「さ、そろそろトレーナーらしいこともしないとな。みゅー、バトルだ」
「みゅみゅ、頑張る!」
しかし、いきなり大きな問題に直面していた。みゅーはとにかく俺に褒めてもらいたいようで、どうもバトルになると頑張り過ぎる。簡単にいえば手加減ができなかった。
「みゅー! またやり過ぎ! お前はわるだくみを3回もしなくていい! 能力上げきってさらに一致抜群なんかいれたらオーバーキル過ぎるだろっ! 相手死んじゃうよ? 野生相手でもやって良いことと悪いことがあるだろ?」
「……それを今までめちゃくちゃしていたシショーが言うの?」
ブルーの言葉は無視したが、みゅーは泣き出してしまった。
「ぐみゅぅぅ、みゅっ、みゅーは、やっと一緒になれたから、早く頑張って役に立ちたくて……。一生懸命にやっただけなのに、なんでそんなに怒るの? みゅーは要らない子なの?」
「ごめんごめん、泣かないで。そんなわけないだろ。みゅーが一生懸命だってことよくわかってるつもりだ。でも頑張り過ぎもダメ。みゅーは元々強い上に、俺が鍛えてさらに強くなってしまった。だから力を抑えないといけないんだ。言ってることわかる?」
「うん。でもなんで強くなったのに力を抑えないといけないの? それじゃ意味ないの。みゅーは全力で思いっきりバトルしたい」
ぐっ……正論だな。たしかにそうだ。元々ミュウというポケモンを育てることには大きな問題があった。今回はせっかくの6Vだから強くしたいし、特攻と素早さを伸ばして攻撃重視の育て方をした。
だが強過ぎる上に幻だから素の姿では人前に出せない。かと言って人間姿で今みたいに戦わせるのはもっと話にならない。だからこの先バトルする機会は驚くほど少なくなることは目に見えていた。ならなんのために強くなるのか。もうそれはただの自己満足に過ぎないんじゃないか。
もちろんそんなことはもう何度も考えていた。だからバトルが終わった後、みゅーと2人きりになった時にそのことをみゅーにも話すことにした。
「え、そんな! それじゃ、みゅーは役に立てないの? バトルできないの? みゅーはもっと頑張りたい。バトルも楽しいからしたい。みゅうぅ、なんか思ってたのと違うの。大事なところではみゅーの出番あるよね? レインが目指してるポケモンリーグとかは?」
「悪いけど、リーグでのお前の出番はゼロだろう」
「え……」
「全国中継まであるらしいからな。なおさらお前を出すわけにはいかない」
「そんな……」
みゅーにはかわいそうだがこれはどうしようもないことだ。ただ現実を知るのが遅いか早いかの違いだけ。それに言うべきことはこれだけではない。
「それといつか言うことだから先に伝えておくが、リーグ戦になれば当然フルバトルになる。だから最低でもあと1体は新しくポケモンを捕まえて、そのポケモンを育てる間とリーグの期間はお前にはボックスにいてもらうことになる」
「ボックス? 何それ?」
「みゅーにわかるように言えば、俺の傍から一時的にだが離れるってこと」
「えっ! う、ウソだよね? それ……みゅーを捨てるってこと? 全然みゅーが役に立ってないから、レインにとってみゅーは邪魔で、要らないからポイするの?」
「違う違う! 手持ちのパーティーから外すだけ。ボックスにいる間は面倒見れないけど、当然ずっとじゃないし、みゅーもちゃんと育てるから……」
「そんなの、みゅーのことポイして捨てるのと一緒でしょっ! ずっと一緒じゃなかったの? 捨てないって言ったでしょ?! ずっと一緒にいてくれると思って嬉しかったのに……なんで? なんでなの? ……レイン嘘つき!! もう……もう、大っ嫌い!」
「待って、話を……」
「みゅーー!!」
「あっ! 待って……嫌いなんてゲットする前にも言われなかったのに……」
まさかこんなことになるなんて。残ったのは取り返しのつかない喪失感。ポッカリ穴があいたような心境。みゅーなんて最初は渋々一緒にいて、それからもこっちがみゅーの面倒を見てあげている、そういうつもりだった。
本来自分にとってはさして重要な相手じゃなかったはずなのに、ブルーに言われた時より数段大きなダメージを受けてしまった。目に見えるほど落ち込んでしまい、ブルーにも気づかれてしまった。
「シショーどうしたの? なんか元気ない気がするけど」
「ブルーか。別になんでも……ってごまかしてもムダか。実は……」
みゅーはいないし探して連れ戻すこともできないのでバレるのは時間の問題。ブルーには事の顛末を正直に話した。話を聞いたブルーはため息をついた。
「そりゃ飛び出しもするわよ。シショーの言い方が悪いわ。わたしだってそんなこと言われたらすっごくショック受けるだろうし、思わず飛び出しちゃうわね。今まで何のために頑張ったんだーって。たしかにいずれ言わなきゃいけないけど、こういうのは少しづつ慣らさないと。失敗を続けたらボックスに入れることにして納得させて送るとか、その後はちょっとずつボックスにいる期間を長くするとか。事実だし避けられないからって相手の気持ちを無視しちゃダメよ」
ブルー。言っていることは尤もだが、そのポケモンの干し方は手馴れ過ぎていてちょっと怖い。どこで覚えたの? 納得させて干すとか……。だがそう考えると俺がやったのは唐突な戦力外通告みたいなもんだし堪えるのも無理ないか。
編成にポケモンの気持ちを考えなきゃいけないなんて思いもしなかったな。自分の都合に合わせてメンバーを出し入れするのは当たり前と思っていたが、そうはいかないものらしい。
「そうだな。みゅーが帰ってきたら謝るけど、結局今回も落ち着くまで待つしかないか」
「そうね。きっと晩御飯までには戻って来るわよ。シショーのことは大好きなんだし。そうだ、今日はハンバーグにしたら? みゅーちゃんの大好物だし、香りに誘われてやってくるかも」
最初のごはん以来、あの時の嬉しさが忘れられないのか、みゅーはハンバーグとオレンが大好物になっていた。本気で効果があるとは思わないが、みゅーは何かと鋭いところがあるし、気休めとしてはありかもしれない。
「サファリのポロック設置じゃあるまいし……と言いたいところだが、まぁやらないよりはやった方が気休めにはなるか」
ところがどっこい、これが見事に大当たり。みゅーがおなかを空かせる頃、本当に香りに誘われたのか、顔を真っ赤にしたみゅーがもじもじしながら戻ってきた。いつもは俺の顔をじっと見ているが、今は下を向いてバツが悪そうにしている。
「みゅーちゃん! ホントにちゃんと遅くなる前に帰ってくるなんてっ! シショーとは大違いで良い子過ぎるわね」
「みゅぅぅ……レインがかわいそうだから、仕方なく戻ってあげたの」
ツリーに戻ったがみゅーはそっぽを向いてなかなかこっちには来ない。まだわだかまりが残っているんだろう。自分からみゅーの元まで歩み寄ってあげた。それは気持ちでも同じ。みゅーは少し後ずさりするが、逃げはしなかった。
「みゅっ、みゅーはまだ許してないから! どっ、どれだけ怒られても、絶対ボックス送りなんか認めな……うみゅ?!」
とにかく思いっきり抱きしめて、これでもかというほど自分の気持ちをみゅーに込めた。
「ごめん。みゅーには全部言葉にしなくても自分の気持ちは勝手に伝わると思ってた。急にあんなこと言ったのは許して。本当はずっと一緒に居たいし、なんとかしてあげたいと思ってる。だから許してくれない?」
「……」
「お腹も減っただろ? みゅーの分も用意してるから、早く食べて。みゅーのために用意したから」
「……」
「戻ってきてくれて本当に良かった。もうどこにも行かないでくれよ?」
「……わかった」
拗ねているのか口数は少ないが、とりあえず矛は収めてくれたようだ。
食べている間、いつもならおいしいと言ってくれるが今日は全くの無言。みゅーが何も言わないことがどうしても気になり、つい声をかけてしまった。
「みゅー、おいしくなかった? また食べさせてあげようか?」
「……」
「まだ怒ってるんだな。手持ちのことは後でちゃんと相談しよう。みゅーの話も聞くからさ。みゅーが一緒にいたいって気持ちもよくわかったし、俺だってみゅーのこと大事にしたいと思ってるから。きっといい方法が見つかる。だから……みゅー!?」
「みゅーちゃんどうしたの!?」
みゅーが顔を伏せ、最初はこらえていたようだが少しずつ涙がこぼれ始め、やがてそれは大泣きになり、慌てて傍に駆け寄った。背中をさすっても、涙を拭ってあげても効果はなし。やればやるほど逆に涙割り増し。こうなれば泣き止むのを待つしかないと、じっと待つことしばらく、ようやくみゅーが口を開いた。
「ぐしゅ。みゅぐっ、レインごめん。みゅーさっきひどいこと言った。大嫌いって言っちゃったけど、あれはホントじゃないよ。本当はね、レイン大好きなの」
「え、それを気にして泣いたの?……いいよ、あの時のみゅーの気持ちは今ならわかるし、みゅーが俺にスキスキなのはわかってるから」
「みゅー! 違うの! いや、好きなのは違わないけど……みゅーは灰かぶり姫を思い出して。みゅーはひどいこと言って飛び出して、迷惑かけて、なのにレインはみゅーが帰ってきたら笑ってくれたから嬉しかったし、おいしい料理も当たり前のように用意してくれてるし、優しくしてくれるし……まるで継母を許した灰かぶり姫みたいなの」
「そういうことか……」
子供らしい理由に笑みを浮かべてしまった。みゅーって純粋なポケモンだなぁ。いい子過ぎてびっくり。でも暖かい気持ちになった。
「灰かぶり姫はみゅーだから、みゅーが優しくならないとダメなのに。でもホントに嬉しくって……やっぱりここがみゅーの居場所なんだって思えたから。そしたら、なんでこんなにあったかいところから出ていったんだろうって……優しい人にひどいことしたんだろうって……これじゃ、みゅーが継母なの」
「そんなことないない。みゅーは優しいから戻ってきたし、こうやって涙も出るじゃんか。継母だってホントはいい心があったから仲直りしたんだろ。みゅーは優しいから灰かぶり姫になれるよ」
「でも、ホントはおなか空いたから戻ってきただけだもん」
泣いてるせいか正直者だな。そんなこと言わなければわからないのに。
「そうなのか。でも、これからは一緒にいてくれるんだろ? 申し訳ないと思っていてそれで心が痛むなら、これからはみゅーと俺はずっと一緒って約束して仲直りの指切りしよう。それでこのことはおしまい。いい?」
「指……? 仲直りしたいから、そうしてくれるならなんでもするの」
「よしよし、いいこいいこ。じゃ、指切りして? ああ、小指を出して。ほら一緒に合わせて腕振って、一緒に続けて言って」
「んん……わかった」
「そうそう。じゃあさんはいっ、ゆーびきーり拳万、嘘ついたら針千本飲~~ます、指切った! ハイ、これで仲直り……ん?」
指切りしたらいきなりみゅーの様子が一変した。いったい何事?
「みゅううぅぅっっ!! ごめんなさいっ!! もうわがまま言わないし怒られるようなことしないからそんなことしないで! 痛いの怖い、みゅー死んじゃうの!!」
「シショー、さすがにそれはドン引き。まさかこの流れでそんな歌が出て来るとはね……。こんなに恐ろしい歌をなんでそんなに楽し気に笑顔で言えるの?」
えっ、ちょっと待ってこれどういう流れ? なんかとんでもない勘違いをされてない?
「みゅうみゅー! しかもオーラが恐ろしいほどキレイなの! キレイなオーラがこんなに怖く思えたのは初めて……。間違いなく今の全部本気で言ってるの! きっとみゅーへの怒りで染まり切って逆にオーラが澄み切っていたんだと思うの。だからまたみゅーのこと痛めつけて“みねうち”でバンッバンッてして殺す気なの!!」
「え、ウソでしょ……? みゅーちゃんマジなの、これ脅しじゃないの? え、ん……えっ?!」
「みゅううぅぅ、こんなのヤッ! なんでもするって言ったけどあんまりなの!」
「いや、何これ? なんで指切りしただけでこんなめちゃくちゃ言われるの? もしかして指切りってこっちじゃ習慣がなくて、お前ら知らないとか?」
みゅーの“みねうち”バンバンが迫真だな。……何回も受けただけある。俺はもう怒ったら“みねうち”する奴という認識のようだ。心外だな。
あんまりな反応が続くのでもしかしてと思って指切り知らないのか聞いてみたらブルーに怒られた。
「知るわけないでしょ! そんな恐ろしいもの知っててたまるもんですか! ウソついただけで針千本飲ますとか聞いたことないわよ! シショーって鬼なの? 悪魔なの? レインなの?」
「レインは悪の代名詞なのか。いやさ、指切りって俺の故郷じゃ有名なもので、子供は約束する時よくさっきみたいにするからさ」
「本当なんでしょうね?」
「オーラはウソついてない」
「……二度とあそこにはいかない。(レインという恐怖の怪物を生み出してしまったのはタマムシという恐るべき魔境だったのね。タマムシシティ……きれいな見かけとは裏腹にヘドロが蔓延し、子供でも暴走族ばりの恐喝。闇が深い)」
「子供が、指切り……(幼い頃からウソだけで指切ったりしてたら、誰でも精神破綻するの。異常な加害行動の原因は全部この指切りみたいな悪い習慣のせいに違いないの)」
「なんとなく考えてることは読めた。普段は意識しないが、たしかに指切りって文言自体は怖いな。でも、これはおまじないみたいなもので、実際にウソついてもその通りにしたりしないし、意味なんて子供だから考えたりしないから。約束ちゃんと守れよぐらいの軽いもんだよ。だからそんなに真面目に受け取らなくていい。怖いものじゃないから」
「ま、まひ状態。(そんなえげつない内容が子供の間で広まることが異常だとなぜ気づかないの? 環境が偏見を生んで目を曇らすの? そんなこと言われて約束すっぽかそうなんて考える奴なんかいるわけないでしょ?)」
「みゅーはそれでも怖い。その指切りはしたくないの。あと他の人とするのもやめた方がいいと思うの。(そんなことを思いつく頭と受け容れて何も思わない頭の両方が狂ってるの。みゅーがなんとかレインを普通にしてあげないと)」
「わかったわかった。なんでかなぁ。これけっこういいと思うけど、まさかこんなに不評だとはねぇ。継子話の灰かぶり姫はウケたのに。わからんもんだ」
「当たり前よ。ポンとこんなのが出て来る辺りシショーはホントに闇が深い。もうそんな変なのいきなり言わないでよ。冗談抜きに肝が冷えたわ」
「みゅーも、今までのが全部飛んで行った気がする」
「そこまでか……。じゃ、代わりにみゅー、おいで」
「みゅ? みゅー?!」
いつものようにギューッと抱き寄せ、そのまま丁度いい高さなので、おでこにキスをして席に戻した。顔を真っ赤にして下を向いてしまったが、嬉しかったのはよくわかる。
「いいなー、シショーにキスしてもらえるならわたしも家出しよっかなー」
指切りのドン引きムードを一新するためか、ブルーが冗談を言ってきたのでありがたく乗っからせてもらうことにした。
「ブルーだったら家出してもすぐにしょっぴいて説教してやれるけどな。ブルーは王子様にキスされてーとかいう話が好きなのか? だったら今日はキスで魔法が解けるって話をしようか?」
「え、何それすごい! それにして! しかも今日はわたしが主役……いいわね」
「みゅっ、レインこれおかわり!」
気づいたらごはん食べ終わってたのか。さっきまで怖がっていたかと思えば、恥ずかしがって。かと思えばいつのまにかよく食べる。やっぱりみゅーはまだまだ花より団子なのかな。食べ終わった後、ブルーも交えてみゅーとバトルのことを話し合った。
「ねぇ、ホントにどうにかならないの? シショーならなんとかしてよ。いっつもなんとかしてきたじゃない」
「お願い! みゅーはレインと一緒にいたい……」
「と、言われてもなぁ。強過ぎて逆に使いづらいし、技も多くて番号不可で扱いづらいし、そもそも幻のポケモンだから姿を見せられないし……。色々と難しい。まさかスペックの高さに悩まされる日が来るとは」
現実って色んなしがらみがあって難しいな。なんにも気にしないでバトルしたいなぁ。
「じゃあさ、高過ぎて困るなら能力を低くしたらどう? 育て方とか、あと技で弱くするとかどうかしら」
「それじゃ本末転倒なの。強い相手と戦いたいとは思うけど、みゅーは自分が弱くなりたいわけじゃないの」
「そういうわけじゃないのよ。つまり、なんか、こう、弱くなるけど、ミュウとしての特徴を生かす、みたいな」
「みゅー? みゅーの特徴? どんなの?」
「さ、さぁ。みゅーちゃんは幻のポケモンなんだからわたしはわかんないわよ。シショーわかる?」
わからんのに言ったのか。行き当たりばったりだな。俺は当然わかっている。
「……ミュウと言えば最大の特徴は全ての技を扱えること。教えられる技は全部覚えられたはず。技に“ものまね”があるし、それを活用して練習させれば大体の技はすぐ使えるようになるだろう」
「え、みゅーちゃんって凄過ぎない?」
「みゅふふ、やっぱりみゅーは天才」
「でも、さすがに姿を隠したまま全力で、技のレパートリーを生かして戦うなんて無理よねー。そんな都合のいいことできるわけ……あ、ごめん」
「みゅうぅ……やっぱりみゅーは要らない子なの」
みゅふふと笑っていたみゅーは一転してしょんぼりしてしまった。だけどブルーの言葉が絶妙なヒントになり、最高の方法が“でんこうせっか”のように閃いた。ブルーは偶然とはいえ見事なアシストだ。やっぱりこいつは何か持っている。
「いや、待て。これはもしかしたらもしかするかもしれない」
「え?」
「ひとつだけ、いい方法を思いついた。ミュウが全部の技を覚えることを思い出して、あれも使えるのに気付いた。こんなに間近でいつも見ているのに、なんで今まで思いつかなかったのか不思議だ。これはとてつもないことができるかも」
「え、えっ?! ホントなの!? みゅーはやっぱりレインのエース?!」
「かもな。ま、明日のお楽しみだ。今日はもう寝るだろ?」
「その顔は自信たっぷりみたいね。さっすが! サラッと幻のポケモンの特徴とか知ってるし、やっぱりシショーはポケモンのことに関しては頼りになるわね」
「みゅー。これで安心して寝られるの。あ、今日はどんな話?」
「今日は白雪姫だな。雪のように白くて美しい王女の話」
「すっごい勝ち組じゃない。ラッキー!」
◆
一夜明けて……俺はさっそくみゅーの再育成に取り掛かることにした。
「もう、まだ寝ていたかったのに。もうちょっとでキ……ごほん! あーあ、どうせ眠りから覚めるなら白馬の王子様からの魔法のキスで起こされたかったなー」
「はいはい。メルヘン少女は夢ばかり見てると生き遅れるぞー」
「余計なお世話じゃい! ロマンのかけらもないわね! 昨日の話を考えた人の言葉とは思えないわ!」
まぁ考えたのは別の人だからな。
「ねぇ、それでみゅーは何するの? みゅー何でもするから。あ、針千本とかはダメ!」
「そんなこと言わないって。念押しまでしなくても。言っても信用されてないだろうけどな。今日はまずきのみを食べてもらう。実はこれには能力を下げる効果がある。世間じゃただ美味いだけのきのみってなってるが、こっちの効果が真骨頂なんだよな」
「え、そんな危なそうなものみゅーに食べさせるの? みゅぅぅ、大丈夫?」
「いや、これはなんというか……とにかく強くなるためには必要なことなんだ。今までは特攻を高くしたが、今度はそこを抑えて、代わりに体力を伸ばしたいんだ」
「ふーん。不思議とウソは感じないの。強くなるために弱くなるなんて、レインは変なこと言うのね。でもわかった。じゃあ信じるの」
「こういうときオーラがわかるのは便利だな」
「んみゅ。んんっ! うんまーいのっ!」
あえて言わなかったがこのきのみにはもうひとつ効果がある。おいしいからなんだろうが懐く効果もある。イナズマの時と同じ作戦だ。さらに続けてマックスアップを与えて努力値振り完了。やっていることだけ取り上げると危ないきのみで餌付けしたあと薬漬けにして肉体改造しているということに。これに加えてタマゴを量産して生まれたての赤子を大量に野に放ち始めたらいよいよロケット団も真っ青の極悪非道っぷりになる。
「これでどうするの?」
「これからみゅーにはへんしんを極めてもらう。灰かぶり姫の魔法のようにな」
「へんしん?」
「そう。へんしんはメタモンとミュウとドーブルにしか使えない。そしてミュウはこの中で体力と素早さがダントツ。ついでに全ての技が使えるからへんしんしても相手の技を使いこなせる。間違いなくミュウは最もへんしんを上手く使えるポケモンだ。さらに、俺は世界で1番へんしんを上手く使えるトレーナーだ。最強のコンビだろ?」
「レインも? なんでなの?」
「へんしんは相手と全く同じ能力になる。だから相手の能力を知らなければその力を引き出せない。能力が同じだから、普通はへんしんされた方が練度の差で勝つ。だからへんしんは弱い。ところが、俺なら一目で能力も技も全て見抜いて相手より上手く能力を活かして戦える。相手が世界最強のポケモンでも能力をコピーすれば必ず勝てる。これならみゅーは誰にも倒せない」
「すごいの! みゅーの力でへんしんして素敵な姿に……」
よし、灰かぶり姫を例えに出したのは正解だな。あれを話しておいて良かった。
「しかも、これなら相手が弱くても能力が同じだから全力で戦える。純粋にバトルの腕を磨くにも、みゅーがバトルを楽しむのにもうってつけ。ずっと全力でバトルしたかったんだろ? さらにこれにはもうひとつ狙いがある。どうせ最初はへんしんしか使わないから、あらかじめお前にはボールにいる時はメタモンになっていてもらう」
「みゅ? それって、みゅーの能力でってこと?」
「そうだ。今人間になっているように、お前はポケモンなら実物を見なくても何にでも自由にへんしんできる。しかもそのへんしんならみゅーのステータスはそのまま、外見だけしか変わらない。人間姿でもみゅーの技が使えているようにな。その能力で最初からメタモンになっておき、そこから技のへんしんを使えば絶対にバレない。気絶してもメタモンに戻るだけ。そして技のへんしんを使用するには元々体力と素早さが高いことも重要だが、今みゅーはその2つに特化して能力を伸ばしている。これならみゅーのいいところを完璧に全て生かせるし、文句もないだろ?」
「やるー! それする、なんかすごそうなの! みゅー頑張る!」
それからは色んなポケモンに“へんしん”して戦い方を覚えていき、技もできるだけたくさん覚えさせてほとんどの時間を探索兼みゅーの育成の時間に使った。ブルーはできるだけ野生のポケモンをたくさん倒して一気にレベルアップをしていた。
もちろん俺もレベル上げに抜かりはない。ここのポケモンは50台ばかりなので格上補正がつく。しかもくさタイプには基本全員相性がいいし、イナズマとヒリューのコンビはシンボラー狩りですさまじい効率を叩き出した。だいたいレベル50ぐらいまでスムーズに上げられた。特にイナズマなどサポートに回ることが多いポケモンを重点的に上げられたのは大きい。
みゅーは技の練習に終始したのでレベルは上がっていない。アカサビもレベルは後からいくらでも上げられるので優先度は下がった。
「さて、それじゃそろそろ帰ろうか。まずは飛行訓練をしないとな。1週間乗りっぱなしだし。ブルー、気合入れろよ?」
「うぅ、そのヒリューちゃん速いから怖いのよ。頑張るけど、手加減してね」
「みゅー? レインなんで飛んで帰るの? みゅーがテレポートで送ってあげるのに」
「え、お前テレポートで俺らも送れるのか」
「ん、ちょっと集中しないと自分以外は送れないけど、すぐにできるの」
「やった!! お手柄ね。元々みゅーちゃんに連れてこられたんだし、当たり前といえば当たり前ね。テレポートできるのを忘れていたわ」
「そうか。よし、だったら話は早いな。ここにも長くいることになったが、後はやることもないし…」
ビュン!!
突然締め付けられるような感覚とともに意識が弾けて、気がつくと今や昔、懐かしの秘密の部屋に倒れていた。
「ここはひみつのへや! わたし達カントーに戻ってきてるわよ!」
「みゅーっ! いきなりテレポートするな! 荷物とか置いてきちゃっただろ!」
「ひうっ! だって……うみゅぅぅぅ」
ぺたんと座りこんでさめざめと涙を流し、悲しみにくれた表情で見つめられて逆に俺の方が慰めに入ってしまった。
「もう、すぐに泣いて。いや、悪かった、謝るから! ごめんごめん、みゅーは俺達のために頑張ろうとしたんだよな、わかってるから!」
「みゅぅぅ、レイン、今みゅーのことめんどくさいって思った」
「……まぁ。いや、でもみゅーは好きだから、ね?!」
みゅーにも自覚はあったのか。思わず肯定すると涙5割増し。とりあえず抱きあげてあやしてみるが、泣き止むまでに服がびしょびしょに。
「ふぎゅ、みゅぐっ。……ごめん」
「仕方ない。失敗は誰にでもある。落ち着いたらまた荷物を取りに戻ろうな。できる?」
「うん」
「よしよし。みゅーはホントにかわいい子だな」
「みゅへへ。レインにかわいいって言われちゃった。嬉しいの」
「……上手くかわしたわね」
かわいいとか今関係ないやろ、というブルーの視線はさておき、荷物を無事回収して、ようやくカントー地方の冒険が再び始まった。
ブルーは逆境でも強く生きぬく心と体を手に入れ、俺は大事な仲間がまた増えた。とうとう手持ちも6体そろい、ポケモンリーグへの旅路も佳境を迎えた。
指切りって怖くないですか?
割と日本の闇だと思います
幼稚園ぐらいのとき意味も知らずに言ってたのが怖いですよ
へんしんは何もかもかみ合いますね
名付けてダブルフュージョンプランA!
状況に応じてプランBに移行
Bは能力でフーディンとかにへんしんして普通に戦います
技使わないのでステータスそのまま
正直こっちの方が強そうに思えます
ダブルフュージョンプランAという名前は本編では使いません
ネタです