初戦を終えてからわたし達は順調に勝ち上がった。わたし自身は手持ちのバランスと耐久力を生かして交換を繰り返して勝ち上がり、レッド達はレベルの高さを前面に押し出した力勝負で勝っていた。手持ちがほとんど50台なのはさすがよねぇ。それに切り札はまだ見せていない。このトーナメントじゃ敵なしってぐらいの快進撃。
シショーの方は相変わらずメタモン1体で全て勝っている。毎回“へんしん”を解除するので、ほのおタイプを出してから次にみずタイプ、なんてベタなメタモン攻略方法が使えない。しかも異様にタフなので対戦者は皆攻めあぐねていた。
強いポケモン……カイリューとかなら1匹で全部倒して勝ち上がる例も過去にあったみたいだけど、誰でも育てられるようなメタモンで連勝するのはホントにすごい。今カントーではメタモンの人気が急上昇して注目を集めている。自分のシショーが人気になるのは嬉しいけど、凄さを知っているのが自分だけじゃなくなるのはなんか寂しい感じもする。
わたしは4回戦、これも難なく勝ち上がり次へ進んだ。段々慣れて来て今は余裕がある。頭では次の試合……ではなくこのあとのシショーの試合のことを考えていた。ラーちゃんには自分のことに集中しろって言われたけどいいのよ。レベル的にもシショー以外にはもう負ける気はしないし、これは敵情視察も兼ねているからトレーナーとしての務めを果たしているだけ。3回戦は見れなかったし、今からもう待ちきれない。
シショーのメタモンのバトルはとっても参考になる。様々なポケモンの正しい戦い方のお手本をシショーがわたしに見せてくれているようだった。だから毎回自分と被らなければ見に行くことにした。
急いで隣の会場に向かったけどもう終盤ね。あれは水のフィールドか。相手はなぜかサイドンを出しているわね。みずタイプには相性が悪いけど……でんきタイプ対策?
「メタモンなみのり!」
「なぜその技を?!」
「サイドン戦闘不能!」
“なみのり”使えるの!? 今までだいたい全部見ているけどシショーの指示は一度も不発になっていない。サイドンが“なみのり”を覚えるなんてわたしは今初めて知ったのに。やっぱり知識とかでは遠く及ばない。小手先の小細工はムダのようね。このメタモン対策も空振りして自滅する結果だし。
「もしかしてこの技切り札だった? 先に使わせてもらってごめんね。助かったよ」
「バカな、こんなことはありえない! これはひでんマシンで昨日覚えたばかり! しかも絶対誰にもバレないように……お前が知るわけが……どうしてこんなことが……」
「技を変えたことなんか知らない。今までも、事前に調べて知っていたからわかったんじゃないし。だいたい、前日までランダムなんだぞ? ルーキーが200人以上の参加者の手持ち全部把握できるわけないでしょ」
「そんなバカな! まさかお前、とんでもない豪運の持ち主なのか?!」
「……」
シショー豪運ギャンブラー説爆誕! いや、どう考えても実力でしょ。技なんていくらでも種類があるのに運だけでノーミスは無理じゃない? エスパーなら勘でいけるのかな。
『さぁ、これで今日の全試合が終了しましたっ! 次は5回戦。当初237人いた参加者も数を減らし、熾烈な競争を勝ち抜き残ったのは僅か16名。注目は破竹の勢いで勝ち続ける今年のルーキー4人! そして優勝候補には毎年実績を重ねてきたサオリ選手を始めとして……』
会場を離れ、実況の声が遠のいていく。またメタモンの独壇場か。みゅーちゃんはこの前会った時とっても幸せそうだった。バトルで大活躍できてシショーにたくさん褒められているらしい。バトルできること自体も楽しそうだしいいこと尽くめね。毎日リーグ戦がいいとまでみゅーちゃんは言っていたけど、この連勝記録、どこまで伸ばすのかしら。
カイリューは氷フィールドで途中1回負けたらしいから、全部みゅーちゃんで勝てれば新記録になる。そんなことになったら大変なことになるわね。
◆
「ねぇ、ホントに大丈夫なの?」
「心配するな。ちゃんと勝つから。俺のこと信じられない?」
「ううん。レインは強いから、みゅー信じてる」
「ありがとね。やっぱりみゅーはいい子だな」
今日は5回戦。“あれ”以来一応試合には定刻通り来ている。毎回着くのはギリギリだが、これは余裕がないわけではなくテレポートしているからだ。だがもちろん相手からはわからないことなのでこれも調子乗っている扱いされることになった。観客目線だと「連勝中のヤベー奴」だが選手からは「舐めてるけど気づいたら勝ってる謎ルーキー」というのが俺の今の評価みたい。……観客の方が俺の凄さを理解しているな!
あの時は前日張り切り過ぎてみゅーがなかなか寝付かなかったのがそもそもの始まりだった。バタバタしているところに不運も重なった。まさか会場が複数あるなんて夢にも思わなかったのだ。そんなこと誰にも言われなかったが俺以外にとっては常識らしい。まさか過ぎた。
そもそも今は試合を見たりするより少しでもみゅーの技の練習に時間を当てたいから自分の出番まで会場に行くつもりもなかった。そこで思いついたのがブルーを利用する手だ。回復のためブルー自身にマーキングを付けているから直接ブルーの横に飛んで試合前の応援ついでに控室にマーキングをしておこうという天才の発想。しかしこれが罠だった。
行ってみればなぜか自分以外の選手がいるし何もかもがなぜかおかしくて、会場が複数あることに気づく頃には時間が大変なことになっていた。寝ぼけているみゅーを渾身の“めざましビンタ”で起こして自分の会場に着く頃には時間ギリギリ。「みゅーのせいです」とは言えないし結果的に相手を挑発する結果になるし散々だった。目立ったからいいけど。
できるだけポーカーフェイスに徹したけど内心は決して穏やかではなかった。やたらヤジが迷子扱いしてくるし、実況も好き勝手煽り、みゅーは出て来ても寝ぼけている。あいつ最初メタモンのまま「んみゅんみゅ」っていつも通りしゃべってたの聞こえたからな。鳴き声は自分で作っていたとか衝撃の事実なんだけど。テレパシーを使い、“ご褒美”でやる気を引き出すと目を覚ましてくれたから良かったが、最初から手持ちが半分眠り状態とかこっちは叫びたくなっていた。
「今日は頼むぞ……」
モンスターボールをそっと撫でてリングに向かった。もうみゅーの練習は区切りがついたからゆっくり早めに来た。今日の相手はどんな奴かな。
「あら、珍しく早いわね。噂のダークホース君」
「早く来ても結局言われるのか。ホントにしつこいなぁ。こっちにもちゃんと事情はあるんだよ」
エリートトレーナーか。また精神攻撃? いっつも“あれ”について言われるけど新人いじめて楽しいの? 自分も人の事言えないけどいい趣味してるよな。
「ルーキーのくせに生意気ね。一応言っとくけど、もうあんたはうちらのマークの対象になっている。ここからは簡単には勝てないわよ?」
「どうぞどうぞ、好きなだけ対策してきなよ。あんたらが必死に研究してくるのを、俺は鼻で笑いながら見てやるよ。ムダなことやってるぞってな」
「それはあたしじゃ勝てないって言いたいのかい?」
「そもそも眼中にないよ」
「言ってくれるわね。いい? あたしは今年こそ必ずマスターへ上がって、カスミを倒してジムリーダーの座を奪う! あんたはその踏み台になるのよ!!」
ジムリーダーになりたいっていうのは意外だな。そんな人もいるんだな。ジムリーダーが変わることは確かにゲームでもあった。カントーだと道場破りのナツメみたいな感じ。
『まずは赤コーナー、サオリ選手っ!! 優雅なる水使い! 相手を翻弄する華麗な技と、試合を常に掌握するような見事な策略でここまで勝ち上がった今年の優勝候補筆頭だぁ!! 対して、緑コーナーはメタモン使いのレイン選手! その連勝記録をいったいどこまで伸ばすのか?!』
「いくわよ、スターミー!」
「イナズマ、思いっきり暴れてこい!」
スターミー Lv48
技 なみのり
サイコキネシス
10まんボルト
でんじは
こごえるかぜ
……
イナズマ Lv52
実 140-64-69-166-115-207
技 110まんボルト
2めざめるパワー
3あくび
4バトンタッチ
5まもる
6みがわり
7こうそくいどう
8チャージビーム
9かみなり
10あまごい
11ボルトチェンジ
会場がどよめいた。先頭、まさかのサンダース。相手も驚きを隠せない。
「ええっ! メタモンじゃないのっ!?」
「そのスターミー、メタモン対策で色々覚えているな。怖い怖い。けどお生憎様。さっき策略家とか言われていたが、策士策に溺れるか?」
「はじめっ!」
相手は悔しそうに顔をゆがめるが試合は待ってくれない。相手は渋々という感じでいきなり交代してきた。
「クッ、やむを得ない……戻りなさい!」
「いきなり温存か。やっぱりメタモンへの役割重視のようだな。6,7!……そこまで警戒されてるんだなぁ。まぁ好きにするがいい。メタモンを倒しても、こっちは4体も残っているからな」
今までの試合の感じだと相手にしゃべりかけるのはギリギリルール違反ではないみたいなので、カモフラージュと時間稼ぎも兼ねてわざと話しかけてメタモンを意識させた。“みがわり”はよく見ていないと技の使用を見落とすこともある。そうなれば後から気づくのは難しい。“こうそくいどう”に注意が向いてくれたらもうけものだがどうだ?
「言ってなさいよ。この程度の奇襲なら問題じゃない。いけ、ウツボット!」
「またウツボットかよ。リーグって同じポケモンよく見るよな。やっぱ流行りとかあるのか? それ強いから流行ってるの? 勘弁してくれよ」
「(しめた! くさタイプはでんきタイプには有利、みずタイプ以外は想定外のようね)ねむりごな!」
「またくさタイプのひとつ覚えで初手催眠かよ。他に覚えてる技ないの? 8! ウツボットまでそんなことするのか」
俺はただ“チャージビーム”の指示を出すだけ。相手は最初のうちは得意気だったがすぐにイナズマが眠らないことに戸惑い、懲りずにまた同じ指示を出すが当然また失敗。残念ながら良いカモだ。試合前はメタモンのことしか考えてなかったんだな。ポケモンは1匹勝負じゃないのに。マークが偏ると選出も歪になるんだよ。
“ねむりごな”を頑なに続けるのでこちらも“チャージビーム”を使い続けた。使えば追加効果の特攻上昇判定は発生するのでこちらは大して攻撃を当てる気はない。なのでこっちの攻撃が緩く余裕があるため“ねむりごな”で動きを止めようと躍起になっているようだ。
もしかするとサンダースが素早いことぐらいはあちらさんも知っているのかもしれない。実際相手からは“ねむりごな”自体は当たっているように見えるわけだし、余計諦めきれないんだろう。
『あーーっと、これはまた失敗だ! またしてもお互い決定打に至らない! ウツボットには攻めの姿勢が感じられません! これでは何度やっても同じだ! なぜ攻撃技を使わない。使えないのか。使いたくないのか。使う度胸もないのか!』
「そろそろいいか。イナズマ、めざめるパワー使っていいよ」
「めざめるパワーですって!? 運任せな技でわるあがきのつもり?」
「でんきにはこおりが似合うと思わない?」
もちろん相手はわけがわからないという顔だがすぐに結果は出た。こうかはばつぐん。一撃で倒した。
「めざめるパワーこおり……!」
『これは珍しい! 今のはめざめるパワーか!? こうかはばつぐんだ! ウツボットたまらずダウン! ポケモンごとに技のタイプがバラバラで使いにくく、ポケモンリーグではまず見ることはない技だが、レイン選手土壇場で幸運にもそのデタラメな技の特性に救われたようだ! ようやく試合が動きました。サオリ選手、でんきタイプを倒し損ねたのはやや痛手になるか!?』
「もうっ、どうなっているの?! よりによってめざめるパワーで弱点をつかれるなんて運が無さ過ぎるっ」
運じゃないんだけど……でんき半減タイプに通りがいいから覚えているわけだし。あんまり見ない技だとそういう認識になるのか……。
「次は? もうみずタイプしか残ってない?」
「そんなわけないでしょ? みずポケモン使いとして、でんきタイプ1体にやられるわけにはいかない! ここから目に物言わせてやるから覚悟しな。いけ!」
「10まんボルト」
出て来たのはオコリザル。格闘か。そいつじゃ耐久がたんないなぁ。そもそも考えてみればカビゴン・ラッキー辺りの数値受けがいないとカントーだとイナズマをタイプで受けれそうなのはいないのか。特攻が上がるとイナズマも大エースに早変わりするわけだ。
そのまま“10まんボルト”を続けてオコリザルを倒した。
『これはいけない! 連続の攻撃であっけなくオコリザル戦闘不能! これでは全くの無駄死にだ! オコリザルが泣いているぞ!?』
「うそっ! そんな……」
「今のがダメだったら、あんたにまだ残ってるのかな? 2回の攻撃を耐えられるポケモンが? それとも降参? ジムリーダーならそんなことしないだろうけど、もう勝負見えてるもんなぁ」
「諦めたりするわけない……お願い、なんとか耐えて!」
結局残りはみずタイプしかおらず快勝。あっけなく勝利した。この辺りのトレーナーだとレベルが高いから5体も倒すと少しは経験値になるみたいだ。
「スターミー戦闘不能! よって勝者レイン選手!」
「ありがとうございました」
「……でんきタイプゥゥーーッ!!」
物凄い形相でイナズマを睨んでいる。で、でんきタイプは一貫性作る奴が悪いって昔から決まってるんだよっ。……勉強になったな。いつもより“はやあし”で戻って来たイナズマを抱き上げ、今日だけカメラ目線で手を振った。特性は“ちくでん”だけどね
「イナズマ、ポケモンリーグで初勝利おめでとう。ほら、お前もカメラに手、振っとけよ」
ゆっくり会場を出るとすごい勢いで3人組に囲まれた。どっから現れたんだ。全員また見ていたのか。こいつらよっぽどヒマなんだなぁ。今回はたまたまみゅーじゃないが、毎回似たような展開なのによく飽きないな。
「お前らの試合はもう終わっていたんだったな。ベスト8おめでとさん」
「あ、わたし達のことも知ってるんだ。ありがとね……ってそうじゃなくてよっ!」
「なんでメタモンじゃないんだよ! 連続出場連勝記録かかっていたんだぞ! まさか知らねぇわけでもねーだろ!?」
「おれ達で理由を考えたがわからないんで直接聞きに来た」
「それにみゅーちゃんが試合開始直前にわたしのとこに来たのよ! 何聞いても2人がいるせいかなんにもしゃべってくれないし! メタモンで十分勝てたでしょ!」
ブルーが最後は小声で話してきた。みゅーは俺が行かせたんだよ。今日は使わないって決めていたから。試合見るならブルーの近くが1番いいだろうと思って。ここでは言わないけど。
「やっぱなんかの作戦なのか? あるいは仙人の勘で何か予知していたってのか?」
「このタイミングでしたことに何か意味があるのか?」
怒涛の質問攻めだな。少しは落ち着けよ、俺は逃げないっていうのに。あとグリーン、まだ仙人言うか。
「別に理由は簡単だ。イナズマはマサキさんから貰ったポケモンで、そのときに絶対リーグで活躍させるって約束したからな。そろそろ出しとかないと心配されるだろ。今日は5体倒したし、一応これで面目は保てただろ」
「はぁ!? そんなささいな理由かよ! つうか、それは連勝記録よりも大事なのか?!」
「そんな記録、作ろうと思えばいくらでも作れるんだから大した意味はない。そもそも優勝すればその過程は関係ないはずだ」
「なんかわたしはスッキリ納得したわ。シショーらしいわね。約束は大事にするし、興味ないことには無頓着だもん」
「ダーッス!」
出番があってイナズマは大満足みたいだな。活躍できて嬉しいみたい。さっきから俺にくっついたまま離れない。このチクチクだけどビリビリした感じ、やっぱりいいなぁ。
「もう聞きたいことはないだろ。今からけづくろいするからまたな」
「みゅー、じゃあね」
ブルーといる間、みゅーがしゃべったのはこの一言だけだったらしい。試合前は心配そうに何度も俺に話しかけてきたのにな。試合中はちゃんと信じていてくれたのかな。本人曰くずっとおとなしくしていたようだ。
「じゃあみゅーもけづくろいしようか」
「いいの? でもみゅー今日はなんにもしてないの。いい子だったご褒美ってこと?」
「んー、俺がしてあげたいからっていう理由じゃダメ?」
「みゅ!? ホント? いいよ、嬉しいの!」
以前はバトルの際、他の仲間に任せて勝負を見守るのは苦手なようだった。グレンジムがいい例で、あの時はみゅーの負け=レインの負けと思っている節があった。仲間を信用してないとまで言わないが、多少そういう面もあったのかもしれない。野生の頃はずっと独りで勝ってきただろうから気持ちはわかる。
でも、ようやくみゅーにも信頼関係ができ始めている。それが嬉しい。リーグでは仲間に任せて勝負を見守ることも立派なチームプレー。みゅーは確実に成長している。もう立派な仲間だ。
「レイン、嬉しいことあったの? オーラ嬉しそう」
「そう? みゅーには隠せないな。でもなんでかは教えてあげない」
「みゅ!? 教えてよっ」
「気になるならエスパーで当ててごらん?」
「みゅぅぅ……レインはいじわる」
少しぐらいは隠し事してもいいよね?
イナズマ強ポケ疑惑が……
交換する場合ボールに戻す間に時間ができるので技を選び直せますよね
するとボルチェンがささるささる
技の効果のチェンジは1ターン経過しないので無償降臨かつ有利対面維持
このアドを思考停止で取れます
ボルチェンカットのために地面タイプを出せばめざ氷で返り討ち
かなり不利な読みを相手に強いれます
サンダース自身は電気無効ですので相手のボルチェンは許さないのもグッド
素早いだけでも恩恵が多いのにタイプ面でも優秀だと手が付けられませんね
もしかしてイナズマさん、強過ぎ……?
ちなみにタイトルはイナズマがみゅーちゃんに言ったセリフというイメージです
イナズマはこんな感じの口調でどうでしょう
そんなに変ではないはず……