周辺諸国最強のお嫁様   作:きりP

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王城スタートで書き始めていたのですが、ちょっと思うところというか、そう簡単に平民が王様に会えるんだろうかと疑問に思い一拍置くことに。ついでだから出したいキャラも書いてみようとしたんだけど、初めて書くキャラは口調とか調べたりしなきゃならなくて結構大変ねw
 


第三章
14 蒼の薔薇


 

 ガゼフ・ストロノーフは死ぬと思っていた。あそこまであからさまな工作をされ出立させられたのだ、確実にガゼフを殺す算段を整えていたはず。

 だがエ・ランテルから先触れが王宮に到着し、任務を果たし街道経由で戻ってくると言う。

 

 単純に暗殺の失敗、ガゼフの力を図り損ねたというのはありえないだろう。いえ、すでに情報は得ているのだ。介入者に助けられたと。だがそこからがわからない。

 

「ラナー! お前まさかとは思うが戦士長を……ガゼフを愛しているなどということはないよな?」

「…………は?」

 

 父王の馬鹿馬鹿しい考察を無視して聞き出してみれば、『私によく似た少女を連れて戻ってくる』ということ。つまりは介入者はその少女であるという事なのだろうが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 総人口900万ともいわれるリ・エスティーゼ王国。無論100万に近い人間が生活を営む王都リ・エスティーゼは広大だ。早朝、南東の通行所から都入りしたガゼフたち一行が最奥の王城にたどり着くには、馬の速度を緩める必要もあり昼時をかなりすぎた時刻の到着になると予想している。

 

「そろそろ馬車の中に入ったほうが良いと思うのだが……早朝とはいえ人々が動き出す頃合いだ」

「う~ん残念だけど街並みも堪能できたし……わかりました。その前にガゼフ様、一つ質問があるのですけど」

 

 通行所はガゼフが有名人というか公人であるため顔見せ程度で通過できたが、その際にはアイコは馬車の中にいた。だがどうしても街並みを見てみたいというアイコに頼まれ、この七日間ほどしてきたように又坐に座らせていたのだが、どうにも目立ちすぎる。部下が一度誤解したように、街の者にもいらぬ誤解を与えない為馬車に戻るように促すガゼフであったが、アイコの言葉に頭を悩ますことになる。

 

「王城って私はこの格好でいいの? それとも都市長様に会った格好の方がいいの?」

「それはあのドレスの方が好ましいのではないかと思うのだが……どうしてだ?」

 

 今のアイコはいつもの色々見えてしまいそうなワンピース姿だが、国王に謁見するのだから当然あの貴族の娘のようなドレスの方がふさわしいだろうと言葉を返す。

 

「だってもう私はこの国の国民で村娘だもの。他国の貴族のような装いで良いのかしら?」

「それは……」

 

 これは服装の話ではない。立場の話だと察するガゼフ。都市長に会った際は確かに登録前の話だ。あの豪奢な装いの魔法詠唱者の娘として恥じないドレスに敢えて着替えたのだ。

 なら王の前でも当然あのドレスであるべき……なのだろうか。すべては王に伝えはするが、他の貴族共の前では不要な発言はしないつもりであった。つまり旅の魔法詠唱者と今はその住人となった娘に助けられたと。うーん……

 

「が、ガゼフ様。頭から湯気が出そうですよ。私は以前見せたようにすぐに着替えられますから、ガゼフ様のやりやすいようにお願いします。それでは馬車に戻るわね」

「あ、あぁ」

 

 たまに敬語が崩れるが、それが地なんだろう。そんなアイコを微笑ましくも思い馬車を止めて車内に入るのを見送る。いや、考えるまでもなくあのワンピースは拙い。なら答えは一択であるはずなのだが……

 馬車を駆りながら思考する。ふと、何故か片腕で手綱を握っていたことに笑えてくる。もう彼女はこの腕の中にいないというのに。

 

「話は聞こえていましたが、そうなると入城はどうなさるおつもりで? 夕刻前には王城に着きますがお嬢さんはそのままお連れするべきなんでしょうか」

「これは参ったな……立場一つですべてが変わるか」

 

 普通平民を城に招くなどありえない。たとえ功績があったとしても、招かれてからの謁見になる。ならドレスに着替えてもらい平民であることは隠し、異国のご令嬢として入城してもらうのが一番ではないだろうか。いや、先触れが出ている。エ・ランテル都市長が先触れを出してくれているはずだ。どこまでの情報が伝わっているんだ……

 

「戦士長。一つ提案があるのですが」

 

 

 

 

…………

 

……

 

 

 

 

 

「ふわぁ! 大きな宿ですね」

「ここは王都一の高級宿……らしい。私も泊ったことはないのだがな。少々私の考えが甘かったのだ、すまん。私は先に王城に赴き翌日アイコを連れに来る。それまでここに泊っていてくれないか。無論アイコは転移で戻れるのだし必要はないのであろうが、転移までの護衛も……多分だが用意できる」

 

 一行が辿り着いたのは王都大通りにあるなかなかに格式が高そうな宿。大きな扉の前には守衛なのだろうか? 帯剣した警備兵のような者も見受けられる。

 

「で、でもここはお高いのでしょう? わ、私はガゼフ様のお家でも……」

「あはは、心配はないとも。私は貯金が趣味でな、アイコが気にする必要はないぞ」

「……」

 

 大丈夫だろうか、好感度上がってるのだろうかと不安になるアイコであったが、一行が来た道と反対の方から来る二人に目がいってしまう。蒼い修道服のようなものを着た金髪の美女と仮面の……多分少女だ。

 ガゼフもそちらに気がついたようで、片手を上げるとその二人が小走りによって来る。

 

「これは驚いたな……」

「うん、じゃなくてストロノーフ様。ご無事で何よりです」

「そうか……ラキュース殿は……いやそれはいい。それで副長に用件を伝えてもらったと思うのだが、どうかお願いできないだろうか」

「ええ、うふふ。こんな依頼ならいつでも。副長さんはそのまま王宮に先触れとして行かれたそうですよ。私はちょっと組合に顔を出していたもので、イビルアイに呼ばれて来たんです」

 

 そう言ってこちらを見ながら微笑む美女。よくわからないがこの人たちが護衛なのだろう。ほんの数分ここで待っていてくれと言われ、三人は宿の中に入っていく。私は戦士団のみんなに護衛されながら、彼女たちのことを聴いてみると『蒼の薔薇』というアダマンタイト級の冒険者なのだそうだ。まったく興味のない職業であるためそのアダマンタイト級ってのがなんなのかもわからないのだが。

 またもちらつく女の影に涙目になる。戦士団からそれはないから安心していいですよと言われるが、金髪美女の聖職者なんて主人公のハーレム要員の一人じゃないかと不安になる『金髪美少女聖職者』であった。

 

 

 

 

…………

 

……

 

 

 

 

 

「似てるっていえば似てるけど、近しい間柄なら間違うことはないくらい違うわね」

「……なんでこんなに可愛いのにあんなおっさんなんかに」

「ティアちゃんうちの子と同じようなこと言うわね」

 

 先ほどの金髪の美女ラキュースさんともう一人、ティアと呼ばれる少女に腕を抱きしめられながら大通りを歩く。抱き着かれるのは構わないのだが、やたら注目を浴びてるなあなんて考える。

 

 宿から戻ってきたガゼフは私を彼女たちに預け、早々に城へと出立してしまった。もう少し……なんだろ別れ辛そうに、名残惜しそうであってもいいのだが、そんな気持ちは私だけであったのかあっさりしたものであった。

 少々ぼーっと呆けていたところをこの二人に引きずられるようにして連れ出されたわけだが、どこへ向かっているのだろうか。カルネ村のソーコには今日明日は王城に向かうだろうからと戻らないことを告げていたのだが、これなら戻っても良いかもしれない。頭をなでられてのお別れなんて、こっ、子供じゃないんだからねっ!

 

「アイコさん兄弟でもいるの?」

「きっと妹。是非紹介してほしい」

「あー、妹……がいますよ。料理が得意で可愛いんです」

 

 家族がぽこぽこ増えるゴウン家。さすがに村娘がメイドを従えているとも言えず、第二第三の兄弟姉妹が出来ないとも限らないので、ソーコは妹ということにしておく。

 もう少しガゼフもこの人たちの立ち位置を説明してくれても良かったのにと思う。どこまで話していいのか分からないじゃないか。

 

「うーんとアイコさん。私たちも一応最高位の冒険者。いらぬ詮索はしないと約束するわ。王都を出立した戦士団がなにをして、なぜ村娘のあなたを連れて戻ってきたのかは知らないけど、あなたが大事な人であるという事はわかるもの」

「私は知りたい。いろいろと知りたい」

「ティアっ!」

 

 なんだ、分かってはいたけど良い人たちじゃないか。ちょっと顔が堅かったのかな? ガゼフのことになると少々感情がぶれてしまう。ちょっとラキュースさんが美人すぎて警戒していたが、無視した形になってしまったラキュースさんに悪いと思いなおし顔を両手でピシャリと叩く。

 

「ふぅ……別に難しい話ではないんです。単純に襲われていた私たちの村を助けてくれたのがガゼフ様で、私もそのお手伝い……というか治療魔法が使えたので帰還した方達を癒しただけなんですが」

 

 間違ってないわよね? モモンガちゃん関連やスレイン法国関連はアウトかもしれないから、それを省くと……うん、間違ってないな。

 

「ちょっと、アイコさん!? ダメよ、そんな大事なことを郊外で話すなんて。でもなるほどそんなことが……それに治療魔法が使えるなんてすごいわね。私も神官(クレリック)なのよ」

森司祭(ドルイド)……かな?」

「私は……ちょっと治療とか回復が出来るだけなの。そんなに大したものじゃないですよ。ティアちゃんちょっと手を貸してね」

「なんでも貸す。なんなら身体ごと貰ってくれてもいい」

 

 また範囲治療で驚かれても面倒くさい。スキルの『接触治療』だけ見せればいいだろう。ティアちゃんに対面して両手を取って手を組み合わせ発動。確か接触範囲が広い方がいいんだっけか。ついでなのでと身体とオデコもくっつける。

 

「こんな感じかな?」

「ふわっ!? ふわわぁあ……アイコお姉さまぁ……」

「ちょ、ちょっと!? 往来でナニやってるのよ!」

 

 治療のデモンストレーションなんだけど……治療が必要でない人にかけても……あれ? ちょっと体力減ってたのかな? なんか元気になったみたい。

 

「これは元気って言わないの! もうとっとと行くわよ! アイコさんもトラブル体質なのかしら……常識人だと思ってたのに……」

 

 なんか拙かったかなーと頭にハテナマークを浮かべるアイコと、顔がトロトロに蕩けているティアを引きずって走り出すラキュース。戦士団もああやって治療したのかと考える。女の子が好きと公言して憚らないティアにはご褒美であろうが、戦士団の方達もあの行為にやられちゃったのは分かる気がすると、頬を染めるラキュースであった。

 

 

 

 

…………

 

……

 

 

 

 

 

「服を扱ってるお店かな? あのマーク、エ・ランテルでも見ましたよ。こんなに大きなお店じゃなかったですけど」

「私がよく利用してるお店なの。とにかく入っちゃいましょ、ほらティアもしゃんとする!」

「鬼リーダー。了解」

 

 なにが了解なのか分からないが、腕を絡められたまま店内に入っていく。若干密着度が上がっているような気もするのだが。

 お店の中はマネキンが大量に並べられ服が展示されているのかと思っていたのだが、予想とかなり違いホテルのロビーのような雰囲気だった。飾られた服もあるのだが少数で、とても服屋には見えない。

 

「ストロノーフ様もそうだけど、ホント男の人って知らないのねぇ。ドレスが一日で出来るわけがないのに。どうにかしてくれって言われたけど既製品の直しになっちゃうわよ」

「それって……私の服をここで買うってことですか?」

「『アイコには……蒼いドレスも良いが、白が似合うと思う』あのおっさんにしてはなかなか」

「あはは、ティア、ちょっと似てたわよ」

 

 え、それってどういうこと?

 

「なんでも『私がプレゼントしたドレスで王宮に来てもらおうと思う。他国の貴族ではなく、村娘であり私の大事な人という理由でだ。いや、変な意味ではなく、私の知人ということで責任を私に持っていきたいのだ』って言ってたけど……って……うふふ。変な意味でいいのにね」

「ガゼフ様ぁ……」

「なんでこんな美少女があんなおっさんに……うわぁ可愛い」

 

 最後まで聞いていたのかいないのか。完全に蕩けて惚けたアイコの笑顔は、誰が見ても分かるような恋する乙女の表情だった。

 

 

 

 通された応接室というか試着室になるのだろうか。小部屋に次々と白いドレスが運ばれて来る。ラキュースの専属と紹介された女性が「徹夜してでも直しますよ!」と意気込み、お好きなものをお選びくださいと言い退出する。

 

「ね、ねぇガゼフ様はどういうのが好きかなぁ……ラキュースさんはガゼフ様と……その付き合いが長いのでしょう?」

「お、落ち着いてね? 顔ちょっと怖いわよ? 私とストロノーフ様はそんな関係じゃないから。王家と……っていうかラナー王女と私が親しいので、仕事柄もあってか話す機会が多少あっただけよ」

「近所のおじさん感覚」

「ティアっ!」

 

 なるほど、それは一安心と肝心の好みを聞いてみるも、全く分からないと言う。そもそもガゼフに今まで女性の影がないという、戦士団の隊員たちに教えてもらっていた話と一致したという事が分かっただけだった。

 自分の好みでいいのだろうかと考えるも、世界が違う上に人種も違う。ああ違う、そうか。だからラキュースさんに頼んだのか。つい浮かれていたがこれはガゼフの好みのドレスを探しているのではないのだ。先ほど元貴族の娘と教えられたのだからつまりはTPOに合ったドレスを彼女に選んでもらうべきなのだ。

 

「ごめんなさいラキュースさん。王様に謁見するのに相応しいドレスをこの中から選んでいただけますか? もしルールのようなものがあるのでしたら私には選べませんから」

「……そうね。それだったら露出の多いものは避けて、それでいてシンプルな物。となるとこれ一着か……少し古いデザインだけどどうかな?」

 

 古いも新しいもわからないのだが、二の腕まで袖がある、ちょっと野暮ったい感じのドレス。うふふ、仕事だったら絶対着ないようなドレスだわ。でもそれも新鮮かも。

 そんなこんなでさっと服を脱ぎ、ティアに抱きつかれたりしながら試着してみると。

 

「可愛いから何着ても似合うのよね……うわっ……腰細っ!? 今更だけどあなたホントに村娘なの? 立ち方からして違うんだけど……ストロノーフ様これ意味ないんじゃないかしら」

 

 どこからどう見ても貴族の娘。いや王族の娘と言われても違和感がない。ガゼフの思惑的にはあのアイコのドレスでは目立ちすぎるという問題もあり、今回の運びになったのだが、もともとのスペックが高すぎてあまり変わらないようだ。

 

「うん、これなら直しも必要ないわね。これにするよ、ありがとうラキュースさん」

 

 

 

 

…………

 

……

 

 

 

 

 

「うはあ! どこの貴族のお嬢様だ? 姫さんにも負けてないじゃんかよ」

 

 宿に取って返し三人を迎えたのは、先ほど会った仮面の少女らしき人物とティアにそっくりな少女。そして筋肉の塊(・・・・)と言っても過言ではない屈強な戦士。

 ガガーランもいたのねとラキュースが話しかけているがそれどころではない。ちなみにティアは服飾店からずっと抱き着いていて離れない。

 

 だめよ! だめ! 私のビッチ!! なんなの? なんでこんな格好良い人がいるのよ! もしかしてこの世界は風の噂で聞いたことがある『乙女ゲーム』の世界だったりするのかしら。歯を食いしばり高らかに宣言する。

 

「私はガゼフ様が好きなのです! あなたの魅力になんか負けてやるものですか!!」

 

 ずびしっ! と指をさして不敵な表情を浮かべる。

 

「お、おう? ってガゼフのおっさんを? おれっちが魅力的ってのは嬉しいが、なにがなんだか」

「お前ら帰ってきていきなり騒々しいな。一応魔法で周囲には聞こえないようにはしているが……」

「ティア……鼻血出てる」

 

 てんやわんやの王都一日目。『蒼の薔薇』に新たな美少女がと周囲の冒険者に話題になってはいるのだが、そんなことはどこ吹く風。『俺様系美男子』の誤解はすぐに解けるのだが、筋肉をこよなく愛す少女は「私もガガーランさんみたいになれるかな? なりたいな」と呟き、ガガーラン以外の全員にダメだしをされてへこむアイコであった。

 

 




 
どっちがレズでどっちがショタとか、普通に読んでたら覚えてないよね。ティアがガゼフをおっさんと呼ぶかどうかは分からないけど、アイコさんがティアを難なく受け入れる描写が伝わっていれば良いかなーとw
 
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