Another Trainer   作:りんごうさぎ

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4.海の香りは故郷の香り

 温泉の翌日。今日はグレン島を出て久々のカントー本土上陸だ。俺はヒリュー、ブルーはピジョットに乗ってマサラタウンに向かうことになった。さすがにラプラスに乗るという暴挙はやめた。ラプラスは残念そうにしていたが、これは当然の判断だ。ブルーはポケモン乗って飛行するのは不慣れなのでゆっくり俺と並びながら飛行した。

 

「うわー、懐かしいなー。夏にはよく海まで遊びに来たのよね。ここはわたしのお気に入りなの。ここでレッドとグリーンと一緒によく遊んだわ。でも海の方から来るのは初めてだしちょっと新鮮」

「やっぱいいもんだな、故郷に海があるのは。自然に囲まれて幼馴染と一緒に、なんて最高じゃないか」

「ふーん。海っていいところなんだ」

「もちろん、とっても素敵よ」

 

 みゅー、興味ないことは反応がそっけないな。ジャングルで育ったから海で遊んだりしたことなかったんだろう。次の夏は暇な時ゆっくり遊んであげよう。

 

 俺もブルーと同じで夏にはよく海へ遊びに行った。いつかまたいけるのだろうか……とりとめもない記憶が次々蘇る。いや、ないものを考えても仕方ないよな。今の自分に不満はないし、そこへ戻るということはブルーや、ここで得たもの全てを捨てるということ。そんなことになればブルーは、みゅーは……どうなってしまうのだろう。

 

「みゅー。ところで、今日はどこに行くの? 野宿?」

「あ、それなら大丈夫よ。なんてったって、マサラタウンはわたしの家があるからねー。2人ともうちにおいでよ。そしたら全員一緒に寝られるわ。自分家だから気にしなくていいし。それに前々からわたし、シショーを連れてくるのが楽しみだったの。お母さんきっとびっくりするわよ」

「ちょ! 待て待て待てっ! それは色々とマズくないか? 本当に仰天するだろ。俺はいいから、2人だけでいけ。俺は先にトキワで待っているから」

 

  ちょっとボーっとしていたら、どんどん勝手に話が進んでないか?! さすがにそれは黙って見過ごせない。

 

「えー。なんでよっ、遠慮しなくてもいいじゃない。いっつも助けられっぱなしだし、たまにはおもてなしするわよ? わたしのお母さんの料理はめちゃおいしいし、絶対来た方がいいわ!」

「んみゅ、おいしい料理があるなら行く。みゅーが行くならレインも一緒にいないとダメ。だからレインも一緒に行く」

「なんだその理屈は。そもそもブルーは俺のことどうやって説明するつもりなんだ? 自分のシショーだとか言うのか。俺は見た目15ぐらいだぞ。俺みたいな年のトレーナーに弟子入りするのはここじゃよくあることなのか?」

「……さぁ、あんまり聞かないけど……ま、事実だしいいじゃない。取り繕うこともないわ。なんとかなるわよ」

「ならんわ!」

 

 こいつ、なんで何とかなると思えるんだ。自分の子供が久々に旅から帰って来ていきなり見知らぬ男つれてきたらどうなるか考えたことないのか。ブルーだし考えてないんだろうなぁ。ため息出る。

 

「もー、あんまり喧嘩しないで。レインは一緒に来る。説明は全部レインに任せる。みんな一緒に寝る。これでいいの。もう何にも言わないで。いい?」

「あ、はい」

「ご、ごめん……じゃなくて!」

「返事は?」

「はい」

 

 右手で“はかいこうせん”を向けながら言うのはズルくない、みゅーさん? みゅーは人に向かって“はかいこうせん”ぐらいの暴挙は平気でやりそうだからシャレでは済まない。結局みゅーの一声で俺もついていくことになってしまった。

 

(みゅーちゃんGJ! 作戦通りね。いいフォローだったわよ。強引だけど)

(上手くいったの。昨日こっそり作戦会議した甲斐があったの。やっぱりレインは押しには弱いのね。この調子でもう1つの方も上手くやるから見ててね)

(え、もう1つ? そんなこと話したっけ?)

「(ブルー見たいって言ってたでしょ? みゅーに任せてほしいの)……ねぇねぇ、ちょっとお願いがあるんだけど聞いてくれる?」

「どうした、そんなに改まって。別にいいけど、何?」

「みゅみゅ。レイン、ちょっと服とか全部脱いでほしいの」

「……ん? んん? ごめん、よく聴こえなかったかな」

 

 今上空だしなぁ。乱気流で幻聴が聞こえることもあるだろうな。みゅーに限って変なことは言わないだろうし。

 

「だーかーらー、服全部脱いでって言ってるの!」

「えっ……えっ、なんで?」

「脱がないと体見えないでしょ」

「ぶっ!!」

 

 あ、今のリアクションでわかった。これ絶対ブルーの仕業だな。幻聴じゃなかったのか。そういえば昨日ブルーが1人だと寂しいとか駄々こねてみゅーを持っていって2人部屋を占拠したから、その時にいらんことを吹き込んだな。

 

「ブルー……! お前の仕業だな! みゅーに何させてるんだこの変態女!」

「ちょ、わたしが言わせたんじゃないわよ!」

「でもこんな邪悪なこと考えるのはお前だろ。みゅーは人間には興味ないだろうし。なぁみゅー、その辺どうなんだ? ブルーから昨日良くないことを色々聞いてたんだろ」

「だって、レインは教えてくれないんだもん……。だからみゅーが聞いたの。そしたらブルーがレインはどんなふうだったかしつこくきいてくるし、みゅーは説明できないから、それならここで見ちゃえば早いと思って」

 

 ブルーさん、なんかポケモンバトルの話している時より熱心そうじゃないか? これはどういうこと?

 

「……何か弁明はある?」

「誤解なの! 本当に、これは誤解なのよ!」

「犯人は必ずそう言うんだよな」

「違うの! 本当に違う! ちょっとした話の弾みというか、好奇心というか。まさかこんなこと言うとは思ってなくて、みゅーちゃんがこんなにたんじゅ……素直だとは思わなかったのよ」

「あー、こんなのお母さんが知ったらなんて言うんだろうな。あろうことか自分のシショーを故郷で丸裸にしようと……」

「ちょ! いや、本当にやめて! 本気で困る! それだけは勘弁して! 本当にこれは違うの! シショー鬼過ぎるわよ、さすがにそれは!」

「じゃあ二度とみゅーに変な事吹き込むなよ。そしたら勘弁してやろう」

「むぅぅ! というか、シショーの方も大概でしょ?……昨日もみゅーちゃんのこと髪はもちろん、体まで洗ったそうじゃない。隅々までっ!」

「……さ、もうこの話はやめよう。みゅー、これから他人がいるところでこんな非常識なこと絶対言うなよ。黙っていたら見た目はかわいいんだから、これ以上変態発言はするな」

 

 ここはお互い手を引いて停戦協定だな。この話題は今後避けるべし。

 

「みゅ、わかったの。何が非常識なのかわかんないけど、初めから説明とかは全部レインに任せるからみゅーはしゃべらないの。何か聞かれても何にも言わないから安心して」

「さすがに話しかけて無視は……せめて首を振るとかはしてよ。どうしてもイヤなら最悪しゃべらなくてもいいから」

「はいはーい」

 

 みゅーってけっこう常識がないところあるよなぁ。仕方ないことだけどかなり心配。

 

「なんか先行き不安だ。ホントにお前の家に行っていいのかどうか。お前、莫大な借金抱えてるとか言ったら親はひっくり返るんじゃないか? 今どれぐらい借金してるかわかってる? 俺が言うのも変だが、悪い男につかまって貢ぎまくってる、という解釈をされてもおかしくはないぞ」

「……大丈夫、黙っていればいいのよ。チャンピオンになった後こっそり返すから。みゅーちゃんもお願いね。基本何も余計な事言わないでちょうだい。(あと、昨日わたし達だけでこっそりとおしゃべりしたことは基本的にシショーや他の人には内緒にして! 恥ずかしいから!)」

「うん、わかった!(みゅーと2人だけの秘密にするってことなの? なら黙っていてあげるの。みゅみゅっ)」

「よっし!」

「そうこう言う間にだいぶ進んだけど、ブルーの家はどっちだ?」

「ここならもう近くね。1回降りましょ。わたしについてきて」

 

 待ちきれないのか降りたらすぐブルーは走り出し、俺も小走りで後を追うとけっこうおっきな家に着いた。近くに似たような家がもう2つある。あれがレッドとグリーンの家だろうか。

 

「えへへ、久しぶりね。なーんか自分の家なのに緊張するな……。ガチャリ、と。すぅー、ただいまー、お母さんいるー? わたしー、ブルーよっ!」

 

 バタバタドタドタ!!

 

 ブルーのお母さんらしき人が2階から降りてきて、ブルーを見つけるや否やすぐに抱き着いた。いきなりアグレッシブな出迎えだな。予想してたよりもかなり若い。どう見ても20代にしか見えないがそんなわけはないだろうしなぁ。これで30代なのか。

 

「ブルー! やっと帰ってきたのね! もう、遅いから心配したわよ!」

「むううっっ! は、離して……息が……」

「あ、ごめんごめん。あら、あなたがブルーのお師匠のレインさん? 初めまして、うちの娘が御世話になっております。何もないところですがどうぞゆっくりしていってください」

「ど、どうも……え?」

 

 まさか、すでに俺のことを知っている? ブルーが手紙とかで知らせた? いや、それはないな。ならどういうことだ?

 

「お母さん、なんでシショーのこと知ってるの? どうやって説明するか悩んでたのに」

「そうね。そのことも含めて、ゆっくりお話しましょう。まずはあなた達、うちにあがっちゃいなさい。あら、もう1人いるの? いいわ、3人ともあがって。すぐに飲み物用意するわ。何にしましょうか」

「わたしとシショーはサイコソーダ。みゅーちゃんは……オレンジュースでいいかしら」

「……」

 

 コクリとみゅーは黙って頷いた。オレンジュースってちょっと不思議な響きだな。

 

「わかったわ。とりあえず居間に来て座って待っていてね」

 

 トントン拍子で話が進んでなんか文字通り拍子抜けだな。すでに俺のことをある程度知っていて、その上で俺が実際にどんな人間か興味があるって感じの視線だった。思っていたより説明は楽だが、逆に怖い。どこまで知っている? 

 

 一息ついて、テーブル越しにブルーのお母さんと自分が向かい合って座る形になり、その容貌をよく見れた。ブルーと見比べると物凄く似ている。だけどその雰囲気は全く違う。

 

 色で例えると、ブルーが明るくて快活な晴れ渡る空のような水色。お母さんは全てを包み込むような包容力に満ちた深海のような藍色。かわいい系のブルーと違い落ち着きがあってクールな青って感じ。

 

 さっきはいきなり飛びついていたからブルーみたいな性格なのかと思ったが全然違うな。ブルーも大人になったらこんな風になるのだろうか。……想像できないなぁ。俺が黙ったまま2人を見比べているとブルーのお母さんが口火を切った。

 

「それじゃ、さっきのことを話しましょうか。驚かせちゃったみたいだけど、実はあなた達のことはレッド君とグリーン君から散々話を聞いたのよ。なんせあの2人は一緒に帰って来たのに、あなただけ来ないんですもの。心配で2人に聞いてみたら、先にあなた達はグレン島を出ているって言うじゃない。でもうちには確かに来てないし、ここに寄って行かないってことも考えられないから、何かあったんじゃないかってずっと心配だったのよ? もしかしたら誘拐とかされているんじゃないかって私が言ったら、あの子達はレインさんがいるから大丈夫だろうって言うんで、レインさんのことはその時聞かせてもらったのよ」

 

 まさにその心配通りブルーは誘拐されて地球の裏側まで行ってました。俺とブルーは苦笑いだが、実行犯のみゅーは素知らぬ顔でジュースを飲んでいる。こいつ、面の皮が厚いな。ちょっと感心した。

 

「そうですか。実は俺達はポケモンのレベルを上げるため遠くに行っていて、それを知らないマサキっていう友人がナナシマから戻ったあの2人に発破かけちゃったらしいんです。行き違いになったわけですね。だからあいつらより遅くなったんです」

 

 チラッとみゅーを伺うが、ここで「ウソなの」と言い出す気配はない。さすがにこれぐらいの空気は読んでくれたか。

 

「そうでしたか。それなら良かった。この子は本当にわがままでこうと決めたらすぐ突っ走って後先考えないから、またいつもみたいにわがまま言ってレインさんを困らせているんじゃないかって心配で心配で」

「ちょっと、好き勝手言わないでよ! だいたいわたしの心配はしてないの?!」

「あんたはいつも心配よ。ドジだし、おっちょこちょいだし、見てられないっ。それに……レインさんもその通りだって顔しているわよ。ブルーのことよくわかっているわね」

「えっ、うそっ……うわぁ」

 

 ず、図星だ。ブルーの性格そのものズバリだからな。俺のことを言い当てられたのは驚いたが。

 

「心配しなくても、ブルーは立派にトレーナー修行を続けていますよ。たしかにそういうところもありました……まぁ今でもそうですが。でもバトルに関しては俺の言うことをよく聞いてくれるし、飲み込みもいい。元々の才能のおかげもあって素晴らしい成長をしたと思いますし、これからも成長すると思っています」

「本当ですか?! この子に才能があるなんて……」

「もちろん。素質はあの2人にも負けてないと俺は思ってます。この3人は間違いなく天才でしょうね」

「そうですか。ブルー……あんたいい人にあったわね。お世辞でもこんなに褒めてくれる人そうはいないわよ」

「わ、わかってるわよ。それと、シショーはお世辞とか言わないもん。わたしならチャンピオンになれるって言ってくれて、絶対そうしてやるって言ったんだから! ね、シショー」

「え……本気で言ってるんですか?」

 

 何言ってんのこいつ?……ってニュアンスを感じる。世迷言扱いとは、ブルーって最初どんな評価だったんだ。いくらなんでもこれはヒドイ……哀れな。

 

「ブルー、悲しいかな実の親からも実力を疑われていたんだな」

「どーせわたしなんかマサラじゃ3番手なのよ!」

「……ブルーのお母さん。あの2人を見てれば仕方ないかもしれませんが、もう少しブルーのこと信じてやってください。ブルーは頭も良くて、要領もいいけど、その分考え過ぎたり、周りと比べてすぐに落ち込んだり、わからないことには不器用だったり、簡単に自信を無くしたり、とにかく色々欠点もあります。でも、だからこそ、導いてあげる側がブルーを信じて、そしていいところは褒めてあげないと。普段明るくてマイペースだけど、ブルーって心の奥は繊細ですからね。些細なことでも気にするタイプですよ」

 

 なんか面談している先生みたいな話ばっかりしているな。欠点挙げだすと思いの他いっぱい思いついてびっくりした。なんで人間ってダメなところの方がよく見えるんだろうな。哀れになってつい擁護に回ったが、イマイチどんな風に話せばいいか距離感がつかめない。こんなんで大丈夫なのか?

 

「たしかにそうでした。表には出さないけど、あの2人と比べられてコンプレックスがあったのかもしれないです。旅立ちの日も、からげんきの勢いだけでなんとかしようとしていましたし、私の眼には脆くて危なっかしく見えて、これでもし最初の壁で躓いたりしたら、そのまま立ち直れないんじゃないかって心配で」

「ぐっ!」

「……ブルー、図星だったのね。そうなんですね、レインさん?」

「ま、まぁ」

「それじゃあ、レインさんは最初どこでブルーと会われたのですか?」

「……ニビの辺りで。心配されていた通り、おつきみやまにぶつかって自信喪失してくすぶっていましたね」

「やっぱり。あなた、今でこそバッジは7つあるみたいだけど、そこでレインさんがお師匠になってくれなかったらバッジ1つで終わってたんじゃないのっ!」

「そ、そんなもしもの話をしても仕方ないでしょ。もう、せっかく帰ってきたのにわたしのことばっかやめてよっ」

「仕方ないじゃない、気になるんですもの。あんた、ロケット団と戦ったりめちゃくちゃしていたのもしっかり聞いたんだからね。本当に何考えてるの!」

 

  もうほとんどバレているみたいだな。ママさん情報網恐るべし。こいつらの感性が常識外れなだけで普通ロケット団に喧嘩売ったりしないし、そんなことすれば当然心配する。現にブルーはラプラスを助ける際に死にかけたそうだし。

 

「それは仕方ないでしょ。町がどうなるかっていう瀬戸際だったんだから」

「全く、向こう見ずは相変わらずなんだから。レインさん、これからも迷惑をかけると思いますが、本当にブルーをよろしくお願いします。ブルーはこれまでずっといまいちパッとしなくて、なのに今こんなところまでこられたのは一重にレインさんのおかげです。きっとレインさんでなければ道半ばで倒れていました。感謝の言葉もありません」

 

 ものすごく真剣な表情でお辞儀して言われたのでびっくりした。なりゆきで連れているだけで、別にジムみたいなしっかりした師弟関係があるわけでもないのに。

 

「そんな、頭を上げてください。ここまで来られたのはブルー自身の力です。強い意志を持ってここまで努力してきたからこそ、こうしてここに戻ってこられた。俺は言ってみればそのためのきっかけをあげたに過ぎないですよ。もう少しブルーも褒めてあげて下さい。ブルーは照れていますが、きっとお母さんに褒めてほしかったはずです。ここに来るまでずっとそわそわして落ち着きがなかったですから」

「シショー! 違うわよ!」

 

 口では何とでも言えるからな。目でみゅーの方をチラッと見ると、ハッとして顔を赤くした。正直になっちまえよブルーさん。楽しみにしていたのは丸わかりだ。

 

「あらあら、レインさんは何でもお見通しね。そういえば、レインさんはどうしてブルーのお師匠になられたんですか? 思っていたよりもずいぶんお若いですし、レインさんも旅の途中なんですよね。きっと迷惑も少なからずかけているでしょうに、とても親身になってくださって、私が羨ましいぐらいですから」

「……それは、わたしが頼みこんだのよ。きっとわたしの誠意が伝わったのよ」

「ウソね。ブルーは昔からわかりやすいわね」

「ぐっ!」

 

 ブルー、今日はいいとこなしだな。親の前だと強気には出にくいよな。にしても、師匠をやってる理由か。はっきりブルーに対して口にしたことはなかったが、改めて今聞かれるとなぁ。

 

「レインさん、実際のところどうなんですか?」

「シショー……」

「なんで師匠なんかしているのか……。傍から見れば、ブルーに追いかけ回され、拝み倒されて渋々……という感じで、たぶんブルーもそう思っているでしょう。でも、本当は……」

「ほ、本当はなんなの?」

「やっぱり、またいつか気が向いたらってことで」

「えええ!? なによそれっ、なんか理由があるなら教えてよ! けちんぼ!」

「だから、けちんぼ言うなストーカー!」

「そっちこそ、わたしはストーカーとは違うって言ってるでしょ!」

「はい、そこまで! 喧嘩は良くないの」

 

 ムキになって言い合うと、意外にもみゅーに止められた。みゅーが人前で口を利くなんて驚いた。今のは自発的な発言だ。

 

「あ、はい」

「それはいいけど、お前も一応話は聞いてたんだな。いつもと違っておとなしいから、実は目開けたまま寝てるんじゃないかと思ってた」

「みゅー!? レイン、それホントなの!?」

 

 冗談に決まってるだろ。“いつもと違って”は皮肉。でも冗談や皮肉は虚言じゃないから。あくまでジョーク!

 

「ウフフフ、仲がいいわね。その子はお名前何ていうのかしら? レインさんのお知り合い?」

「この子は訳合って俺達と旅をすることになって一緒にいるんです。呼ぶ時はみゅーちゃんって呼んであげてください。人見知りなのであんまりしゃべろうとはしませんが、いい子なんで悪く思わないでください」

「そうなのね。みゅーちゃん、よろしくね」

「みゅー」

 

 良かった。無視はしなかったな。人前で口利くなんて本当に珍しい。ブルーのお母さんはそんなにキライじゃないみたいだ。助かった。

 

 その後ブルーの口添えでホントにここで泊めてもらえることになった。話も一段落したので俺達は荷物を置くために今夜泊まる部屋に案内してもらった。

 

「あ、お母さん、わたし達はわたしの部屋にまとめて一緒でいいわよ。いつも一緒に寝ているから」

「え?……でも、他にもベッドとか余っているわよ?」

「一緒がいいの。夜は楽しみがあるから。ねー、みゅーちゃん」

「みゅみゅー、楽しみなの」

「楽しみって……あなた達、もうそんな……」

 

 ちょっと!? ブルー何言ってんの!? なんでわざわざそんな言い方!? みゅーも便乗するな! 当然俺は必死で首を横に振って否定した。

 

「違う違う! 違いますから! というか、ブルーも紛らわしいこと言うな!」

「何が?」

 

 こいつ、まさか今の無自覚?! 何もわからないで言ったのか!? 偶然……! この表情で演技だったらもう舞台女優になればいいと思う。

 

「どういうことなんです?」

 

 敬語こそ残っているがお母さんちょっと声が低くなっている。怖ぁぁっ! 下手な事言ったらガチでキレそうな顔だ。

 

「実はですね、みゅーが寝つけなかったのが始まりで、いつもこの2人に寝る前におとぎばなし? みたいなのを聞かせてあげているんです。2人とも聞いたことのない話だからえらく気に入ったみたいで」

「おとぎばなし! まぁ、そんなことまでしているの。なんというか、師匠というよりもうお兄さん、いや、お父さんみたいな感じね」

「まぁ、それに近いですね。家事やら料理やらもしていますし」

「え……? じゃあブルーは何をしているの?」

 

 今度は振り返ってブルーの方を見て言った。

 

「え、わ、わたしは……まぁ……あはは」

「あんたっ! まさか何にもしてないの?! バトルの手解きをしてもらって、身の回りのことも、寝る時も……。あぁ、なんてことっ! もっとちゃんと家事も教えておくべきだったわね! いっつもバトルバトルでそれ以外何にも興味ないから結局教えずじまいだったのがこんなところで……」

「ごめんなさい」

「ごめんなさいじゃないでしょ! それはレインさんに言いなさいっ! これからはあんたもちゃんと手伝いぐらいはしなさい! いいわね!」

「うぐぅ……」

 

 怒るときつそうだな。ブルーとは迫力が違う。料理とか生活面のスキルもかなり高そうだし、ブルーみたいなだらしないのとは正反対で締めるところはしっかり締めている。性格も真面目そうでしっかり者なオーラがある。なんでこの人からブルーみたいなチャランポランが産まれたんだろう。見た目以外全然違う気がする。

 

「今日は掃除洗濯からきっちり叩き込まないとダメみたいね。動けなくなるまでその根性叩き直さないとあんたは反省しないでしょうし」

「そんな! なんでうちにいるのにそんなことしなきゃなんないのよ! うちに帰った時ぐらいたまにはゆっくりさせてよ!」

「あんたは普段から何にもしてないのにたまにもなにもないでしょ!」

「くっ……シショー、助けてよぉ」

 

 ブルー……普段俺に頼りっぱなしだから怒られてるのに俺にすがりついてどうするんだ。この人の言うように根本的に性根から叩き直さないとこのチャランポランは一生そのままだな。案の定ブルーはお母さんからさらなる怒りを買うことに。

 

「この大バカ! あんたがレインさんに頼り過ぎだから怒ってるんでしょ! 今まで一体どれだけ甘えた旅をしていたのやら……あなた自分が情けなくないの?」

「うぅ……だって……」

 

 自業自得……なんだけどやっぱりかわいそうだな。ブルーには頼みたいこともあるし一度くらいは助け船を出してやろうかな。

 

「その辺でいいんじゃないですか? ブルーも何度か手伝おうとして努力はしていましたし、役に立とうとしてくれて頑張っています。その気持ちだけで嬉しいですし、いつも十分助けられてますから構わないですよ」

「シショー!」

 

 目がキラキラしてる。ブルーにとっては地獄に仏だろう。

 

「そんな! でもさすがにここまでおんぶにだっこでは……」

「……実は少し行きたいところがあって、そこまでブルーに案内を頼みたいんです。ブルーがいた方が話もつけやすいでしょうし」

「あら、ここでわざわざ出向くような場所と言うと、オーキドさんの研究所かしら?」

「そうです。ポケモン研究の権威ですから、せっかくの機会ですし伺っておこうと思って」

「あっ、博士のところね! わたしも行くわ! ね、いいでしょ?」

「そうね。どのみち挨拶ぐらいしとかなきゃだし、一緒にいけるならたしかに丁度いいわね。ただし、帰ったら手伝いするのよ?」

「わかったわ。じゃ、さっそく行きましょ!」

 

 一刻も早くここを離れたかったのだろうな。すぐにうちを飛び出すことになった。

 

 みゅーは説得してうちに残すことにした。来ても難しい話をするだけだからと言っても傍にいたそうにしていたが、最終的についてきたらけづくろいはしないと言うと渋々諦めてくれた。

 

 恨めしそうな目で見られたが仕方ない。ウソが言えなくなるしみゅーがいたら何かと面倒だから。約束もさせたしブルーのうちは気にいったみたいだから勝手に飛び出すこともないだろう。

 




話が進まない!
なんかポケモン要素がどんどん薄くなりつつある気がします
いったいどこに向かっているのやら
なんで関係ない話の方が内容が膨らむんでしょうね


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