Another Trainer   作:りんごうさぎ

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9.こころを波に

 翌朝、安心して油断していた俺はとんでもない目にあった。悲しみ・絶望・憤り・後悔……いろんな感情がごちゃまぜに湧き上がり、起きたらものすごい量の涙を流しており自分で自分に驚いた。鏡で見れば目が真っ赤に腫れあがってる。こんなことになる原因は1つしか考えられない。すぐさまミュウのもとに苦情にいった。

 

「おい、ミュウ!!」

「ひゃうっ!」

「お前、またなんか俺にしただろ! もういい加減にしろ!」

「どうしたのシショー朝っぱらから……って何その顔!? どんだけ泣いたのよ!」

「こいつのせいに決まってるだろ! もうたくさんだ。エスパー使いはどいつもこいつも俺に攻撃してくる。目を見れば気分は悪くなる。テレパシーを受ければ頭痛がする! 今度はこれだ! いい加減にしろ! これは立派な攻撃だ! やっぱり放っておくと碌なことにならない!」

 

 本気で怒るとミュウもしっかりそれを感じたらしい。涙交じりにミュウは必死で言い訳を始めた。

 

「わざとじゃないの! 昨日みゅーが悲しくて、その感情が抑えきれなくて溢れちゃって、レインにも流れこんでしまったんだと思うの。寝てると心の膜は薄れるし、レインはエスパーとして未熟だから、みゅーみたいな力の差があるエスパーの力を強く受けてしまうの」

「はぁ? 何言ってんだ? 俺が未熟なエスパー? 寝言なら寝ている時に言えよ」

「あ……いや、あははー。そうよね、シショーがエスパーなんておかしいわよねー。でもみゅーちゃんはシショーにもなんか特別な力があるから間違いないって言うのよ、ハハハッ」

「そうか……まだ寝ぼけていたのか、あるいはまだ夢の中なのか……。いろんなことがあったし、俺も疲れているみたいだな。もう1回寝よう」

「みゅぎゅっ!」

 

 戻って本当に寝ようとすると、“ねんりき”を使って器用にピンポイントで俺の手首をねじりやがった。かなりの力だ!

 

「痛い痛い痛い! 何すんだよ!」

「夢だっていうから、つねってあげたの。みゅふふ、起きてるでしょ?」

「余計なお世話だ! ……やっぱり封印してやろうか? 最後に言い残すことは?」

「え、シショーまだ封印できるの!?」

 

 ナツメと同じくまた手首を捻じりやがった! そういやここが“ねんりき”かけやすいとか言っていたな。冗談の類ではなかったのか。どうしてどいつもこいつも平然と人様の手首を破壊しようとするのか。

 

「え……ウソでしょ、本気なの? 待って、ミュウはウソついてないの。おかしくなるのはみゅーのせいじゃない! じゃあみゅーは悪くないってわかるまでエスパーのこと説明してあげるの。レインはなんにも知らないみたいだし、あんまりエスパーの力は使えないみたいだから、みゅーの言うことも聞いた方がいいと思うの。だからもう怒らないで」

「え、そんなこと言ったらマズイんじゃ……」

「なんでマズイんだ? だったら早く説明しろ。これ以上こんなこと続けられても困るし、なんとかできるならそれに越したことはない。なんともならないなら速やかにミュウは追放だ。いいな?」

 

 俺は手首捻じって来たのにキレたんだけど、自分からタネ明かしするというなら願ったり叶ったりだ。とりあえずその通りにしてもらおうか。軽めに脅すと素直に説明し始めた。

 

「そんな! 絶対そんなことさせないの!! じゃあミュウの言うことを良く聞いてね。えーっと、あのね? んー、エスパーっていうのは心が波みたいに感じられて、それで感情の変化に敏感なの。強いサイコパワーがある程敏感に相手の心を読めるの。相手の波を読み取るために自分の波を、つまり波動を使って相手を調べたりするから、エスパー同士が会うと、力の差が大きいと相手の力に飲まれて体調が悪くなることもあるらしいの。みゅーはないからあんまりよくわからないけど。なんていうのかな? ラジオの電波が電気ポケモンが近くにいると乱れるみたいな感じ? いわゆるエスパー酔いなの。みゅーもナツメっていうジムリーダーも力が強いからレインじゃすごくしんどかったかもしれないの。一度慣れたらもう起こらないと思うし、みゅーより強い力の持ち主はいないだろうからこれからはもう安心していいの」

 

 なるほど。少しはエスパーについてわかってきた。ただ、こいつ説明がかなり下手のようだ。いきあたりばったりで思いついたことを並べている感じ。絶対人に説明したこととかないな。こっちからもいくつか聞いてみるか。

 

「オーラが見えるとかよく言ってたよな。感情の変化がオーラってやつなのか?」

「そうなの。レインよくわかったね。オーラは感情を波として感じたものなの。感情の起伏と一緒に変化してだいたいの気持ちはわかるの。特にウソを言うとき、人は必ずオーラが乱れる。どんなにウソが上手くても、自分にはウソつけないから。だから必ずエスパーにはウソがわかるの」

 

 なるほど。そういうカラクリだったのか。ウソがバレるのは厄介と思っていたが、もしかしてエスパーを騙すのって意外と簡単かもしれない。自分を騙す、いや納得させればいいわけだ。ミュウはできないと言ったが方法がないわけじゃない。

 

「じゃ、波長と波動とオーラ、これらは何? あるいは違いはどこ?」

「え、違い? うーん。難しいこと聞くのね。波長はその人の個性が現れて、人によって長かったり短かったり、形も色々あるの。波動は自分の波を相手に干渉させるときに体の外に出すやつのことかな。オーラはモヤモヤしていて、形とか色とかでそのときの気持ちとかがわかるの。場合によっては考えていることもわかったりするの」

 

 なるほど。説明は下手だけど言いたいことはなんとなーくはわかる。今までわからなかったことも言わんとしていたことが推測できそうだ。

 

 できたらそれらの関連性も聞きたかったんだが、全部独立していて別物なのか? そんな感じには思えないけど、これ以上は聞いてもこいつ自身が理解していなさそうだ。

 

「あと、俺が波動使いとか言っていたがあれはなんだ?……ブルーどうかしたか?」

「いや、なんでもないの。どうぞ続けて!」

「みゅみゅ。あの時、みゅーはこっちの波動を探られるような、なんか調べられているような感覚がしたの。みゅーは敏感だからちょっとした違和感だったけどわかったの。レインはきっと能力に目覚めている」

「能力に目覚める?」

「資質に目覚めると言い換えてもいいけど、エスパーには誰しも普通じゃできないような特殊な力があるの。みゅーはへんしんとテレポート。普通の技とはちょっと違うの。人間になれてずっと維持できるし、マーキングした場所へはどんなに遠くでも一瞬でいけるの」

 

 なんと、エスパーにはそんな共通点があったのか。おそらく俺の場合はこのよくわからない力、サーチとアナライズ。なんでこんなことができるか今までわからなかったが、まさかエスパーだからだとはなぁ。自分がエスパーなんて信じられないし、事実と断定はできないが、今までの突拍子もない出来事の数々を顧みればありえそうだとは思えてしまった。

 

 そもそもミュウの“へんしん”がずっと解けないのは気にはなっていた。気絶してないからだと思っていたが、この分じゃ気絶しても解けないんだな。自分の意志でしか元に戻らないのか。技とは別なら性質とかも微妙に違うんだろうな。例えばこの前はポケモンを見ずにシンボラーになっていた。あんな芸当はやはりこいつだけしかできないんだな。

 

 テレポートも強力過ぎるとは感じていたが、やはり特別なものなんだな。つくづくこいつの力は侮れない。

 

「じゃあナツメの予知とかスプーン曲げもか?」

「たぶんそうなの。スプーンを曲げるぐらいはみゅーもできるけど。レインはどんな力なの? すごく気になるの」

 

 俺のことはやはり当然聞いてくるか。アナライズとサーチについては自分でもわからないこともあるし、努力値云々が絡むとあまりしゃべり過ぎたくない。できるかわからないが多少ごまかしてみるか。

 

「……さぁな。俺自身まだ使いこなせてないし。わかってるのは、ポケモンの良し悪しははっきりわかるってことだな」

「どういうこと?」

「素質がわかるんだよ。単純な強い弱いじゃなくて、本質的な良し悪し。眠っている才能がわかるとでも言えばいいのか。だからうちのメンバーはみんな俺の眼にかなった優秀なポケモンばかりだ。この力はトレーナーとしては最高の能力だな」

 

 ウソではないが真実でもない。全てを言わなくてもウソではないからこれは通るはず。それに、俺がウソではないと納得できることで、さらにオーラの乱れとやらはなくなるはずだ。

 

「ふーん。まぁ能力は必ず本人がほしい力が宿るから。そんな力があるのはレインがトレーナーとしてそれを欲したということなの。みゅーも人間になりたいと思ったらなれちゃったし。ねー、その能力でみゅーも見てよ。すっごく強いから! いいでしょ? 見てよ、絶対すごいって思うから。お願い、見て?」

 

 今の話、ほしい力が宿るっていうのはおかしくないか? それになんだこいつの反応。見て見てって何?

 

「お前はもう見たんだけどな。一応使うか。どれ……」

 

 サーチ!

 

「はやくはやく!」

 

 ……気づいてない! やっぱりサーチはわからないのか。あえて乗ってみたのはサーチを使った時の反応を見るため。みゅーの説明でなんとなくわかったが、たぶん波動とやらの使い方がアナライズとは微妙に違うんだな。

 

 俺が波動使いという今の話の流れだと、相手を調べるのはおそらく波動とやらを利用していると考えるのが自然だ。アナライズは相手の波動の中枢に干渉する感じで、それゆえミュウも俺の波動を感じるが、サーチは万遍なく自分の周りを見るのでこっちの波動の狙いがバラけている分ミュウに対しては干渉が小さく感知できない、という感じなのだろう。完璧に当たっているかはわからないが当たらずとも遠からずというところだろう。

 

 アナライズ!

 

「あっ! すごい! 見られてる。やっぱりちょっと恥ずかしいかも……」

 

 完全にアナライズだけ反応したな。体をくねくねさせて恥ずかしいけど嬉しそうな顔をしている。本当にこれは感知できているようだ。サーチの活用が攻略のカギか……。

 

「うわー、ホントに今なんか見ているの? シショー本当にエスパーなんだ。うわぁ……いっつもその力を何食わぬ顔で使っていたのね。びっくりねぇ。……というか、傍目に見るとなんかいやらしいわね。シショーだけ真顔でシュール」

「へんなこと言うな。ん? あっ、えええ!! 何これ!?」

「みゅうっ?」

「何々? 何なのよっ!」

 

 6Vは相変わらず。だが、大事な性格の部分が変わっていた。なんと“きまぐれ”から“おくびょう”に変化していたのだ。理想個体性格一致とか奇跡にも程がある。たぶん、いや絶対、二度とお目にかかることはできないだろう。

 

「いや、それが、なんでか前見た時と違……あ」

 

 原因はすぐわかった。言うまでもなく昨日のあれだ。そりゃ人間でも久方ぶりに会えば性格変わっている奴もいるが、ポケモンもそれと同じなのだろう。

 

 だが、そうすると昨日みたいにすれば少なくともおくびょうな性格のポケモンは量産できる可能性が……もっと言えば理想的な性格なのに後天的に変わってしまうこともありえることになる。おくびょうなアカサビさんとか勘弁してもらいたいな。絵面的にもイヤだ。

 

「なんなの、みゅーはどうだったのっ!」

「あー、その話はまた今度な。それよりお前の話はいくつかおかしなことがある。まず、能力は求めたものが手に入ると言ったな? だが、ナツメは予知の能力にうんざりしていた。どういうことだ? ウソだったなら許さない。もしここまででウソがあったなら今言えば許してあげるけど?」

「みゅ!? みゅーのこと疑ってるの?! なんで、全然オーラわからないの? みゅー……本当に下手っぴなのね。信じられない。エスパーとして最高の素質はあるはずなのにここまで未熟なんて……」

 

 その目はイラッとくるんだけど。ものすごい憐れむような視線を送られた。なんでよくわからん力について下手だの何だの言われなきゃいかんのだ。理不尽過ぎる。

 

「仕方ないわよ。シショーって疑り深いから。その上いじっぱりな性格だし」

「うるさい。俺はしんちょうな性格だ。のうてんきなお前には言われたくない。それで、ウソじゃないなら俺の質問に答えてみろよ」

 

 ふくれっ面のブルーはおいといてみゅーに問い質した。わざとしっかりと目を見ながら。その意味はミュウもわかったのだろう。こっちの目を見返して答えた。

 

「ウソじゃないの。ナツメが過去に予知の力を欲しがったことは間違いない。みゅーはナツメのことはよく知らないから正確にはわからないけど、だいたいの予測はつくの。未来を知りたいなんていかにも人間の考えそうなことだし、幼かったならなおさらね。小さいときは先のことが視たかったんだと思うの。エスパーとして成長して、今になってようやくバカなことをしたって気づいたんでしょ。愚かな人間らしいの。みゅみゅみゅ」

 

 思わずゾクッとした。子供のくせにやけに達観しているな。しかもエスパーとしての格もナツメより遥かに上と見ていいだろうな……。こういうところはさすが幻のポケモンか。目を見て牽制したし、話の内容からしてウソはなさそうだ。……本当に俺はエスパーだったのか。

 

「まだ聞くことはある。お前、ずっと俺達を見ていたらしいが、いつから見ていた?」

「タマムシでポケモンと戦っていた頃、グレンを捕まえていた頃からなの。ずっと近くから見てた。もっと近くでいたかったけど、何度かみゅーに気づいたような素ぶりをされたからちょっとずつ遠くになって寂しかった……」

 

 やっぱりこいつずっと近くに……ほぼ最初からじゃないか。思い返せば旅を始めた頃はいつも気持ち悪い視線を感じていた。正真正銘本物のストーカーだな。やることが常軌を逸している。ブルーがかわいく見える程だ。

 

 グレンを捕まえた時何か感じて、その後に頭が痛くなったが寝不足のせいだと思っていた。だがあれはエスパー酔いのせいだったんだ。

 

 ハナダで感じたのもコズエじゃなくこいつの視線だったのか。……よく考えるとコズエは町の中で俺を見たと言ったのに、俺は町の外で視線を感じている。コズエは冤罪か。心の中で謝っておこう。

 

「それじゃあ、今まで俺が気分が悪くなったりしたのは全部お前が近くにいたときなのか。もしかして最初に夢に出て来た時も干渉を受けていたのか? エスパー酔いっていうのは厳密にはどんな時に起きる?」

「うーん……あんまりわかんない。みゅーは酔う程近づいたつもりはなかったけど、レインは最初なぜか普通の人よりも精神が歪で不安定だったから、みゅーが近くにいただけでも酔うぐらい影響を受けやすかったのかな。ごめん、ホントにわかんないの」

 

 みゅーは謝るけど納得がいった。そうか、そういうことか。不安定な原因は心当たりがある。話が繋がって来た。

 

 俺は突然こっちに引っ張られて来たからここに馴染むまで精神が不安定、そこにミュウからテレパシーが飛んできてさらに体の調子がおかしくなっていた。たぶんタマムシにいる時はずっとおかしなままだったんだろう。

 

 ずっと俺自身のストレスとかそういう理由だと思っていたが、結局全部ミュウのせいだったのか。俺が変じゃなかったのが判明したことはいいが、とんだ迷惑だったな。ミュウ自身が近付くことでそれは加速し、直接目を合わしたり触れたりしたときそれは最大に達したのだろう。

 

 最初のタマムシの住人からの視線も俺が精神的に不安定で外部の影響を受けやすい時に目を合わせてしまったから。

 

 ナツメと最初に会った時に目を見て見透かされるような気分になったのもそこからオーラを読まれていたからだろう。

 

「別にいい。お前は肝心なことは全然わかっていないようだし、説明も元々下手みたいだ。これ以上聞いても仕方ないな。今はこれだけわかれば十分か。とにかく話をまとめると、俺の体の変調は全てミュウのせいで、近くにいなければ問題は起きないということだろ? じゃあ、これからは俺の近くに来ないでね」

「えっ! そんな……一生懸命説明したのにあんまりなの……」

「ここにいたらお前はずっと俺の近くにいそうだし、もう出発するか。それじゃブルー、早く支度しろ。探索に行くぞ」

「え、ちょっと待ってよ、もういくの? 今起きたばっかじゃない」

「お前、日が昇ってから森に行ったらどう考えても危ないだろ。早くしろ」

「……それってようりょくそ持ちとかがいるからってこと?」

「ほう、よくわかってるじゃん。そういうこと。わかったなら早く支度しろ。俺は先に待っているから」

 

 それからはものすごく気分が晴れやかだった。ミュウが離れたからだろうか、台風の後の快晴のようだ。ずっとイライラしていたのがウソのよう。体の調子も未だかつてない程いい。準備を終えてブルーを呼びに行くと、むこうも準備を終えて俺を探していたようで声をかけられた。

 

「シショー、なんか今日は一段とはつらつとしているわね。どうしたの?」

 

 嬉しそうにブルーは笑顔を見せた。ブルーの笑顔なんて見るのはいつぶりだろう。ブルーが笑っているのを見ただけでこっちまで嬉しくなってきた。……これもエスパー効果なのだろうか?

 

「なんか体の調子がものすごくいい。自分が自分じゃないみたいだ。今まで壊れていたところが全部治ったみたいな感じ」

「……みゅーちゃんのせいで磁場が乱れていたけど、チューニングが終わって乱れがなくなった、みたいな?」

「ああ、言ってることはめちゃくちゃだがそんな感じだ。体中の枷がようやくとれたような解放感があって体が軽い軽い! 頭痛とかも今はもうないし、気分も悪くならない。やっぱりあいつのせいだったということだな。原因がはっきりして対処方法とかもわかって安心できたし、慣れたら大丈夫って思えたから余裕もできた。波やらなんやらは結局心の問題だから、気の持ちようでエスパー疾患は治るということだろうな。病は気からって言う通りだ」

「今まで大変だったのに、治ったらホント調子いいんだから」

「まぁそういうなって。あ、そういや言っておこうと思っていたんだが、お前ホントによく頑張ってこのジャングルを越えてきたな。昨日ラプラスからちょっと話は聞いた。ブルー、かなり頑張っていたらしいじゃないか。ラプラスがベタ褒めだったぞ? 師匠としては誇らしい限りだ。よくやったな」

 

 感情の全てを込めて言った。ブルーは幸せそうに息をついた。

 

「あっ! ふぅーー。シショー……。わたし、ホントに大変だったの。何回も負けそうになって、でもいつもラーちゃん達に助けられて。シショーがいないだけでわたしすごい心細くて……」

「でも今日からはまた一緒。さぁ行こう。ここらは人が来ないから、お宝とか珍しいポケモンとかいっぱいあるに違いない。もっと冒険したいんだろ?」

「そうね。じゃあさっそく、今日はあっちの森の方に行きましょう。わたしも向こうは行ってないから」

 

 ツリーを降りて森に向かおうとするとミュウが追ってきた。

 

「待って! みゅーも行きたい」

「みゅーちゃん!? ねぇシショー、みゅーちゃんはここのポケモンにすごく詳しいのよ。それにものすごく戦闘も強いし回復もさせてくれるから、絶対に連れて行った方がいいわよ!」

「そう。でも関係ないな」

「そんな! なんで? みゅぅぅ」

 

 しょんぼりとするミュウを見てブルーは俺から離れてミュウのそばに駆け寄った。

 

「なんでよ! ここは意地を張るよりも助けてもらう方が絶対いいわよ! まだ近くにいたら気分悪いの? ずっと調子良さそうだったじゃない!」

「言いたいことはわかる。気分は、正直思った程悪くはないかな。念のため近くには来ないでほしいけど……わかったよ、ブルー。そんな顔するな。もうミュウのことをとやかく言う気はないし、そこまでキライじゃないから。ずっとミュウのせいでおかしくなってたから遠ざけたかったが、今はなんか昨日までのことがウソみたいに心が穏やかだ。完全に全て許せたわけじゃないけど、もう十分気持ちはわかった。遺恨はないよ」

 

 それは本当だ。気分が良くなって、客観的にこれまでのことを振り返れた。改めて考えれば、これまで何度も大変な目に遭わされたが、殺意や悪意を感じたことは確かにない。ずっとそれは弄ばれていたからだと思い込んでいたが、本当に遊んでほしかっただけなのかも。テレパシーでも遊んでほしそうにしていた。みゅーの年齢や性格を見れば額面通りの意味だった可能性もある。

 

 それに俺がこっちに来たことに関しても今は何も知らない可能性が1番高いだろう。状況が整い過ぎていてそう決めつけていた。いや、俺がそう望んでいたのかも。

 

 ミュウの執拗なコンタクト。これは普通じゃない。俺ならあんなことされればすぐ逃げるし、ミュウもそうなると思っていた。だがそうはならなかった。なんでここまでするのか。何度か耳にした運命とやらを信じているからなのか?

 

「じゃあなんで断るのよ!」

「みゅー……おねがい、連れてって?」

「あのなブルー、この場合理由は1つしかないだろう? ミュウがずっと一緒だと、経験値の分け前が減っちまうだろうが! しょせんミュウは野生のポケモン。経験値が分散したら全部ムダになる」

「ガーン!」

「えぇー……。なんか、シショーってこういうときほんっとにドライよね。もっとさぁ、損得より大事なものとかないの?!」

「今この状況ではない。そもそもブルーだけならいざ知らず、俺に道案内なんざ必要ない。敵のレベルは高くても、しょせん野生のポケモンに過ぎないから助太刀もいらない。わかったらとっとといくぞ」

「え、ほんとに置いていくの?……ごめんねみゅーちゃん。帰ったらいっぱいお土産持ってくるからね!」

 

 エスパーには拭い切れない苦手意識がある。前触れなく現れたり唐突に攻撃してきたり……。近づき過ぎればまた苦しくなるだろうし、とにかく離れたい。理由をかこつけてブルーの手を引いて無理やり引き離した。つい気になって去り際に振り返ると、ミュウは恨みがましく俺の方をにらんでいた。思わず目を逸らし、逃げるように立ち去った。

 




こんばんは、読んでいる方は最後どんな結末なら1番嬉しいのかなぁと思う作者です
もう結構先まで書いているので大筋変更はできませんしする気もないですが、もう何しても意見が真っ二つに割れる気しかしないんです
いったいどのくらいまでなら許されるのか
みゅーちゃんの処遇はどうすべきなのか

……逆にどういう展開が見たいんですか?
あるいは見たかった?
読者の求めてるものがわからないダメな作者でごめんなさい
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