周辺諸国最強のお嫁様   作:きりP

16 / 19
今回よりタイトルが変わっております。うまくいけばいいのですが、毎度のことながら先の展開考えずぶん投げておりますw



16 NPCは製作者に似るらしい

「綺麗だ……アイコ……」

「ありがとう……ございます……」

「ねぇ、私お邪魔なんじゃないかしら」

 

 朝に宿を出立した私たちは、王城へと馬車に揺られている。ラキュースさんも同乗しているのは私がお願いしたからだ。お邪魔と言えば……そうなのだが、ルールやマナー、この国の仕来りなんかを助言して貰えたら嬉しいと思っている。

 昨夜にその話をすればよかったものの、色々と気疲れしていたのか抱き枕を抱いて早々に眠りに落ちてしまった。柔らかいところを探して少々まさぐりすぎたせいなのか、きゅっと抱きしめたせいなのか、時折ピクンピクンしていたがなかなか良い抱き枕だった。また王都に来たときには抱かせてもらおう。

 

「早速だが時間が無い、ラキュース殿も聞いておいてくれ」

 

 ガゼフが話してくれたのは本日のスケジュールだ。まず私はガゼフと一緒に貴族議会に赴くことになるらしい。だが証人と言っても証拠を提示できるわけでもなく、質問に受け答えして終わる程度の話のようだ。

 その後に本格的な会議が行われるので私は退室。褒章式はその後になる。その間私はラナー王女の私室に赴くことになるらしい……なんでだ? もしやヴァージン・スノウが?

 

「もう、アイコその呼び方止めてよ……私は何もしてないわよ。きっとラナーの取り計らいね」

「う、うむ。少々あってな……アイコに会ってみたいそうだ」

 

 願ったりかなったりな展開だが、ガゼフは会議に出るのだろう。やはり会話の時間は少ないかもしれない。

 

――『護衛は必要ないと言われると思うんですが、こちらも情報収集目的ってことでデミウルゴスがすでに王宮に赴いています。なにかあったら頼って下さいね』――

「は、はい。わかりました」

 

 なお現在モモンガちゃんとはメッセージが繋がっていて、私の話し言葉は伝わっている。王都に着いてから一人になる時間が無かったので申し訳なかったのだが、今朝がた向こうから繋げてくれたので、魔法効果時間を延長してかけ直してもらっている。

 なにからなにまで申し訳ないしありがたい。現状スッピンだからね私。でもデミウルゴスか……あんまり覚えてないなあ。

 

『正直肩透かしでしたね。プレイヤーがいるかもと思っていたんですが、少なくとも王城およびその近辺への魔法的監視で対抗反応が無かったとニグレドから報告が入ってます。宝物庫まで丸見えだそうで……おっとそれでは私はこれで。あ、そうだ、せめて通信の魔道具をソーコさんに持たせてあげてくださいよ。クリスタル無かったら私が出しますので。もう昨日泣くわ暴れるわで大変だったんですから……』

「ぐふっ!?」

「ど、どうしたアイコ!?」

「大丈夫!?」

「い、いえ大丈夫です。すべて了解しました(・・・・・・・・・)

 

 なにやってんのよあの娘……うーでも前科があるからなあ。茶釜ちゃんが双子に着けてたドングリ型の通信装備だっけ。帰ったら倉庫を漁って似たようなものを作ろう。

 

「そうか。とにかく緊張……などは無さそうだな。ははっ、会場から退出後はクライムという名の兵士が案内する手筈になっている。ラキュース殿も王女への紹介を頼みます」

「ええ、わかったわ」

 

 クライム君ね……あ、だめだめ。騎士様とか呼ばなきゃダメよね。よし、気を引き締めなきゃ。貴族とか王族とかを相手にするのは勝手が分からない。最低でも社長、会長当たりの賓客を相手にする気持ちで接しなければガゼフに迷惑をかけてしまうかもしれない。好きな人に……恥は掻かせられないから。

 いつものように(・・・・・・・)目を閉じて深呼吸を一回。目を開いて小首をかしげ、微笑みながらガゼフに問いかける。

 

「そろそろ到着する頃合いですか? ストロノーフ様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 完全に吞まれていた。二人の王子や六大貴族をはじめ、他の貴族たちも。唯一平常を保っていられたのは情報を知っていた王だけであり、その王も予想以上だったのだろうか。目を見開き驚きの表情を見せている。

 王から視線で促され、彼女のことを説明する。我々戦士団を救っていただいた御方の娘であること。そして彼女にも助けられたと。

 

「良い。頭を上げなさい。ここは玉座というわけではないのだから。戦士長よ」

「はっ。さぁアイコ殿」

 

 自身はあまり見ることが無いが女性の礼法だったか。馬車を下りる直前にラキュースに教えられたのだが、まるで知っていたかのような跪礼を崩し立ち上がる。 

 

「ご紹介にあずかりました、アイコ・ウール・ゴウンでございます。不心得者の村娘ゆえ、このような場所でのマナーを知りません。ですが言葉足らずにならぬよう誠心誠意ご質問にお答えしていきますので……その、よろしくお願いいたします」

 

 最後にニコッと微笑み、そう言葉を付け足す。

 

 扉をくぐる前に聞こえていた貴族派閥の「どこぞの村娘などを王宮に連れてくるなど」といった声は一切出てこない。むしろ心の声を代弁するならお前のどこが村娘なんだといったところだろう。

 女の顔はこうまで変わる物なのか。仕草にしても気品があるというのだろうか。これまでの旅の間では一度も見せたことが無い表情を浮かべ、周囲を魅了していく。……正直いつものアイコの方が好ましいと思うのだが。

 

「ふはは、これは驚いたな。とにかくだ、椅子を用意してやりなさい。それから戦士長の報告を聞くとしよう」

 

 王の言葉に控えていた騎士が空き椅子を持ってくる。王に、そして騎士に綺麗な礼をして着席するアイコ。若干騎士の頬が赤い気もするが……いかん。

 アイコの傍に立ち、昨日と同じように王都を出てから、カルネ村であったことを語る。無論法国関連の話を避けるのはラキュース殿と別れてからアイコにも説明している。

 ゴウン殿については旅の魔法詠唱者とし、危急を助けていただいた素晴らしき御仁であると熱を込めて語った。

 

「ふむ……素晴らしき話だな。弱き者を危険を顧みず救う……そなたの父上にも、もちろんそなたにも感謝する」

 

 王が頭を下げないまでも村娘に礼をし、アイコも立ち上がり再び礼の姿勢を取る。

 

「色々怪しすぎるが、ふん、なかなか愛嬌があるな」

 

 にんまりと口角を上げて、まるで値踏みでもするかのようにそんな言葉を発する第一王子、バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ。

 

 実力的にアイコがトブの大森林に向かった両親に付いて行けないことも、すでにこの国の住人であることも述べている。確かに怪しいからこそ貴族たちは毒を吐けずにいたのだ。

 馬鹿な貴族など存在しない。ここで散々にその者を扱き下ろし、ストロノーフを激高させても良いし、胡散臭い話だ、仮面などを付けてなどと馬鹿にして功績を無きものにしてもよかったのだ。

 だができなかった。この少女をどう見ても村娘と罵れない上に、法国風な名前。他の国家の重鎮の娘と言われても否定できない。だからこそ貴族は言葉を発することが出来なかったのに、王族が口火を切ってしまった。

 

 そこからはじまるガゼフとしては聞くに堪えない罵詈雑言。『アインズ・ウール・ゴウン』などふざけた名前だと発した貴族は、一瞬後青い顔をして黙り込んだりもしたが、その者が襲撃のお膳立てをしたのではないかなどとのたまう貴族も現れる始末。

 

「とにかくまずは戦士団を癒した魔法とやらを見せてみろ」

 

 そしてこの喧噪を制したのもバルブロであった。先ほどの発言も特に貴族派閥を煽るなどといった意味のある物ではない。単純に胡散臭いと思っただけだ。

 

「それは構わないのですが……怪我を治療するわけですので……」

「そうか……そうだな……よし、ではこれでどうだ」

 

 なにを思ったのか懐から鞘に入ったペーパーナイフのような物を取り出し、ナイフを抜いて指を傷つける。

 

「殿下!? 何をなされるのです! その女の指を切ればいい話ではないですか」

 

 などと物騒な言葉も飛び交うが、「それでは手品の類と区別がつかぬではないか」と取りつくろわず、アイコの傍まで歩いてくる。

 

「では頼むぞ。少々深く切りすぎて痛いのだ」

「はい、それでは手を握らせていただきますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガゼフが連れてきた平民の少女。その娘をラナーの私室まで連れていくのが今回のクライムの任務だ。宮殿警備の騎士に交じり会議場の外で待つ。クライムがここにたどり着いたのはほんの十分前。ラキュースと入れ替わるようにこちらに赴いている。

 他の兵士と違い王族警護の騎士たちは、その職務に誇りを持っておりクライムを邪険に扱うことはない。そのせいもあってか、「クライム……お前驚くぞ」などと言われたのだが、その言葉はラナーの私室を出る際にラキュースにも言われた言葉であり、その少女に特別ななにかがあるのだろうとは察せたが、思い当たることはなかった。

 

 ラナーの指示はただ一つ。私室までの十数分の間に会話をしろとのことだったが……疑問はあるが主の命は絶対だ。口下手ではあるが、同じ平民の少女なら多少の会話など問題なくこなせると意気込む。

 

 そして数十分後、完全防音された会議室の扉が開かれ、ラナーに似た表情(・・・・・・・)をした少女が現れるのだった。

 

 

 

 

…………

 

……

 

 

 

 

 

 塵一つ落ちていない荘厳な廊下をゆっくりと歩く。案内をするわけなので、自身が前を、そして少女がその半歩後ろに付いて歩いてくる。そしてはたと気づく。会話どころか言葉すら交わしていないことに。

 あれは誰が見ても平民の少女などではない。それどころか「ラナー……様?」などと呆けて見つめてしまった自分に呆れる。よくよく見れば、長年お傍に付いていた自分が見間違うなどありえないほどに、身長も違えば、顔のつくりも違う。いや、近しいものでなければそう判断してしまうこともやむを得ないが、自分がである。

 あの表情は長年自分を見つめてくれていた表情(・・・・・・・・・・・・・・・・)に酷似していたのだ。

 

「騎士様。もうついたのですか?」

 

 後ろから鈴の音のような声がかかり、立ち止まって思考していた自分にまたも呆れる。すぐさま振り返り言葉を発するのだが、

 

「いえ! 申し訳あり……」

 

 終ぞ言葉を止めてしまう。先ほどとは打って変わった普通の美少女(・・・・・・)が、頭に疑問符を浮かべながら首をかしげていた。

 混乱に拍車がかかるが、ラナーの言葉を思い返す。そうだ、何を考えるにしても主の命が優先される。今が会話のチャンスなのだからと、口下手な自分を呪いつつ、再度言葉を返すのだった。

 

「申し訳ありません。このヴァランシア宮殿はかなり広く、王族の住まう地区まではもう少々かかります。お、お疲れではありませんか?」

 

 会議室を出て数分しか歩いていない。疲れるわけなどないが、ゆっくり歩いてはみたものの、歩幅が違うかもしれないし、会議で疲れたという事もあるだろう。とにかく話を振らなければ会話は生まれないのだ。少々どもってしまったが……

 

「正直ね……今すぐにへたり込みたいぐらい疲れたわ……あ、ごめんなさい、騎士様に変な口の利き方をして」

「い、いえ!? 私は騎士ではなく一介の兵士ですので! どうぞクライムとお呼びください」

「え? 騎士と兵士って違うの? 階級とかがあるのかな……じゃぁクライムさんで。私もアイコでいいですよ」

 

 先ほどからとは信じられないくらい口調が軽い。悪い意味ではなく、なるほど村娘だと言われればそうかもしれないと思うほどに。

 

「ガガーラン様が色々おっしゃっていましたよ。「まっすぐな奴だ」とかいろいろ……その、いろいろ」

「その笑みで察せられますが勘弁してくださいアイコ様」

「ふふっ、そうね。でも『アイコ様』も勘弁してほしいわ。さん付けじゃダメなの?」

「ダメです! アイコ様は国の……そしてラナー様のお客様なのですから」

 

 しまった……会話を続行するなら彼女の提案を受け入れるべきだったかもしれない。ラナーの名前を出した途端に思い出すが、もう遅いか。

 

「なるほど真面目なんですね。でも私とクライムさんは同志らしいわよ? 村娘の私が王国戦士長様を好きだなんてこと叶うはずないけど……クライムさんは頑張ってね! いざとなったら男らしくさらって逃げなさいな」

「え? 戦士長様を!? いや色々と待ってください!」

 

 いきなり素が出ているというか年上の女性としての態度なのか。その口調をおかしいとも思えないのは彼女の人徳なんだろう。いやそんなことはどうでもよくて、

 

「まさかここへ来て王子に目を付けられるとかないわ……いや助けられたんだけども……」

「は?」

「あのインテリヤクザも……いや、あれは忠誠心が高すぎるのよね……ソーコと同じか……」

「え?」

 

 ぶつぶつと独り言を漏らす彼女。聞かれても問題ないとでも思っているのか、いや、前者はとんでもない話ではないだろうか。

 

「そうだ……いっそのこと、ここにお城なんて無かったってことにすれば……」

「あ、あの! アイコ様?」

 

 とんでもなく物騒なことを言い出すハイライトに光が無い瞳をした彼女に思わず声をかける。

 

「あっ!? ごめんなさい。もうとにかくホントに疲れたのよ……それで王女様はどんな人なのかな? やっぱりさっきみたいに真面目にしてなきゃダメよね……」

 

 さっきと言うのは、つまり会議室から出てきた彼女のことを指すのだろう。作った表情とはとても思えなかったが、現在の方が好感が持てる……と自分は考える。

 

「いえ、ラナー様はお優しい御方です。それにアインドラ様もいらっしゃいますし、アイコ様もお会いしているのですよね」

「あっ、そうか。ラキュースさんがいるんだったわね。お? そうなるとクライム君ハーレムじゃない! やったね!」

「……」

 

 なんなのだろうこの人は……早くも『クライムさん』から『クライム君』にされてしまった。それは全然不快でもないのだが、懐に入ってくるのが早すぎるような……

 

 なんとも、どう返事をしたらよいのか困ったような顔をしながらも、おかしな人だなと笑みがこぼれてしまう。王宮が更地になる危機を救った事にはまったく気づかないクライムであった。

 

 




お兄さんに、ガガーランに次ぐ当て馬をやってもらおうかな? ガガーランの時もギャグに走って終わってしまったのでどうなるかは不明w

原作にあの場面で王子の描写は無かったけど、いてもおかしくないよね? でも帯剣してて、指が切れるような西洋剣かどうかは……すまんのw
↑感想の意見を参考に『帯剣していた剣』と言う描写から色々調べ『ペーパーナイフ』に書き換えました。よく切れるっぽいw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。