Another Trainer   作:りんごうさぎ

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感想戦その3


17.次の舞台へ

「あとはレッド戦だな。最初に結論を言えばレッド戦はブルーの時よりかなり楽だった。アカサビの6タテもブルーの時よりさらに意識して最初から狙っていた。実戦ではあっさりその通りになったし」

「レッド相手にそれ本気で言ってるのか?!」

「そりゃそうよ。あんたら見ていてわかったけど、変化技への警戒心が薄過ぎるわ。簡単に“りゅうのまい”とか“つるぎのまい”みたいな強力な積み技を使えて、それで能力上げて全抜き出来るもの。あんたらがあっさり負けたのはそれが原因よ」

「そういうことだな。お前らポケモンバトルはいかに強力なポケモンを並べて強力な技を使うかだけ考えているだろ。そうではなくていかに相手の隙を作り、そしてそれを咎められるかが大事なんだよ。そういう意味ではお前らは隙だらけ。ブルーは散々負けて少しはわかってきているが、お前らはまだ脇が甘い」

 

 どう考えても能力を上げて倒していく方が効率はいいわけだしな。積んで即引くことになると悲惨だから何も考えなくていいわけではないが。

 

「そうはいうが、おれはそんな隙なんか見せた覚えはない」

 

 弱点というのはプレイングよりも、むしろ手持ちの編成にあることが多い。こういう見せ合いのない世界じゃ仕方ないが、万遍なくカバーできる組み合わせを追及しないとな。逆に言えば相手が何をしてくるかわからないのだから強力な展開を押し付けるような構築が1番このリーグでは効果的なのかもしれない。

 

「別に大きな隙はいらない。俺はワンターンあれば十分だったから。最初のポケモンの見せ合いでもう8割方勝ちを確信していた。“ステルスロック”は簡単に使えたし、アカサビも“つるぎのまい”を使えた。お前はその時点でほぼ負けていた。戦略的に」

 

 ハッサムに簡単に手持ち全員が縛られていること自体がそもそもおかしい。普通はそんなことはまずない。“ステルスロック”を知らなかったとはいえ止められるのがリザードンだけではな。いつもはカビゴンやラプラスがストッパーだったのだろう。

 

「じゃあどうすれば良かったんだ」

「さぁなぁ。エアームドとかが手持ちにいればなんとか。いなければ無理だな。要するに試合をする前からお前は負けていた。俺は綿密に準備して挑んでいた。エーフィが最初に出てこなくても1体ひんし間際に追い込んでやればそいつを倒して1ターン必ずできるから」

「つまりハッサムへの対抗手段がないから負けたということか。だがこうなると最初からわかっていないとどうしようもない」

「だが次は知っている。大事なのは次だ。今回の負けは、いわば授業料。ちょっと高かったかもしれないが、今後のことを思えば安かったと思えるだろうさ」

 

 一度負けないと学べないこともある。学んだことを次にどう活かすか。その先にこそ本当の勝負はある。

 

「シショーって悪徳よね」

「やっぱり悪の組織の……」

「ブルー、グリーン、いい加減被せ過ぎだからそれ以上はやめろ」

「じゃあ、ついでにあの奇妙な岩のことも教えてくれ。これがなければ本来リザードンでハッサムを倒せていたはずだ。……授業料は払っただろ?」

「1回の授業料でここまでサービスさせるのか? どっちが悪徳なのやら。まぁ知っている奴は知っているだろうし調べればわかるだろうから教えてやってもいい。タケシとかなら良く知っているのかなぁ。あれはステルスロックといういわタイプの技。特殊な技で、交代する度に永続的に相手に少しダメージを与える。フィールドにずっと残る技だ。お前らでも知ってそうな技だと“まきびし”とかに近い。ただ、ダメージは相性に依存して、いわタイプが弱点なら多く、抵抗があれば少なくなる。“まきびし”との大きな違いとしていわタイプが基準だから無効タイプは存在しない点が挙げられる。だから何かとそっちより便利。ちなみに当然リザードンは岩弱点で大ダメージだ。あれで体力の半分ぐらいもっていったな」

「な、そんなにかよ!」

「強過ぎないか?」

 

 それは同感だ。実際フルバトルなら“ステルスロック”はほぼ必須。使わないのは敗退行為といってもいいし、岩4倍弱点持ちは“ステルスロック”の存在、それだけで弱い。

 

 とはいえ、仕掛ける側も簡単にこの技を使えるかというとそういうわけでもない。そもそも使えるポケモンが限られる上、戦略的にも読まれやすいことこの上ない。いちいちそんなことまであえて言わないが。

 

「相性普通なら“ステルスロック”はほとんどダメージがないから。その代わり交代の度に毎回だから2回交代すればリザードンなら攻撃されてなくても倒れるか、その寸前に追い込まれるな。交代が多くなる展開では有効になる技だ」

「でもあの試合だと交代は少なかったし、ほとんど1回ずつしか出てないじゃねぇか。まさかリザードン対策だったのか?」

「そういうこと。怖いのはリザードンだけだからそいつを早めに倒しておきたかった。そのためにリザードンをなんとかハッサムの先制技で倒せる圏内に減らしたかった。そうすればほのおタイプはいなくなり、ハッサムは止められない。俺は“ステルスロック”とアカサビの“でんこうせっか”1回でちょうどリザードンを倒せることが分かっていた。だからリザードンをハッサムで誘い出してそのタイミングで確実に倒し、あわよくばそのまま全抜きに入りたいと思っていた。このステルスロック戦法は切り札。ブルーにも見せていなかったが、お前にはこうでもしないと驚いた顔を引き出せないと思ってな。ブルーには戦術で、レッドには戦略で、それぞれ勝っていたから俺は勝てた」

「じゃあアカサビさんでリザードンを倒すのは始まる前から狙ってたんだ」

「だいたいは理解した。どうせなら対策方法も教えてもらいたいんだが」

「あ、わたしも聞いておきたい! こんなのいきなりされたら困るし」

「3対1だぜ?」

 

 あんまりしゃべる気はなかったんだけど言わないと収まりそうもないな。ウソでごまかしが効く連中でもないし。どうしたものか。

 

「なんでもかんでも聞いてばかりじゃ新しい戦法に出くわす度に翻弄されるぞ? せっかくだし今3人で考えればいい」

「そうはいっても取っ掛かりがないと何も始まらない」

「たしかに。何かヒントちょーだい! お助けシショーみたいに」

 

 お助けシショーって何? ブルーのセレクト画面にはそんな項目が備わってんの? ニュー機能?

 

「……少しだけな。まずステルスロックはいわタイプの補助技で、覚えるポケモンはいわタイプやじめんタイプが多い。プテラとかダグトリオなどだ。そして当然だが交換が多くなるほど、つまり試合が長くなる程有効になる」

 

 しばらく3人で悩んでいたが、映像を見返していたグリーンが突然顔を上げて叫んだ。

 

「……わかったぜ! つまりその技は最初に使うことが多いんだな! あんたこの映像ではあらかじめ示し合わせたかのような指示だし、始まる前から1番最初に使うつもりだったんだろ!」

「その上ステルスロックを覚えるのはあんたならプテラだけ。つまり最初にプテラを出して初っ端にそれを使う可能性が高いわけか」

「あとはそれを見越してこっちはみずタイプとかちょうはつ持ちとかを最初に出せばいいのね。簡単じゃない!」

 

 息ぴったりの連携だな。3人寄ればって言うけどこいつらにはまさにぴったりだ。もし俺と持っている知識に差がなければどうなるんだろうか。サーチやアナライズがあるとはいえそれでも危ういかもしれない。

 

「そういうことだな。お前ら情報やるとすぐに対策考えるな。怖い怖い……」

「……で、実際にはあんたはサンダースを出して返り討ちにするつもりなんだろ」

「なるほど、裏をかいてみずタイプを返り討ちか」

「うわ、ホントにやりそう。あっさり教えたのも最初からそれ狙いの可能性が高いわね。しかも最初はボルトチェンジで逃げてその後安全なところでプテラを出すのよ」

「……」

 

 さすがにここまで自分の考えを先取りされると笑えない。実はちょっと狙っていた。

 

「図星って顔だな。怖い怖いってよぉ、怖いのはあんたの方じゃねーかよ。ホント、油断ならねーな」

「油断も隙もない」

「ラーちゃんやみゅーちゃんが聞いてたら人間不信になるわね」

 

 みゅーがけづくろい後で休んでいて良かった。いたら本当に面倒なことになっていたな。

 

 “ステルスロック”を最初に使うかどうかは完全に読み合いになる。あんまり安直な行動に出ると自分の首を絞めて自滅しかねない。次は読みのレベルを上げておいた方が良さそうだ。

 

 これでもう基本的な考えはだいたい全部把握しただろう。もうこの3人には簡単には勝てない。もっとも、「定石を 覚えて二目 弱くなり」って言葉も世の中にはあるけど。

 

「次は簡単に思い通りにはさせない。必ず勝つ」

「ねぇ、シショーってどうやって短い時間でここまで考えているの? いつもポケモンの調子とかもよく見ているし、考える時間がほとんどないリーグ戦でそこまでできる余裕があるとは思えないわ」

「それは簡単。毎回一から戦術を組み立てるわけじゃないからだ。ある程度定石といっていい考え方があって、それを元にしているから考えることはそんなにない。ポケモンの体力とかはパッと見るだけですぐわかるから手間は取らないし」

 

 あえてさらに加えれば慣れもある。時間無制限に慣れていれば当然しっかり考えるクセがつくからこうはいかない。だが、俺は路地裏にぶっ倒れていた頃からルール無用の実戦が多く、時間に区切りなどがあるジム戦より先にそっちに慣れていた。だから反射的に技選択をするのが染みついていた。

 

「じゃあ何に時間をとられるんだ?」

「最も時間を割くのは相手の考えや心理をそれまでの行動やクセなどから予測することかな。お前らは最善を尽くすことに夢中なんだろうが、それだけじゃ対人戦では勝てない。もちろん簡単に人の考えなんてわからないし、力押しで勝てるならそれにこしたことはないけど、今の俺にはそこまで圧倒的な力はないからやむなしだな」

 

 相手が慎重なタイプか、思い切りのいい奴なのか。運任せなのか堅実なのか。そして相手の力量の見極めも重要。結局読みって二者択一だから絶対はない。あるとすれば勝つ可能性を引き上げる何かだが、簡単には見つけられない。読みに明らかな不正解はあるが絶対の正解は存在しえない。

 

「はぇー。そんなもんなんだ。ありがとシショー、参考になったわ。いや、なり過ぎたぐらい。徹底的に研究して倒し方を編み出してやるから楽しみにしていてね」

「……」

 

 レッドの無言も何を考えているのかわからなくて名状しがたい不気味さがあるが、ブルーのこの性格も大概だな。むしろはっきりしていて逆に清々しいか。

 

「人の話聞くだけ聞いて大した言い草だな」

「この師匠にしてこの弟子ありってところだな。ま、参考になったのは確かだぜ。直接レインとは対決していないオレにとってもな。マスターの連中もオレ達にとっちゃ敵じゃねぇ。オレとしてはお前らだけを見据えさせてもらうぜ。今回は負けてばっかだったから特にな」

「そういうことだな。おれも次はレインに勝つ」

 

 そこは普通に四天王さんとかマークしとけよ。えらく警戒されているな。おそらくそれが正解なんだろうけど。

 

 リーグではマスターのことまではあまり意識していなかった。その場でベストを尽くして遊びなしだったから一方的に勝ち過ぎたかな。

 

「別に気合入れてくるのは大いにけっこうだが、足元すくわれて初戦敗退とかしたらカッコ悪いぞ。俺と当たるまでに油断するなよ。特にグリーン?」

「しねーよっ! つかなんでオレだけなんだよ!」

「ブルーがいっつも言ってたぞ。グリーンは大事なところでいっつも油断するってな。実際そうなんだろ?」

「ブルー、てめっ! 好き勝手なこと言ってんじゃねーよ!!」

「あはは、ごめんちゃい! でも本当のことを言っただけでしょ?」

「おまっ、そこになおれ!」

 

 通路側に座っていたブルーとグリーンはとうとう立ち上がって言い合いを始めた。放っておくとここでポケモンバトルを始めそうな勢いだな。ブルーも吹っ掛けられると売り言葉に買い言葉な強気な性格だから収拾がつかない。

 

「また始まったか。飽きないなぁ、お前ら」

「……昔からだ」

 

 ◆

 

 反省会は終了。これから俺達はそれぞれマスターズリーグに向けて動き始めることになる。当然様々な選択肢があるが、自分自身はもう何をするかは決めてある。

 

 今後の行動、グリーンはやり残したことを片付けるためにナナシマに行き、ポケモンをゲットしたり育てたりするらしい。目を付けているポケモンや育成中のポケモンがいるらしい。ある程度次のトーナメントまで時間が空いているのでレベル上げをする時間はいくらでもある。

 

 ナナシマはカントーの外なのでジョウトとかのポケモンもいたりする。メンバーや戦術がガラッと変わる可能性もあるな。

 

 自分の予定を話し終えたグリーンが俺達にも何をするか聞いてきた。

 

「オレはそんな感じだ。お前らはどうする?」

「わたしはシショーと一緒にいるわ。その方が勉強になりそうだし」

 

 ブルーがこっちを見てそう答えたので次は俺が答えた。

 

「俺はリーグに残る。マスターの連中の顔を拝んでおきたいからな」

「まぁそれが1番普通だな。レインだとなんか無難な選択は意外だが。レッド、お前はどうすんだ? なんならオレと一緒にナナシマに来るか?」

「……おれは行きたいところがある」

 

 レッドのやつおかしなことを言うなぁ。セキエイ近辺やナナシマ以外だとあんまり経験値を稼げる場所はない。野生のポケモンはもちろん、全国の猛者もセキエイに集まるからここ以上のトレーナーはカントーにはいなくなるはずだ。それとも自分のポケモン同士で戦わせたりするのか、はたまた新しくポケモンを育てる気なのか、あるいは……。

 

「なんだよ、つれねぇなー。そんじゃ、オレ達はバラバラか。レイン大好きっ子を除いてな」

「グリーン! あんたふざけてるとまたあれやるわよ!」

「ちょ、小粋な冗談じゃねえか! ともかく、オレ達は次に会うときはリングの上ってことだ。この中の誰が優勝しても恨みっこなしだ。全員悔いのないように、マスターでも暴れてやろうぜ!」

「おーっ!!」

「おぉ」

「……」

「ノリわりぃーなぁー。ブルーは子供だからおいとくとして、せっかくオレがまとめてやったのに少しは合わせろよ。お前ららしいけどな。じゃ、オレは少しの時間もムダにできねぇし、さっさとナナシマにいくぜ。バイビー」

 

 まずグリーンがいなくなり、次にレッドも無言で出ていって俺とブルーだけが残った。当然支払いは全て本当に俺になった。

 

「あいつら……勝手に先々いきやがって」

「置いていかれたわたしの気持ちもわかるでしょ?」

「今回に限ればブルーもあいつらとグルになった側だろ。とにかく、俺らも遅れをとれない。さっさと次に進もう」

 

 とうとう次の舞台はカントーの頂点が集まるマスターズリーグ。俺の旅もいよいよ最終章ってわけか。

 

 寄り道もあったが、とにかく頂点だけを一心に目指して進み続け、とうとうここまで来た。当然勝つ。勝って自分に形あるものを残すんだ。ここまでしてきたことを無にはしない。

 




無にはしたくないですね(意味深)

次回はいつになるか本当にわかりません

今までは下書きがあって基本それをベースにしていたのでやたらペースが速かったですが本質的にはあんまり筆の進みは速くないです(予防線)

ただし最低でも完結はします
下手でも何でもいいからとにかく最後までは走り切りたい
細かいことは後からでも直せますからね(開き直り)

気長に待ってもらえると嬉しいです
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