について造詣の深いトレーナーは初めて見た」

「シショー、技のエキスパートみたいなキョウさんからそこまで言われるなんて、やっぱりすごいのね。久々に感動したわ」

 

 そうか。たしかに自分で見つけられるかと言われたら俺も厳しいな。万有引力は今なら誰でも知っているが、それを見つけることができたのは天才だけだ。そういうことだろう。

 

 ブルーにもシショーらしいところを見せられたようだし、終わってみればこのジム最高だったな。リニューアルして罠が変わったらまた来てみたいかも。

 

「とりあえず、これでやっとジム戦終了だな。なんだかんだずいぶん苦労したがいいジムだった。……というか、今思えばあんたは俺に勝たせる気あったの?」

 

 あのクロバットは何回か戦ってようやくタネに気づくと言っていた。あれが本当なら俺は何回かリトライ前提の敵と戦っていたことになるんじゃないか?

 

「ファファファ! これぐらいせんとお主は本気になれんだろうに。本気の罠でもなんとか避け切ったのだから、あの程度の幻惑でいまさらどうこうなるお主ではなかろう」

「……たしかに、あの屋敷のことを思えばいまさらなことか。実力の限界ギリギリを試された気がする」

「人は限界に直面し、それを知ることで初めてそれを超えることができる。限界を見ずしてどうしてそれを超えられようか。限界に臨み、それを克服することが最も人を成長させる。そう拙者は考えている」

 

 この人のポリシーみたいなものなのかな。たしかに言っていることはもっともだし、そう考えればあのトラップの殺意にも納得はいくな。あんな強烈な罠を伊達や酔狂で仕掛けたりはしないよな。やはり考えあってのものだったか。

 

「その言葉、今の俺達には身に染みるなぁ。よく覚えておく」

「シショー、とにかくこれでわたし達そろってランク7ね。残っているのはグレン島とトキワシティだけど、順当に進むと次はグレン島に向かうの?」

「そうだな。ここからは船旅だ」

「ふむ、お主達グレン島へ向かうのか。ならふたご島には注意せよ。極端に冷える上、内部をうろつけば伝説のポケモンに出くわして凍り付けにされることもある。傍の航路はできるだけ避けて速やかに抜けてしまうのが無難だ」

 

 おっと、助言がくるとは。ジムリーダーって基本的にかなり親切だよな。ふたご島はそんなにヤバイところなのか? そんなイメージはないがなぁ。

 

「え、こんなところに伝説のポケモンがいるの!?」

「はっきりと生息地がわかっておる珍しい種類だ。だが生息地を極寒に変えるため挑む者は数知れないが命を落とすものも少なくない。未だに誰にも捕まっておらんのが強力なポケモンという何よりの証であろう」

 

 わかっている伝説もいるんだな。誰かに捕まったら極寒じゃなくなるってことなのかな。あそこが寒いのはフリーザーが環境を塗り替えたからなのか。……なんかの能力者かよ。

 

 そういえば3年後にあそこはグレンジムに改修されていたが、あれはフリーザーがいなくなったおかげで寒くなくなったということなのか。カツラが熱いせいだと思っていた。

 

「フリーザーか。そんなにヤバイのか……」

「こわあぁ!! 先に聞けて良かったぁ。そんなところに行ったらかよわいわたしなんか絶対死んじゃうわね」

 

 ブルー、ちょくちょくかよわいアピールしているがこんなに気が強くて馬鹿力なクセにそれは無理があるだろ。それに今は言う気はないが俺は当然伝説を全て見ていく。となるとこいつの発言はかなり現実のものになる可能性が高い。

 

「それとここから南へ行くと海に出られる海岸があるが、現在は少々問題が起きていて凶暴なポケモンが出没するので用心されたし」

「まさか水柱があがってドーン!っていう感じの?」

「いや、聞いた話ではドククラゲの群れだそうだ。こんなところでは普通見ないのだがどこかから流れてきたのだろう」

「別件みたいね」

 

 そらそうだろうよ。あれはこんなところでずっと留まっているわけないからな。狙いは俺だ。

 

「お主ら、何かあったのか?」

「実は俺達最近水辺で何度かポケモンに襲われていてな。しかも相手の姿は近くに見えず水柱だけが襲い掛かってくるから手の打ちようがなく、ホントに困り果てていた」

「しかもいろんな場所でなのよ! 信じられないでしょ!」

「それはまた面妖な。しかし、可能性があるとすれば……まさか例のあれか」

 

 意味深な表情を浮かべるキョウに藁にも縋る気持ちでそのポケモンについて聞いてしまった。

 

「何か心当たりがあるのか?! どんだけ考えても俺達ではわからなかった。現時点の予想では水タイプではない気もしてカイリュー辺りかと思っているのだが……」

「いや、みずタイプやドラゴンタイプの仕業ではなかろう。複数個所というのも気にかかる。意外とエスパータイプの仕業かもしれんぞ。この地方には、知られてないがとんでもない強さのエスパーポケモンもどこかに潜んで居るからな」

「え、エスパー? ホントに意外ね。でも水の中にいなきゃ姿は見えるだろうし、水中にいるとしたらスターミーぐらいじゃないの? あとヤドランもか。ねぇ、シショーはどうおも…」

「まさか……たしかにそれなら……」

「シショー?」

 

 正体不明のポケモンの実態。それがおぼろげながらやっとつかめてきた。もっと早く気づくべきだったんだ。あんなことできるのはこの地方なら限られている。

 

 強さからいって伝説級。みずタイプ以外であんなふうに水を操りテレパシーも飛ばすならたしかにエスパーしかいない。今までみずタイプだという先入観があった名残でずいぶん的外れなことを考えていた。

 

 カントー地方にいる伝説級のエスパーといえばもう誰でもわかる!

 

 ……最強の遺伝子ポケモン、ミュウツーか! 

 

 キョウのあの口ぶり……あの感じだと、例のポケモンってのはミュウツーのことを指していると見て間違いなさそうだ。なんでキョウが知っていたのかはわからないが、まだ人にはあまり知れていないようだし、姿を隠していたのも人に知られないためとかそういうことなのかもしれない。

 

 どうして最初からエスパーの仕業と気づけなかったんだ。いや……少し待てよ?

 

 実際に声を聞いた時のあの口調、もっと子どもっぽい反応じゃなかったか? ミュウツーだとイメージが合わない気がする。ならばあの追手の正体はミュウツーではなく、まだ誰も知らない幻のポケモン…………ミュウ?

 

 ――みゅみゅみゅ――

 

「!!」

 

 呼ばれている。はっきりと何かテレパシーのようなものを通じ、その気配を感じとれる。ミュウは間違いなくいる! 今この瞬間も、俺を見ている……!

 

「ちょっと、どうしたのシショー。急にボーッとしちゃって。聞いてるの?」

 

 ハッとして思考の海から抜け出し顔を上げる。ここはまだジムの屋敷の屋上だ。

 

「ブルー? ああ、悪い。ちょっと考え事だ。キョウさん、とにかく色々教えてくれてありがとう。参考になる話で助かった」

「なんのなんの。お主達、精進してリーグでも頑張るのだぞ」

 

 頷いてジムを出たが、もう意識はほとんど別の場所に持っていかれていた。ほんの少し前までは初めて素晴らしいジムに来られたことに感動していたが、今はもうそんなことは頭から吹っ飛んでいた。俺の頭の中ではこの世界に来てからのことがめまぐるしく駆け回り、周りの声は次第に遠ざかってゆく……。

 

 探知できない姿。聞こえてくる声。強過ぎる力。執拗なストーキング。長くその正体の片鱗にすら辿り着けなかったが、キョウの何気ない一言は俺をようやく真実の道へと導いたのかもしれない。

 

 見えない敵の正体……謎は解けた。

 




謎の襲撃者はミュウです
色々ヒントは用意していたつもりだったのですがわかったでしょうか
最初にタグ見て「カントー」「エスパー」「幻のポケモン」だからどっかでミュウは出てくるかなーと思われた方は少なくないでしょう
タグはほぼこの伏線のためにあったといっても過言ではないです(真顔)
ネタバレ嫌なので「ミュウ」とか固有名詞は基本外しました

水の中にいたはずなのに話違うぞ!とご不満の方もいるかもしれませんが、そのトリックのタネはミュウの技、「へんしん」です
水ポケに化ければセーフですね(ズル)

しかもわけあって普通とはちょっと違い元々使えた力を失いません
なので変身中もねんりきで水を操ってドーンができます
れいとうビームとかもミュウは全部の技使えるので余裕ですね

目的とかまだ色々謎ですがじきに明らかになるでしょう

かげぶんしんについては発想源はアニメのやつです
いっつも相手が本物引くまで周りグルグルするのやめてもらっていいですか?
毎回分身出したらすぐに後ろから容赦なく攻撃しろって思うんですよね
なぜ次の行動までに一拍置いてしまうか
むしろこれすぐに本体移動しているから移動手段として有能なのでは?
むしろ回避手段として一瞬だけ使ってすぐ反撃という使い方だとめちゃつよなのでは?

その結果完成した使い方はご覧の通りです
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