ギリギリあってもおかしくないかなーと妄想しておりますw
ソーコに淹れてもらった紅茶を飲みながら、窓の外へ目線を向ける。うん、そうね、『井戸端会議』って言葉があるくらいだもんね。水を汲むのが便利になったとはいえ、おしゃべりは女の
「水・・・女神・・・ことで・・・」
「なるほど・・・なのね」
壁が薄い……ってわけではないが防音対策はとってないんだよね。立ち聞きしてるみたいで悪いなーとチラリとソーコに視線を戻すのだが……その恋する乙女のような潤んだ瞳はなんなんですかね。そうですよね、一緒のベッドで裸で抱き合って寝てましたものね。
抱き枕的な気持ちだったと思うのよ。そっちの気は無いんだけど、嫌われるよりはいいかなあと問題を据え置きすることにする。
『衣食住』なんて言葉があるが、まさか異世界転移して足りないものが着る物になるとは。ゲーム時代下着というのはあったし着ていることにはなっていたんだろう。つまり1セットしか無いわけだ。
それに必要であるかどうかは微妙だが、鏡台はあっても引き出しに櫛もメイクセットも入ってない。歯ブラシも無ければ、生理用品も……どうなんだ? 天使って月の物は来るのか?
とにかく……とにかくだ。言葉が通じて気さくな隣人たちがいるし、頼れる同郷の魔王もいるのだ。ソーコの服の型紙だけ作ってから、まずはお隣さんとこにでも相談に行くかな。そんな事を考えながらリアルでは考えられない豪華な朝食に舌鼓を打つのだった。
…………
……
…
そういうことなら村長の奥さんを尋ねた方が良いと、すごい匂いがするエンリちゃんに言われ、現在私は村長宅に訪れている。すごい匂いは薬草をすりつぶしているのだとか。村の貴重な収入源なのだそうだが、あの匂いはきついなあ。
ソーコはお留守番で服探しを継続してもらっている。私の家は地下に行くほど広くなっていて、倉庫はかなり広いのだ。付き従えない事に若干渋ってはいたが……大丈夫よね。
「なるほど着る物ねぇ。私が子供のころに着ていたものが残っていると良いんだけど、ちょっと探してくるわね」
「ありがとうございます!」
願ったりかなったりの展開だが、やはり対価を払うべきだろう。このまま村人たちの善意で生活させてもらうわけにはいかないとも思う。
だがそんな考えを言葉に出す前に、村長さんが口にしたのはどうしようもない程お人好しな発言だった。
「……昨日話した貨幣についての事なんだがね、村ではそんなものは流通していないんだ。まあわかるとも思うが物々交換が主流だね。年に一度来る徴税吏に払う人頭税は、一人金貨一枚と少しほど。開拓村だからと言うのもあるが、都市部だとこの倍は取られるそうだ」
私が昨日見せたユグドラシル金貨が、この国の金貨二枚分と言ってたから、あれで私とソーコの税金が賄えるのか。まあ一食金貨数十枚ほど使って食材出しているんで安すぎるとも言えるのだが、それだけじゃこの国の貨幣価値がわからない。
「都市部では金貨十枚あれば三人で一年暮らせるそうだがここでは違う」
「ぶふぅっ!?」
「だっ、大丈夫かね!?」
「いえ、ちょっと白湯が気管に入っただけですから……大丈夫ですごめんなさい、続けてください」
なんですかそれ……手持ちに50M(5000万枚)ほどあるんですが……ユグドラシルなら私貧乏な方なんだけど、ソーコの手持ちと地下倉庫の金貨を合わせれば500M(5億枚)くらいはあるぞ。
「そっ、そうかね? じゃぁ難しい話はよそう。私は村の長として村の生産物を都市部で売った金銭、時には現物のままでなどと交渉して、代表して税を支払っているわけだが、君たち二人はそれは気にしなくていいよ」
「ええ!? なっ、なに言ってるんですか!」
「実際問題君たちは水源の管理をしてくれていると言っても過言でもないだろう? まだ二日足らずだが村の女性たちの労力を減らしてくれている」
いやいや、私たちなんにもしてないですって。むしろその金貨を出してくれって言われる方が……あーそうか、知らないんだよね。いや教えてないですものね。
村長の認識としては、天使で貴族のような見た目な割に、村の家々と変わらないような家屋に住み、家の中はすっからかん。今日は服がどうにかならないかと押し掛ける始末……
金貨についてはどうだろう。多分ポケットにでも偶然一枚だけ入ってたって認識なんだろうか、結構大きいものねアレ。
どう見ても世間知らずなお嬢様にしか見えず、キッチンにあとどれくらい残されているかわからない食材を大盤振る舞いする困った娘。あ~これ私が村長なら胃が痛いわ。
「誰か良い男でも村にいればいいんだが、戦争でみんな取られてしまったしなあ……器量が良すぎてどこかの貴族の……いや忘れてくれ」
あ、エモットさんでお願いします! って違う。どんどん変な方向へ話が向かって行く。かといってこの世界でユグドラシル金貨を流通させちゃっていいものなのか? そもそも元の世界に帰れない前提で……うーん……帰りたい理由が『あのマンガの続きが読みたい』ってぐらいしかないな。ってもう!
「とっ、とにかくお金は払います! 働きますので! 畑仕事とかも手伝いますから!」
頭の中がぐっちゃぐちゃだ。でもさすがに甘えっぱなしは嫌なのだ。
「うん、あはは、ちょっと話がずれてしまったね。それで先ほどの話に戻るのだけど、例えば畑を手伝ってもらっても収穫量は変わらないんだ。まぁその分余暇が増えるかもしれないけど、微々たるものだろう」
「うっ!?」
村長は私の細い腕を見つめているが、私は昨日の『料理が出来なかった』ことを思い出していた。手伝う以前に
「もうひとつ森で取れる薬草を街で売ることもしているんだが、これも難しいんだ」
『森の拳王』とか言うなんか世紀末覇者っぽいのがトブの森の南一帯を縄張りにしているらしいのだが、村近くからは森に入らず、遠回りして縄張りに触れないように採集をおこなうのだそうで、危険な仕事なのだそうだ。その縄張りのおかげでカルネ村が守られているとも。
「まあ、回りくどく話してしまったが、この村で君たちに出来ることは無いとは言いたくなくてね。水の管理を仕事としてお願いできないかなってことなんだがどうだろう」
この世界善人しかいないの? どこまでいい人なんだろう……これ多分村の女性たちも同意してるんじゃないだろうか。 朝方聴いた井戸端会議の『水の女神』とかってこの事なんじゃないかと。多分『
申し訳なくて居た堪れなくて、涙がぽろぽろとこぼれてくる。
『アイコさんちょっといいですか? 復活魔法とかってどうなるんだろうって気になっちゃいまして』
「あっ……ぐすっ……わだじ、まほーつかえるんだっだ……」
唐突にモモンガから届いた<
「がいふぐまほーとか……使えるんですが、それじゃ仕事にならないでじょうが?」
●
『病院……いや教会かな? それにしても驚きましたよ。ぼろ泣きしてる声だったからどうしたのかと不安になりましたもん』
「ホントごめんなさい。いやぁでもナイスタイミングというか助かりましたよ」
村長宅をお暇して家にたどり着き、真っ先にモモンガに連絡を取っている。なんで魔法のことに思い至れなかったのかはあれだが、魔法がある世界だと認識して使ってもいたのに、現実を叩きつけられてリアル世界と混同してしまっていたのだろう。だってここもリアルなんだもの。
手持ちの金貨に<
神官は立派な職業だし、怪我を治せるならどれだけ村の役に立てるか計り知れないと。村に教会の分所があるわけでもなく、今までは売り物の薬草を使って治療する以外方法が無かったわけで、本当にできるのなら村の経済的負担を軽く賄えると。
「そんなわけで、自分の力の確認が終わったら教会をやってみようと思います」
『いやぁ、それにしても良い人たちですねえ。私も会ってみたいですけどアンデッドはリアル基準で行くと怖がられますかね』
「う、うーん……そこまでは聞いてなかったなぁ、明日にでも聞いておきますよ。でも本当に良い人たちでよかったぁ……これであとは筋肉質なジェントルマンがいればこの村に永住するのに」
『あはは、前に言ってた映画の……ガンダルフでしたっけ?』
「アラゴルンです! そこまでジジ専じゃないよ!」
楽しい会話は止まらない。時折強制的に<鎮静化>されることにムッとしてしまうが、そういえばアイコさんは感情抑制されてないみたいだなぁと不思議に思う。天使で神官系統のクラスだろうけどアンデッドを回復できるのも謎だったりする。聴いては見たいが今は水を差すこともないかと考えながら、『男臭いエロス』の話を聞かされ続けるモモンガであった。
ただ何故か好きな男性はと聞かれて『やっぱたっちさんですかね』とか言っちゃったのは拙かったかなぁと……
…………
……
…
「モモンガちゃんはたっち・みー君かぁ……確か結婚してたよねぇ」
モモンガちゃんも辛い恋を、とか呟きながらソーコに向き合う。村長婦人に頂いたワンピースを早く着てみたいが、ソーコを待たせすぎてしまった。家の扉を開けた瞬間地下からトットットッとすごい早さで登ってきてくれたのだが、モモンガと会話を始めてしまったので昼食の支度をしていてもらったのだ。
全ての用意を終えてテーブルの横に綺麗な姿勢で立っているソーコを見て、メイドだし仕方ないのかもしれないがもう少し楽にしていてくれてもいいのになぁと考える。
「座ってくれてて良かったのに、ここは私とあなたの家なんだからね。でもこの部屋は私とソーコの作業場になるかもしれないからパーテーションで区切った方がいいかな……」
何故か最初は頬を染めていたが、ソーコは何気に頭も良いのだろう。村長の話、税金の話、そしてモモンガが提案してくれた『そういえばソーコさんでしたっけ? 鍛冶が出来るならそれも活かせるんじゃないですか』って話を聴かされて、ちゃんと理解してくれたようで良かった。
二人して席に着き、昼食を食べながら話を続ける。ん~おいし。
「修理専門でしたが、簡単な武器なら作れますし……研ぎなどはどうでしょうかね?」
ユグドラシルには『武装破壊』という武器や防具にかかるバッドステータスがあったのだが、これをソーコに直してもらうために鍛冶師の
「修理はやめて、研ぎ専門かな。消耗品を使用せずに出来る修理なら受けてみてね。それと武器より農具かなぁ……出来そう?」
「農具と言うのを見たことが無いもので……申し訳ございません」
「全然申し訳なくないって。私ソーコがいてくれなかったら詰んでるもの。あ~生産職転移物が多いわけだよなぁ」
ソーコがいてくれて本当に良かったと呟きながら食事を続けていくアイコと、頬を真っ赤に染めながらも手と口の動きはまったく止まらないソーコ。
なにやらいろんなところで勘違いが加速してそうだが、そうして一日の半分が過ぎていく。
午後は夜までかかってしまったが、なんとかブラウスというかワイシャツを一枚作ることが出来た。ステータスの恩恵だろうか器用さが上がっているような気もしたのは、ミシンも無いのにここまで綺麗にできるとは思っていなかったからだ。
さっそくソーコに渡してオーバーオールの下に着てもらう。うんうん可愛い可愛い。おっぱいも見えなくて安心だ。これは作業着にしてもらって、ワンピース……いやスカートを作って外出用にしようと考える。
カーテンやなにやらで使わなかった布素材が結構あったのは良かった。ソーコが見つけてきてくれたのはノービス装備と多少の防具とイベント装備。そのほかに探し出してきてくれたのがこの布素材なのだ。
「ソーコもご苦労様、今日はもうお風呂入って……あー食べなきゃだめよね」
ソーコには上階のリビングをカーテンで半分に区切る作業をしてもらっていた。入り口側の揺り椅子や暖炉ぐらいしか無かった空間と、後ろ側のキッチンとテーブル、地下階段が隠れた床に分かれた感じだ。
忘れがちなソーコのペナルティは、考えてみれば怖い。もし自分が食事をしてなくてもあなたは絶対に食事をするようにと命令しつつ、「これは太るかなぁ……でも体形って変わるのかなぁ」などと悩みつつ、二日目の夜が過ぎていくのであった。
ユグドラシルの貨幣価値がまったくわからないので昔やってたMMOの貨幣価値を数十倍くらいした感覚で書いてます。 シャルティア蘇生費用500Mを簡単に出せる感覚くらいしか情報が無いものねw