Another Trainer   作:りんごうさぎ

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5.けっせん! ミュウ!

「ブルー遊ぼう?……なんちゃってね。お久しぶりなの。今日までなんとか生き残れたみたいね。だらしないトレーナーだと思っていたのに、ちょっと見直したの。みゅーの仕掛けたモンスターハウスに引っかかって勝ち残るなんてびっくり。みゅーでも全部倒すのはちょっと大変なのに。ドレディアを先に倒したのはいい判断だったと思うの」

「あなたが仕組んでいたの!? しかも最初から見てたの……? どうして……」

「だって見てるの面白いもん」

 

 楽し気にしゃべりながら地面へゆっくりと足を下ろした。始めは無邪気に見えた笑顔も、今となってはただただ恐ろしい。完全にわたしは相手の雰囲気に飲まれていた。そもそも相手は万全の状態のシショーを簡単に一蹴した化け物。わたし如きでどうこうできる相手じゃないことは明白。その事実がより一層わたしの恐怖を駆り立てる。

 

 そのうえ最初は様子見を決め込んであえて自分は攻撃せずにひとり高見の見物。いつでも勝てる自信があるに違いない。しかもこの程度の罠、自分なら1体で破れるとまで言っている。これでは勝負にもならない。もう助からないだろう。わたしはラーちゃんとの別れを悟って静かに涙を流した。

 

「ごめん、さよならラーちゃん」

「ラアアァァーーッ!!」

 

 ラーちゃんがわたしの前に出て威嚇するように大きな鳴き声を上げた。テレパシーをしようとしてもできない。遮断されている。完全に戦うことに集中している。ラーちゃんからここまで交信拒否されたのは初めて。きっとわたしを守るために死力を尽くす覚悟だ。もう体は連戦でボロボロなのに……。

 

「心配しなくていいの。みゅーは戦いに来たわけじゃない。だからそんなに怖い顔しないでほしいの」

 

 信じられないことを言いながらこっちに近づいてきた。ラーちゃんも当然信じられないようで牽制するように“れいとうビーム”を放った。相手の足元に横一線に冷気が残った。おそらくこれ以上近寄るなという意思表示なのでしょうね。幻のポケモンはつまらなそうにそれを見た後、構わずその一線を踏み越えてラーちゃんに近づいた。

 

「ラァーッ!!」

 

 足が線を越えて地面についたその瞬間、ラーちゃんは素早く“れいとうビーム”を繰り出した。それを予測していたかのように幻のポケモン、ミュウもこれを躱し、あっちも技を出して応戦してきた。あれは“でんじは”! 当たれば一気にこちらが不利になり形勢が傾いてしまう。しかし、ラーちゃんはこれも読んでいたのか、“しんぴのまもり”を未然に使ってこれを凌ぎ、さらに“あやしいひかり”を放って逆に相手を状態異常にかけようとした。

 

 怒っていてもラーちゃんの読みは的確。わたしより冴えている。きっと思考だけは冷静さを保っているんだ。わたしが指示するまでもないわね。今有効な道具も尽きていて何もできない自分が恨めしい。

 

「すごいの。あなたもバトルが上手なのね。楽しい」

 

 余裕を感じる笑みを浮かべ、ミュウは知らない技を使ってきた。マジックミラーのようなものが出てきて……“あやしいひかり”が跳ね返ってきた!? “しんぴのまもり”でこっちに被害はないけど、補助技を跳ね返すなんておっそろしいことするわね……。幻のポケモンってこんなことまで出来てしまうの!?

 

 補助技では勝負がつかないと見るや、2体共今度は力勝負とばかりに動き出した。ラーちゃんは得意の“れいとうビーム”を放った。紛うことなき渾身の一撃。これならいけるかも! ……しかし、後から出したミュウのサイコキネシスはあっさりとそれを受け止めた。後出しなのに押し負けていない。つまり純粋な威力は相手が上。完全に相殺され驚くわたし達。ミュウはクスクスと笑うだけ。

 

 今度は威力重視で“ハイドロポンプ”を使った。しかしミュウはその軌道を完全に見切って最小限の動きで躱し、素早く“サイコキネシス”で反撃した。

 

「ラーッ!!」

「ラーちゃん!?」

 

 避けられずモロに受けてしまった。素早さも全然違う。ラーちゃんは耐えているけど苦戦を強いられてさすがに渋い表情だ。どう攻めても簡単にいなされる。お願い、なんとか頑張って!

 

「もっと楽しませてよ。あなたならこの程度で倒れないでしょう?」

「ラァァッ」

「させない」

 

 ラーちゃんが息を吸い込んだのを見てミュウは“ちょうはつ”してきた。まさか補助技読みの“ちょうはつ”!? そんな……ウソでしょ……これじゃシショー並の立ち回り。こっちの行動が悉く読まれている。どうすればいいの……。

 

 これがエスパーの力だとでも言うの? どうやってこんな化け物に勝つの? 何をしてもダメ。勝てるビジョンが見えない。じんわりと私の心に絶望が広がる。

 

「ラァァ……」

「残念だけどそれはダメ。ほろびのうたはさすがにみゅーでも耐えられない。ちゃんと攻撃して勝負して。でないと面白くないの」

「ラーーッッ!」

 

 今度は“ぜったいれいど”を連続で放つが、相手はテレポートで全て簡単に躱した。距離を取ったミュウは顔をよく見ると何か“わるだくみ”でもしていそうな表情になっている。今度は何を考えているの? 

 

 いや、そんなことわたしが考えてもわかりはしない。もっと他に考えるべきことがある。とにかく、今大技は絶対に当てられない。当てやすい攻撃を使うしかない。ラーちゃんもそれを悟ってすぐに“ふぶき”に切り替えた。これなら逃げられないかと思ったが、今度は“ねっぷう”で簡単にいなされた。

 

「ラァッ!? ラーーッッ!」

「みゅみゅみゅ。もうおしまいね。楽しかったの」

 

 諦めずに“れいとうビーム”を使うがミュウの“サイコキネシス”はそれを容易く貫通してラーちゃんに直撃した。……尋常ではない威力! さっきまでとは比べ物にならない。まさか今までは本当に遊び半分で手を抜いていたの!? ラーちゃん頑張って耐えて! 

 

 ラーちゃんは吹っ飛ばされないように技を受け止めてわたしの目前で踏み留まった。なんとか耐えきってくれたと思い一瞬わたしは喜んでしまった。でもそうじゃない。わたしを巻き込んで飛ばされないようにギリギリで堪えていただけ。ラーちゃんはもう限界だった。ガクガクと震えながら苦しそうにうめき声を上げ、そのままゆっくりと地面に倒れこんだ。

 

 わたしのためにこんなになるまで……。ラーちゃん、ラーちゃん、ラーちゃん……!

 

 その姿に涙が出て、思わず叫んでしまった。

 

「ラーちゃーーん!!」

「これでわかったでしょ? みゅーはとっても強いの。あなた達ではみゅーには勝てない。そもそもここはみゅーのお庭。あなた達を倒すぐらいわけないの。やろうと思えばいつでもできる。だからおとなしくしてね」

「ラーッ!」

「まだ動けるの? けっこうタフね。ちょっとそのまま止まってて」

 

 ラーちゃんまだ動けるの?! もうやめて、起きないで! 無情にもラーちゃんは“ねんりき”で動きを封じられ、苦しそうに身を捩るけどミュウの力が強くて全然抗えない。そしてミュウがゆっくりとわたしに近づいてきた。

 

 ど、どうすればいいの? せめてラーちゃんだけでもなんとかできないの? しかし体は固まってしまい、頭は真っ白になってしまった。

 

「ラァァアアアア!!」

 

 ミュウが動けないでいるわたしに触れようとした瞬間、ラーちゃんが再び覚醒した。雄叫びを上げて“ねんりき”を振り払い、油断したミュウに渾身の一撃を叩き込んだ。ラーちゃんにできる最も速く最も鋭い一撃、“れいとうビーム”!! 相手は声に気づき反射的に半身になって避けようとしたけど、完全には躱し切れずに攻撃を受けて体の左側はほとんど凍り付いた。すごい、まともに攻撃が通った! ラーちゃんはまさに逆鱗に触れたように怒り狂っていた。

 

 もしかしたらこのまま押し切って勝っちゃうなんてことも……。

 

「もう! なんでそんなに怒るの! ちょっと気絶してて!」

「ラァァーー!?」

「ラーちゃんっっ!!」

 

 何してるの?! ダメ!! やめてっ!! 

 

 容赦ない“10まんボルト”を浴びせられ、断末魔の叫びを上げてラーちゃんが今度こそ瀕死になった。なんてことを……ひどい。これじゃもうダメだ……。負けた……。完全に負けた。このポケモン、やっぱり強い。本気のラーちゃんでも歯が立たないなんて。こんなことってあるの? 必死で戦い続けてここまで勝ち残って、それなのにこんなあっさり負けてしまうの?

 

 だけど悪夢はまだ覚めない。突然鈴の音が響き渡ったと思ったらミュウの氷が勝手に溶け、さらに体も勝手に修復してみるみる回復していった。あっさりと、本当に何事もなかったかのように全快に戻ってしまっている。ラーちゃんの必死の攻撃がものの少しの時間でこんなに簡単に無になるなんて……ば、化け物過ぎる!! 絶望という言葉でも生温い。もう打つ手が全くなくなった。

 

「こんなことって……こんなの反則よ」

「ラァ……」

 

 もう“ひんし”状態のはずなのにラーちゃんはまだ動こうとした。なんでそこまで……。

 

「まだ動けるの? 呆れたしぶとさね。本当に耐久力だけはみゅー以上。もっと攻撃されたい?」

 

 バチバチと手元で電撃をチラつかせながら脅してきた。脳裏にラーちゃんがシルフで電撃の拷問を受けていた時の姿が蘇った。もうあんなの見たくない! 絶対に!

 

 固まっていた体がようやく動いた。自分が身代わりになって攻撃を受ける覚悟で2体の間に割って入った。

 

「やめて!! もうこれ以上攻撃しないでっ! わたし達はもう絶対に攻撃しない。だから許して! すでに戦う元気は残ってないわ! これ以上無意味にラーちゃんを苦しめないで……お願い!」

「……最初からそうすればいいの。みゅーは戦う気はないって言ってるのに。ちょっとそのラプラス、みゅーに見せて」

「何する気っ!? これ以上苦しめないで!! もうたくさんよっ!!」

「安心して。回復させてあげるだけだから」

 

 何をしたのかわからないけど、ミュウが手を触れたらラーちゃんがみるみる回復していった。反対にミュウは少し苦しそうにしていた。

 

「何よこれ、こんな技見たことない。それに、あなたは苦しそうだけど大丈夫なの?」

(これは……いたみわけですか。あなた……いったい何の真似です? まさか敵意がないというのは本当なのですか?)

 

 ラーちゃんは傷が癒えるのを見て驚き、怒りを鎮めた。テレパシーも通じる。こんなに急に態度を軟化させるなんてどうしたの?

 

「当たり前なの。あなた、このトレーナーのことが大事なのはわかるけど、もう少しみゅーの言うことも聞いてほしいの」

「ねぇ、そのいたみわけってなんなの?」

 

 ラーちゃんに“いたみわけ”が何か聞いてみたらミュウがそれに答えた。

 

「使った相手と自分の体力を同じになるようにやりとりするの。100と200で使えば150ずつになるというふうに」

 

 そんな変わった技があるのね。見たこともない技をいくつも使えるなんて、ホントにこの幻のポケモンはいろんな技が使えるのでしょうね。

 

(つまり、今はミュウさんの体力がそっくりそのまま明け渡されているわけです。自分を傷つけてまで私を回復させているのですから、敵意がないとしか考えられません)

「じゃ、じゃあ、わたし達ホントに助かったのね! ふあぁ……良かったぁ。もう完全にダメだと思ってた。ラーちゃん……わたしのために戦ってくれてありがとう……」

「ラー」

 

 ミュウが現れて本当に諦めていた。絶望的危機からの生還。こんなの今までで何度目だろう。わたしって本当に悪運だけはシショーにも負けていないと思う。ギュッと喜びを噛みしめながらラーちゃんを抱きしめた。

 

「みゅー。もういい? みゅーのこと忘れてない?」

「あ、ごめんなさい。あなたは体力減っちゃって大丈夫なの?」

「みゅーはじこさいせいできるから。ちゃんとお話聞いてくれるなら安い代償なの」

(すみません。でも、いきなりこんなところへ連れてこられているのに、会ってすぐに信用しろという方が無理な話です。あなたはなぜブルーを誘拐したんですか?)

 

 それは気になっていた。そもそもこのポケモンはなんでわたし達につきまとうのだろうか。

 

「それは……。聞きたいなら後で話してあげる。今はここを離れた方がいいの。倒したポケモンもそのうち目が覚めるだろうし」

「そうね。でもきのみが……」

「これでいいの?」

 

 “ねんりき”できのみを一気に集め、わたしのバッグにしまいこんだ。エスパーって便利ね。

 

「じゃあ、わたし達の拠点に戻るわ。あなたもついてきてくれる?」

「わかったの。帰りの護衛はしてあげる。みゅーは強いから安心して」

 

 その言葉通り圧巻の強さだった。さらに強いだけではなく、全てのポケモンに的確に弱点を突いて一撃で倒していた。この子、かなりレベルが高そうね。わたし達は楽々拠点に辿り着いた。

 

「着いたわ、ここよ。いつもわたし達はこの中で休んでいるの」

「じゃあ傷ついたポケモンを出して。みゅーが全部治してあげるから」

 

 あっという間に皆完治した。治療されたこともあり、皆ミュウへの警戒をいったん解いた。

 

 ようやくお互いに話ができる状態になったのでゆっくりミュウの話を聞くことにした。

 

(じゃあ、話してもらえますか? ミュウさんは何の目的で私達をこんな目に?)

 

 いきなりズバッと切り込んだわね。前置きもなし。

 

「あなた達をここに呼んだのは……レインをここに自分から来させるため。ひみつのへやでレインと約束したの。ブルーを取り戻したかったらみゅーのハウスまで来てって」

「シショーを呼ぶため?」

 

 わたしをつれてきたのがシショーを呼ぶためってことは今のわたしは人質なの?

 

「そうなの。みゅーはずっとテレパシーでみゅーのハウスに来てって言っているのに、レインは全然来てくれないの。波長はあっているから、いつかは必ず来てくれるはずなのに」

 

 波長とかいうのはよくわからないが、思ったよりあんまり悪気とかはなさそうに見えた。でも、ラーちゃんは油断なく次の質問を続けた。

 

(ですが、これまで水柱で襲ってきたり、敵対的な行動が目立ちます。それは何の大義があったというのですか)

「そういえば、今まで襲ってきた水柱もあなたの仕業なのよね。あれはなんだったの?」

「それは……だって、レインは強いし、遊んでほしかったから、ちょっとイタズラしただけ。最初はちょっと嬉しくって張り切り過ぎちゃって……みゅーもちょっとは悪かったと思っているの。あなた泣いてたし……みゅーはただ、みゅーが強いってところ見せたくて。みゅーのことよく知ってほしくて。レインは傷つけちゃったけど、でも、ちゃんとレインはみゅーが治してあげたんだからいいでしょ?」

「ええーー!! あれはじゃれてただけってこと?! しかもあの異常な回復はあなたの仕業だったのね! 今までずいぶん好き勝手していたのね。じゃ、なんでシショーに拘るのよ。きまぐれ?」

 

 もしかして……この子、一見怖そうに思えるけど、実はそんなに悪い子じゃなくて、ちょっと力が強過ぎるだけで性格はいい子なのかも。あれは今でもトラウマレベルだし、簡単に許せることではないけど。

 

「ううん、みゅーは最初からずっと見ていたの。ある日突然みゅーのエスパーの予感がビビッときて、すごくおもしろいトレーナーが現れた気がしてここからカントーへ向かったの。みゅーはハウスとひみつのへやはすぐに行き来できるから。そしたらレインを見つけたの。目立つオーラだったからすぐレインがみゅーの予感した人だってわかったの。それで……あのね、じつはね? レインってみゅーと波長が全く同じなの! みゅふーっ! それでね、レインはいつもすっごくてかっこよくて、タマムシにいる時からいつも華麗にバトルに勝って強くなって、どんどん仲間を増やして、みんな仲良く旅をしていたの。みゅーはトレーナーと一緒にいたことがないからとっても羨ましかった……。だからずっとみゅーは遠くから見ていたの。でも、ある時あなたが現れた」

 

 夢中で話し続けるミュウちゃん。よっぽどシショーのこと気に入ったのね。ここまで入れ込んでいるところ見るとちょっと怖い気もする。好き過ぎて攻撃するってどうなんだろう。

 

 話の途中、ミュウちゃんがわたしのことを話す時、急に声のトーンが落ちた。ちょっと背筋がゾクッとした。

 

「わたし? ……おつきみやまの近くのこと?」

「いつ仲間になったかは知らない。ちょっと目を離していたの。でも、ニビで仲良さそうにしていた。レインにはみゅーがいるのに……。だから試してみたの。そしたらあなたがとても大事にされていることはクチバとサイレンスブリッジではっきりわかった。だから、あなたをつれてくればレインは自分からここに来てくれると思った。それに、レインはバトルが強ければ仲間にしてくれるの。だから技の練習も一生懸命して、たくさんポケモン倒して強くなって、しっかり作戦を考えてからレインにバトルを挑んだ。ひみつのへやではバトルして、みゅーが勝ったの。非常手段を使うことにはなったけど、レインは手段とかは気にしないしたぶん大丈夫なの。勝てた時はホントに嬉しかったの。今まで簡単に勝てる弱い相手としか戦ったことなかったから楽しかった。レインがブルーに教えていたこと、みゅーも試したらどんどん強くなれたの。レインは他のトレーナーとは違うの。オーラが普通じゃないから最初からそう思っていたけど」

 

 最初は不機嫌そうだったけどだんだん嬉しそうに話し始めた。案外わかりやすい性格ね。やっぱり裏表がなくて、根は良い子なのでしょうね。とはいえ、さすがにずっと見られていたというのは驚きだった。

 

「特訓している時も近くにいたの? 気がつかなかった。でも、バトルしたいなら普通に挑めばいいじゃない。あなた程強ければ仲間にだって喜んで迎えるでしょうし」

「レインはサンダーと戦った時、レベルがみゅーと同じで、ものすごく強いサンダーを捕まえなかったの。きっと能力が高くても簡単に負けたら仲間にしないの。だから、仲間になるにはみゅーが勝って認めてもらうしかないの。じつはね、ここに来たらね、またバトルしようってレインに言ってあるの。そこでもう一度、今度は面と向かってバトルして勝てたら、今度こそみゅーを仲間にしてもらうつもりなの」

 

 サラッと言ったけど、サンダーってフリーザーと並んで伝説に数えられているあれよね。シショー凄過ぎ。

 

(ミュウさん……あなた、やっていることがずいぶん空回りというか、遠回りというか……仲間になりたければ、普通に頼めば断りはしないと思いますが。お師匠様はポケモンには目がない方ですし、イナズマさんへの対応などを見るにかわいいものには弱そうですよ。あなたはポケモンの私から見てもかわいいのできっと大切にしてもらえると思います)

「みゅー……でも、レインはグレンを捕まえるとき運命的な出会いがしたいって言ってたの。だからこれぐらいはしないとダメ。だいたい、こんなに波長が同じで、みゅーはいつもレインのことを考えているのに、レインは全然みゅーのこと気づいてくれないし。ずーっと何度も何度もハウスに来てって言ってるのにいつまで経っても来ないもん。そのせいでポケモン屋敷に来るまで待つことになったの。だからその分、今度は自分でここまで来てもらうの!」

「そんな、無茶よ。あなたはエスパーだからなんでも出来ても、シショーはあれでも一応普通の人間なんだから」

「何を言ってるの? レインは超能力が使える歴としたエスパーさんなの。ひみつのへやで波動を使ってみゅーのこと調べてたから間違いないの」

 

 ええええーーっっ!!! ウソでしょ!? いや、ちょっと待ってよ? そういえばナツメさんにはサイコトレーナーなの?って言われていた気がする。シショーポケモン説とかも出たけど、まさかここに来てシショーエスパー説が有力になるなんて! でも、さっきからちょくちょく出てくる波長とか波動とか、その辺がよくわからない。エスパー用語なの?

 

(お師匠様……やはり只者ではなかったのですね)

「わたしは波動とかはよくわかんないけど、ホントにシショーはエスパーで間違いないの?」

「エスパーにはみんな必ず特異な能力が備わるの。カントーで有名なのは、あなたも戦ったナツメ。あれは予知の能力持ち。みゅーはへんしんとテレポート。普通の技とは別に、こうやって人間になったり遠くまで一瞬で移動したりできるの」

「へー。たしかに普通のへんしんは人間にはならないし、ずっと維持はできないもんね。じゃあ、シショーは何の能力なの?」

「知らない。あんまり自分の能力に自覚がないみたいだし。でも、みゅーを調べるような感じはたしかにしたの」

「ふーん。でもいいなー。わたしもエスパーだったらなー」

「……そんなにいいものじゃないの。特異な能力なんてあっても他人から嫌われやすくなるだけ。差別の対象になるか、恐れの対象になるのが関の山。いつも必ず周りから壁を作られる。そしてエスパーは痛いほどハッキリとそうした感情を感じ取ってしまう。たまに近寄ってくるのはこの能力を悪用しようとする悪い人間だけ。だからエスパーの中には自分の能力を隠している人も多いの。誰だってすきこのんで疎まれたいとは思わないの」

 

 それを聞いてハッとした。そういえばシショーはあんまり詮索はするなと言っていた。それってエスパーなことを隠すためだったんじゃ……。だとするとこれ以上知り過ぎるのはマズイ気がしてきた。

 

(だいたいみゅーさんのことはわかりました。幻のポケモンですし、孤独なところもあったでしょうから、お師匠様と一緒に遊びたかった気持ちはわかります。あなたがお師匠様をどう思っているかも理解しましたし、仲間になることを応援こそすれ、反対する気はありません。さっきのことも私の誤解のせいですから水に流しましょう)

「ホントに? ありがとうなの。あなた、怖いところもあるけど、意外と優しいの」

(……なんか、複雑な心境です)

「まあ実際問題ラーちゃんが本気で怒ったらシショーを差し置いてわたし達の中で1番怖いのは間違いないだろうし、妥当な評価ね」

(ブルーッ!)

「えへ、ごめんごめん。でもさ、珍しいポケモンってやっぱり大変なもんなのね。わたしには正直想像もつかないけど。……ラーちゃんも寂しかったりしたの?」

(全くもうっ。私は寂しいと思うことはありませんでした。私には群れの仲間がいましたから。1番は人間に追われるのが大変でしたね。……それより、これからはどうしましょう? お師匠様を呼ぶのが目的なら、みゅーさんは私達をカントーに帰す気はないんですよね?)

「みゅーが来たのはそのことを話しておくためだったの。あなた達にはみゅーのハウス、ジャングルの最奥部にあるミステリーツリーに来てほしいの。レインもそこにくるように言ってあるから。案内はみゅーがするの」

「ちょっと待って。そもそもシショーはここまで来れるの? 地球の裏側なのよ? いったい何年待つの?」

「みゅみゅみゅ。そんなこと心配していたの? 大丈夫なの。レインはもうこっちに向かっている。1週間で着きそうって昨日つぶやいていたから、すぐに来るの」

「え、ほんとに!? やったやった! シショー来てくれるんだ、うわはーっ!」

(……信じがたいですね。たった1週間でここに? そんなことできるんでしょうか)

「シショーなら余裕よ! じゃ、早くそのなんとかツリーへ行きましょう! またテレポートで飛ばせるんでしょ?」

「それはできないの。みゅーの能力によるテレポートはあらかじめマーキングした場所へしかいけないの。自分以外の人を遠くに飛ばすのは特に難しくて、この前は初めてやったから失敗して、マーキングがツリーから消えてこっちに移っちゃったの。だから1回は歩いて行ってまたマーキングし直さないとできないの」

「そんな! というか、わたし達手違いでここに飛ばされたの!?」

「みゅみゅ」

 

 さもおかしいといった様子でミュウちゃんは笑った。笑いごとじゃないわよぉ~ミュウちゃん。わたし何度も死ぬかと思ったんだから! その気持ちはラーちゃんも同じようね。

 

(笑い事ではありませんよ。でも、お師匠様のこともわかりましたし、私達が向かうべき場所もはっきりしました。明日からそこに向かって進んでいきましょう)

「そうね。案内もしてくれるし、何よりすぐにシショーに会えると思ったら力が出てきたわ! そういえば、今日はきのみパーティーだったわね。みんなでパーッとやりましょう!」

 

 こんなところすぐに乗り越えてなんとかツリーまで一直線よ!

 




エスパーの詳しい説明はもう少し先でみゅーちゃんにしてもらいます
そこでおおまかにはわかると思います
当初はそれが44話になる予定だったのですが、だいぶ話数が伸びていますね
一番増えたのはカラクリジムでした(1話が5話に)

5章から分量を減らすようにしていましたが、それ以前の章も長くて自然に分割できそうな話があれば分けようと思います

タイトルの帳尻に長考するのですぐ分割とはいかないでしょうが

文字数は今後も含めだいたい8000ぐらいに収めるつもりでいます
参考として、今回の話は投稿時で9100文字です
話毎にどうしても多少上下しますが、4000以下とか16000以上などは可能な範囲で避けたいと思っています



本編について

モンスターハウスは(ポケダンの)ダンジョン内で通路から小部屋に差し掛かったら突然大量にポケモンが湧いてくる罠のことです

ミュウが仕掛けたことについて
きのみの匂いに誘われてポケモンが寄って来たとすると同時に多数のポケモンが来る可能性があるのはきのみが出来たばかりのときだけだと思います
なのによく熟していたのは矛盾しますよね
それはミュウの干渉があったからというわけです
どうやって仕掛けたかは幻のポケモンの秘密です

ミュウが「いやしのはどう」とか「タマゴうみ」などを使わないのはミュウがその技を知らないからと思ってください
現時点で全部の技が使えるわけではないです
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