2017/11/25 加筆修正しました。
「あははっ♪壊れちゃえ!」
「くっ・・・」
フランドールはその見た目から想像出来ない程の速度で腕を振るう。ベディヴィエールはそれを剣で弾くが、想像以上の力の前に吹き飛ばされてしまう。そのままフランドールはベディヴィエールに大量の弾幕を放つ。ベディヴィエールは瞬時に体制を立て直し、弾幕を剣で斬り裂く。高速の斬撃は無数の弾幕を全て切り払った。彼は右腕を本当の意味で“使っていない”。つまり本気では無いということ。今の剣技は一五〇〇年に及ぶ旅の中で身につけた剣技である。今現在の彼の剣技は円卓最強であるランスロットすら優に上回る。第六特異点では自身の魂と身体が限界近く、『銀色の腕』を使ってなおまともに剣を振るえなかった。しかし、今の健康体の身体ならば、彼本来の実力を充分に発揮することが出来る。フランドールは弾幕を剣で斬り裂かれた事に対して狂喜乱舞する。
「すごいすごい!これだけやってもまだ壊れない!ねぇ、もっと遊びましょう!」
「く・・・」
ベディヴィエールは戸惑い隠せない。彼が出会ってきた吸血鬼達は皆誇り高く、戦いを“遊び”などとは言わない。自身が認めた相手には敬意を表する者達である。ところが、目の前の吸血鬼の少女は狂気的な笑みを浮かべ、とても吸血鬼とは思えない言葉を発している。彼が戸惑うのも無理は無かった。
「フラン!やめなさい!」
「フラン!やめるんだぜ!」
「妹様やめてください!」
パチュリー達はフランドールを止めようと声をかける。まさかベディヴィエール達の気配を察知してフランドールが出て来るなど完全に予想外だった。こんな事なら封印術式をフランドールの部屋に施しておけば良かったと、パチュリーは歯噛みする。そんな彼女達をフランドールは鬱陶しそうに一瞥する。その瞳は憎悪で染まっていた。
「うるさいなぁ・・・、邪魔しないでよ!
禁忌『クランベリートラップ』」
フランドールはパチュリー達に向かってスペルカードを放つ。パチュリー達は慌てて避けるが、弾幕の内一つが小悪魔に直撃してしまう。
「があっ!?」
「こあっ!?」
パチュリーが悲痛な叫びをあげる。パチュリー達は慌てて助けようと近づく。が、それが不味かった。
「禁忌『フォーオブアカインド』」
フランドールがスペルカードを唱えるとフランドールが四人に分身する。流れて来た弾幕をを避けていたベティヴィエールはその光景を見て不味いと感じ、パチュリー達の元に駆ける。
「「「「壊れちゃえ!!! 禁忌『カゴメカゴメ』」」」」
四人のフランドールによる常識を逸した大量の弾幕が一箇所に集まったパチュリー達に放たれる。パチュリー達が避ける事が出来ない事を悟ったベティヴィエールは自身の右腕を解放する。
「『
その言葉と共にベディヴィエールの右腕を極光が包み込む。それは剣を伝い、光の刃を作り出す。パチュリー達の前に立ったベディヴィエールはそれを一気に振り抜く。
「セヤァアアア!!」
光の刃は弾幕を全て飲み込み、かき消す。フランドールは自身の攻撃を防がれたことに驚愕し、パチュリー達はその光景に驚愕していた。彼女達もあの状況から助かるとは思っていなかったのだ。フランドールは顔を歪め、襲いかかって来る。左右から二人同時に貫手を繰り出してくるが、ベディヴィエールはそれを剣で払う。離れたところからもう二人が弾幕を放つが全て切り払われる。
「その剣・・・邪魔!」
一人のフランドールが右手を突き出し握り込む。
「キュっとして・・・」
ベディヴィエールは悪寒を感じ咄嗟に剣から手を離す。
「ドカーン!」
フランドールが手を開くと同時に剣が爆発四散する。ベディヴィエールはその爆発をモロに受けてしまう。
「ぐあっ!」
ベディヴィエールは吹き飛び、何とか受け身をとって体制を立て直す。今の衝撃で後頭部の髪を束ねていた紐がちぎれ、ベディヴィエールの髪型はポニーテールからセミロングへと変わった。フランドール達は一様に黒い棒を取り出し、
「「「「禁忌『レーヴァテイン』」」」
スペルを発動させる。棒から焔が吹き出し、大剣を形作る。その大きさは十mを優に超える。
「「「「壊れちゃえ!!!」」」」
フランドール達がレーヴァテインを振りかぶった瞬間、ベディヴィエールは“宝具”を解放する。
「『我が魂喰らいて迸れ、銀の流星』!」
右手は手刀を形作り、それを構える。右腕からは先程以上の極光が溢れ出る。
「『
────一閃。
レーヴァテインと三人のフランドールは全て極光に飲み込まれ最後の一人は余波を喰らって吹き飛び、床に叩きつけられる。慌てて起き上がるが、そこにパチュリー達の姿はあってもベディヴィエールの姿は無い。
「────これで終わりです。」
後頭部に衝撃を感じた瞬間、フランドールの意識は暗転した。
レミリア達が異変を察知して到達した時には全てが終わっていた。そこには治療を受ける小悪魔と魔理沙、パチュリー、そしてフランドールを抱えたベディヴィエールがいた。レミリア達はすぐさま駆け寄る。
「パチェ!何があったの!?」
「レミィ・・・、見ての通りよ。フランが暴れたの。彼のお陰で被害は小さかったけど・・・」
「そう・・・」
レミリアはベディヴィエールに向き直る。
「申し訳ないベティヴィエール卿。私の妹が迷惑を・・・」
「いえ、私は大丈夫ですので。それより・・・」
ベディヴィエールは一度言葉を切り、
「何故この少女がここまで“狂っている”のか・・・、お聞かせ願えますか?」
「・・・おい、狂っているってどういう事だ?」
モードレッドが疑問の声を上げ、ベディヴィエールはそれに答える。
「・・・この少女は見ての通り吸血鬼です。しかし、吸血鬼にあるまじき行動や発言、加えて戦闘中に見せた深い憎悪。戦闘狂の吸血鬼は確かにいますが、この子程ではない。ここまで言えば・・・分かりますよね?」
「・・・わかったわ。話しましょう、全て」
そうしてレミリアは語り出す。少女の名はフランドール・スカーレット。レミリアより五つ下のか495歳で名前から分かるように彼女の妹。その人生の殆どを暗い地下室で過ごしてきた。その理由は彼女が持つ能力が原因であった。『あらゆるものを破壊する程度の能力』 それがフランドール・スカーレットの能力である。レミリアは自分の能力である『運命を見る程度の能力』によってフランドールが能力を制御出来ず、惨劇を引き起こす事を知った。レミリアはフランドールが惨劇を引き起こす事が無いように地下室に閉じ込めた。そのまま数百年、フランドールは地下室で暮らしていた。
「・・・これが全てよ」
室内を重苦しい沈黙が覆う。誰もが苦い顔をする中、モードレッドは呆れたように口を開く。
「おいレミリア。お前バカか?」
「なっ・・・!」
「モードレッド卿!!」
レミリアは唖然とし、咲夜は咎めるような声を上げる。が、モードレッドは気にせず話し続ける。
「あのなぁ・・・制御出来ないってんなら制御出来るように鍛錬させなきゃ意味ねーだろ。それを地下室閉じ込めてそのまま飼い殺しじゃあこいつもそりゃ怒る。というか、精神崩壊してない分すげぇ方だな。それだけの気力があるんだ。制御出来ない保証もないだろ?早い話、お前の怠慢が原因だよレミリア」
「・・・ッ!」
何も言えなかった。モードレッドの言ったことは全て正論で自身が目を背けてきた事ばかりだったからだ。ベディヴィエールはフランドールを咲夜に渡し、レミリアを見据える。
「・・・」
レミリアは俯いたままだ。
「レミリア殿」
真剣な声音であるベディヴィエールが彼女の名を呼ぶ。レミリアびくりと肩を飛び上がらせ、ベディヴィエールの方を向く。
「ベディヴィエール卿・・・」
「今からでも遅くはない。一度彼女と話してみてはどうでしょうか」
「そんな・・・今更どんな話を・・・」
「話す内容では無く、“話す事”が重要なのです。貴方達には時間がある。だからゆっくりと・・・ゆっくりとでいいです。歩み寄る事は出来ないでしょうか」
ベディヴィエールはレミリアに語りかける。彼は長い旅の中で彼女達の様な家族を何組も見てきた。その結果、家族の絆が崩壊する場面も見てきた。彼女達にはそうなって欲しくないというベディヴィエールの思い。それはレミリアにしっかりと伝わっていた。レミリアはベディヴィエールを見据え、
「・・・話してみるわ、フランと。・・・ありがとうベディヴィエール卿。背中を押してくれて」
ニコリと柔らかい笑顔を浮かべるレミリア。やはり彼女には笑顔が似合うと彼は思った。
「所でお前剣はどうしたんだ?」
モードレッドの一言で、剣が破壊された事を思い出す。無手で戦えない事も無いがやはり剣があった方がいい。その事をレミリアに言うと、
「残念だけど・・・、うちは武器を必要としないから置いてないのよ・・・ごめんなさい」
レミリアは申し訳なさそうに謝る。ベディヴィエールは慌てて気にしてないと行った。しかし、流石に武器が無いのは困った。どうしようか悩んでいると、
「そう言えば貴方達、それ以外に服は持っているの?」
レミリアがそんな事を聞いてくる。
「いえ、着の身着のままでここに来たもので・・・、暮らす場所もしっかり定まっている訳では無いので・・・」
「そう・・・咲夜」
「はい?」
「彼らに似合う服を見繕ってちょうだい。なるべくいいものをね」
「かしこまりました」
そう言って咲夜は消える。能力を使ったのだろう。ベディヴィエールはレミリアの言葉に驚き、
「いいのですか?」
「構わないわよ。貴方には迷惑をかけてしまったし、モードレッド卿にはなかなかおもしろい話を聞かせてもらったしね。武器は用意出来ないけどこれくらいはさせてちょうだい?」
「それは・・・ありがとうございます、レミリア殿」
「サンキューなレミリア」
「レミリアでいいわよベディヴィエール卿」
二人はレミリアに礼を言い、レミリアは敬称はいらないと彼に言う。しばらくして咲夜が戻ってきた。いくつかの服を持ってきたので二人は自分に合ったものを選んで着る。モードレッドは白のフード付きパーカーにジーンズ、スニーカーとシンプルな格好。ベディヴィエールは黒いTシャツの上から黒いコート、ジーンズに黒いブーツと、どこかのファッションモデルの様な格好である。なまじ美青年なため似合っており、彼の銀髪が黒い服装によく栄えた。
「これは・・・こんな良いものを頂いてもよろしいのでしょうか?」
「どうせ誰も着ない服だから構わないわよ・・・。何となく外の世界の服を集めてたのがこんなとこで役に立つ何て思わなかったけど」
「しかし・・・」
「あーもう!メンドくせーなお前は!くれるって言ってんだから貰っとけ!普段着がねーのも困るだろ。四六時中鎧来てる訳にも行かないんだから」
「そうですね・・・有難く頂いておきます」
「構わないと言ってるでしょう?所で貴方達・・・、行く所が無いなら紅魔館で暮らしてみる?」
レミリアが有難い申し出をしてくれた。しかし、
「────申し訳ありません、私達もまだこの世界に付いて把握しきれていないのです。しばらくは幻想郷の中心部である人里に拠点を置こうと考えていたので・・・、気持ちは嬉しいのですが・・・」
「そう・・・なら仕方ないわね」
「申し訳ありません・・・」
「いいわよ別に。でも────」
そう言うとレミリアはベディヴィエールに近づき、
────チュッ
「「「「「!?」」」」」
ベディヴィエールの頬にキスをした。ベディヴィエールは惚けたような顔をしている。
「────また此処に来なさい。“私に会いに”・・・ね」
そう言って、踵を返してしまうレミリア。こちらからは見えないが間違い無く顔は真っ赤だろう。後ろから複数の殺気がベディヴィエールに飛ばされる中、レミリアは恋する乙女の顔をしていたと、近くを通った妖精メイドは後に語ったと言う────