この次辺りで完結予定でしたが、もうちょっと伸びることになりましたw すまんのw
今回のお話で一章完結にしようと思います。
両足をその男の片足に絡み付け、厚い胸板に頭を埋めて深呼吸を繰り返す。ごめんモモンガちゃん、この鎧がすごく邪魔だから魔法で消してと思うも彼女はいない。
待て落ち着け。思わず一緒に倒れこんでしまったがこれからどうする。
そうだ! 転移すればいいんだ! どこに? いや……でもお外は恥ずかしいし……
「だっ、大丈夫ですか!? みんな! 戦士長を担ぎ上げろ」
おい! やめろ! あ、違うそんな場合じゃなかった。思わず抱きしめる力を強め『ミシッ』っと嫌な音が鎧から聞こえた瞬間我に返る。
出ていく時より遥かに数の減った十人に満たない戦士団のうちの二人が、ガゼフを抱え上げ土間に寝かせる。
「良かったです、お嬢さんが戦士長に潰されて怪我でもしてたら笑えませんですよ」
そう言って差し伸べられた手をつかみ起き上がる。なかなかにイケメンな青年だが、傷が痛むのか肩で息をしているのを見て、ものすごく気まずくなった。
「申し訳ございません……思わず膝から力が抜けてしまって、すぐに治療しますね」
「え?」
さてどうしよう、範囲でいいかな? いや待てよ、回復させたらあの主人公のことだ。すぐさま取って返して闘いに出ていくのではないだろうか。でもそんなこと言ってる場合でもないだろう。
そんなポーズなど必要はないのだが、手持無沙汰だったので両手を組んで軽く目を閉じる。
「<
途端アイコを中心にまばゆい蒼い光が倉庫内を照らしていく。ふぅ、と一息はいて目を開けると戦士たちが、いや倉庫内の全ての男性が驚愕の瞳を向けてくる。
え? まって、これより下位の集団治療魔法なんて無いよ? これでも驚かれないように結構気を使ったつもりだったんだけど……まさか痛いラノベの『こんなことなんでもないですよ』的なことをやっちゃったんだろうか……
アレは嫌だ寒すぎる。だ、大丈夫よ! まだ巻き返せる! こう魔力が欠乏した的な感じで倒れこめばワンチャン!
思い立ったら行動は早い「くぅっ……」と軽いうめき声をあげてよろよろと倒れこむ。
「はぁ……はぁ……大丈夫ですか? みなさんの怪我は治りましたでしょうか?」
「はっ!? はい! 傷が消えて痛みもなくなっております! 皆はどうだ!」
「傷がふさがっています……すごい!」
「動けるぞ……さっきまでふらふらだったのに……」
よしよしとその報告に満足し、どうせ倒れるならあの人の上で倒れようと思い立ち、ふらふらとよろめきながらガゼフのもとまで歩いて行く。
「ガゼフ様の怪我も治ったようで……!?」
土間に寝かせられているガゼフの手を取り……そして気付いてしまう。左手薬指にはめられた指輪に……
「ぐふぅっっ!!」
「とっ、吐血!? アイコさん!? だっ、誰か毛布を! アイコさん無理しすぎだ! 村の者たちをずっと回復していたのに、こんなすごい魔法を使うなんて!」
村長の気遣いが痛い……いや第五位階でも拙いのがわかっただけ……待てよ? ここ異世界よね? 左手薬指の指輪が結婚指輪だとかいう風習はあるの? そもそも私だって10の指に10の指輪をしてたじゃない。なにかの効果がある装備アクセサリって考えの方がこの世界では合うんじゃないの?
まだだ……まだまだ終わっていない!
私に毛布を掛け、こんな土間じゃなくてどうにかアイコさんの家に運んだ方がいいんじゃないかと議論し始める村長と村の男性たち。そしてそれとは別に次々に感謝の言葉をかけてくる戦士たち。
でもこの状況で聞くの? 『戦士長に奥様はいらっしゃるのですか?』とか、さすがに聞けないよ……とにかく一旦頭を整理するために一人になりたい……
「私は大丈夫です……ですが自宅で休ませてもらおうかと、ウルフを呼びますので危険はないかと思いますので」
それなら戦士の方についてもらった方がと言う村長の言葉に、倉庫に張られてある魔法的防備の外に出てしまうと戻れなくなりますからと遠慮し、結構強引ではあるが外に出ることにした。
男性たちに見送られ、ウルフの背にもたれながら考える。でもあんな素敵な人に特定の異性がいない方がおかしいわよねと……
はぁ、と深いため息を吐いた瞬間、<
『アイコさんこっち来れますか?
「えぇえ!?」
頭の切り替えは早い方だ。さっと翼を出して上空へとグングン上がっていく。その間早着替えによりメイン装備に着替え、アイテムボックスから神聖攻撃対応用の盾と、武器ではあるが防御特化のメイスも出していく。
目先の恋愛事より、知人の……いや、あれだけ毎夜
「見えた! って……え?」
●
「最高位天使を召喚する。時間を稼げ!」
ここまで圧倒的優位に事を進めてきたアインズであったが、敵の指揮官が持つ『魔封じの水晶』に最悪を想定する。全力を出さなければならない
申し訳無いが手を貸してもらおうと、砕かれる水晶を見つめながらアイコに連絡を取るアインズであったのだが……
「……本当に申し訳ございません」
『……』
「ふはは! 恐れるのも当然だ! だが誇れ! お前はこの最高位天使で相手をしなければならないという決断を私にさせたのだ。 お前にはその価値がある」
お前に謝ったわけじゃないよと思いながらも、目の前に出現した『無数の光る翼の集合体』を見つめる。指揮官やその部下たちが喝采の声を上げているが、アインズ的にはどうしようかと悩んでしまう。
アルベドからさほど遠くない上空後方にアイコがいる気配がすると教えられたのだが、目の前の光景に頭が痛くなってくる。
『一応……出ようか? なんか盛り上がってるみたいだし、モモンガちゃんも召喚的演出でさ』
「あーそれは面白いですね。ではそれでお願いします。アルベドも済まなかったな。わざわざスキルまで使ってもらったのに。それでこちらも天使を召喚することになったので、あの人の戦いを見学させてもらおう」
「いえ、想定以上の召喚を考えれば当然のこと。それに、ふふっ、それは心強いですわ」
そう言って邪気の無い表情で微笑むアルベド。アインズを守るうえでこれ以上ない防備であり、自身が出たくもあるがそれ以上にアイコの戦い方も見ておきたかったのだ。
「ええい! なにをごちゃごちゃと!」
「ああ、すまんな。それではこちらも最高位天使を召喚させてもらおう」
「なっ、なんだと!?」
スレイン法国の指揮官、陽光聖典隊長ニグン・グリッド・ルーインは苛立ちのままに発した言葉の返答に、驚愕の表情を見せる。
「出でよ! アイ……うーん……ラブリィイイ・エンジェール!!」
『ぶふっ!?』
アインズが両腕をぶわさっと上げると、上空で不可知化して待機していたアイコが自身を魔法で光り輝かせて姿を現し、ゆっくりと降りてくる。
三対六枚の翼を生やし、羽の生えたヘルムの頭上に輝くのは光の環。白と蒼を基調としているが、それ自体が光を放っているかと思われる程の光沢を見せるドレスと細かな彫金が施された銀色の胸当て。純白の両腕のガントレットの先にはこれも伝説級と思われる様な盾と鈍器を装備している。
「なっ!? 黄金!?」
そして特筆すべきはその顔だ。ニグンも資料の上だけではあるが一応その顔に見覚えがあった。この国の王女『黄金のラナー』に似通ってはいるが、その美しさと高貴さ、そして放たれる威圧感は桁外れであった。
「それではラブリー・エンジェルよ、我々を守れ」
「はい!」
「くそっ! 天使よ! <
あんなものはハッタリだ、
自身も初めて見る圧倒的なまでの光の本流。その攻撃にさらされれば塵さえ残らないと確信できる。しかし……
「まあ! なんともありませんね」
「うーむ……少しはダメージを受ける感覚も知っておきたかったんだがな……」
「おい!? やれって言ったのアインズさんでしょ!?」
無傷。まったくの無傷であった。これにはさすがの精鋭集団もひきつった顔を晒すしかなかった。もう……どうすればいいのだと。
「では続けて反撃だ! 二神の力を見せるがよい!」
「え? 魔法撃つの? 高位階は覚えてないんだけどなあ……<
「え? ……あ!」
ぶつぶつと何を放とうか考えているアイコのその発言でアインズも合点がいった。いつも彼女が言ってた「私は支援職だからね」といった発言。善悪と選択魔法が増えたはいいけど、取得魔法数は増えないじゃないかと。多文課金分の+100を入れて400に届かないといったところだろう。支援特化ってそういう意味かと。
「殴り倒してもいいんですが、地味よね。それなら私じゃなくてもいいような。錬金カプセル(武器に使用すると特定の属性になる触媒)も持ってきてないからこの武器じゃ倒すのに時間かかるとも思うし……どうします?」
「ああ、そうですね。ホントすいませんでしたわざわざ、この埋め合わせは必ず」
「いや埋め合わせって言うほど私役に立ってはいないですし、代わりに戦ってもらってたのだから何も言えないんだけど……でもちょっとだけお願いがあるの! ・・・・・・聞いといてもらえませんか?」
「なるほど指輪を……あはは、承りましたよ」
アイコの説明を受けて、アインズもそれを見たら既婚者と思ってしまうかもしれないなあと考えるが、確かに異世界だもんなと納得する。どうにも『リアル』『ユグドラシル』『異世界』と間にゲーム世界を挟んでいるが故に、たまにいろいろと混同して考えてしまうのはしょうがないところであろう。
「アイコさんは戻ってても大丈夫ですよ。言い忘れてましたけど後詰も来てるんで問題ないですし」
「そうですか? うーん自宅に戻るって言っちゃいましたし、お言葉に甘えて戻らせてもらいますね。頑張って……って言葉も不要ですね。それじゃまたあとでね」
そう言って翼を輝かせて飛び去るラブリー・エンジェル。それを柔らかな表情で見送っていたアインズとアルベドであったが、「も、もう一度だ!」とか言う煩わしい声に、あーまだやるんだと魔法を放つ。
「今度はこちらの番だろう? ……絶望を知れ。<
…………
……
…
時刻はそろそろ日が昇る頃合いだ。
昨日モモンガちゃんたちはあれから一時間もしないうちに戻ってきた。いや、時間を潰して一時間で戻ってきたと言った方が正解か。
村長ほかガゼフがいる倉庫の方へ挨拶をした後、アイコの家に回り、女性たちを解散させた後しばらく歓談。「やはり既婚者じゃありませんでしたよ」との吉報と「私からもあの人間にアイコ様を売り込んでおきましたので」という心強い言葉を残し、ナザリックに帰っていった。
一応私は魔法の使い過ぎで体調が悪いということになっているので、もう起き上がっていたという戦士長に会いに行くことは叶わなかったのだが、一晩泊るということなので今日にも会えるだろう。
そして今問題なのはそれではない。私たちの歓談中、徐々に瞳からハイライトが消えていくメイドに不安になったものの、一晩一緒に寝たのでもう落ち着いたと思っていたのだが、隣で寝ていたはずのソーコがいない。
リビングへ上がっていくと、広場のある方向から微かだが妙に力強い声が聞こえる……
「ガゼェエエエフ!! 私を倒さない限りぃ、アイコ様に手をかけるなんて出来ないと知れぇ!! 早く出てきなさい!!」
あー……私愛されてるなあ、なんて思いながらもどうしたもんだろうと顔を赤くしながら、すぐさま広場へと走り出すのだった。
『カルネ村には二人の聖女がいる』
そんな面倒な噂が流れだすのは、もう止めることは出来ないかもしれない。
アイコさんの装備はよくいるヴァルキリーっぽい感じをイメージして頂ければ。
ここから先はまだ何も考えていないので更新が遅くなると思います。日常回の方が好きなので、そういうのも書くかもw ガゼフ関連はラナーさんの先読みに賭けましょうw