少女と奏でる、竜の詩。   作:奈々歌

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誤字、脱字ありそう……。
今回が一番長くなったかな?


Act.0‐4

【ノエル】

「そっか、なら食べ方とかも教えておくよ。初めてだもんな」

【夜架】

「ええ、助かりますわ」

 

 

 †

 

 

 ロードしますか?

 →はい。

 いいえ。

 

 ……。完了しました。

 

 

 †

 

 品を受け取った後、二人分の代金をおじさんに渡す。ついでに隣の売店にも寄り、飲み物も買った。俺が頼んだのは少し甘めな紅茶。ここでも夜架は同じものを頼んでいた。

 

 買物を済ませると、降りた場所の反対側に乗り継ぎの汽車が到着していた。乗降口から数人の乗客が降りて来るのを見送ると、夜架を先に行かせる。

 レディーファーストってやつだ、初めて意識して行動に移したけどな。

 

 今度の車両は席が二人掛け。

 向かい合わせではない、隣同士なのだ。

 夜架――美少女が俺の隣に座る。これは男どもに羨ましがられること必至だろう。

 だが、俺は夜架に食べ方を教えると口約束したのだ。これぞ役得というもの。決して狙った訳ではないからな?

 そもそもこの車両がこんな席だったことなんて知らなかったのだから。

 

【ノエル】

「えーっと、隣になるけど……平気か?」

【夜架】

「平気、と言いますと? 何か問題がありますの?」

【ノエル】

「いや、ほら。俺みたいな男の隣なんて……」

【夜架】

「ああ、そういうことですか。もしそれが嫌でしたら、先程も向かいになんて座りませんわ。それがわたくしからの答えですの」

【ノエル】

「うーん、まぁ、それもそうか……」

 

 夜架が気にしないというならいいよな。いいよね? ここで運を使い果たしたとかないよね? 大丈夫だよね? 世の中のモテ男君たち、問題ないよね?

 

 今回は夜架を窓際の席に。俺は通路側の席に座る。意外にも足元のスペースが広く、それぞれの荷物を置いても邪魔にはならなかった。

 線路と車輪が軋み合い、ゆっくりと汽車が動き出す。車窓から駅が遠目に見える場所まで進むと、買ったサンドイッチで早めのお昼とすることにしていた。

 

【ノエル】

「この包装紙を取って、なるべく挟んである具を落とさないようにこの辺から――」

 

 夜架の手にあるサンドイッチの包装紙を解いてあげると、食べやすい部分を教える。すると可愛らしく、小さく口を開けて一口。

 

【夜架】

「……。初めて食べましたけど、美味しいですわね」

【ノエル】

「夜架の口に合って良かったよ。食文化の違いってのもありそうだったし」

【夜架】

「食材は同じものを見たことがありますわ。でも、こちらでは使い方が違いますわね。このパンと呼ばれるものは小さい頃に一度だけ、口にしたことがありますの」

【ノエル】

「へぇ。でも、これって夜架の国では珍しいものになるよね? それを食べたことがあるって、かなり高い家柄だったりする?」

【夜架】

「まぁ、そうですわ。ですが、あまりわたくしには関係の無いことですわ」

【ノエル】

「……聞いちゃ、悪かったか?」

【夜架】

「いえ、気にしていませんわ。どうでもいいことですから」

 

 そこまで言うと、夜架は黙々と食べ進めていった。

 

 そんなに多く買ったわけではない。ほんの数分で二人は食べ終わる。

 包装紙は夜架から受け取り、俺がまとめて置いて、後で捨てることにした。

 

 

 †

 

 

【夜架】

「……少し、眠りたいですわね」

 

 お腹も満たされ、紅茶も飲み干し、一息をつくと夜架はそう言った。確かに昼過ぎは眠たくなるもんな。俺も睡魔が段々と戻って来ているし。

 

【ノエル】

「流石に疲れた?」

【夜架】

「多分、そのようですわね。これに乗る前は国を渡る為に船にも揺られて来ていますから」

【ノエル】

「でも、そのままだと首痛くしそうだしなぁ……。俺、あっちの席に移ろうか? そうすれば横になれるし、壁に寄り掛かるより多少はマシに―――」

 

 食べ方は教えた。もう俺が隣にいる口実はなくなったのだ。後は、夜架へ寝床を提供しよう。俺みたいな童〇に無防備な姿や寝顔を見られることに女の子は抵抗があることだしな。

 夜架が寝ている間は席を変えて視界から消えておこう。うん、それが良い。駅についた頃に起こしにこよう。その時に少しだけ見てしまうのは仕方がないよね?

 

【夜架】

「――ここ、お借りしますわね」

 

 ノエルの言葉を最後まで聞かず、夜架は横になる。そう、横になったのだ。

 彼女の姿勢からして、頭はノエルの太ももに預けられることに――。

 

 席を立とうと座席に手を置き、腰を少し浮かした所での出来事。

 これは膝枕というものでは? 視線を落とすと何とも可愛いお顔があったのだ。

 

 おい。おい、おい。

 おいこら、待て、夜架さんよ。

 

【ノエル】

「(幾らなんでも心を許しすぎなのではありませんかっ!?)」

 

 香水などとは違う女の子のほんのり甘い不思議な匂い。鼻にふわりと触れ、ドキッとしてしまう。夜架がちょっとでも動くと黒い髪が膝の上でさらさらと流れる。

 

 これはやばいぞ、おい。

 

【ノエル】

「よ、夜架っ!? 流石にこれは――」

【夜架】

「すぅすぅ……。うぅん」

 

 もう遅かったようだ。寝息が聞こえる。

 

 ……うん、これは仕方がないな。

 仕方がないんだぞ? 夜架ファンよ怒るなよ? 確か一番人気あるんだよね?

 個人的には黒髪キャラって人気率高いと思うんだ。夜〇とか〇三とかね。まぁ、性格の特殊な子が多い気もするけど。

 

 今の状況のおかげで眠気は吹き飛びました。さて、どうしたものか……。心を無にして、平常心で、本を読もう。うん、それがいい。

 

 夜架を起こさないように気をつけながら、鞄へ手を伸ばす。何時でも取りやすい位置、立て置いた鞄の上に乗せて置いといたのは助かった。

 本を開いてぺらぺらとページを捲り、枝折りを抜き取る。

 この先の展開が気になっていたんだよね、えーっと……。

 

 こんなこと初めてだったはずなのに、どこか懐かしさが抜けなかった。体を包む甘い香り。この温もり。誰にも邪魔されない二人だけの時間――。

 

 ………。

 ……。

 …。

 

 それからは静かな時間が続いた。

 二人以外の乗客は他の車両らしく、今この空間には可愛らしい寝息と紙の擦れる音だけが静かに聞こえる。

 

 汽車が線路の継ぎ目でほんの僅かに跳ねると、カチャリと小さく音を立てて夜架の荷物の一つが揺れた。

 鞄には入らない手持ちの荷物。何やら細長い物だ。

 

 何故か「それ」が視界に入った時に懐かしさを感じた。眠る少女からも感じた懐かしさ。だけど、二つの感覚は似て非なるもの。

 

 懐かしいけど、思い出したくないこと。

 懐かしいけど、思い出せないこと。

 …………。

 ………。

 ……それが何か、結局は思い出せないままだった。

 

 

 †

 

 

 華が咲き乱れる景色。

 あの人との思い出。

 これはもう昔のこと――。

 

 短い間だったが、鮮明に覚えているあの人と見た景色。あの人の顔。あの人の声。忘れることはない。「あの人」はわたくしに手を差し伸ばしてくれたもう一人の大切な人だから。

 

  拠り所を失った。

 あの人も去ってしまった。

 残ったのは思い出という形のない記憶だけ。

 けど、失うこともない。去っていくこともない。

 わたくしさえ忘れなければ、いつまでも、いつまでも――。

 

【???】

「……か。夜架」

 

 体を誰かに揺すられている。

 懐かしい夢を見ていた気がした。

 温かくて、悲しくて。まだわたくしが「人」でいられた頃の夢。

 

【ノエル】

「そろそろだよ。起きて、夜架」

【夜架】

「……ノエル、さん?」

【ノエル】

「随分とぐっすりだったね、そんなに疲れていたかい?」

 

  目を覚ますと、初めに映ったのは前の背もたれ。声のする方に顔を向け、仰向けになると、瞳に映ったのはこの国に渡って来てから出会った男の人。わたくしと「似ている」人だ。

 

【夜架】

「いえ、そんなことはありませんわ。……ただ、少し昔の夢を見ていましたの。久しく見ていなかったのにですわ」

【ノエル】

「そっか。ああ、そうそう。今度会えた時でいいからさ、次は夜架の国を教えてよ。どんな暮らしをしているのか興味があるからさ」

【夜架】

「あまり良い思い出はありませんが……分かりましたわ。夢の話も含めて『思い出せる』よう、お話致しますわ」

 

 夜架は一度目を閉じて逡巡していたようにも見えた。けれど、横になっていた体を起こしながらそう答える。

 どこか含みのある言葉のような気もしたけど……。

 

 もう少しこの状態を堪能したかったが、目的の駅が近い。

 まぁ、だから起こしたんだけどね? 一応言っておくが、何も変なことはしていないからな? 寝起きのとろんと潤んだ瞳が凄く可愛かったけど。

 

 そろそろ降りる準備をしようか。

 読んでいた本を今度は鞄の中に仕舞い、まとめた包装紙も入れる。夜架の方は、特に何も準備は必要なさそうだったが、到着したら、即、両替所に連れていくと伝える。財布は手に持たせて置いた。

 

【ノエル】

「そう言えば、夜架が言っていた『似ている所』って何だったの?」

 

 唐突だったようにも思えたが、隣で軽く体を伸ばしていた夜架に聞く。

 

【夜架】

「――今のノエルさんは聞かない方が宜しいかも知れません。また何時か、話す機会がありましたら、その時にでも」

【ノエル】

「……? あぁ、分かった」

 

 ノエルは首を傾げたが頷く。

 話せないことではないようなので、聞ける日が来るのを素直に待つことにした。そうすれば、またこの子にも会えるということだから。

 

 汽笛が鳴る。窓からは大きな白い城壁が見えて来ていた。

 その城壁に取り囲まれているのが城郭都市、アティスマータ王国。

 やっと到着した。

 日が昇り、沈みかけている。

 その間、殆どの時間を汽車で過ごしていたのだ。長かった……まぁ、嬉しかったからいいけど。

 

 王国へと続く線路は城壁を境にして途切れている。だが、ゆっくりと汽車専用の門が開いていき、中へと続く道が現れた。

 速度を落とした先頭車両がゆっくりと入って行き、車輪と車輪の間から大きく息を吐くように蒸気を噴かせると停車する。

 

【夜架】

「降りましょうか」

【ノエル】

「そうだな」

 

 駅に到着し、夜架は荷物を持って立ち上がった。通路側のノエルも席を後にして、乗降口に向かう。今回も荷物は持ってあげたぞ?

 あの細長い荷物について聞いてみようか思い悩んだが、やめておこう。心の中で無意識に不思議とそう思えていた。

 

 駅に降り立つと一直線に夜架を連れて両替所へ引っ張って行き、通貨をこちらのものに交換させる。

 よし、これで大丈夫だろ。いつも面倒を見れるわけではないからな。

 

 二人は書いてある案内に従いそれぞれの出口に向かう。この駅には三カ所の出口がある造りになっており、国の中央、左右へと抜けることが出来る。

 

【ノエル】

「夜架は住む場所は決まってるよね?」

【夜架】

「ええ、学園の女子寮の一室に」

【夜架】

「……学園へ向かう出口はあちらですわね。それではわたくしはここで失礼しますわ」

【ノエル】

「ああ、また学園でな」

 

 夜架は小さく頭を下げ、ノエルから荷物を受け取ると反対側の出口に向かう。

 

 これまでの駅とは違う、多くの人が行き交う王都の駅。歩いていれば肩が当たってしまうこともあるだろう。でも、その中を出口に真っ直ぐに歩いて行く夜架。

 

 誰にも接触することがない。ぶつかることのない……という表現では物足りない。あんなにもひらひらとした服を着ているにも関わらずに、まるで周りの人々が風に乗った木葉のようにすり抜けていく。

 

 彼女の存在に気が付いていないようにも見えた。

 けど、それは流石に気のせいかな?

 

【ノエル】

「なんか、不思議な子だったなぁ……」

 

 夜架が町中に歩いて行く背中を見届けた後、ノエルも自身の家への帰路に着く。もう日暮れだ。日が落ち切る前に、少し急ごう――。

 

 

 †

 

 

 セーブしますか?

 →はい。

 いいえ。

 

 ……。完了しました。

 




このSSのあらすじって、800文字もあるんですよね。長すぎるなぁ、と自分でも思いました笑

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