周辺諸国最強のお嫁様   作:きりP

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ワンピースはモモンガさんが魔法で直してくれました。サスモモ。



7 堕ちそうで堕ちてないけどちょっと堕ちてる天使

 

 

「シャルティアだよな?」

「シャルティアでございますね?」

 

 ログハウスの手前、『噴水の上部でしゃがみ込んでいる彫像』を見上げながら、呆然としている漆黒のローブの男と黒翼の美女。

 

「あぁ、『小便少女』だそうですよ。引っ越し祝いでペロリ君に貰ったの。製作はるし★ふぁー君だって」

「ぶふぅっ!?」

「ペロロンチーノぉおおおお!!」

 

 あの邂逅の後はてんやわんやの大忙しであった。語り合いたいことが多々あったものの、今はこの状況を落ち着ける方が先決だと、村の男たち、アイコの魔獣、なぜか消えないデスナイトを動員して騎士たちを広場まで引きずり出し、櫓の台座に縛り付けた。

 その間アイコとモモンガとアルベドは、村をくまなく捜索して、この襲撃による村の犠牲者はいなかった(・・・・・・・・・)と村長に報告している。

 

 村長宅での話し合いは昼近くまで続いた。名を尋ねられたモモンガは、少々悩みながらも自身をアインズ・ウール・ゴウンと名乗り、アドリブで魔法の研究をしていたところ自宅ごとこの付近の森の中に転移してしまったということ。だが娘が見当たらず、妻と探し回っていたところ、この村が襲われているのに気づき偶然助けに入ったということ。娘を温かく迎え入れてくれていた村長他村人に対して感謝の意を伝えた。

 なんかその間アルベドはもうアインズにデレデレであった。

 

 村長としてはさぞや高名なマジックキャスターであろう御仁に対し、無報酬でとは心情的にも外聞的にもいかなかったのだが、偶然の邂逅で両者に良き結果になったのですからと遠慮され、『ただ、少々この森の中は危険で娘を連れて行きたくはないのです。娘もこの村を気に入っているようなので、このまま娘だけ住まわせて貰えないでしょうか』という要求に、喜んで受け入れることを伝え、アインズの懐の広さに感動していた。

 

 アイコは何気にこの戦いでは特に戦闘面では目立ってはいなかったようだ。本人も力を隠すことなど考えてはいないのだが、逃げ惑う村人を襲う騎士に一撃入れて離脱し次へといった行動が、村人たちに気づかれていなかったようなのだ。ただ、昨日お披露目されていた召喚した魔獣や、回復魔法の力の方に喝采を寄せられていた。

 

「とにかく何にもないところだけど入って入って。ソーコを紹介するよ」

 

 あの男は……とぶつぶつ呟き続けるアインズと、笑ってはダメと口元を抑えて震えているアルベドを引きずって自宅に招待する。

 村としての対応は村の代表たちで決めてもらおうと、会議の場をお暇させてもらったのだ。勿論何かあったら呼んでくださいと伝え、村長も久方ぶりの家族の語らいをと笑顔で送り出している。

 

「おかえりなさいませアイコ様。ご無事で何よりでございます」

「ええ、ただいまソーコ。あなたも無事で本当に良かったよ。別方面から村を救ってくれたナザリックの方をお連れしたの。紹介するわね」

 

 何気に現在村の女神とさえ呼ばれかねない少女がソーコだ。白銀色のワンピースを着て、懸命に鐘を鳴らし声を擦り切れさせて避難を叫ぶ彼女の姿は、村人たちの心に深く印象に残ったようだ。

 見た目的にはエンリと変わらないような年齢なのだが、一躍村のお嫁さんにしたい候補のトップに躍り出ている。嬉しいけどちょっと複雑なアイコだった。

 

 四人で簡単な自己紹介を済ませ、所謂仮名アインズ・ウール・ゴウンでこの世界に踏み出し、来ているかもしれない仲間にアピールしたいというモモンガの思惑を説明され納得するアイコ。

 自身の名前がネタネームな為に、便乗してミドルネームとファミリーネームを借りることにした。勿論この村ではアルベドもだ。

 

「ソーコはまぁしょうがないけど、アルベドさん(・・)も座ってくれていいのよ? お客様なんだし」

「いえ、護衛の立場でもございます。真に申し訳ございません」

 

 アルベドの立場としては複雑でもある。ナザリックの頂点アインズの御友人でもあり、ナザリックの維持に貢献して頂いていた、大恩あるお方。他の守護者からの評価も上々であり、少々思惑と違ったが、デートに誘われたり夫婦になったりなどのイベントは彼女の差し金なのだろう。自身も友誼を結んでおきたい方ではあるのだ。

 ただ階級までは分からないが、以前見た記憶を思い返すと三対六枚の翼は上位天使。アインズにとってどころかナザリックにとって天敵と言ってもいい存在である。

 相手が女だからと嫉妬する以前に、とんでもない危険人物であるという認識も忘れるわけにはいかず、おいそれと席に着くことなど出来ないわけだ。

 

「アルベドは心配性なんですよ。アイコさん天使ですからね」

「ええ!? あー……そうよね。でもアインズさん(・・)私が弱いって知ってるでしょうに。アルベドさんに教えてあげてよ」

 

 何気にアイコの敬称が変わっているのは事前に「守護者とかいるときは『モモンガちゃん』はやめてくださいね」とお願いされているからだったりする。

 

「いやー、そんなこと言われても私アイコさんのビルド知らないですし……昔私より強かったじゃないですか」

「いやそれ多分十年以上前の話よね……あの当時アインズさん始めたばっかりでしょう」

「あはは、ですね。アイコさんはオープンからなんですか?」

「それがおかしいのよね。以前計算したら私十三年やってるのに、ユグドラシルは十二年目らしいのよ」

「あー……ベータ組でしたか、しかも本人気付いてすらないとか……」

 

 アインズもほぼ初期からのスタートだったのだが、さすがにベータ組には先を越されていて当然だ。

 

「アルベドさん、私はね『中位天使』で下から……四つ目の天使なのよ。ほら」

 

 そう言いながら翼を再構成させて二対四枚の翼を広げる。

 

「記憶違いだったのでしょうか……確かに三対六枚の翼を覚えているのですが……」

「それは多分私の装備ね。狩りに行くとき以外は大体付けてたから……ほらこれね」

「なっ……なるほど」

 

 さっとアイテムボックスから取り出した『天使セット』を装備する。種族が天使であるためほとんど無意味な効果のその装備は、単純におしゃれアイテムになっている。

 

「私は支援職なの。ナザリックで言うならちょっと戦えるペスって認識でいいと思うよ」

「ペア狩りしてきた感想から言うと、茶釜さんぽいこともやってたような……それより聞きたかったのは私にも回復通すのが謎だったりするんですが」

 

 ゲーム時代ははぐらかされたが、この現状では教えてくれるのではないか。そんな思いをもって問いかける。

 ユグドラシルにはカルマ値というものがある。信仰する神の選択にもよるが、プラスに隔たっているとアンデッドを回復させるような魔法は覚えられないはずなのだがアイコは使えていたのが謎だったのだ。

 

「私ね、週に二日くらいしかログインしてないのに、一時期どこかのギルドメンバーに入れ代わり立ち代わり連れまわされてね、突発的なPKKとかにも参加させられちゃったりしてね、カルマ値-300なのよ。+300以上じゃないとなれない天使だったのに」

「ほんっと、申し訳ございませんでしたぁっ!! ええ!? でもそれだけが理由じゃないですよね?」

 

 <大致死(グレーター・リーサル)>は、確かにシャルティアも使えるが今度は逆に<大治療(ヒール)>が使えることに納得がいかない。ルプスレギナがカルマ値-200で、正のクレリックとしてはギリギリだったはず。

 

「これ『堕天使』って職業(クラス)なんだけど、るし★ふぁー君とは成り方が違うのよね。あの子のは種族だし。名前が同じなだけの特殊クラスみたい。信仰系魔法詠唱者で天使でカルマ値-300達成した上でのレベル95で出てきたから、私以外取ってる人いないんじゃないかなぁ? 効果は対立属性の呪文も使えちゃうってことかな」

「うっはぁ……るし★ふぁーさんが懐いてたのはそのせいもあるんですかねえ。やっぱり強いんじゃないんですか?」

「いえ特に。支援の幅が広がったくらいですかね?」

「……」

 

 アインズとしては納得いかないがきっと本人もあまりよくわかっていないのだろう。かなりのロマン型なんじゃないだろうか。頭の中で『光と闇の二神信仰』とかいう単語に、なんかスゴイルビを振った必殺技的な名前が浮かぶが、恥ずかしくなって止める。

 

「なんにしても、支援とかサポートタイプの私に強いの? って聞かれても『戦わないよ』としか言いようがないんですが……」

「あー……そういえばそうですよね。遠隔視の鏡で戦ってる姿を見てたからつい……」

 

 ゲームで言えば初期マップのザコ敵を殴ってるようなものであった。しかも魔法詠唱用の攻撃力皆無な固いだけの杖で。

 

「ナザリックにも遊びに行くけど、そこまで警戒しなくていいからね?」

「はっ、はい。それでもこの場だけは。本当に申し訳ございません」

 

 それでもやはり守護者統括。理解はしたものの、他者のホームグラウンドで隙を見せることは出来ない。

 

「すまないな、アイコさん。それで遊びに来ていただけるのはありがたいんですけど、後々のことでちょっと提案があるんです」

「追々わかってもらえればいいよ。それで提案って?」

 

 アインズはこれからこの世界への情報収集に入るわけだが、やはり来ているであろうユグドラシルプレイヤーが不安材料なのだ。対外的に現地民にナザリックが見つかった場合、敵対してしまうこともあるだろうと。

 その際にナザリック上層に小屋でも建てて、プレアデスにでも常駐していてもらおうと考えていたのだ。何かあった際の大義名分。メイドたちが殺されたので仕方なく返り討ちにしました的なアレだ。

 つまり作る予定である小屋と、このログハウスを『転移門の鏡』で繋いでもらえませんかと言うお話だ。

 

「ああ、便利そうでいいわね。アインズさん的にはメイドも守れるし、ナザリックに敵対的なユグドラシルプレイヤーが来ちゃった場合緩衝材にもなれるし、いいんじゃない?」

「ご名答です……すいませんなんか利用しちゃってるみたいで悪いんですが……」

「全然悪くないよー。ソーコにもメイド友達が出来てくれれば嬉しいし」

 

 ソーコは感涙しているが、アルベドもまた御方々の思惑に感激していた。認識としては間違ってはいないが、ある意味アイコを捨て駒に使おうとしているのだとの考えに至り、そしてそれをアイコも受け入れているという事実。不死の巣窟を守る聖者の絶対防衛ラインがこのちょっとした会話で成立してしまったのだ。

 実際にはアインズもアイコも通常の意味で知人宅にすぐ遊びに行ければいいなって思いの方が大きいのだが、御方の思惑と天使の懐の広さに感激し、少しだけ残っていたアルベドの不安も綺麗さっぱりなくなっていた。

 ただ、相手が女であるが故と、普段とは違った少し砕けた口調になっているアインズに、別の意味での不安が頭をもたげてきていたが。

 

 

「さて……後の話は置いておくとして、どう思います? 私あいつらから色々搾り取ってやろうって思ってたんですけど、国が出てきちゃいましたよね」

「ナザリックとしては関わりたくないですね。どこが何と繋がってるかもわからない状況で下手を打ちたくはないです。すでに関わっちゃってますけどこれは正当防衛として、深追いは不要かと」

 

 先ほどの村人の捜索時に、森方面で接敵した騎士や、村の外で待機していた騎士を使って蘇生実験などの魔法の実験を行っている。低位階蘇生魔法では風化。高位階で復活した騎士は特に自身の拠点に飛ばされるということも無かった。『死に戻り』つまりセーブポイントに戻るといったことはないようであった。

 勿論魅了魔法などで情報も取得。帝国の騎士ではなくスレイン法国の偽装兵であるということも判明している。

 その過程で亡くなっていた村人を人気のない家屋で蘇生している。このことに関してはアインズも何も言うことは無い。『村の人間であるアイコ』が責任を持つと言ったからであるが、人間種としての残滓も捨て去りたくなかったからだ。人間を救いたいと思えなかった自分に対しての戒めでもある。

 

「私も今のところはこの村でゆっくり暮らしたいかなあ……なにが出来るのか自分を知りたいし、あと筋肉質な旦那様が欲しい……」

「よく骸骨を目の前にして言えますね……まあそれは冗談として、この村にアイコさんが常駐して情報を得れるのは大きいです。今更ですけど本当に会えて良かったですよ」

「なんかずっと魔法でやり取りしてたから久しぶりって感覚が無かったですね」

 

 そう言って二人で笑いあう。村が落ち着いたらすぐにでも遊びに来てくださいと告げ、アインズがそろそろお暇しようかなと思っていたところ扉がノックされる音が聞こえた。ソーコが小窓から確認すると、村の男性のようだ。

 

「はい。なにかありましたか?」

「ソーコさん、それにみなさん。なにやら騎士風の一団が村に近づいてくるみたいなんですよ。村長がアイコさんたちにも連絡をと」

 

 なにやらイベントはまだ序章のようである。アインズとアイコはお互い見つめあうと頷きあい、代表してアインズが答えることにする。一応父親と言うことになっているのだ。

 

「すぐさまそちらに伺います。ソーコはお留守番だ。ここには女性や子供たちを集めましょうか、その方が安全だろう。アイコは来るなと言っても付いてくるんだろ?」

「もちろん!」

 

 何気にアクターの生みの親。アインズもなかなかに頭が回るし演技派であった。これで中身が女性好きな女性だというのだから面白いものだなと、いまだ見当違いの考えを持ち続けるアイコであった。

 

 





オバロのカルマ値の効果とか全然分からないので、こんなことにも使われてるんじゃないかなーって感じの妄想で書いてみました。このチートもう使う機会が無いんじゃないかと……w

あとD&Dでクレリックって強職なんですよね。さすがに魔法無しの殴り合いならウィザードには負けないかも。つまりモモン(戦士職Lv30相当)よりかは強いんじゃないかなーと思いますが、戦わないのでどうでもいいですねw

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