とある海賊の奇妙な冒険記   作:解放したPNTマン
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幼少期編
主人公日記 一ページ目


 ○月○日

 

 こちらの世界の文字に慣れるために、日記を書くことにした。

 そのために五歳の誕生日に親父に日記を頼んだのだが、親父は「その顔でか?」と笑っていた。似合わないのはオレが一番理解している。腹が立ったから、親父の顔を思いっきりぶん殴ってやったが……ピンピンしていやがった。それどころか、殴ったこっちの拳の方が痛ぇ。

 

 さて、親父に対しての愚痴はここまでにしておこう。

 

 と言っても、何を書けば良いのやら……特に思いつかないから、現在分かっているこの世界とオレについて書いておこうか。情報の整理という奴だ。

 

 オレの名はジョット。どういう訳か死んで生まれ変わった人間だ。転生、という奴だろう。

 前世は○○○○という名の日本人だった。しかし、今は少し違う。

 黒い髪は前と同じだが、瞳は青い。親父曰く母親譲りの綺麗な青だとか。

 育ちは東の海(イーストブルー)のジャカルタ諸島。人間は二人しか居ない。

 勉強して飯食って親父と殴り合うのが日常の……前の世界とは全くの別世界だ。

 

 最初は外国の田舎かと思ったが、まさか異世界だとは……。

 文字を覚えて新聞を見た時は驚いた。海賊が力を付けて、群雄割拠する世界……どんな世紀末だ。

 いや、むしろ親父のアホみたいな肌の硬さに納得したが。

 あの男、拳で岩を粉砕するからな……。

 果たして、オレは生きていけるのだろうか。

 

 

 

 ○月◇日

 

 この世界に海賊がいやに多く活発な理由が分かった。

 偉大なる航路(グランドライン)を唯一制覇し、ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を見つけた伝説の男――海賊王ゴールド・ロジャー。

 この男が死に際に解き放った言葉が時代を作った。大海賊時代という時代を。

 

 つまり、この世界における最悪の犯罪者であり憧れでもあるらしい。

 というか、親父が憧れていた。

 

 軽い気持ちで聞いたら、まさか夜通しで海賊王伝説を話されるとは。

 普段も酒飲んでヘラヘラ笑っている男だったが、この話になるといつも以上に酒を飲んでベロンベロンに酔っぱらっていた。

 この世界の事を知れたのは良かったが、しばらく親父に海賊王について聞くのは御免だな。

 

 

 ○月△日

 

 昨日訓練していなかったから、と言われて親父に森の奥に放り込まれた。

 頭から落ちてすげえ痛い。

 というか、毎日殴り合っていたのは訓練だったのかよ。

 くそ、あの酔っ払いめ。帰ったら貯蔵されている酒全部売ってやる。

 いや、それよりもあいつの部屋にあ――(文字が掠れている)

 

 

 

 ○月□日。

 

 この森は何なんだ。明らかに常識外の動物……いや、怪物がいるんだが。

 特にライオン、ゴリラ、ワニっぽい奴らが厄介だ。最近親父が痛がるほど威力の上がったオレの拳が効かねえ。親父みたいに肌を黒くして硬くしているのとは違う。単純に力不足だ。

 何とかしないとまともに食料の調達ができねぇ。

 隙を突いて手に入れたのは、星型の黄色い謎の果物。明らかに怪しいが……何か食って力付けねえとオレが食われちまう。

 どうか、毒がありませんよーに。

 

 

 

 ○月▽日

 

 なんか出た。なんか見える。

 そうとしか言いようがない。急に周りの景色がぼやけて見えた。

 いや、ぼやけるというのは少し違う。

 木や土、魚、動物。そしてオレの両手にぼんやりと煙のようなモノが見える。

 こう、包み込むようにモヤモヤ、と。

 何故急にこんなことになったのか。原因はあのくっそ不味い果物だろう。あれを食って、あまりの不味さに耐えながら寝て起きたらこうなったのだ。

 毒は無かったが、それ以上にやばいモノが入っていたな。

 

 だが、悪いことばかりじゃない。

 このモヤモヤ、どうやら生き物によって大きさや形、色、濃さが変わるらしい。

 例えば、折れた木は集中して見ないと分からないほど薄く小さいが、太くどっしりとした木は色濃く周りの木を侵食するほどはっきりとしていた。

 そして、このモヤモヤはあの怪物たちにもあり、後ろからの奇襲に気が付くことができた。

 さらに、オレのモヤモヤを相手のモヤモヤにぶつけると、今まで効かなかったオレの拳が嘘のように効いた。まさかパンチ一発で倒せるとは思わなかった。

 

 こうして書くと至れり尽くせりのようだが、いくつか欠点がある。

 一つは、眠れない。

 あのモヤモヤ、目を閉じても見える。いや、実際には見えていないんだが、モヤモヤだけが瞼の裏に写っているような……。

 とにかく、気になって眠れない。感覚的に慣れれば解決できそうだが……。

 

 そしてもう一つ。これが致命的だ。

 オレ、カナヅチになった。

 魚を獲ろうと川に飛び込んだ瞬間、力が抜けて底へと沈みかけた。

 運良く魚を獲りに来たクマの一撃で吹き飛ばされたが……アレが無かったら死んでた。

 下手をしたら、風呂入っている時も危なくないか?

 

 

 ○月●日

 

 親父に森の中に放り込まれて一週間。ようやく親父が迎えに来た。

 とりあえず出会い頭に頭をぶん殴っておいた。あのモヤモヤ込みで。

 すると、いつものヘラヘラ顔が吹き飛んで思いっきり痛がっていた。吐き気がどうのこうの言っていたが……飲み過ぎじゃないのか?

 まあ、五歳児を虐待したクソ親父に仕返しできてオレは少しスッキリした。 

 その後、復活した親父の拳骨で首まで地面に埋められたが。

 

 それと、なんかオレに一つ下の妹ができた。親父が拾ってきたらしい。

 名前はメアリーって言うらしい。金髪翠眼の美少女、と親父は言っていた。

 ガキに何を言っているんだ、と思った。

 と言うか、オレよりも年下なのに流暢に話せる。まるで手本みたいだった。

 親父は可愛いじゃろ? とデレデレしていたが……なーんか引っかかる。

 

 とりあえず、家事手伝い要員が一人増えたのは良い事だ。

 

 

 ○月◆日

 

 あのクソガキ……頭いかれてやがる。いきなり人を泥棒呼ばわりしやがって。

 

 今日の朝、あのクソガキが突然、オレが一週間放り込まれた森に行きたいと言い出した。

 親父はもちろん反対。可愛い娘をあんな危ない所に行かせないとか、吐き気がする人間でも一筋縄ではいかない場所だとか、色々言ってた。とりあえず実の息子をそんな場所に放り込むなと殴っておいた。モヤモヤ付きで。

 その後、オレも一応説得した。家族になったからな。その時はそう思っていたし、ガキが行くような場所じゃないと知っているからだ。

 バカでかい怪物がうようよ居て、あの果物が無ければ死んでいた。

 オレがそう言うと、当然あのガキは顔色を変えて問い詰めて来た。あの果物について。

 妙な事に、あのガキはオレが食ったあのクソ不味い果物の特徴を知っていた。オレがそれを食べたと伝えると、絶望した顔になり「この泥棒!」と言って頬をぶん殴って飛び出していった。訳が分からねえ。

 親父も驚いたのか呆然としていて、気が付くと急いで追いかけて行った。

 それから二人は帰って来ず、夜になった。

 まったく、あのガキも腹立つが親父も親父だ。デレデレしやがって。

 ムシャクシャしたから、あいつらの飯は作らなかった。せいぜい不味い飯でも食ってろ。

 

 

 ○月■日。

 

 メアリーに殺されかけた。

 この世界どうなってんだ!?

 

 








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