Another Trainer   作:りんごうさぎ

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8.幻の151番目

 ふたご島を出てまた幾日が過ぎた。慣れとは恐ろしいもので、ラプラスに乗った船旅を今では快適とは言わないがそれなりに楽しめる余裕もできていた。

 

「ねぇ、次の街に着いたら何をするの? 温泉? 登山? グレン島は結構観光地としてもいいところよね。シショーは行きたいところとかある?」

「まぁ、順番に良さそうなところをゆっくり見て回っていけば……」

 

 ――みつけたの――

 

 ドクンッ!

 

 見られている。近くにいる。今までで1番近くに来ている! サーチを使いたい。だが、急に頭が痛い。胸も苦しい。それにまるで心臓を鷲掴みにされているようなプレッシャー。どうにかなっちまいそうだ。集中できずサーチはちゃんと使えなかった。仕方ないので辺りを見渡して肉眼で探してみるが全くその姿を捉えられない。

 

「くっ。下か、上か?」

「シショーどうしたの? 急に顔色変えて」

「いいか、よく聞け。もしも……」

 

 襲われたら……と続けようとしたらラプラスからテレパシーが入った。

 

(みなさん、見えました。到着です、グレン島ですよ)

「え、やったー!! 待ってましたっ!! ありがとーラーちゃんっ。よく頑張ってくれたわね」

(いえ、大したことは。でも、そこまで褒めてもらえるならもっと撫でてください)

「いいわよ、ずっとナデナデしてあげるから」

「ラーー」

 

 着いたのか? あれは……本当に陸だ、陸が見える。すぐに上陸できた。じゃあ運良く助かった? いや……違う! そんなことは自在に移動ができる向こうの方がよくわかっていたはず。始めから狙ってこのタイミングを計られたんだ。こっちの心理を見透かしたかのように。わざと警告してきたんだ。自分はいつも見ていると。やっぱりずっと見られていたに違いない。

 

 ――はやくきて。はやくみゅーのハウスに――

 

 またあの声が! やはり俺を脅しているのか。ゆっくり見て回ろうなんていったから。その気持ちを察知して催促するためにこんなことを。こっちの行動は筒抜けだって言いたいのか。この俺をあざ笑うためにこんなことを……。

 

「ぐっ……くそっ!」

「ど、どうしたの!? 大丈夫?」

 

 地面に拳を突き立てて悔しさを隠すこともできずにいる俺を見て、ブルーが心配そうに声をかけた。だがそんな言葉は耳には入らない。

 

「……そうだ。よく考えりゃ、最初っから全部おかしい。おかしいところだらけじゃねぇか!」

「え?」

「なんで水辺だけに限られていた? 相手はエスパーで間違いない。なら、陸でもいくらでも襲うチャンスはあった。昔は俺1人の時もあった。じゃあ人がいたから諦めた? それも違う。あれは偶然じゃない。不自然だった。人払いされていたんだ、他ならぬあのポケモンの手によって。なら水辺に現れた理由は唯1つ、俺達が水ポケモンだと勝手に勘違いしていたから! そこまで相手は把握しきっていた!」

「どうしたのよシショー。なんか怖いわよ。急に何があったの?」

「気づかないのか! 俺達はずっと弄ばれてたんだよっ! いつでも攻撃できたのに、勘違いしてる俺達を見て笑ってやがったんだ。屈辱だ……許しがたい屈辱だ。こんなふざけたことってあるか!? 俺のことなんかいつでも始末できた。本当にただ遊んでいただけだったんだ。そいつの“きまぐれ”ひとつで、俺の軽い命なんか簡単に消し飛んでいたんだ。ずっと俺がお情けで生かされていただけなんて……ありえない。こんなことはあってはいけない」

「シショー、そんなの考え過ぎよ。それに、まだエスパーと決まったわけじゃ…」

「……聞こえてるんだよ」

「え?」

「俺は、あの日からずっと、脳に直接語りかけられてるんだよ。何度も何度も、見つけた遊んでと、おかしくなりそうなぐらいしつこく繰り返し何度も! 俺は呼ばれたんだ。あいつにここへ呼び込まれたんだ。こんなところに来るつもりはなかったのにっ! あいつのせいでっ!」

「シショー、さっきから何を言っているの? ちょっと1回落ち着いて! どうしちゃったのよ。顔色も悪いし、早くポケセンで休みましょう。すぐに気分も良くなるから」

「……こんな高度なテレパシーを使うあの声は、誰も知らないあのポケモンに間違いない」

「もしかして、キョウさんがいってた強いポケモン?」

「違う。そいつじゃない。リーグ関係者も知らない、新種の……幻のポケモン」

「え、なによそれ」

「カントー150種、それだけのはずのポケモン図鑑。そこに記されていない151番目のポケモン。……ミュウ」

「151番目? そんなはずないわ。オーキド博士の研究で確かこの地方には150種類って判明して学会でも認められているはずよ。伝説でもそんなのありえ……」

「違う。だから言ったろ。ミュウは……幻のポケモンだ」

 

 もう猶予はない。今まで先延ばしにしてきたがそれはもう終わり。こいつと雌雄を決する時が来た。

 

 そしてどうしても聞いておかないといけない。なぜ俺はここへ呼ばれたのか。

 

 そもそも、あの日から俺自身がどうしてこんなところに来てしまったのか、どうやったら帰れるのか、立ち止まって深く考えることはあまりしてこなかった。いや、仕方ないものとして半ば諦めていた。だが、今目の前にその答えがあるのかもしれない。

 

 俺は知らなければならない。真実を!

 

「……ねぇシショー、とにかくいったん休みましょう? 幻のポケモンは後で考えて、一度休憩した方がいいわよ」

 

 恐る恐るといった感じでブルーは話かけるが、頭がいっぱいで耳に入ってこなかった。

 

「……」

「もう、ホントにどうしたのよ。いつものシショーらしくない!」

 

 ブルーが叫ぶとボールからイナズマが出て来た。いつも勝手に出て来るので最初は気にはしなかったが、俺が反応なしでもしつこくじゃれてくるのでついそっちに気が逸れた。

 

「ダーッス!」

「イナズマちゃん!」

「なんだ? そんなに遊んでほしいのか?」

 

 今日はいつも以上に甘えて来るが、それでも懐いている証だと思えばやはりトレーナーとしては悪い気はしない。イナズマはやっぱり愛嬌があってかわいい。

 

「ダー!」

「ほら、こっちにおいで」

 

 頭の上に乗っていたイナズマを抱き寄せてほっぺを撫でてあげた。嬉しそうだ。ちょっとビリビリする。

 

「さっすが。イナズマちゃんのおかげでいつものシショーに戻ったわね」

「なんのことだ?」

「自覚ないの? ほんっと、シショーはわかってないわねぇ」

「なんでそれで嬉しそうな顔してるんだお前は」

「知らなーい。あ、あれがここのポケセンね。おっきいわねー。ヤマブキよりも大きいんじゃない? こんな大きなポケセン初めて見た。早く行きましょ」

 

 考え事をしながら歩くうちにポケセンまで着いたらしい。ブルーの言う通り本当に大きいな。こんな辺鄙な島にあるのになんでなんだ? 気にはなったがブルーに引っ張られて中に入った。

 

「なんか人も多いな。あんまり人が多いのは好きじゃないんだが、あれのことを考えれば今は好都合か」

「ダーッス?! ダーッ!」

「え、どうしたのイナズマちゃん?」

「どこ行くんだ、待て!」

 

 俺の制止を振り切って人混みに入っていってしまった。仕方ないので慌てて後を追った。幸いにもサーチで見えているのでこの建物の中なら見失うことはない。

 

「ちょっと待ってよー!」

「お前は後から来い」

 

 ブルーを置いてイナズマの動きに集中すると、建物の端の方で動きが止まった。何か見つけたのか?

 

「こら、イナズマ! 勝手に飛び出したらダメだろう。何かあったのか?」

「ダー♪」

「おー、やっぱりレインはんもこっちにきとったか。お久やな」

 

 足元のイナズマから視線を上げるとマサキが笑顔で手を振っている。マサキはそのままイナズマを抱き上げた。そういえばここで会うイベントがあったな、FRLGでは。すっかり忘れていた。イナズマがあんなにはしゃぐわけだ。

 

「こんなところで会うとは、久しぶりだな、マサキさん。急に飛び出すから何事かと思ったけど、これなら仕方ないな、イナズマ」

「ダーッス」

「マサキさん、この方はご友人ですか?」

 

 するとマサキの横にいた研究員っぽい人が尋ねた。ニシキとは違うし、いったい誰だ?

 

「ああ、すまんすまん、話の途中やったな。この人は未来のチャンプ候補のレインっちゅうトレーナーや。このサンダースが人に懐かんで困ってた時に引き取ってくれたんや。このサンダースはずっとワイが育てとったから、久しぶりにワイに会えるとおもて思わず飛び出してきてもうたんやろ。かわいいやっちゃで、ほんま」

「なるほど。そうでしたか」

「実際は俺の方から頼み込んだんですけどね。この子はすごいポケモンだったので。快く譲ってもらったことには今でも感謝しています。申し遅れましたが、俺の名前はレインと言います。あなたはこの島の研究室の方ですか?」

「さすがにこの格好だとそう思うか。実は私はその研究室の総長なんだよ。二代目のね。今日はちょっとマサキさんに頼みがあってきたんだがどうも上手くいかなくてね」

 

 総長なのか。大物だったな。二代目っていうのは、おそらくフジ老人の跡を継いでってことか。その辺のことも聞きたいが、今は無理か。

 

「あー! やっと見つけた! もう、シショーもイナズマちゃんも速過ぎ! なんでそんなひょいひょい先に行って場所まですぐにわかるのよ! ってあれっ!? マサキさんじゃない!」

「おお、ブルーちゃん。まだ一緒におったんやな。ここまできとるっちゅうことは、旅の方は順調そうやな」

「もっちろんよ! レッド達には先を越されているけど……」

 

 レッドの名前を耳にして、ナナシマはどうなっているか気になり尋ねてみた。

 

「そういや、マサキさんはなんでこんなところまで? ナナシマ関連の用事とか?」

「ん? なんや、ナナシマのこと知っとるんか。でもワイの用事はそれじゃないんや。確かにレッドはんらにはナナシマに野暮用を頼んどるけどな」

「え、レッド達はそのナナシマってところにいるのっ! そこってどんなところなの?」

 

 なぜかマサキではなく俺の方を見て言うのでそれに答えてあげた。

 

「ナナシマはここから離れたところにある7つの島の名前だ。由来は島が7つあるから……ではなく7日で島ができたからだそうだ」

「ええっ!? なにそれ紛らわしっ!」

 

 ホントそうだよな。由来はたしか7の島辺りで教えてもらえた気がする。

 

「レインはんほんまによう知っとるな」

「といっても、聞きかじりみたいなもんだけど。すると、結局マサキさんの用はなんなんだ?」

 

 その問いには総長さんが答えた。

 

「それが、実は私の研究所の実験で必要なものがあって、その工面についてマサキさんに相談していたのです。マサキさんはカントーでも人脈が広いですから、そのお力を借りようと思って」

「へーなになにー、どんな実験なの? 必要なものって何なの?」

「おいブルー、あんまり無暗に研究のことを聞くな」

「えー、いいじゃない! 気になったんだもん」

「ハハハ! ほんまに師弟って感じやな。そんなトップシークレットっちゅう話でもないから別に構へんで。な?」

「ええ。実は我々は今化石の復元実験をしているのですが、それに使う標本、つまり化石が足りないんです。これが貴重で高価なので、予算がもうなくて、もう少しで上手くいきそうなんですが……提供者の方にもう先の見えない投資はできないと断られてしまって」

 

 足りないってことは失敗したらなくなるんだろうか。ゲームなら復元はできて当たり前だが現実ではそういうわけにもいかないようだな。世知辛い。

 

「そーなんや。そんないきなり成功するわけないのに、ちょっと失敗が続いたらすーぐに手の平返しや。化石のムダ使いやー言うてな。(やっこ)さんらの手首はクルックルやでホンマ。困ったもんや。偉大な研究に犠牲とリスクはつきもんやっちゅうに」

 

 スポンサーの手首はボロボロ……。

 

「これまでは確かに失敗続きだったんですが、今はもうある程度データがそろってきています。前回は不運にも失敗しましたが、もうかなりの確率で上手くいきそうなんです。ですがもう研究も崖っぷちで、予算もストップ、期限も今年まで。とにかく一度結果を残さないとプロジェクトは中止になることが決定して、もう藁にもすがる思いなんですよ」

「なるほどぉ、そういうことですか」

 

 予想外の展開だな。そういえばこれまでの道中で、グレン島で化石の復元をしている、的な話を全く聞かなかった。ゲームで情報を得られたニビの博物館には以前に足を運んだが何も聞かなかった。今にして思えばそもそも復元技術自体がまだなかったからなんだな。そうなってくると、思ったよりも今ここで化石復元の研究について話を聞けたことは幸運だったかもしれない。

 

「化石の復元かぁ。ロマンがあるわねぇ。でも研究って大変なものなのね。なんとかならないのかしら、シ……」

 

 何か言いかけていたところで急に口を閉ざしたブルー。見れば俺の方を向いたまま顔が引きつっているが、どうしたんだ?

 

「なぁ、レインはん。ダメ元で聞くけど、そういう化石とかよーさん持ってそうな人とか、なんでもええから心当たりのある人おらへんか?」

 

 やっぱり聞くよな、藁にもすがるんだから。ここは気前良くしとくのがベストだろうな。

 

「知り合いにはそういう人はいないですね。知り合いには」

「くっ、そうですか。やはりそう上手くは……」

「おっと、でも化石ならなんとかなりますよ。ちょっと待ってください」

 

 落として上げる。もう総長さんは俺に対して期待が膨らんでいるのがはっきり表情に現れていた。わかりやすい人だ。

 

「ん、なんやなんや?」

 

 パソコンを起動して取り寄せ。収納していた例の、“ひみつのコハク”を取り出した。

 

「なっ、レインはん、これは……!」

「コハクですね! これをどこでっ!」

「おつきみやまにいったとき偶然見つけて。これが役に立つとはなぁ。総長さん、良ければこれを使ってください」

 

 人生何が役に立つかわからないな。グレンには感謝しないと。

 

「お……おおっ! いいんですかレインくんっ!!」

「もちろん。その代わりといってはなんですが、お金は要りませんから、復元に成功したらポケモンは俺に下さいね。恐らく、一度実績が出来れば化石提供には困らないでしょうし、構わないですよね?」

「もちろんですよ! 実験できるだけでもありがたい。それにその条件は成功することを信じてもらえているようで、研究者としては大変嬉しい限りです」

「ホンマにレインはん、あんた太っ腹過ぎるで。その化石、然るべきとこへ売ったらものごっつい値段なんねんで。その保管の仕方はコレクターのワイから見ても手がこんでしっかりしとるし、相場を知らへんってわけでもないんやろ? まさか、ワイに気ぃつことったりせえへんか?」

「いや、別にそんなんじゃない。一応これでもお金には困ってないし、偶然拾っただけなんで惜しくはないから。それに対して化石を復元してもらう機会なんてそうそうないだろうし、もしこの化石の復元が成功したら、その第一号のポケモンのトレーナーになれる。そういうロマンはキライじゃないんですよ。化石探して復元するのは楽しいですよね」

 

 もちろんほとんど建前のようなものだが、総長さんからはえらく喜ばれた。

 

「レインくん、君はよくわかっている。本当に、化石には我々のロマンが詰まっている。きっとこの実験を成功させて、君を偉大な化石復活の第一号にして見せますよ。ぜひ、化石復活が完了するまでこの島にいてください」

「わかりました。頑張って下さい。俺達もしばらくここにいるつもりだったので気長に待ってますよ」

「ぜひそうしてください。いやぁ、もしかするとレインさんは私達の救世主になるかもしれない。本当に助かりました。こんな方にここで会えるなんて。やっぱりマサキさんの人脈はすごいですね」

「なっはっは! まあそれ程でもあるで。じゃ、ここでワイはお役御免やし、うちに戻ろかな。大事なギャロップちゃんが待っとるし。イナズマ、ほな、またな。リーグで活躍するの楽しみにしとるで」

「ダーッス!!」

「私もこうしていられない。すぐに研究に取り掛かりたいので失礼します。レインさん、本当にありがとうございました」

「いえ。2人ともお元気で」

 

 ◆

 

 マサキ達と別れてポケモンを回復させている間にブルーがさっきのことを問い質してきた。

 

「ねぇ、なんでさっき化石をタダであげちゃったの? シショーめっちゃ悪いこと考えてる顔してたから、てっきり高く売りつけるつもりだと思ったのに」

「……お前、途中からおとなしくしていると思ったらそんなことを考えていたのか。あの反応もそういうことか。別に悪いことなんか考えてないし、理由ならさっき言っただろう」

 

 それで終わらずにブルーは食い下がってきた。

 

「あんなのどうせ建前でしょ。シショーはロマンとか考えるタイプじゃないし。お金だって、余ってるからって稼がない理由にはならないじゃない? あの時の顔は絶対に悪いこと思いついたって時の顔だったし、正直に吐きなさい」

 

 ド真ん中ストライク過ぎて怖いな。完全に考えていることが読まれている。俺はそんなに単純な性格なのか。

 

「ブルーさんには全部お見通しか。敵わないな」

「えへへ、なんか最近はシショーの考えてることがわかってきたんだ。で、ホントはなんでなの? また借金でもさせる気かと思ったのに」

「わかってないな。相手は金欠だって言ってるのに代償として金を要求するのは下の下だ。借金とかもダメ。それで済む程度の話なら最初から借金して化石を買ってるだろうしな」

「あ、そっか。……やっぱりそういうこと考えてるんだ。案の定というか、シショーってロマンチストじゃなくてリアリストよね。こんな夢も希望もない人だってわかったらあの人ひっくり返るわよ」

「……悪かったなロマンの欠片もなくて。もうこれで気は済んだだろ?」

「まだよ。なんでタダであげたの? 見返りがポケモンだけなんておかしいわ。もしかしてあれってすごいポケモンの化石なの?」

 

 興味を持ったらとことんしつこいな。あんまり詮索されるのは気分のいいものじゃないんだがなぁ。

 

「あれはプテラの化石。たしかに珍しいポケモンだが、別に持っている奴は持っているな」

「ふーん。シショーって化石も詳しいんだ。マサキさんも感心してたし。で、狙いは何なの?」

「なんでそんなに絶対なんかある前提なんだ?」

「……」

 

 しばらくジト目のこっちを責めるような視線に晒され続けて、耐え切れず白状してしまった。

 

「わかったわかった。降参だ。話すからその目をやめてくれ」

「じゃ、キリキリしゃべりなさい」

「……理由は、まず前提としてあの実験がおそらく成功するだろうと思ったから。あれは間違いなく復元される。それが大きいな。失敗すると思っていれば当然渡しはしない」

 

 シナリオ的に考えてここは成功するだろう。メタな予想だからそれは当然説明できないが。

 

「やっぱり打算はあるんだ。それじゃ本当にポケモンが目当てなんだ」

「それもあるし、ここで俺が協力して実験が成功すれば、少なからず俺はこの分野の功労者になれるだろ? 最初の復元体のトレーナーになれるだけでも大きなプラス。それでなくても先見の明があったということにはなるし。しかも、あの総長さんにはものすごく感謝されるだろう。苦境に立っている人間は、その時助けられたことは忘れないもんだ。要するに、ここで恩を売っとけば、また化石を見つけた時ここに持ってきたら復元してもらえるだろうから、それも込み込みってこと。化石はまだ手に入るだろうし。これなら納得だろ?」

「そうね、納得したわ。めっちゃシショーらすぃー答えね。人間急にお人よしになったりはしないものね、やっぱり。なんか安心したわ。ちなみに、実験が成功すると思ったのってやっぱりシショーもこういう研究したことあるからなの?」

 

 こいつ、失礼なことを平気で言うなぁ。しかも言い方が腹立つ。らすぃーってなんだよ。めっちゃ煽ってんな。それに研究したことあるかって、あるわけないだろ。

 

「あるわけないことぐらい考えればわかるだろ。上手くいくと思ったのは勘だ。ナツメっぽくいえば予感だな。明確な根拠はない」

「えー、そんなあいまいな理由?」 

「あえて挙げるならこの研究が崖っぷちだからかな。まだ次があると思っているうちはなおざりの心が生まれてここ一番で決めてやるという気概は薄れる。だからどうしてもそのチャレンジはどこか疎かなものになる。だが後がなく、チャンスも一度きりとなればその集中力は最大限に高まるから、当然期待値も高くなる」

「ふーん。ここ一番ねぇ。それじゃあさ、さっきは化石を探して復元するのは楽しいって言ってたじゃない? あれはなんなの? いつそんなことやったの?」

 

 げっ! しまった! つい口が滑ったか。

 

「別に、言葉の綾だ。そういう仕事ができて羨ましい、っていうニュアンスのつもりだ。とにかく、もうこれ以上は化石の話を気にするな。いいな?」

「ふーん。そうは聞こえなかったけど、まあいっか。シショーはいつも通りに戻ったみたいだし。ホント、イナズマちゃんに感謝ね」

「なんだよいつも通りって。別に変わらないだろ」

「シショーセキチクからずっと幻のポケモンのことばっかり考えて全然いつもと違うじゃない。目が虚ろになってボーッとしたり、急に大声出したり、おかしいわよ?」

「そんなに? 気のせいだろ」

「気のせいの域を超えてるわよ! 最初に会った時に精神的に不安定みたいなこと言ってたけど、またそれなの? もうあんなところ見たくないからシショーはいつも通りでいてね。だいたいフリーザーでも簡単に倒せちゃうんだから、幻のポケモンって言ってもパパッと倒せちゃうわよ。きっと考え過ぎよ」

「……だといいが」

 

 ここまでブルーに心配かけていたのか。まったく気がつかなかった。いや、気が回らなかったというべきか。弟子に心配されているようじゃカッコがつかないな。

 

「レインさん、ブルーさん、ポケモンの回復が終わりましたよー」

 

 ちょうど回復が終わったようだな。呼ばれたので受付に向かった。さっきのことはあまり考えないでおこう。気分が悪くなるとかそういうのは考えても対策の打ちようがないから仕方ない。

 

「これで準備万端ね! じゃあさっそくジム戦ね?」

「……そうだな」

 

 本当は先に幻のポケモンについて対策を講じたいが、またブルーを心配させたくないしいったんは気にしないようにするか。

 

 ◆

 

 やって来たのはグレンジム。さっさと終わらせないとな。

 

 ガチャガチャ ガチャガチャ

 

「ん? んん? なんだこれ開かないぞ。ここで合っているよな? 地味な建物だけど」

「うん。ここに看板もあるわよ。グレンじま ポケモン ジム リーダー カツラ ねっけつクイズおやじ。間違いないわね。もしかして留守なのかしら」

「あ、そういえばこのジムには仕掛けがあったんだった」

「仕掛け? さすがにまたあの忍者屋敷みたいなのは勘弁よ」

「いや、仕掛けというのは、つまり……」

 

 言い淀んだところで、いきなりドアから音声が流れてきた。

 

 “うおおーす、チャレンジャーの諸君! ジムに入りたくば、ポケモン屋敷でひみつのカギを取ってくるのだ!”

 “うおおーす、チャレンジャーの諸君! ジムに入りたくば、ポケモン屋敷でひみつのカギを取ってくるのだ!”

 “うおおーす……”

 

 繰り返されるカツラの声の録音を聞いてブルーもことの次第を悟った。

 

「なんでチャレンジャーが入るためのカギを探さないといけないのよ。普通に中に入れてよ!」

「どのみちポケモン屋敷には行くつもりだったし丁度いいか」

 

 ポツリとつぶやいたのがブルーの耳にも入ったらしく聞き返された。

 

「なんで行くつもりだったの?」

「……そこには昔のとある実験の資料やら、あるポケモンに関する日記やらが置いてあったはずだからな。それを確認しておく必要がある」

「あるポケモン?……あっ、もしかして幻のポケモン?」

「ああ。よくわかったな。そこにミュウの日記がある。さっそく行くぞ、ポケモン屋敷に」

 

 幻のポケモンとの邂逅はすぐそこに迫っている。そんな予感がした。

 




分割してタイトルを考えてからミュウの実名はこの回で最初に出せば良かったと気づき後悔
やっつけ感がひどい……
まぁいっかと開き直りました

観光云々はアニメの方です
そもそも本作は割とゲーム準拠にみせかけて所々アニメ準拠ですよね
作者の思い出補正もあるんですが、特にジムリーダーに関してはゲーム中のセリフが少な過ぎるのが原因です
戦闘前後と技マシンの説明のセリフだけではキャラ付け薄い
仕方ないから自分が見たことあるやつで補っているわけですね
キョウさんのように完全に魔改造してイメージだけで書いている場合もありますが

セリフと言えばカツラはゲームのセリフが不味いんですよね
エンジュのことをキョウトとかいうちょっとよくわからない呼び方してるんですよね
そんな名前の町ないはずなんですけど……

ギアナは仕方ないからそのまま使いますけどね
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