2017/12/25 加筆修正しました。
「せいっ!」
ベティヴィエールは咲夜達に切りかかる。彼は怒っていた。目の前で〝大切な友人が殺された〟のだ。憤怒しない方が無理な話である。最も、憤怒のあまり〝重要な事〟を失念していたが。
「「・・・」」
咲夜達は一瞬で目の前から消え、ベティヴィエールから離れた所に出現する。それを見てベティヴィエールは思わず舌打ちする。
「やはり・・・!時を止めているのか・・・!」
彼の考察通りである。十六夜咲夜の能力は『時間を操る程度の能力』。操る、と言っても彼女は基本時を短い間しか止めていない。〝時を操る〟という〝禁忌〟を扱う能力なのだ。無理に使えば彼女は廃人と成り果てるだろう。
「短い時間だろうと脅威には変わりないか・・・ッ!」
そしてもう一人。七色の人形遣い、アリス・マーガトロイド。彼女が放つ魔法がベティヴィエールを狙っていた。そもそも彼女らが曲がりなりにもベティヴィエールと戦えているのは〝時を止める〟という反則技、優秀なサポート役であるアリスの存在、ベティヴィエールが彼女らの肉体を傷付けないよう手加減しているからである。何より彼女らはこの異変の元凶では無い。恐らくこのあとにも敵が控えている以上、無駄な消耗は避けたかった。しかし、彼女らは徐々にではあるが、ベティヴィエールを追い詰めていった。
「くぁ!?」
咲夜が大量のナイフをベティヴィエールの死角に放ち、それをかろうじて避けるが避けた先に放たれていたアリスの魔法に直撃してしまう。火花が迸り、ベティヴィエールは吹き飛ばされる。
「グッ!・・・不味い」
ベティヴィエールの体力も無限では無い。このままではダメージを蓄積され、負けるのが目に見えていた。
「だが・・・負けるわけにはぁ!」
ベティヴィエールは吠え、彼女らに向かって行った────
────永遠亭
竹林の奥にある屋敷────永遠亭の庭先で一人の少女が立っていた。その足元には西洋的な幾何学模様が描かれている。少し離れた場所には銀髪の女性────永琳の姿も見えた。
「姫様・・・本気でやるのですか?」
「当たり前じゃない永琳。今此処には私達の自由への希望を潰さんとする輩が大勢押し寄せてきているのよ?だったら少しでも勝てるようにした方が良いでしょ?」
「しかし・・・そんな不確かなものに頼らずとも・・・」
「やらないよりはマシよ」
少女はそう言うと幾何学模様に霊力を注ぎ込み始める。それと同時に幾何学模様が赤い光を帯び始める。そのまま少女は微動だにしない。不審に思った永琳は少女に話しかける。
「あの・・・姫様?やり方はわかっているのですか?」
「気合いよ」
「ちょ!?輝夜!」
思わず昔の癖で少女を名前で呼んでしまう永琳。少女────輝夜はクスリと笑い、
「こんなものは気合で何とかなるのよ!さぁ!さっさと───────来なさい!!!!!」
輝夜はそう言って自身の能力────〝永遠と須臾を操る程度の能力〟を使い、無尽蔵の霊力を〝永遠〟に自身へ供給し、注ぎ込む。赤い輝きが一際強くなるが、それだけで何も起こらない。
「あぁもう!さっさとぉぉぉぉぉお────」
輝夜が更に霊力を注ぎ込む。
「〝来ぉぉぉぉぉぉおい〟!!!!!!」
瞬間、辺り一面を赤い輝きが覆い尽くす。それと同時に幾何学模様から何かが溢れだし、輝夜を吹き飛ばす。永琳は吹き飛ばされぬように踏ん張るだけで精一杯の様だ。やがて輝きは収まり始め、数秒後には元の夜の静寂を取り戻した。
「・・・ッ!姫様!」
永琳は輝夜に駆け寄る。
「姫様!?ご無事ですか姫様!!」
思わずヒステリックに叫んでしまった永琳だが、輝夜が自分を見ていない事に気付く。具体的には〝永琳の後ろ〟を向いている。その視線を追って振り向いた先には────
────濡羽のような黒髪を後頭部でまとめ、身の丈に合わぬ古代剣を携えた美しい少女が佇んでいた。少女は戦装束に身を包んでいる。永琳はその美しさに見惚れる。まさに〝神がかった〟美しさである。彼女が持つその身に合わぬ古代剣が放つアンバランスさも気にならない。
「────そなたか、我を呼び出したのは」
その口から放たれる声がようやく輝夜達を正気に戻す。慌てて輝夜は立ち上がり、目の前の少女に向かって告げる。
「────えぇ。私、蓬莱山輝夜が貴方を呼び出したの。早速だけど────ッツ!」
────ここに近づく者を排除しろ────そう言おうとした輝夜だが、右手に走った痛みに思わず蹲る。
「姫様!?」
永琳が慌てて近寄り、輝夜の右手を確認する────剣を意匠した血のように紅い紋様が浮かんでいた。
「これは・・・?」
「────それは令呪。我々サーヴァントに対する三度だけの“絶対命令権”。どうやら汝が我のマスターの様だな」
「令呪・・・?それにサーヴァントって・・・いえ、今はいいわ。貴方が私が呼び出した存在・・・でいいのよね?」
「然り」
「貴方の名は?」
「真名は明かせぬ。汝如きに呼ばせる様なものでは無い。我の事はセイバーと呼べ」
「何かムカつくわね・・・まぁいいわ。セイバー。此処に敵意を持って近づく者共を殲滅しなさい!」
「いいだろう。しからば」
そう言い残してセイバーは闇の中へ飛び込んでゆく。すぐにその姿は見えなくなり、思わず輝夜は尻餅をつく。
「姫様!?大丈夫ですか!?」
永琳が輝夜に駆け寄る。
「大丈夫よ・・・それにしても成功・・・でいいのよね?」
「私に聞かれても・・・」
彼女ら自身達が行った儀式の事を全くと言っていいほど知らない。精々が“強力な使い魔”を呼び出せるもの────といっただけである。この儀式の正式名称は────英霊召喚システム・フェイト。人理を守る為に過去の英雄達を呼び出す装置、その原型である。その儀式は時にして英霊を超えた英霊────神霊、つまり神をも呼び出す代物である。この儀式は本来その英霊に由来する者を触媒に用いる。そのようにして目的の英霊を呼び出すのだ。ただし、何の触媒も用いずこれを行う場合は、大きな対価を払い、強力な英霊を呼び出す仕組みになっている。ここで問題だ────輝夜の無尽蔵の霊力を対価として注ぎ込まれたこの儀式、果たして〝英霊如き〟が召喚されるであろうか?彼女らは気付いていなかった。先程の少女が〝神力〟を放っていた事に────
「がっ!!」
吹き飛ばされるベティヴィエール。先程から既に幾度もこのような光景が繰り広げられていた。咲夜がナイフを放ち、ベティヴィエールが避け、アリスの攻撃を喰らう。流石に慣れ、直撃は避けて来たが、いずれこのままでは力尽きるのは明白であった。
「何か・・・何か無いか・・・?」
ふと周りを見回すベティヴィエール。彼は放たれたナイフが一本も落ちていないことに気が付く。
「・・・時を止めて回収しているのか?」
顔を思わず歪め────この状況を打破する策を思いつく。半分以上が運であるが何もしないよりはマシである。ベティヴィエールはそのまま彼女らの攻撃を待ち構える。彼が攻撃を仕掛けてこないのを見た彼女らは先程のようにナイフを放つ。ベティヴィエールはそれを避け、アリスの魔法を喰らう。
「くっ!」
ベティヴィエールは体制を立て直すと、周りのナイフが一瞬で消える。咲夜の手には先程まで無かったナイフが握られている。それを見たベティヴィエールは────ニヤリと笑みを浮かべる。
「────かかった」
「ッッッ!!??」
咲夜の手元のナイフからベティヴィエールの仕込んだ魔術が発動し電流が流れる。その事に咲夜は思わず同様する────それはベティヴィエールが狙っていた絶好の機会だった。
「フッ!!」
「「!?」」
一瞬で二人の元に飛び込み、二人の腹部に当て身を食らわせる。二人は呻き声をあげ、全身を弛緩させて崩れ落ちた。
「ようやく終わったか・・・」
この戦いは終わった。しかしあまりにも代償は大きかった。
────妹紅の死
その事が彼の胸に突き刺さる。
────守れなかった
彼の胸には後悔の念が渦巻いていた。あと少し、あと少し早ければ彼女を救えた────ベティヴィエールは沈痛な面持ちで妹紅〝だったもの〟が転がっている方を向き────
────ピンピンしている妹紅と目が合う
「・・・・・・・・・はっ?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまうベティヴィエール。妹紅は笑いながらすまなそうに言う。
「いや〜ごめんごめん!久々に“殺された”から復活に手間かかっちゃったよ」
ベティヴィエールは数秒硬直し、ハッとなって妹紅に駆け寄る。
「妹紅!」
「へ?何ベティって!?何して・・・ちょ、あん!」
ベティヴィエールは真剣な顔で妹紅の身体をまさぐる。傍から見れば変質者であるが、彼は至って真剣である。妹紅はその感触に悶えている。
「ベティ・・・んんっ・・・やめ・・・ふぁっ・・・だからっ・・・ッ!やめろーーーーー!!!!」
「ぐぉっ!?」
妹紅の拳がベティヴィエールの鳩尾に突き刺さり、その威力にベティヴィエールは数歩後退してしまう。妹紅は息を荒くしながらもベティヴィエールから距離をとる。
「ハァーッ!ハァーッ!ベティ!何のつもり!?」
妹紅は顔を赤くしてベティに叫ぶが、ベティはそれどころではない。────死んだと思った友人が生きていてしかも元気に鳩尾にストレートを決めてくるという状況で落ち着ける筈も無いだろう。ベティヴィエールは妹紅を見て一言、
「何故・・・生きて?」
その質問に一瞬妹紅はキョトンとする。そして呆れた様に溜息をつく。
「ベティ・・・私が不老不死だって事忘れてない?」
「────あ」
すっかり失念していた────そんなベティヴィエールの様子にもう一度ため息をつく妹紅。そして言い聞かせる様にベティヴィエールに言う。
「いいベティ?私は不老不死だから死なないの。だから致命傷を被うが平気。さっきの貴方は私がやられた事で冷静さを失っていた。違う?」
「それは・・・」
確かにその通りである。ベティヴィエールは妹紅が不老不死と知っていながら取り乱した。妹紅の惨状を目の前にしてそんな事は全て吹き飛んでしまったのだ。例え死なないとしても痛みは感じるだろう。苦しみを感じるだろう。そのような苦しみを味わっていながら妹紅は冷静だった。
「別に死ぬのは慣れてるから。貴方は気にしなくて────」
「────それは出来ない」
妹紅の言葉をバッサリと斬り捨てる。妹紅は驚いた顔をしているが構わず続ける。
「〝死ぬのは慣れている〟?それがどうした。例え死なないとしても痛みは消えない。苦しみは消えない。何より────“命が消える感覚”は消えない。私は貴方を守れず、みすみすそんな苦しみを与えてしまった。それを気にしないなど出来る訳が無い」
「それは・・・私は何回も死んでるから気にしないし・・・」
「“あの感覚”を気にしないなど出来る訳が無い」
ベティヴィエールがその言葉を口にした瞬間妹紅の顔が変わる。
「まさか・・・ベティ・・・も?」
「────永い旅路の中、死す事は幾度もあった。時に殺され、時に餓死、時には灰となって燃え尽きる事もあった────その中で幾度も“命が消える感覚”を味わった。あれは人の本能に刻まれる恐怖。慣れる事など出来ようはずもない────妹紅。貴方はもっと自分をいたわって下さい。誰も貴方が傷付くのを望んでいない。そして私も────貴方が傷付く姿は見たくない」
「ベティ・・・」
ベティヴィエールの言葉に妹紅は自らを恥じる。ベティヴィエールかその時何かに気付くが妹紅は気付かない。
「(何わかったような事言ってんだ私。ベティはもっと長い間苦しんだんだ。それを・・・)」
「その・・・妹紅」
「ベティ・・・ありがとう。それと・・・ごめん。何て言うか・・・目が覚めたよ。不老不死に頼って皆やベティに迷惑かけて・・・心配させちゃってごめん」
「えぇ・・・その・・・どういたしまして・・・」
「・・・?」
何故かしどろもどろになるベティヴィエール。妹紅は怪訝に思ってベティヴィエールに聞く。
「ベティ?どうしたの?」
「その・・・妹紅、服が・・・」
「・・・服?」
妹紅は自身の服を見る。────咲夜達の攻撃でズタズタにされ、ベティヴィエールにまさぐられた事に寄って8割方肌が露出している自身の姿を確認した妹紅はみるみる赤くなっていき────
「ベティの・・・バカァァァァアアア!!!」
「ふぐぉ!?」
────両手で身体を隠しながらベティヴィエールの顔面に蹴りを叩き込んだ────
戦闘描写が上手くいかねぇ・・・。アドバイス下さいお願いします。いやホントマジで。
2017/11/29 一部修正しました