Another Trainer   作:りんごうさぎ

99 / 146
いきなりくると怖いですよね(意味深)


マスターズリーグ編
1.エスパー少女は突然に


 突然始まった追いかけっこのせいでぜぇぜぇと息を切らせ、2人の少女の前で膝をついていた。不思議な夢に誘われ、現実から遠のいていくような夢見心地はすでにすっかり消えていた。

 

「お前ら、少しは加減しろ。大人気ないぞ」

「わたし子供だしぃ? それにちゃんと手加減してこうして待ってあげたじゃない。むしろシショーの方が体力なさ過ぎじゃない?」

「レインお疲れ?」

「違う! お前らがおかしいんだよ! どっからそんな体力が湧いてくるんだ。みゅーはともかく、ブルーは本当になんなんだ。スペックだけはムダに高いよな」

 

 ブルーは謎の腕力といいこの体力といい、この体のどこにこんな……ただでさえ手に負えなかったのが成長期でさらに進化しているようだ。もしかしていっつもバカみたいに食べるのはこのせいなのか?

 

「はいはい。褒めてもなんにもでないからねー。じゃ、早く行きましょう。まだ半分ぐらいの距離でしょ?」

 

 一度打ち上げのためにトキワに戻っていたのでセキエイ高原までそれなりに距離がある。まさかランニングすることになるとは思わなかった。

 

「ヒリューに乗るのは?」

「ダメよ。シショーは体力つけないと」

「みゅーも一緒に歩きたい」

「鬼か……」

 

 思わず嫌がらせかと勘ぐってしまうが、歩き出してからも表情は明るく2人とも楽しそうだ。案外ただの構ってちゃんだったのか。

 

 歩いている間はブルーと駄弁りながらヒマを潰した。最近あんまりしゃべらなかったからかブルーは嬉しそうだ。

 

「ねぇ、これから本部に行って何するの?」

「大したことはしない。まずは参加登録と、あとはルール確認だな。参加人数が違ったりするから微妙に異なる可能性がある」

「なんかすごい技とか作戦とか編み出したりしないの? シショーだったらさ、なんかポケモンの能力を上げる“すごいとっくん”とか知ってそう」

「んなもんあったら誰も苦労しないんだよ。だいたいなんでお前はいつもすぐにそういう裏技的なものに走ろうとする? もうするべきことはリーグ前に全部済ませたはずだ。いまさら新しくすることなんかない。やることなんてレベルアップさせるぐらいのもんだ」

「えぇー。そんなんで大丈夫? なんか特別なこともした方が良くない? マスターズリーグとっておきの連携技みたいな」

「ブルー……はぁー。わかってないな」

 

 思わずため息が漏れた。考えが子供っぽいな。実際子供なんだけどね。

 

「どういうことよ? わたしダメなこと言った?」

「大事な場面こそ基本が大切なんだよ。特別なことをしようと思えば余計にプレッシャーがかかったりするもんだ。あまり慣れないことはするもんじゃない。土壇場で秘められた力が目覚めたりすることは滅多にないんだから」

「えー。なんかシショーが基本とか言うの似合わない。いっつも変なことばっかりさせるクセに」

「アホウ! あれが基本なんだよ。世のトレーナーが基本すらできてないだけ。変な気を起こさないで、とにかく今はレベルアップに集中した方がいい」

「でもっ、なんかすごいことしないとバトルで勝てないじゃない!」

 

 なんだそりゃ。お前は毎回すごいことをして勝ってきたのか? ブルーだといきなり覚醒イベントとかないとは言い切れないのが恐ろしい所だが。

 

「逆だな。すごいことしないと勝てないようじゃその時点で負け。本番で100%力を発揮するだけでも難しいことなんだ。お前はいっつも実力以上の結果を欲しがって背伸びして空回りする。そのクセは直した方がいい」

「そんなこと言われてもさぁ。あーあぁー、シショーは難しいことばっかでわたしなんかにはわっかんないわねー」

「……わかった、いい機会だからちゃんと教えてやるよ」

「さっすが、そうこなくっちゃ!」

 

 一瞬で顔色を変えて調子のいいことをのたまいやがった。人を乗せるのが上手くなったな。乗せられる自分も大概だけど。

 

「お前はよく気負い過ぎて緊張するが、いつも緊張することに対してどうやって向き合っているんだ?」

「ん? 別になんにも考えないわよ?」

 

 ケロッとした顔で言われて頭が痛くなった。

 

「じゃあ今考えて。リーグ初戦も緊張してたのがバレバレだったぞ? そんなんじゃマスターに行ったら足元すくわれる」

「……でも、緊張しない方法なんてわかんない!」

「なら、なぜ緊張するか考えてごらん。そしたらその原因を取り除く方法を考えればいいよな」

「うーん……勝ちたいって思うから? でもなくすことなんてできるの?」

「俺は緊張するなとは言ってない。そもそも緊張しない人間はいないし、緊張っていうのは必ずしも悪いもんじゃないから」

「どういうこと?」

「ブルーの言ったのは正解だ。緊張ってのは勝ちたいから起きるもの。だから勝負に真剣な証でもあるからそれ自体は悪くない。ただ、その気持ちが負けたらどうしようとか、勝てるわけがないとか、後ろ向きな気持ちに変わると体がすくんで動かなくなる。だからそういうネガティブな気持ちを消せばいい。お前の場合なら『勝ちたい』が『負けられない』、『いいカッコ見せたい』が『カッコ悪いとこ見せられない』に変わって気負いになりダメになる」

「なるほど。で、どうしたらいいの?」

 

 思わず盛大にずっこけてしまった。今自分で考えろって言ったでしょ! ブルーって自立する気あるのか時々疑わしくなる。

 

「お前は自分で考えることも覚えろ」

「それって……シショーはもう教えてくれないってこと?」

 

 急に暗い表情になるブルー。なんでそんな顔になる?

 

「俺より強くなったら誰が教えてくれるんだ? 俺より強くなるって豪語したのは誰だっけ?」

「あ、そういうこと? あ、あははー! いやぁ、そんなこといわれると照れるわね!」

 

 今度は急に嬉しそうな顔に。表情豊かで楽しそうだな。

 

「緊張との向き合い方は人それぞれ違う。誰かのマネをすればいいという単純なことでもない。人により根本の原因が違うから当然だな。参考のために例を挙げれば、例えば負けるのが怖くて緊張するなら、割り切りを覚えればいい」

「割り切り?」

「どんなに勝ちたくても負けるときは負ける。だから負けは仕方のないものとして受け入れる。もちろん投げやりになるわけじゃない。最善を尽くしての負けは仕方ないと考えるんだ。だから余計なことは忘れてベストを尽くすことに全力を注ぐようにする」

「……」

「あと負けることを恐れないこと。結局負けたらどうしようって思うから手がすくむんだろ? そんなもん、負けてもどうもしないに決まってる。命取られるわけじゃないんだからヘッチャラだろ?」

「そりゃそうだけど、極端な考え方ね。それにわたしは負けたら死ぬ状況が何回かあったわよ」

「それなら負けても死ぬだけと思えばいい。要は気を楽に持てれば勝ちなんだよ。お前の場合はだいたい高望みし過ぎて負けるから、最初から負けて元々ぐらいで気楽に挑んで、負けたら全部シショーである俺のせいにでもすればいい。これなら気が楽でしょ?」

「ら、楽だけどさすがにシショーのせいにするのって弟子としてどうかと思うわね」

 

 さすがのブルーでも少しは良識があったんだな。なんだかんだ尊敬はしてくれてるみたいだし。

 

「思うだけならタダなんだから構わないさ。本人前にして口に出すのはバカだけどな。それぐらいの気持ちの奴の方が普段通りの実力を出せる」

「シショーって図太そうだもんね……それじゃあさ、シショーはどうやってるの? みんな緊張するって言ったんだからシショーも緊張したりするのよね?」

 

 興味津々でお耳ダ○ボのブルー。そんなに気になる?

 

「俺は単純だ。とにかく自信をつけること。自信っていうのはここぞの時に1番頼りになる。小手先の技術や精神論なんかよりよっぽど信頼できる」

「えー、なんか普通ね。もっとすごい方法とかないの?」

「ブルー、お前はこれまで様々な困難を乗り越えてきただろう。そのときお前を助けたのはなんだったんだ?」

「急に何よ。そんなこと考えたことない」

 

 今日初めて気づいたが、ブルーって自分のメンタル管理とか全く考えてないんだな。子供だし仕方ないけど、これからはプロとしてリーグトレーナーになるのだからその辺もしっかりしないといけない。

 

 元々強気なのに気分の浮き沈みが激しいのも気持ちの揺れを抑える術を知らないからなのだろう。いまさらになってブルーが心配になる。

 

「ブルーはどうにも土壇場で気負ったり、緊張したり、精神的に弱いのだと思っていたけど、案外メンタルコントロールが下手くそなだけなのかもな。もっと早く教えれば良かった」

「下手くそって……言い方ってもんがあるでしょ」

「お前さ、ギアナに飛ばされた時、真っ先に出したポケモンはなんだった? 最も付き合いが長くて強さに自信のあるポケモンを選んだんじゃないか? 違う?」

「そういえば……」

 

 ブルーはこの1年、場数だけは踏んできている。だからその経験は活かすべきだ。特にギアナを1人で生き抜いた経験は大きな財産になる。

 

「思い当たる節はありそうだな。人間最後に頼るのは自分の力、特にその中で最も自信のあるものと決まってる。土壇場になれば頭は真っ白、危なっかしい小技なんか使えない。自信がなければ失敗しそうで怖くなって臆した気持ちに負けてしまう。ここぞの勝負強さを支えるのは自分の力への信頼だけ。自信が持てれば負けることなんて考えないから変な緊張だってしない」

「……たしかにそうね。あの時は本当に極限状態だった。何も考えられなかったわ。たしかに、なんとなくわかったかも。でもどうやったら自信がつくの?」

「それは簡単。とにかく努力すること。努力に努力を重ねて、これで負けたらもう仕方ないと思えるぐらいに努力する。そしたら負けないよ。自信と表現すれば形のないものに思えるけど、結局人は形のあるものにしか縋れない。なんとなく自信があるみたいな曖昧な状態じゃ、生死を別つような場面じゃ紙切れみたいに飛んでいってしまう。努力と言うはっきりした証がお前の自信になり糧となる」

「シショーってやっぱりタマムシの頃からハードな人生送ってるのね」

「ほっといて。とにかくそういうわけだから、今はとにかく自信をつける意味でもレベル上げが重要なの。できることは全てやったと思えるまで徹底的にレベルを上げるのが今の最善の行動だ。わかった?」

「なるほど、これで上手く最初の話に戻ってくるわけね。シショーっておしゃべり上手よね」

「どうも」

 

 こんな調子でしゃべっているとみゅーが背中に乗っかってきた。顔を見ると眠そうにしている。

 

「レイン、みゅー眠くなったからここで休憩させて。何かあったら起きるから」

「ボールに戻る?」

「ここがいい」

 

 みゅーには興味のない話だったのだろう。なんかごめん。

 

 眠くても俺にはくっついていたいところはさすがのかわいさだ。みゅーの体重なんてほとんど感じないので好きにさせてあげた。ほどなくしてすぐにスヤスヤ眠り始めた。だが大して時間も経たないうちに目的地が近づいてきた。

 

「あ、そろそろ着くわね。みゅーちゃん間が悪かったわね」

「仕方ない。このまま寝かしておこう」

 

 セキエイ高原の頂、そこにそびえたつマスターズリーグ最高機関、リーグ運営本部。そこに俺達は足を踏み入れた。エントランスは吹き抜けになっており、そこには歴代の名立たるトレーナーの絵画や彫像が飾られている。厳かな雰囲気に思わず姿勢も正してしまうその場所は、トレーナーにとってはまさに聖地といっても過言ではない。

 

「なのにシショーって全然いつもと変わんないわね。もう少し感動とか、すごいなーとか、なんかそういう感想ないわけ?」

「来年になったら俺も飾られているのかなー。……ってのは冗談で、べつに自然体でいるようにしているだけで、けっこう雰囲気は出ていてさすがに総本山なだけはあるなーとは思ってるぞ。ほんとほんと」

「冗談の件がマジで、後半がウソくさく聞こえる。みゅーちゃんが寝てるし、オーラ読まれないからって祝勝会の時からウソばっかり言ってるんじゃないでしょうね」

「それは聞き捨てならないの」

 

 ガバリと背中のみゅーが起きた。いきなり耳元で声を出されてビクッとして驚いてしまった。

 

「みゅー!? いつの間に起きてたんだお前。起きるの早くない? そういやボールに戻らなくていいのか? バトルできないけど」

「今起きたの。みゅーは早起きだよ。ボールの中つまんないからレインといる。全然バトルしないし」

 

 お前はいつ特性が変わったんだ? いや、本当に“はやおき”なら助かるけどさ。

 

「別にいいけど、ボールの中にいないならみゅーはバトルがあっても絶対出れないからな」

「……いいもーん」

「言質とったり」

「え、何? ゲンチってなんなの?」

「シショー、大人気ないわよー。こんな子供相手に言質とか言わない」

 

 あんまりムダ話ばかりしているわけにもいかない。ブルーとみゅーは適当にあしらい、とりあえず受付に行くことにした。

 

「ようこそ、ここはリーグ本部受付です。本日のご用件は?」

「参加登録とルールの確認ってところですね。お願いできますか」

「では登録を行う間にご説明させて頂きます」

 

 登録は滞りなく終わり、説明も聞き終わった。多少ポケモンリーグとは異なる部分があったので整理しよう。

 

 ルールは同じ『公式ルール』が適用され、違うのはバトルの方式だ。

 

 まず参加人数がポケモンリーグの約半分、100人ちょいというところ。なので試合数は減った人数と同じ数減るので100程少なくなる。そのため日程は割とゆったりしていて、全部で7回勝てば優勝ということになる。

 

 トーナメント方式は同じだが毎回のシャッフルはなし。つまり事前に相手は把握できる。

 

 さらに大きな違いとしてマスターではフィールドを選べるらしい。具体的には選手は全員参加する時点で1つフィールドを決めて申請し、バトルフィールドは互いに選んだフィールドが両方反映される。例えば炎使いと水使いなら炎と水の2つの性質を併せ持つフィールドになる。なおトーナメント中に自分のフィールドを変えることはできない。

 

 ルールがここまで違うのは恐らく求めている能力が違うのだろう。参加者の顔ぶれの入れ替わりがより激しいポケモンリーグではあらゆる状況、相手に対応する普遍的な強さが追及される。一方マスターズリーグでは人数も入れ替えも少なく互いに手の内を知り尽くされた中で勝利する強さが求められる。再戦の機会が多くなり研究して対策を立てる重要度は跳ね上がっているだろう。

 

 俺にとって最も頭を悩まされる問題はフィールドの選択だ。タマムシでワタルがドラゴンタイプばかり使ってチャンピオンになっていると聞いた時からずっと不思議だった。だがここに来てなぜタイプ統一がメジャーなのかがようやくわかった。やっと謎が解けた気分だ。

 

 タイプがバラけているとフィールドの選択はかなり難しく、上手に恩恵を受けにくい。例えば自分の場合、グレンに合わせてほのおタイプを選べばアカサビの弱点が重くなる。途中で変えられないので対策もされやすい。俺にとってはかなり厳しい。

 

 悩ましいので一旦フィールドの選択は保留して、まずは別件で確認したいことを尋ねた。

 

「ここの設備はバトルフィールドを含め自由に使えるんですよね?」

「ええ。今あなた方のトレーナーカードはマスターランクに更新されています。それをご提示頂ければ自由にご利用頂けますよ」

「ならここでフリーの対戦をしてもいいんですね? 外と同じようにバトルできて、特に制限もないですよね?」

「ええ、構いません」

 

 ……よし、勝った。

 

「シショー、何する気?」

「大したことじゃない。ちょっとした余興をするだけ」

 

 にんまりと笑みを浮かべると聞き覚えのある声が背後から耳に入った。非常に心当たりのある声だ。

 

「おもしろそうな話をしているわね。私にも聞かせてくれないかしら、レインくん?」

「人間マルマイン……!」

 

 背後から感じる圧倒的なオーラと受付の人の口から漏れた不吉なワードで心当たりは確信へと変わる。イヤイヤながら振り向けば、予想通りの人物が長い髪をかきあげながら立っていた。顔から笑顔が消え去り、自分でも表情筋が引きつるのがわかった。

 

「ナツメ……! どうしてここにっ!」

「優勝したから祝辞の1つでもくれてやろうっていう私の配慮がわからないの?」

「そんな気はさらさらないって顔に書いてあるぞ」

「あら、ちゃんとあなたが約束を守るか心配してリーグを見守っていてあげたのに、その私に対して随分な言い草なんじゃない? レインくん、一応聞くけど約束……まさか忘れたわけじゃないわよね? 本気で忘れているなら……」

 

 俺がお前の行動なんて知るわけないだろ! 見守ってくれと頼んだ覚えもない! だがそれよりもナツメが怪しい動きを見せたので慌てて約束について答えた。

 

「いや覚えてる覚えてるっ!」

「なら久方ぶりに私と再会したのだからもっと喜びなさい」

 

 相変わらずの高飛車っぷりだ。そのくせ、きっちり『くん』呼びは継続されていて逆に怖い。本気過ぎだろ。あーもう突然過ぎて頭が混乱する。

 

 いや待て冷静になれ。そうだ、よく考えればおかしいじゃないか。ナツメはなぜここにいる? ありえないはずだ。あいつは俺のことは予知できないと言っていた。油断したところを不意打ちするのが当たり前の感覚になっていたがこれは明らかにヘンじゃないか?

 

「ナツメ、なんで俺の居場所がわかった? 予知はできないはずだろ?」

「別に難しいことじゃない。確かにあなたのことはわからないわ。でもね、あなたの横にいる子の未来は簡単にわかる。それに参加登録のために一度は必ず受付に来るはずでしょう? だから予測は難しくないわ。……それでも予知できないということがこんなに不安だなんて思いもしなかったけどね。全く、あなたは罪な人」

 

 予知できないから対戦する時まで安全と高を括っていたが甘過ぎたな。フルアタノーキンのイメージが強過ぎてナツメを舐めていた。なんで俺に関することにはよく頭が回るんだっ。

 

「じゃあ未来が変わらないように俺とは関わらなければいいんじゃないか?」

「イヤ! 絶対に友達にする。言っておくけど、逃げようなんて思わないでね。そうなれば実力行使も辞さない。……こんな風にね!」

「待て! 早まるなっ! この流れはやばいいいいだだだだだだ!!!!」

 

 ナツメ十八番の“ねんりき”攻撃! エスパータイプにはこうかはいまひとつになるんじゃなかったのか?! 俺ってエスパータイプってことでいいんだよな?! それとも半減してこれなのかっ。ならエスパーじゃなければ耐えられないわけだ……こんな時にイヤな事実に気づいてしまった。

 

 こいつは攻撃を耐えている俺のことをいじめがいがある人間だとか思ってそうだ。友達になる気が本当にあるのか疑わしい。

 

 このままだと前回の焼き直しだ。またもやエスパー地獄の幕開け……そう諦めた俺に救いの手が差し伸べられた。……救世の美神みゅーちゃんっ!

 

「みゅみゅ、やめてっ」

 

 パリン!

 

 超能力が解除された。力ずくで攻撃を相殺したようだ。みゅーの“ねんりき”も負けていない!

 

「私のねんりきを破った……?  あなた何者?」

「みゅーっ!!  助かったぁ」

 

 みゅーはナツメとの間に割って入って俺を守るように立ちはだかった。この時のみゅーの頼もしさは筆舌に尽くしがたいものがあった。もはやみゅーの後ろ姿が輝いて見えた。

 

「レインをいじめないで……これ以上するならみゅーが相手。レインはみゅーが守るの」

「みゅー、俺のために……でも相手はあのナツメだぞ、大丈夫か?」

「みゅ、任せて。みゅーはあれより数段強いの。それに誰が相手でも全力で守ってあげる。レインはいつも優しくしてくれるから」

「みゅー……ありがとッ!」

「うみゅーっっ!? し、幸せ……」

 

 感極まって反射的にみゅーを後ろから全力で抱きしめていた。それ以外の行動が選択肢から消えていた。ナツメの態度が酷過ぎるのでみゅーの優しさが際立って輝いて感じられる。

 

「大げさね。今のはほんの挨拶代わりよ。本気で手首を折ろうってわけじゃないわ。……レインくん、いつまでそうやって抱きついているつもり? いい加減見苦しいわよ。あなたは誰にでもすぐに抱きつく変態なの?」

「うるさい! これは仲がいい友達同士のスキンシップなんだよっ。……あっ、ごめん。ナツメが知るわけなかったか」

「はぁ?」

 

 プルプル少し体が震えたが“ねんりき”はかけてこない。みゅーちゃんガードがかなり効いているようだ。

 

「あれ? ホントにみゅーには勝てないみたいだな。お得意のねんりきはかけないのか、ナツメ?」

「覚えてなさい……!」

「シショー、みゅーちゃんがいると急に強気ね……」

 

 みゅーとの抱擁に水を差されてとっさに言い返したが、思いのほかナツメの弱点を突いていたようだ。他人……というか俺が誰かとくっついているのは腹が立つらしい。仕返ししたい気持ちとナツメを出し抜いた優越感で少し調子に乗ってしまった。

 

「おっかしぃなぁ。見苦しいとか言ってた奴がマジマジとこっちを見てる気がするなぁ」

「嫌味な人間ね。何が言いたいの?」

「つんけんしちゃって。本当はもっと見たいんだろう? 自分もこんなふうにされたいなぁーって思ってるんだろ?」

「レインくんは一度死んでみたい、そういうことかしら?」

「素直じゃないなぁ。本心ではこうやって肌をぴったり合わせて全身で幸せなオーラを感じてみたいんでしょ?」

 

 ギューッとみゅーを抱きしめながら顔もぴったりと寄せ、全身くっつけて仲の良さを最大限アピール。そしてみゅーにはお礼も込めてありったけの愛情を込めた。

 

 こっちを見るナツメの表情は全く変わらないがそのオーラをなんとなく感じ取れ、驚くべき程の凄まじい怒気を感じる。へへーん、それでも怖くないもんねー。

 

「みゅぅぅぅ~~」

「え?」

 

 顔が真っ赤になりグルグル目を回してみゅーは気絶していた。

 

 (。´・ω・)ん?

 

「覚悟はいいかしら?」

「あの、ナツメもおんなじように抱っこしてあげるからそれで手打ちって言うのは?」

 

 まさに起死回生の一手。自分でも冴えていると思った。

 

「死ねっ!! 変態死ね!!」

「シショー、ご愁傷様」

 

 レインは みぎてが うごかなくなった

 




バトルに関するところはややテコ入れがあります
具体的には攻撃を交換先で受けられ、死に出しは無償降臨できるようにしました
つまりゲーム通り!
なのでそれに合わせて辻褄合わせで一部本編の内容が変わってます
そんなに気にする方はいないと思いますが念のためここに記しておきます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。