前半 第三者視点
後半 日記です
八鐘 安珍旅 未来の天敵に遭う
彼女、女郎蜘蛛の姉は困惑していた。
何故こうなった?
彼が纏う異質なソレに思わず思考が止まってしまう。
あれは何だ?本当に人なのか?
「
彼の殺気に冷や汗を流し焦点が合わない目で僧侶を見る。一見すると間抜けの顔をした僧侶だが、何かを呟いた瞬間纏ったソレは常人の域を越えたナニか、妖怪以上に異質なのだ。
その顔で襲い来る手下を散歩でもしているかのように歩きながら瞬時に殴り殺し此方に向かって来る。
不意打ちの為死角に隠れてた女郎蜘蛛の妹とその手下は射程範囲に入ると一気に鉄より強靭な蜘蛛糸を僧侶に向けて集中的に吐き出し拘束、大人三人ぶんの大きさにになるまで糸を吐き出し続け拘束する。
それでも僧侶は何一つ表情を変えなかった。
アレは人の領域で出して良い力なのか?
巻き終えた瞬間突然燃え上がり、拳に炎を纏い僧侶が飛び上がっていた。
そのまま空中で回転すると天井の岩に両足を置き膝を曲げた瞬間一気に加速、一瞬で妹の正面に立つとがら空きの胴体に異常なまでに宿した退魔の力を拳に込め放つ。
その一撃で妹の人間の部分が消し飛び蜘蛛の部分だけが残る。奴は一撃で葬り去ったのだ。
あまりの出来事に思考が止まっていた手下は、妹が殺られた事に気付き、遅れて威嚇する。
しかし今度は炎を宿した薙刀を両手で持ち、一気に横凪ぎに振るい私以外の妖怪を焼き殺したのだ。
「流石に糸に巻かれて死ぬのはご面倒だなぁうん。」
そう呑気な声を言いながら首を鳴らし炎を纏っていた薙刀の火を消すと左肩に担ぎ、僧侶が近付いてくる。
彼の後ろには身体の半分以上が灰になった妹の残骸と手下の蜘蛛型の妖怪が糸と一緒に燃えている。
不味い!此のままだと殺られる!!こうなれば人質を!
そう思った女郎蜘蛛は人質作戦を取る。
「待て!動くな!これ以上動いたらこの薄緑の娘の命どうなっ....!?錫杖だけ....だと!?奴は一体何処に!」
(殺気!奴は其処に....いないだと!?馬鹿な其れに人質まで!....まさか!?)
しかし当の本人は何処かに消え、錫杖だけが地面に突き刺さっていた。
後ろから僧侶の殺気を感じ振り向くも居ない。
しかし、蜘蛛の糸で拘束していた筈の妻子がおらず、まさかと思い出口を見ると既に離れた場所にその妻子と僧侶がいたのだ。
「
「はい貴方...私は無事ですよ。清姫も気絶しているだけですよ。」
「良かった!....本当に良かった!!」
「旦那様方!避難の確保完了しました早く避難を!此処は危険です!」
「俺がアレを倒すんで、まぁ早く行った方が良いですよ旦那さん。」
「感謝する!」
「無事に生きて帰るまでが救出作戦ですよ旦那さん。」
そこに彼女等の父親が息を切らしながら妻子に近付き、後から増援で来た武装した武士と兵士達が彼女達を避難するよう促し此処から出ようとする。
僧侶は討伐する気なのか出口に結界を張り殿を勤めていた。
「逃が...!」
「破ァ!」
「ガァッ!?」
彼等を追いかけようとするが、僧侶から「破ァ!」と大きな声を発した瞬間、衝撃と退魔の力が一気に襲い掛かり吹き飛ばされダメージを負い、衝撃の余り身動きが出来なくなってしまう。
その威力は凄まじく、燃えていた炎が一瞬で掻き消され、女郎蜘蛛の妹と燃えていた妖怪の死骸は塵を残さずに消滅していた。
「何なんだ貴様は!貴様は何者だ!」
「俺の名か?俺の名は安珍。只今修行の旅をしているしがない僧侶さ。」
恐怖の余り叫んだ彼女に彼否、安珍は自己紹介をするが、彼女は頭が完全に真っ白になる。
何故あの怪異殺しの安珍が此処に!?旅をしている何て聞いてない何故何故何故なぜなぜ.........!?
「じゃあそろそろ終わらせるぜ。」
「えっあっ....待って!死にたくな.....!?」
「悪いが慈悲は無いぜ....」
「あっああああああ.....ぁぁぁぁぁ.....」
「破ァ!」
恐怖の余り女郎蜘蛛は少女のように懇願するが安珍の表情は変わらず拳を構える。
慈悲も持たないと言う台詞と共に、拳に退魔の力を宿した一撃を『破』の掛け声と共に放つ。
拳が迫った瞬間、女郎蜘蛛の意識は途絶え彼女の生命は儚く散り消滅した。
ーーーーーーーー
Θ月$日『糸に巻かれて死ぬんだよ!!』
天気晴れ
助けを求めた貴族の依頼、女郎蜘蛛姉妹の討伐は無事終了。
妻子を無事救出することが出来た。
いやぁマジで急いで良かった、本当忍者跳び便利だな。
女郎蜘蛛姉妹の強さは期待のルーキークラスなだけあって厄介だった。特に糸の攻撃が身動きが出来ない程に頑丈だったが血闘とのお陰で直ぐに脱出出来たし討伐も楽だった。
血闘無しでも脱出出来るけど魔術礼装の服が燃えて上半身裸になるのよね。
しかし『来いよベネット』便利だな。認識阻害の魔術を併用すると身代わりの術擬きが出来るなんて。
魔力の消費が割りに合わないのと強い奴だと直ぐにバレるのが弱点だけど。
俺に依頼した男何だがあの熊野国造の分家『真砂の庄司』こと庄司清治だった.....マジですか。
お礼をしたいという訳で彼の家で宴をする事になった。いやいや俺ドが付くほど平民系僧侶ですよ?
えっ俺『怪異殺しの安珍』と呼ばれて奥州でソレなりに人気?庄司さん握手してくれって他の武士の人も握手したそうに見ているしえぇ....
報酬金については少し多い駄賃位で良いと行ったらそれでは気が済まないと言われたので何かか会ったら手助けしてくれませんか?と約束をした。
こういう人脈は後々大事になるからねぇ。
プチ握手会が終わると庄司さんの奥さん『伯銘』さんとその娘『清姫』がお礼をしに此方に来た。
しかし伯銘さん肌と髪が真っ白で目が赤いけど綺麗だなぁ何か微妙に人外の匂いが少しするけど。
清姫さんは伯銘の後ろで俺を見ている。大丈夫か?と声を掛けてたら凄くキョドって返事した後完全に隠れた。
アレかな俺の戦いを見てたのかな?俺の戦い少しバイオレンスだから....トラウマになったらどうしよう。
その後庄司さんの豪邸で飲めや歌えやの宴が始まった。一応僧として修行中だから酒は飲まないけど料理をチマチマ食べた後木箱に収納していた琵琶で宴に参加した。
清姫さんも参加していたが俺を見て目があったら顔を附せたりの繰り返しだった。ナズェミテルンディス!!
@月@日『一泊』
気 曇り時々晴れ
今日は昨日の宴の後の出来事について書こうと思う。
宴の後、庄司さんの豪邸で一泊する事になった俺は、軽く庄司さんと軽く話し、風呂に入ってから部屋で寝る準備をしていた。
しかし奥さんの出会いねぇ。白蛇を助けたらその数日後に白装束をした奥さんが宿を乞ってそのまま両方とも一目惚れして結婚とはロマンチックだねぇ。
伯銘さんが実はあの時助けてくれた白蛇だったりして、......無いなうん。
なんて考えながら、豪邸なので少し落ち着けず寝れない俺だったが、襖から小さい声が聞こえたので襖を少し開けたら清姫さんがいたのだ。
どうやら今日の無礼のことで謝りにしたらしい。良い娘や。絶対将来良い奥さんになる。
その事は気にしてないとやさしく言ったけど向こうはまだ引きずっているのか顔を俯いたままだった。
仕方ないと思って彼女に少しばかり魔術を使った芸をした。っと言っても人差し指ライターとか水と風の魔術を併用した水玉風船だけど彼女は喜んでくれた。
その後心が開いたのか年相応の少女らしくどんな事をしていたのかとか色々聞いたり話し合ったりした。彼女の事をきよひーと呼ぶくらいに仲良くなった。
あの時のキョドってた理由は清姫曰くあんまり男の人と接した事がなく恥ずかしくて慌ててたらしい。まぁ仕方ないな!
それを言った後ゴニョゴニョと何か言ってたけど内容は分からなかった。
楽しい会話は一時間位続き彼女が眠たく瞼を擦った後、俺の膝で寝てしまった。
仕方なく彼女を姫様抱っこし部屋から出ると障子に聞き耳してた伯銘さんと気まずい出会いをし、無言のまま彼女の部屋までの道を案内してもらい、彼女を布団に寝かせ、俺は自室に戻り寝た。
後から伯銘さんに聞いたのだが、どうやらきよひーがひっそりと何処かに行くのを見て少し心配で付いてきたらしい。
これが昨晩の出来事だ。
俺は彼等に一泊のお礼をした後旅を再開した。
きよひーが別れが辛いのか寂しい顔をしていた。
その寂しさを紛らすために俺は彼女に修行が終わった後此方に来る約束と、木箱に複数ある魔除けの数珠の一つ緋色の数珠を彼女にあげると驚いた顔で俺を見て、彼女は嬉しそうに俺に向けて笑顔で笑った。
さてと旅の再開といきますか!
オマケ
伯銘(はくめい)
庄司さんの奥さんその正体は庄司さんに助けてくれた白蛇。姿もアルビノの赤目
きよひー 八歳
まだ恋を知らない純粋ガール、
※庄司清治さんの奥さんの名前は分からなかったのでオリジナルの名前です。