_____________「っで、なんであたしなの……?」
「そんなこと言わないでよ~。ねっ?
友達でしょ?」
目の前の不服そうな友人に手を合わせて懇願する。
「……………へぇー。
零にとって愚痴を聞かせるのが友達なんだ…」
そう言って、友人こと
うぐっ!!
し、辛辣……
「………っはぁ~。
別にあたしじゃなくてつぐみで
良いじゃん。っていうか寧ろ、
つぐみの方が良いでしょ?零の場合」
「い、いや、ちゃ、ちゃんと
羽沢さんのことは誘ったんだよ?
でもお店が忙しくなりそうだからって……」
っはぁ~。
どうして上手くいかないのかな……
私、運が無さすぎでしょ…
周りを見渡すと、いつもより少し人が賑わっている店内の様子が目に映る。
それを見て、もう一度ため息をつく。
こぼれるため息が止まらない。
「………まぁ、つぐみはあぁ見えて、
けっこう鈍感だから…」
「だよね~。羽沢さんって
やっぱり鈍感だよね」
幼馴染みから見ても、羽沢さんはやはり鈍感だという。
まぁ、今までしてきた私のアピールは全部と言って良いほど、羽沢さんの鈍感によって虚しく散ってきたのだから、今更という感じがしないわけでもないけど……
「ねぇ~、ら~ん~?」
「………なに?」
「これからどうアタックすべきだと思う~?」
「………あたしに聞かないでよ。
そういうのはひまりとかに……」
「ん?ひまり?ひまりって上原さん?」
確か隣のクラスの……?
あっ!そういえば、蘭と幼馴染みなんだっけ?
確か幼馴染みでバンドもやってるって聞いたな…
思えば、蘭って幼馴染み多いよね。
私、実は幼馴染みって感じの子は居ないんだ。
言えることと言えば、姉さんがたくさんいるってことかな…?
………何だかちょっと蘭が羨ましい…
「ん…………ひまり、呼ぶ?」
「えっ!?上原さん、呼ぶのっ!!?
え、えっと、上原さんのこと、
よく知らないんだけどさ。
そ、それでも、大丈夫な感じ?」
初対面でいきなり恋愛相談ってことになるけど……
「大丈夫でしょ、ひまりだし。
ひまり、コミュ力だけはあるから…
それにあたし達の中では、
恋愛系ならひまりが一番詳しいし」
「へぇ~。そんな人が来るなら、
ちょちょいとアドバイスもらえそうだよ」
いやぁ、
ちょっと、会うのが楽しみかも…
って!?コミュ力だけはあるって言わなかった!!?今っ!?
"だけ"って何っ!?"だけ"って!!
他にも取り柄みたいなのあるでしょっ!!?絶対っ!
可哀想だから、やめてあげてっ!!?
「っていうかさ、零のところに
少女漫画作家……だっけ?確か居なかったっけ?
その人に相談すれば良いじゃん…」
「なっ!?そ、そんなの、は、恥ずかしくて
出来ないよっ!
す、菫ねえに恋愛相談なんて、
絶対にからかわれるって!」
「…………何それ……
友達に恋愛相談は出来るのに、
家族には出来ないの……?」
「む、無理っ!!」
そんなことしたら、恥ずかしすぎて悶え死ぬよっ!!
「っはぁ~……」
少し顔が赤くなってる私を見て、蘭は大きなため息をつくと、そっと携帯を開いた。
《ひまり、どうせ暇でしょ?
羽沢珈琲に来て》
《ひまり、どうせ暇でしょ?
羽沢珈琲に来て》既読
《ヒロイン》
羽沢 つぐみ
-基本的な設定はそのまま
-自分の事に関してはかなり鈍い
(結果:零の気持ちにも気づいてない)
-純粋で人一倍努力家な健気系女子
-生徒会役員で忙しいのか、
よくあちこちで見かける
-羽沢珈琲店の看板娘