何かタイトル詐欺になってる気がするけど気にしない。イイネ?
ふんっ!」
「ッ!」
セイバーが剣を振るい、ベディヴィエールがそれを受け止める。ガキンッ!と金属音が竹林に響き渡る。
「ほう・・・なかなかやる様だな」
「それはこちらの台詞・・・ハッ!」
「甘い!」
ベディヴィエールが横薙ぎを繰り出すがあっさりと受け流される。ベディヴィエールは瞬時に剣を逆手に持ち替え再び振るう。セイバーは少し目を見張るが、すぐに笑みを浮かべ、篭手で受け止める。
「面白いやり方だな?まるで道化師だ」
「・・・ッ」
ベディヴィエールは内心驚愕していた。彼自身、セイバーに負けるつもりは毛頭無い。今の一撃も本気で殺す気で放ったものだ。それをセイバーはあっさり防いで見せた。今現在、彼にはセイバーに勝つビジョンが〝全く浮かんで来ない〟。それは自身よりもセイバーの方が“強い”という事を示していた。
「・・・ッ!
「む・・・?ほぅ・・・宝具か?」
ベディヴィエールは銀腕を起動させ、セイバーに強化された高速の剣戟を見舞う。しかし、セイバーはその複数の剣閃を意図も簡単に防ぎ、右腕のみで剣を振るい、ベディヴィエールを吹っ飛ばす。
「ガッ!」
「ベディ!?」
「余所見をしている暇は無いですよ?」
「ッ!?邪魔を・・・するな!」
少し離れた場所で妹紅は鈴仙と戦っていた。ベディヴィエールが吹き飛ばされたのを見て駆け寄ろうとするが鈴仙がそれを許さない。だがこれは妹紅にとっては幸運だった。何故なら、彼らの戦いは既に妹紅達の様な〝ヒト〟では無く、人智を越えた〝英霊〟達の領域に入り込んでいたからだ。
「ふんっ!」
「・・・ッチィ!」
「そらっ!」
「ぐぅ・・・ッ!」
吹き飛ばされた先では目にも止まらぬ剣戟の応酬が繰り広げられていた。もはや常人には捉えることも出来ない速度で剣が振るわれる。ただし、剣を振るう二人の顔は対照的である。苦々しい表情────ベディヴィエールに対して涼し気な顔────セイバーはベディヴィエールの攻撃をものともせずに剣を振るっていた。
ベディヴィエールはセイバーを中心に弧を描く様に動きながら攻撃を仕掛けている。時に横、時に斜め後ろ、時に正面────あらゆる面からセイバーに攻撃を仕掛ける。それをセイバーは軽く払い除けている。身の丈に合わぬ大剣で全方位から襲い来る剣戟を全て打ち払っているのだ。竹林に幾度と無く響き渡る金属音がそれを証明している。ベディヴィエールは歯噛し、剣戟の速度を上げるがその全てが打ち払われる。
「(速すぎる・・・ッ。ならばッ!)」
ベディヴィエールは一旦下がり、銀腕を通じて極光を剣に纏わせる。剣から光が溢れ出し、ベディヴィエールは剣を思いっきり一閃させる。溢れ出した極光は周囲の竹を巻き込み、セイバーを飲み込まんと迫り来るが────
「────ぬるい」
セイバーは蒼雷を剣に纏わせ極光を迎え撃つ────数秒拮抗した後に極光はあっさりと霧散した。ベディヴィエールは顔を歪め、セイバーは唇を歪める。
「今度はこちらからだ」
セイバーは頭上に剣を掲げる。
「
そう言って剣を振り下ろす。頭上に悪寒を感じ、咄嗟にベディヴィエールは後方に飛び退る。それが幸をそうした。一瞬後、彼がいた場所には天空からの裁き────落雷が突き刺さっていた。
「グッ!?」
躱したはいいが衝撃で飛び散った放電と光を直撃で食らう。咄嗟に庇った結果、ベディヴィエールは左半身を痺れさせ、左目は殆ど何も見えない状態に陥っていた。
「────ほう、耐えたか」
セイバーは嬉しそうに言う。その体から一層殺気を放ちながら彼女はゆっくりと剣を構える。ベディヴィエールは文字通り絶対絶命であった。方や満身創痍、方や五体満足、勝敗は火を見るよりも明らかであった。
「ならば────!我が魂喰らいて迸れ、銀の流星────!」
「ほう、まだ足掻くか。ならば────」
セイバーは剣を両手で持ち大上段に構える。
「こちらもそれ相応のもので迎え撃とう」
剣が稲妻を纏う。それよりも早くベティヴィエールは右腕を振るう。
「
銀腕から溢れ出した極光がセイバーを飲み込まんと迫り────
「────
────大剣から放たれた蒼雷の奔流に飲み込まれる。ベディヴィエールは信じられないといった顔のまま蒼雷に飲み込まれていった。それを確認したセイバーは剣を振るい、背中の鞘に収める。
「ふむ、重畳、と言った所か。悪くは無かったぞ人間の騎士よ」
セイバーは次の瞬間にはベディヴィエールに興味を無くし、次なる侵入者を始末しようと動き出すが────
「む?これは・・・」
自身の身体が〝呼び出される〟ことに気づく。
「面倒な・・・まぁ、此度はマスターがおるから仕方無し、か」
そう呟いた次の瞬間、一陣の風が吹き荒ぶ。風が収まった時にはセイバーの姿は何処にもなく、ただ戦いの爪痕だけが残っていた────
────そしてこの時、幻想郷を覆っていた〝とある術式〟が切り裂かれたことに彼女は気付かなかった。
────セイバー達の決着より数分前────
「────それで?つまり貴方達は月からの追手を防ぐ為にこの異変を起こしたってこと?」
「その認識で構わないわ」
「何ともまぁ・・・人騒がせな奴らだぜ」
「仕方ないでしょ、こっちは死活問題だったんだから」
「ともあれ、これで解決ってことでいいのよね紫?」
「そうね幽々子。藍もお疲れ様」
「もったいないお言葉です」
一方で竹林の奥深くにある永遠亭では全ての戦いが終わっていた。そこには異変解決組である霊夢、魔理沙、紫、藍、そして白玉楼の主である西行寺幽々子、異変元凶組である蓬莱山輝夜と八意永琳がいた。そもそも何故この異変を起こしたのか?それは月の民にとってはの禁忌である不老不死の罪を犯した罪人である輝夜と永琳、そして脱走兵である鈴仙・優曇華院・イナバを追って来る月人達から逃げ切る為である。彼女達はまず幻想郷を覆うように特殊な術式を発動させ、月から見て幻想郷を隠した。それが幻想郷では月が消失した様に見えたのである。月人達は幻想郷に侵入する為に幻想郷の結界が〝弱まる〟時期を狙い幻想郷のに侵入、輝夜達を連れ帰る算段であったのだが肝心な所で幻想郷の場所をロストし、次の結界が弱まる時期まで耐えるハメになる────これを永遠に繰り返し逃げ切るつもりだったそうだ。そして幻想郷に侵入する為のタイムリミットは二十四時間。つまりこの異変は一日限定の異変なので特に問題は無いという結論に落ち着いたのだ。
「ねぇ、ところで聞いていいかしら?」
唐突に霊夢が口を開く。
「何かしら?」
「さっきから竹林の方でドンパチやってるけど止めなくていいの?ていうか片方が明らかに〝とんでもない〟んだけど?」
それは彼女達全員が聞きたい事でもあった。ちなみに竹林でのドンパチとはここにいる彼女達は知る由もないがベディヴィエールとセイバーの戦闘の事である。
「あ、」
「・・・忘れてた」
思わずといった風に呟く輝夜達に霊夢達は呆れた様な目を向ける。
「それで?あれはなんなの?」
「あー・・・多分あれは私が呼び出した迎撃用の使い魔よ」
「多分って・・・それに使い魔?」
「そ。永琳が魔導書に書かれていた術式を再現してくれたからそれを使って呼び出したの。確かまだ召喚陣が残っていたはずだから見てみる?」
「・・・お願いするわ」
「そ。じゃ、ついてきて」
輝夜達に連れられ、召喚陣の元へ向かう霊夢達。向かった先には未だに紅い光を放つ召喚陣が残っていた。
「これよ」
「何か禍々しいわね・・・これはどう言ったものなの?」
「さぁ?」
「さぁってあんたね・・・。仕方ない、魔理沙」
「あいよ、さてさてどんなもんなのか・・・?ん?ん!?んんんんん!!??」
突然魔理沙が唸り声を上げる。
「ちょっと魔理沙?どうしたの?」
「いやこれ・・・召喚っていうか・・・反魂の法に近いものだぜ?」
「「「はぁ!?」」」
思わず叫ぶ一同。反魂の法────つまりは死者蘇生術やゾンビ、キョンシーを創り出す技術の総称である。その術式は一般には禁忌とされる技術であり、なおかつ現代の魔法使い達でも再現の難しいものである。
「ちょ!?何でそんなもんが!?どういう事よ!?」
霊夢は思わず輝夜に詰め寄る。
「いや私も知らないわよ!?永琳!?」
「・・・私も初耳よ」
「・・・魔理沙、貴女は術式の解析を急いで。藍、貴女は向こうの確認を────ッ!?」
紫が指示を出そうとしたその時、少し離れた場所で天を衝くほど巨大な蒼い剣が現れる。
「「「「「「「は?」」」」」」」
思わず一同は素っ頓狂な声を上げる。そして蒼い剣が振り下ろされた瞬間────
────幻想郷を覆っていた術式が切り裂かれ、満月が顕になる。
「んなぁ!?」
「不味い!これでは────」
その光景に顔を青くして輝夜は叫ぶ。そして次の瞬間には幻想郷覆っていた博麗大結界を〝突き破って何か〟が永遠亭に向かっているのを霊夢達視認した。
「そんな馬鹿な!?」
紫は思わず呟く。博麗大結界────幻想郷を楽園足らしめていた所以であり、幻想郷を守護する最強の結界である。それが破られたのだ。管理者たる彼女にとっては悪夢に等しい光景だろう。やがて〝何か〟は永遠亭の周囲に降り立ち霊夢達を囲むように布陣する。その姿は幻想郷からして見れば明らかなオーバーテクノロジー────紛うことなき月人達である。そしてその中心には帽子をかぶり、扇を携えた少女と、ポニーテールに刀を構えた少女が冷たい目でこちらを見下ろしていた。それを見て永琳は顔を青くして呟く。
「豊姫・・・依姫・・・」
「お久しぶりですわ永琳先生」
「実に千年以上ぶりですね」
そう言って少女達────豊姫と依姫はこちらへ手を差し出す。
「さぁ、帰りましょう?もう月詠様は貴女達の罪は問わないと仰っているわ」
「先生と輝夜様、そしてあの玉兎の身の安全は保証します。ですから「ふざけんじゃないわよッッッ!!!!」・・・輝夜様?」
「身の安全は保証する?ふざけないで!貴方達と共に戻ったところで人体実験のモルモットになるのは目に見えてるわ!」
「ですから身の安全は保証すると────」
「それであの耄碌した爺共の慰み者になれって?冗談じゃない!帰って溜まるもんですか!!」
「・・・仕方ありませんね、姉上」
「えぇ、実力行使で行きましょうか」
そう言って殺気を放ち始める二人霊夢達は思わず身構える。
「姫様方、一緒にいる地上人共はいかが致しますか?」
「殲滅しなさい。どうせ穢らわしい地上人と木っ端妖怪よ。誰にも迷惑はかからないしね」
ここで彼女の言う〝誰〟に地上の民は含まれていない。彼ら月人達は地上の存在を穢らわしいものとして見下しているのだ。輝夜は何かないかと周りを見渡し、そこで右手の令呪が目に入る。
「(・・・確かセイバーは〝絶対命令権〟って言ってたわよね?ならもしかしたら・・・!)来て────
セイバー!!!」
その声と共に令呪が紅く光り輝き、その1角が失われる。それと同時に輝夜の正面に大剣を背負った少女が現れる。
「やれやれ、人使いが荒いなマスター?」
「セイバー!遅いわよ!」
「我にそんな口のきき方をするとは・・・マスターでなければ斬っているぞ?それで?どうしたのだ?」
「あぁもう!?周りを見なさい!」
「ふむ?」
セイバーはその場でぐるりと辺りを見回す。
「ふむ、この木っ端共がどうかしたか?」
「こいつらは敵!殲滅しなさい!」
「全く、まぁ戦えるのならば文句はないが・・・」
「────随分と好き勝手を言ってくれる」
セイバーが声のした方向に目を向けると額に青筋を浮かべた依姫が刀を抜き放っている。よく見れば豊姫や周囲の兵士達も同様のようだ。セイバーは背中から大剣を引き抜こうとし────
「む」
────そのまま持ち手から手を離す。
「え、ちょセイバー!?」
「すまぬがマスター、我はあの小娘に〝手は出せぬ〟」
「な・・・ッ!?どういう事よ!?」
「詳しくは言えん。此度の聖杯戦争のこともわかっておらぬのだ。これ以上話せば我が真名も明かさねばならなくなる。それは我の望むところでは無い」
セイバーが何かを言っているが輝夜の耳には入らない。思わず膝をつく輝夜。まさかの最大戦力が戦闘放棄。残った面子では依姫一人にも敵わない。輝夜の心は既に絶望に囚われていた。
一方、紫は幻想郷の存続の為に必要な霊夢、万が一為の自分の後継者である藍を逃がすために必死に策を練っていた。月人の少女達────綿月豊姫、依姫姉妹の実力はよく知っている。過去、月面戦争と呼ばれる戦いにおいて彼女達には幻想郷において最高クラスの実力を持つ紫ですら手も足も出ない程の敗北を喫しているのだ。自分の生存は絶望的、ならばせめて彼女達だけでもと思った紫。スキマを開こうとし────
「・・・スキマが開けない?」
思わずと言った風に呟く紫。それを聞きつけた豊姫は鼻で笑う。
「あら逃がすとでも?貴女の様な害虫対策の術式を私が用意してないとでも?」
「(────終わった)」
輝夜に引き続き紫も膝をつく。藍が駆け寄るがそれすら気にならない。完全に詰んでいた。自分が月に戦いを挑まなければ或いは何とかなったかもしれない。過去の自分の愚かしさのツケがここに来て回ってくるとは何とも因果。あまりの情けなさに涙が出てくる。
「(誰か────)
助けて・・・」
────それは小さな小さな声
────だが、確かに聞き届けられた
────一人の少女の願いを・・・〝聖杯〟は聞き届けた
────次の瞬間、召喚陣が強く輝き出す。
「な!?」
「くっ・・・総員!戦闘態勢!」
月人達が身構える中、幻想郷の面々はそれに魅入っていた。やがて召喚陣がひときわ強く輝き、〝幾筋もの光が飛び散る〟。そしてそのうちの二つが紫の前に落ち、強く輝く。やがて光が晴れるとそこには────
────赤いの外套に身を包んだ褐色の肌に白髪の男
────九本の狐の尾を生やした美女
────何処か恐ろしくも神々しい者達が立っていた。やがて赤い外套の男が口を開く。
「────やれやれ、全く・・・随分と急な召喚だな?」
「────アナタはまだ良いでしょう?私なんかわざわざご主人様為にちぎり捨てた尻尾までついてきてるんですけど!?あーんもう!これじゃあご主人様を他の尻尾に奪われちゃいますぅ〜!!」
「ならばそのまま統合していればいいだろう。・・・さて、」
二人がこちらを振り向く。
「「問おう、君(貴女)が私のマスターか?」」
────かくして、幻想郷の地にて新たな英霊達が顕現した
────その先の行く末は滅びか、願いか