仮面ライダーW メイドはU   作:雪見柚餅子

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最終話です。
今までこの作品を読んでいただきありがとうございました。


38話 Lにさよなら/前に進むために 後編

「はあっ!!」

「ぐっ!?」

 

 アクセルの蹴りがトライセラトップスの胸にヒットする。大量のマスカレイドを相手にしながらだったためてこずったものの、今はもうマスカレイドは数える程度まで減っている。しかしまだ安心はできない。

 所長(亜樹子)はもうリボルギャリーまで辿り着いただろうか…。焦りは消えない。

 

「何…?」

 

 それ故にアクセルがアンノウン・ドーパントの姿を見た時に、思わず動きを止めたのは仕方が無かったのかもしれない。

 アンノウン・ドーパント()は伸ばした布でアームズとパペディアーの体を縛り、そのまま投げ飛ばす。そして早苗に近寄ると、その足に乗った瓦礫を持ち上げる。先程までは全く動かなかった瓦礫が、簡単に取り除かれる様子を見て、雪の目が点になる。

 いくらアンノウンメモリが能力特化のメモリと言えど、ドーパントはいずれも人間を超えた身体能力を発揮することが可能なのだ。これくらいは簡単だろう。

 

「おらあああ!!」

 

 アンノウンが早苗達に注意を向けている隙に、アームズが腕を銃に変え、弾丸を連射してくる。しかしその弾丸の全てをアンノウンが伸ばした布に防がれる。

 今度はパペディアーが指先から糸を伸ばして、再び雪を捕らえようとするが、何故かその糸はパペディアー自身の意思通りに動かず、まるで見当違いの方向へ向かう。

 これらは全てアンノウン・ドーパントの固有能力。先程、布で捕らえた際に針を撃ち込んで、アームズ達の能力がまともに働かないようにしたのだ。

 そして今度は右腕を伸ばして衝撃波を放ち、アームズ達を吹き飛ばす。

 

「おい!」

「竜君!?」

 

 声を上げたアクセルに反応する亜樹子。アンノウンもどこか溜息を吐いたような挙動を取る。

 

「あのね竜君…、これは違うんだよ、初ちゃんはその…」

「いや、良いんだ所長」

 

 初が自分達を助けようとしたことを伝えようとしてしどろもどろになる亜樹子の肩に手を置く。そしてアクセルは初に視線を向けると、

 

「とりあえず、このまま所長達を守ってろ」

 

 そう言って、近くにいる3体のドーパントを睨みながらトライアルメモリを取り出す。

 アンノウンも静かに頷くと、布を亜樹子達を包むように広げ、周囲を警戒する。

 

〈TRIAL〉

 

 そしてアクセルはその全身を青く染め上げると、目にも止まらぬスピードで走り出した。

 

 

 

 

 

「だーっ、もう!!」

 

 Wの片割れ、翔太郎は叫びを上げていた。

 リキッド・ドーパントに有効な熱攻撃が可能なヒートジョーカーで相手しているものの、思いのほかスピードが速く、中々有効打が入らない。ボディメモリをメタルやトリガーに変えればスピードが遅く不利になる。せめて動きを封じることが出来れば…。

 その間にもリキッドは形状を変え、様々な攻撃を繰り出してくる。腕を鞭の形にして殴り掛かる。近くにあるドラム缶を投げ飛ばす。体に絡みつく。厄介なことこの上ない。

 

『翔太郎、ここはエクストリームを使おう』

 

 この状況を打開するためフィリップが提案する。

 

「なるほどな、分かったぜ」

 

 翔太郎も了承し、エクストリームメモリを呼び出す。

 亜樹子が初に気を取られている内にエクストリームメモリはフィリップの体を取り込み、Wの元へと飛来した。

 

〈XTREME〉

 

 そしてソウルサイドをサイクロンに変更したWのドライバーと一体化し、その姿を緑、銀、黒のサイクロンジョーカーエクストリームへと姿を変える。

 

「貴様…、それはっ!!」

 

 リキッドもこの姿を知っているためか警戒する。

 エクストリームは他のメモリの能力を打ち消す力を持つ。無論、一部の例外はあるが、その能力は強力無比と言うほかない。

 

「『さあ、お前の罪を数えろ!!』」

 

 そしてWは盾であるプリズムビッカーに4本のメモリを順番に装填していく。

 

〈CYCLONE MAXIMUM DRIVE〉

〈HEAT MAXIMUM DRIVE〉

〈LUNA MAXIMUM DRIVE〉

〈JOKER MAXIMUM DRIVE〉

 

 そしてプリズムビッカーの中心部に集まったエネルギーを解放する。

 

「『ビッカーファイナリュ―ジョン!!』」

 

 放たれたエネルギーは光線となって四方八方からリキッドを襲う。リキッドも体を変形させて回避しようとするものの、避け切ることは出来ず撃ち抜かれる。

 そして爆発と共に残されたのは変身者である男と砕け散ったメモリのみであった。

 

 

 

 

 

 工場内を駆け巡る青い一閃。アクセルトライアルの一撃が、3体のドーパント達を圧倒する。しかし連戦で疲労がたまっているのか、アクセルトライアルの動きはどこかぎこちない。そして一瞬、アクセルトライアルの動きが止まった時だった。

 

「今だ!!」

 

 最も力が弱いパペディアーがアクセルに組み付く。無論、その程度で倒されるわけでは無いが、動きが封じられたのは確かだ。そこへトライセラトップスが棍棒を振りかぶる。

 

「喰らいやがれ!!」

 

 アクセルトライアルの装甲は薄い。この一撃をまともに受ければ大きなダメージは避けられない。アクセルは何とか脱出しようとするものの、すぐ目の前にまで棍棒が迫る。

 だがその棍棒の動きが突如として止まる。

 

「…危なかったですね」

 

 アクセルを救ったのはアンノウン。彼女が伸ばした布がトライセラトップスの動きを封じていたのだ。

 さらにアンノウンはアクセルから振り落とされたパペディアーと倒れていたアームズにも布を伸ばし、動きを封じる。

 

「さっさと決めてください」

「言われなくてもそうするつもりだ」

 

 アンノウンの一言にぶっきらぼうに返すと、ドライバーからトライアルメモリを抜き出しボタンを押す。それを見たアンノウンはドーパント達を空中へ放り投げる。

 

「はあっ!!」

 

 トライアルメモリを放り投げ超加速したアクセルは、空中で身動きの取れないドーパント達に連続で蹴りと放ち続ける。

 

「9.3秒。それがお前達の絶望までのタイムだ」

 

 そして落下したトライアルメモリをキャッチしたアクセルの宣言と共にドーパント達は爆散し、メモリが排出されて砕け散る。

 残されたアクセルとアンノウンも変身を解き、工場内を沈黙が包む。

 

「おい、大丈夫か?」

 

 そこへリキッドを倒した翔太郎とフィリップも駆けつける。その姿を見た初は手に持ったアンノウンメモリに一度だけ視線を落とすと、すぐに翔太郎達の前へ進む。そして一言、

 

「これ壊してくれませんか?」

「な、お前これ…」

「…私には必要ないので」

 

 翔太郎は何があったのかは知らないため、初がアンノウンメモリを持っていることに驚きを見せるものの、その顔を見て静かに頷く。

 そしてメモリを地面に落とすと、靴で思い切り踏みつける。

 

―ガシャン―

 

 思いのほかあっさりとメモリは砕け散った。

 

「それじゃあ、警察に行きますか…」

 

 初は静かにそう呟く。初は執行猶予を受けている身である。だが今ガイアメモリを使用した。それが罪であることは十分わかっている。それ故に出た言葉だった。

 だがそんな初を止めたのは雪だった。

 

「ねえ…、初さん。これからも会って良い?」

 

 雪はガイアメモリを使うことが犯罪であることも、そして初が犯罪を犯した身であることも知らない。ただ、初が身を賭して自分達を守ってくれたこと。それだけが全てだった。

 思ってもみなかった言葉に思わず初は固まる。そんな初に照井も声を掛けた。

 

「確かにガイアメモリの使用は犯罪だ。だが今回は正当防衛とも考えられる…」

 

 今回はガイアメモリを使用した犯人たちから早苗達を守るためにガイアメモリを使用したのだ。正当防衛には十分成り得る。

 

「それに、今回の事件は仮面ライダーが解決したものとして報告書を出すつもりだ」

 

 それは言わば『今回の件には目を瞑る』と言っているものだった。

 呆然としたものの、にこやかな笑みを浮かべる亜樹子から視線を逸らし、初は少し考えてから早苗と雪も言った。

 

「一つだけ条件が有ります」

 

 その言葉に早苗は唾を呑む。今まで何もしてやれなかったのだ…。それこそ恨まれても当然の身。だからこそどんな要求でも受け入れるつもりだった。

 

「携帯電話が壊れたので、新しい奴を一緒に選んでくれませんか?」

 

 無いと連絡に困りますよね、と出た言葉に早苗は呆気にとられる。しかしすぐに笑みを浮かべて、初を抱きしめた。

 

 

 

 

 

『長かった二宮初の事件はやっと終わりを告げた。

 照井が目を瞑ってくれたおかげで、彼女が罪に問われることは無かった。

 早苗さんは左足を怪我して病院へと運ばれたが大事には至らず、2週間程度で退院できるそうだ。そして二宮初、彼女も頻繁に見舞いに行っているらしい。そして雪ちゃんとも、新しく買った携帯電話で連絡を取り合う仲だという。ずっと断たれていた母親との思い出を、そして新しい家族との絆をこれから作っていくのだろう。

 そう言えば彼女の新しい勤務先も決まった。ちょうど店員を探していた店長(サンタちゃん)に話を出してみたら、あっさりと彼女を雇いたいと言ったのだ。実際、彼女は真面目に仕事をこなしており、かなり重宝されているらしい。

 何はともあれ、彼女のこれからの道が幸せに溢れたものに祈るばかりだ』

 

 

 

 

 

―ニャアオン―

 

 仕事に向かうべく初がアパートの扉を開けると、そこにふてぶてしい態度で居座る灰色の猫―ミックが居た。初のアパートはペット禁止のため入れることは出来ないのだが、何故かここ最近よく姿を見る。

 仕方なく一度部屋に戻り、いつだったか手に入れたキャリーバッグを持ってくると、ミックを抱え上げる。

 さすがに部屋に置いておくわけにはいかないし、どうせ職場もペットショップなんだから構わないだろう。

 そんなことを考える初をじっと見つめるミック。その瞳には確かに笑みが映っていた。




新しい就職先はサンタちゃんのペットショップでした。
実際にこれは初期段階から考えていました。ちなみに次の候補は、フランク白銀の喫茶店です。

なお今後に関してですが、気が向いたら番外編を書くかもしれません。
予告した仮面ライダーウィングもいつ書くかは未定です。予告だけで終わるかもしれません。

改めてこれまでこの作品にお付き合いいただきありがとうございました。

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