周辺諸国最強のお嫁様   作:きりP

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遅れてスマンのw この話で十万字を超えるわけですが、すごいね、書けるもんだねw
仕事やレポートなんかで十万字なんて書いたことなんてあるんだろうか。貴重な体験でしたw



19 周辺諸国最強のお嫁様

 

 

 日はまだ高く青空の下、一台の馬車が王都を駆ける。街はいまだ活気に包まれてはいるが、馬車の中は沈黙が支配していた。

 

「……」

「……」

 

 一人は白い肌に真っ白なドレス。貴族の令嬢も斯くやといった金髪の美少女は、顔を朱に染め、ちらりちらりと目の前の男を盗み見ては、さらに顔を赤くしていく。

 

 もう一人は体格のいい偉丈夫。服装は正装なのか軍服なのかはともかく、目の前の少女と並んでも見劣りせぬ恰好ではある物の、歴戦の戦士としての風格が邪魔をし、護衛の者と見られてもおかしくはない。

 だが腕を組んで固く目をつぶり、なにかを考え込んでいる様子はなかなかに様になっており、少女の顔をさらに赤く染め上げていく。

 考え事の内容がアレなのだが……

 

(おうちに誘われてしまった……こ、これって……)

(家に招待してしまった……馬鹿だ……もっと段階があるだろう……)

 

 王には暇を頂いている。というか無理やり渡されたのだが、そうでなくともアイコとの時間を頂きたかったのでありがたいことではあるのだが、期待が過ぎるというか……

 いや、王は以前から私に重きを置いてくれているのは理解している。この年まで男やもめを貫いていられたのは私の自由意思を尊重して頂いていたからだ。自身は貴族ではないが戦士長と言う立場。私の婚姻を駒として使われてもおかしくはないというのに……

 ならばその期待に応え……いやいや違うだろう。そんな話ではない。

 

 頭の中でどうすればよかったんだと葛藤するガゼフ・ストロノーフ。なおアイコの頭の中は現在18禁なので語ることが出来ない。

 

「あぁ、そういえばこれを渡すのを忘れていたな」

「ひゅぃ!? え?」

 

 ガゼフが懐から取り出したのは小さな巾着。王家の紋章も入っており、その袋自体も高価な布で出来ているのではないかと思われる、綺麗な金貨袋だった。

 

「国からの報奨金だ……金貨が……50枚入っている」

「わぁ……ありがとうございます!」

 

 アイコとしては貨幣価値が曖昧なこともあり、多いのか少ないのかもわかっていない。だがガゼフとしては忸怩たる思いであった。

 議会での決定で決められた報奨金は、なんと金貨8枚というものであった。これは高額なポーションなら一本分。一般的なポーションなら四本分の相場である。ついで言うとガゼフたち戦士団全員を教会で治療して頂いた場合の正当な報酬額に近いものでもある。

 つまり国としてはアイコの治療魔法への対価であって、それ以上のものは存在していないのだ。王もその場では無言であったので言葉を発することは無かったが、現状戦費を考えなければならない時期であるとはいえ、この決定はどうなのだと憤りを覚えもした。

 

 しかし褒章式前に王から渡された金貨袋の重みを不審に思い、目をやると「……本当にすまないな」と力なく発した王の言葉に、王個人の資産から金貨を足したのだろうと察せたが、王への感謝はあれど、どうにもアイコやゴウン殿への申し訳なさが先に立つ。

 

「本来であれば金貨100枚……いや、200枚以上の報酬額が妥当であると思う。望むだけの報酬などと……本当に申し訳ない」

「いえ、私はもうこの報酬を頂いていますし。あ! 改めてお礼を……ドレス嬉しかったです、ありがとうございます」

 

 自身の腕で身体を……いや、ドレスを抱きしめるアイコ。金貨50枚だろうと500枚だろうと喜びは同じであったであろうが、このドレスに勝るものは無いとニッコリと微笑む。

 

「や、やはりアイコには……白が似合うと思う。清廉な……すまぬな。語彙が少なくどう表現していいのかわからないのだが……美しいと思うのだ」

「せ、清廉!? セイレーンじゃないですよね!? そんな……その……ガゼフ様も格好いいです」

 

 一瞬ユグドラシルにもいた半人半魚のMobを思い返すアイコであったが、消え入りそうな声でガゼフの服装にも思っていたことを返す。

 

「ははっ。服に着られているようでな、どうにもこのような恰好は苦手ではあるのだが、アイコに褒められるのは……その……嬉しいものだな」

 

 アインズがこの場にいたら「お前ら早く結婚しちゃえよ!」と言わんばかりな桃色空間。最初の空気はなんだったのかと思わせるような甘い雰囲気の中、会話も若干弾みながら、ようやくガゼフの家へと到着するのであった。

 

 なお馬車を操っていた年若い戦士団隊員は「憎い……隊長が憎い(三度目)」と血の涙を流していた。

 

 

 

 

…………

 

……

 

 

 

 

 

「うわぁ! 大きなお家ですね! ここがガゼフ様の? でも一人で住むにしては大きすぎるような」

「そうだな。確かに部屋はかなり空いているが、召使というか老齢の夫婦に家の管理をお願いして住み込んでもらっている。家の大きさ的には商人の別荘とでもいうほどだが、王城に近くとなるとこれほどの物件しか無くてな」

 

 寝に帰ることも最近では出来ていなかったと笑うガゼフの言葉を聞きながら、その家を見上げる。自宅の四倍はあろう程の敷地に、二階建ての白い外壁の家屋。奥の方は裏庭でもあるのだろうかと察せるが、やはり大きな家だなあと思う。

 手を引かれてというか、馬車から降りる際に再度握った手は両者が離すこともなく、二人そろって門をくぐっていく。庭木や芝も丁寧に整えられており、家の周りには花壇であろうか。季節の花なのかは知れないが、華やかでは無いものの、人の目を楽しませてくれる。

 

「いいですね……その夫婦のお人柄なのでしょうか。素朴な趣というか、なんというか温かいです」

「ははは、そうか。私は忙しなさ過ぎたせいでそんな考えなど持ったことも無かったのだが、改めて見るとなるほど。ありがたいものだったのだな」

 

 朗らかな笑顔を浮かべながら、二人で庭を散策していく。ガゼフも見知った花……いや、薬草の類ではあるのだが、腰を落としそれらを説明したりと楽し気な会話が続いていく。

 

「ストロノーフ様、お帰り……で!?」

 

 そんな会話が漏れ聞こえていたのか、正面玄関の扉が開き、人のよさそうな老齢の女性が現れたのだが、顔に驚愕の表情を浮かべて動きを止める。だが徐々にそれは歓喜の笑みに代わり、言葉を紡ぎだす。

 

「あらあらあらあら! まあまあまあ! 可愛らしいお方で! ええ、わかります、わかりますとも! すぐさま夕食の買い出しに参ります。精進料理などとは言わせませんよ? 精の付く物をたくさん食べてもらわなくてわ!」

「ああ、今帰った……いや、なんだ、その……頼む」

「ふひっ!?」

 

 ガゼフとしては、なんだそんな料理も出来るのならお願いしたいという唯それだけであったのだが、某義理の母達に似たのか、そんな鼻息を漏らすアイコの頭の中は、またもや18禁であるため語ることは出来ない。

 

 そうね、まずはお茶を出さなくてはと急ぐ女性に続き、家の中に入るのだが、なんとなくこの大きな玄関スペースに既視感を覚える。

 

(あ、あれだ! バイオハザードの洋館だ)

 

 古くからあるゲームで、たびたびリメイクを繰り返し、つい最近はDMMOにもなったらしいホラーゲームの初代の洋館なのだが、あれほど大きくは無いものの確かに玄関ホールは似た趣がある。

 前方には大階段とは言えないものの二階に続く階段があり、そちらにはガゼフの私室があるそうだ。食い気味に上階を見つめるアイコであったが、手を取られ左手の扉からダイニングスペースへ案内される。

 玄関ホールと比べると思ったよりもこじんまりとした部屋ではあったが、何とも温かみのある空間であった。女性に茶を差し出され、簡単な自己紹介を。遅れて現れた裏庭の手入れをしていたらしいもう一人の男性とも挨拶を交わすも、「良かった……ほんに良かった……」と目尻に涙を溜めてすぐさま退出してしまう。

 

「ふふっ、なんだか温かいお家じゃないですか。帰らないなんてもったいないですよ」

「そうか? そうだな。しかしなにをあんなに慌てていたのやら」

 

 すでにこの場には二人しかおらず、お茶を頂きながら会話を楽しむ。老夫婦の思いは言わずもがなであったが、主人であるとともに息子としての思いもあったのだろう。ガゼフがそれに気づくことは無かったが、アイコはそれにもほっこりと笑顔になってしまう。

 

「そうだ。その、そ、ソーコ殿はよろしいのだろうか? アイコは夕食時には戻る予定であったのだろう?」

「ぐっ!? ……すみません少しだけ時間をください」

 

 さすがに先ほどあんなことがあったのだ、忘れていたわけではないが、早めに連絡をしておいた方が良いだろう。席を離れ窓際に移動し、こめかみに指をあてて魔法を唱える。

 

 そんな通話を聴きながら柔らかな微笑を浮かべ、茶に口を付けるガゼフ。あぁそんな百面相もアイコの魅力なのだなと心が潤ってくる。

 

「だっ、だから! その、お母さん大人になるかもしれなくって!」

 

 言ってる言葉は支離滅裂で、何のことだかさっぱりわからないが、その表情にあの会議場で見せた顔の片鱗も見えず安堵する。

 

「……あぁ、(良かったなあ、アイコが無事で本当に)良かった」

 

 思わずこぼれてしまった言葉は本当に小さなつぶやきであり、声に出していた部分は少なく、いかに100レベルのアイコでも心の中で漏らした言葉までは拾えず、気にすることは無かった。

 

「絶対よ! 命令だからね、今食べるのよ! モモンさんは? いない……ナーベちゃんは?」

 

 どうやらこの数日でカルネ村も賑やかなことになっているのだろう。聞いたことが無い名前も飛び出すが、そもそも知った名前はゴウン一家のみであるし仕方ないところではあるのだが。

 

「ナーベちゃん? モモンさんは優しすぎるからあなたが頼りなの。ホールドよ? ホールド! だいしゅきほーるどで頼むわね!」

 

 聞いたことのない言葉も飛び出すが、真剣な表情になったり子悪魔的な表情になったりと忙しない彼女はやはり面白くもあり好ましくもあり……ああ、魅力的な女性なのだと再確認する。

 

 ああ、それでもこれで最後なのだなとも。窓からの柔らかな光がダイニングを照らす。その光が彼女を包み込み、彼女ごと消え去ってしまう光景を幻視し思わず目を見開いて立ち上がってしまう。

 

「ガゼフ……さま?」

「ああ…‥いや……そのまま続けてくれ」

 

 確かに幻想ではないけれども、あと数時間もしないうちに彼女が消えてしまうのは事実だ。そしてそれを追いかけるすべは皆無だという事も。

 

 再び窓辺を向いて通話を続ける彼女に歩み寄り、そして抱きしめる。そうだ、この温もりだ。10日ほど続けてきた行為が、たった一日空いただけでこれほど愛おしいとは。

 

「ひゅわっ!? えっ!? ええ!?」

「愛している……結婚しよう」

 

 期待していないわけではなかった。単なるお別れ会なのかもしれないとの思いも頭の片隅にはあったが、なにがあっても自分らしく笑顔でいようと、ただそれだけは決めていた。

 

「あい……はい……うっ……ぐすっ……」

 

 顔をくちゃくちゃにさせ、涙と鼻水がとめどもなく流れていく。あまりに突然のことで驚きと喜びが交じり合い嗚咽を漏らし続ける少女の顔は、お世辞にもあの美少女とも思えぬほどひどい有様になってはいたが、眩しい程の笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

「でっ、でも……ぐすっ、ソーコを説得しなきゃならないんですからね。ふふっ」

「そうか、なら善は急げだな……頼めるか、アイコ?」

「えぇ、こちらで夕食をとれるように頑張らなくっちゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やはりこうなってしまうか」

「当然でしょう。私は最初に言ったはずです」

 

 夕暮れ時のカルネ村中央広場は水を打ったような静けさ……なんてこともなく、丁度仕事を終えた村人たちや、漆黒の剣にンフィーレア、そしてアインズ扮するモモンとナーベに森の賢王まで。カルネ村住人フルメンバーによる村の柵が完成したことによる宴が催されていた。

 そして櫓の上にはちょっと豪華な椅子が置かれ、そこにちょこんと鎮座しているのは金髪の美少女。あわあわとしながら眼下の両雄の対峙を見守っている。

 

「ど、どういうことですかモモンさん? なんでソーコちゃんが……それにあれって王国戦士長様なんじゃ」

「う、うーん……私にもさっぱりなんだが」

 

 なんでそれを俺に聞くんだと思いもしたがペテルの質問に、答えでもない答えを返していく。

 

「ナーベちゃんには敵わないがあの櫓の上の女の子も可愛いなぁ」

「あれが噂のアイコ殿であるか?」

「貴族……じゃないですよね」

 

 漆黒の剣の会話は置いておいて、なんだかわからないが試合でもするのだろう。

 

「悪いが……ソーコ殿を倒してアイコを手に入れる!」

 

 ガゼフの雄たけびに一瞬で静かになる村人たち。だがその言葉の意味が解ってくると若い男性たちから怒りの声が上がりだす。

 

「ふっざけんな! 王国戦士長!」

「アイコさんは村の女神だぞ!」

 

 村の数少ない若い男性たちにとって、アイコとソーコは嫁候補筆頭にまで登ってきている。ぽっと出の王国戦士長ごとき(・・・・・・・・)に持っていかれていい存在では無いのだ。

 

「その咆哮……本気ですね。いいでしょう、引き分けなどと言う甘い判定はもはや無いと思いなさい。ひき肉にして差し上げますよ!」

 

 ガゼフの高らかな宣言に真っ向から対峙して叫ぶポニーテールの少女。その目は本気だと訴えかけているように睨みつける。

 

「私が勝ったらアイコ様をすっぱり諦めてもらいます。ですが……ぐっ……もし私が負けるようなことになれば……しかたありません、アイコ様と一緒に私も娶ってもらいます……チッ」

「…………は?」

 

 歯を食いしばり、心底嫌そうな顔でそんなことをのたまうソーコ。

 

「ふっ! ふざっ! ふぜけっ!!」

「死ぬか? 死にたいんだな? ガゼフ!!」

「そっ、ソーコ!? 聞いてない! 私聞いてないよそんなの!」

 

 一人、また一人と農具や伐採道具を抱えて立ち上がる伴侶の居ない者たち。国の英雄であり村を救ってくれた恩人でもあるが、すでに敬意もへったくれも無い。

 

「ぺ、ペテル!?」

「ルクルット……お前のことをチャライなんて言うやつもいたが俺は知っているよ。お前がいつも本気だったってことを。だから俺も見せてやるぜ! 俺の本気ってやつを!」

 

 ソーコちゃーん! と、武器を取って走り出す漆黒の剣リーダー、ペテル・モーク。彼もこの一週間足らずの村での伐採作業などで彼女に魅了されていた。大木を「えいっ♪」の掛け声のもと両断していく女神(?)の一撃にやられていたのだ。

 

「ペテル……お前カッコいいぜ……」

「男でござるな」

「漢であるな」

「男の子っていいわね……あ、ちがうちがう! ペテルったらもう!」

 

 なごやかに見守る漆黒の剣メンバーと森の賢王。他の村人たちも「なんだ? 前回の余興の続きか?」などと楽し気に見守っている。

 

「モモンさーーん! 私も!」

「ちょーっと待った。やめような! これ以上収拾がつかなくなるとアイコさん確実に泣くから!」

 

 次々とソーコの周りに集まってくる『持たざる者たち』。その数はゆうに二十人を超えている。

 

「助太刀するぜソーコちゃん!」

「許せん……許せんぞ王国戦士長!」

「みんな……わかったよ! みんなであのゴリラを倒そう!」

 

「ソーコ! みんなも待ちなさい! 私の結婚がかかってるんだからっ!」

「いいだろう……かかってこい村の衆。アイコは私のものだ!」

 

 

 後に『周辺諸国最強のお嫁様』と自称するアイコであったが、「周辺諸国最強ってアイコさんのことですよね」などとからかわれる発端になったこの祭りは、カルネ村の風物詩『嫁取り戦争』とまで呼ばれる程に。

 

 その一回目の勝者はこの世界で初めてブチ切れた某天使だとかなんとか。村の青年やガゼフにソーコ、止めに入った巨大な魔獣や冒険者たちを次々と打ち倒していく様は、村の伝説にまでなっているという。

 

 





 これで一応の完結になります。結婚式とかそれ以前にナザリックに遊びに行くとかの話も書けそうですが、あるとしたら番外編かな?

 今回初めての難産だった理由なのですが、これって作者にだけダイレクトに響く寝取られなんじゃないかとw こんだけ書いてればオリ主にも愛着が沸くってもんで、若い村人の叫びは作者自身の心の叫びだと解釈して頂ければw

 次回はいつになるかはわかりませんが、また新作を書いたりするかも? それではまたいつかお会いしましょう。
 これまで根気よく視聴してくれた皆さん、感想や誤字報告を送ってくれた方々に感謝を。ありがとうございました。
 
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