___________「ご飯、美味しかったですね~」
「そ、そうですね。美味しかったです」
羽沢さんの一挙一動にドキドキしながら、当たり障りのない返答をする。
こんなんじゃ駄目だと頭では分かっても、どうしても行動するとなるとたちまち頭が真っ白になって格好悪い姿を見せてしまっている。
好きな人には格好良いところを見せたいものであるが、今のところ一回も見せれてない気がする。
「えーっと、次はどこに行きますか?」
っと、そうだった。
次に行くのは……
「ち、近くにあるショッピングモールに行きませんか?
あの、実は姉から映画のチケットをもらってまして、
その、は、羽沢さんと一緒に見れたらなぁ~って…
だめ、、ですかね?」
また、姉?なんて言われそうというか思われているであろうけど、し、仕方ないものは仕方ないし……
っというか、その映画のチケットって少し前に菫ねえに貰ったんだよね。
でもホラー映画で私はそういう系苦手だから、蘭にでもあげようと思ったんだけど、すごく拒否られちゃって……
…………蘭も怖いの駄目なのかな…?
っとまぁ、そんな疑問は置いといて、そのチケットの有効期限は明日までなので、今日のうちに使っておきたいのだが…
これはもう羽沢さん次第というものである。
「はいっ!そうしましょうか!
最近、映画とか見てなかったので、
久しぶりに見るんですよっ!
少しというか結構楽しみです」
そう言って、にこっと羽沢さんが頬笑む。
その笑顔に胸をズキュンッと撃ち抜かれる、私。
…………羽沢さんの笑顔には何度くらっても勝てる気がしないよ……
顔を赤く染めながら、私は羽沢さんをチラリと見る。
すると羽沢さんの視線と私の視線が交わった。
ドキリとして目を慌てて反らし、ぎゅっと羽沢さんの手を握る。
顔がぶわっと熱くなるのを感じながら、菫ねえ直伝の必殺技を繰り出す。
「あ、あの、こ、これから人通りが、
だ、だんだん増えていくと思うので
そ、その、は、はぐれないように……」
こ、これで本当に良いのだろうか……
こんな言い訳で本当に通じるのだろうか……
何だか、ひかれそうな予感しかしないんだけど……
チラリと羽沢さんを見る。
…………っあ
「そ、そそそそそうですよねっ!
は、はぐれたら、、だめ、です、もんね…」
顔を真っ赤に染めて、きゅっと優しく握り返してくる羽沢さんの姿が目に入った。
そんな姿に、きゅんっと胸が高鳴る音を自分で感じた。
かわ、、いい……
顔をあんなに赤く染めて、視線をあちこち巡らす羽沢さん。
そうさせてるのは私自身なんだと、そう考えるだけで愛しさが溢れてきて今すぐ羽沢さんを抱き締めたい衝動にかられる。
無論、そんなことする勇気はどこにもなく、寧ろ欲しいぐらいである。
まぁ、とりあえず家に帰ったら、菫ねえに沢山お礼を言っておこう。
ついでに菫ねえの好物である抹茶プリンでも買ったあげよっと。
こんな羽沢さんの姿を見れたのは、普段の姿からでは想像できないが、あの菫ねえのお陰である。
そのくらい、朝飯前だ。
あっ。あと、カスタードとイチゴもか。
有栖ねえと結愛ねえにも買っておこう。
ちなみに神崎一家の姉妹は皆プリン好きである。
私の場合はコーヒープリン。
有栖ねえがカスタードで、
結愛ねえがイチゴ、
菫ねえが抹茶で、
私がコーヒーって感じかな。
っと、そんなことを考えてる内にショッピングモールに着いた。
ぎゅっともう一度繋いだ手に少し力を入れ、ショッピングモールの中に入っていった。
少々気まずい空気が流れながらも、嫌な気まずさではない。
彼女の愛らしさを感じることができる空気であった。
そしてそんな空気の中、彼女と映画館へ向かい、菫ねえの計算通りの時間に来ることができた私達はそのままスムーズにシアターに入ることが成功した。
さすがとしか言いようがない……
まぁ、あぁ見えて菫ねえ天才だし…
っというか、私の姉たちは皆天才だ。
それこそ私が一番ダメダメなくらい。
そんな菫ねえが少女漫画作家となって恋愛分野に大きく才能が伸びだした。
そんなわけでデートのスケジュールなんてお手のもの。
相手の性格とか好みから予測し、ここまで正確なスケジュールを編み出した。
菫ねえはやはり凄いと思う。
菫ねえの凄さを実感しつつ、シアターにあるシートに腰を掛けた。
体の力を抜きつつ、羽沢さんとの手は離したくないため、少しだけ力を残す。
つまり、ちょっとしたリラックス姿勢をとった。
すると手の力まで抜けて手が離されると思ったのか、羽沢さんがぎゅっと手に力を入れてきて、指の間に指を入れて絡めてきた。
そのつなぎ方は恋人つなぎというもので、羽沢さんが離したくないって言ってるみたいで、すごく嬉しかった。
でもやはり恥が上を行き、ぎゅっとつなぎ返しつつも今もなお赤かった顔がさらに赤くなっていく。
羽沢さんをチラリと盗み見れば、顔が今まで以上に真っ赤になっていてそんな姿を見た私は、胸が甘く締め付けられた。
「えっと、そ、その、こ、これから見るのって、
ほ、ホラー映画、、なんですよね?」
「は、はい」
「わ、私、あまり得意じゃないんです。
だ、だから、その、ず、ずっと、
て、手を繋いでてもらえませんか?」
「えっ?」
手を繋いでてもらえませんかって、寧ろずっと繋いでていいのっ!?
私こそ、そこまでホラー映画は得意じゃないし、そ、それに羽沢さんと手を繋ぐの、す、好き、、だし。
っというか、ずっと繋いでたいし…
「あの、だめ、、ですか?」
頬を赤く染めて、うるっと少し潤んだ目で上目使いに私を見てくる羽沢さん。
ドキッ!
か、可愛すぎる……っ!!
ズキューンっと胸を撃ち抜かれ、そのまま甘く鼓動を早められる。
狙ってやってるんじゃないかって程きゅんっときて、でも羽沢さんの様子を見る限り素でやってるのが分かって……
そういうので余計鼓動が激しくなっていく。
ぎゅっと繋いだ手に少し力を入れる。
そして恥ゆえに視線を少し反らしながら、口を恐る恐る開いた。
「だめじゃ、、ないです。
寧ろ、私がそうしていたい気持ちが
あって、そ、その、は、羽沢さんが望むなら、
いつでも、いつまでも手を繋ぎますよ。
で、でも、本当に私なんかが相手、です、けど、、
い、良いんですか?」
自分でも何を言っているのか、何が言いたいのか、よく分からないまま言葉を紡ぐ。
まぁ、最後の言葉は流石に何を言っているのか分かるし、寧ろ聞きたいことであったが……
「か、神崎さんが良いんです。
わ、私は神崎さんだから、
こ、こんな風に繋ぎたいんですよ。
これが、ほ、他の人だったら、
こんな繋ぎ方はしません。
だ、だから、私と手を繋いでてください」
さっきより赤くなった羽沢さんが、視線が揺らぎながらも、大事なところでは私をまっすぐ見て、そう言ってくれた。
ぎゅっと胸が甘く締め付けられ、今すぐ羽沢さんを抱き締めたい衝動が私を襲う。
まだ映画の本編は始まってすらいないのに、うるっときて目の前の光景が少し歪む。
でも泣くなんて格好悪いところは見せたくないので、グッと涙を我慢して、代わりに羽沢さんと繋いでる手に少し力を入れて、ありがとうを伝える。
それに気づいた羽沢さんが、まだ先程の赤みを消しきれないまま、照れながらのはにかみ笑顔を見せてくれた。
またドキッと胸が高鳴る。
羽沢さんが可愛すぎるせいで、今日のうちにそれも1、2時間ぐらいで十数回は鼓動を早めてる気がする。
そんなことを感じていると映画が始まった。
いかにもホラーっという感じのBGMを乗せ、オープニングの映像が流れる。
ぎゅっと握られる暖かい手の温もりを感じながら、私は映画の世界に入り込もうとしていた。