とある海賊の奇妙な冒険記   作:解放したPNTマン
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激突

「サカズキの野郎。作戦失敗しているじゃねえか」

 

 士気が上がり、エースの元へと走る白ひげ傘下の海賊を見ながら、ゼファーは口元を綻ばせながら呟いた。

 口では文句を言いつつも、何処かこの状況に納得している様に見えた。

 センゴクは掻き回せれば良いと言っていたが……これでは逆効果ではないか。

 

「センゴクの奴衰えたか? もしくはニューゲートが上を行ったか……いや、違うな」

 

 ゼファーは、戦場に立って感じ取っていた。

 長年の勘と言うべきか、彼の知らない“ナニカ”がこの戦争に深く根付いている。

 ゼファーは、その原因であろう男へと視線を向ける。振り返って笑みを浮かべて、隣の麦わらの少年と何か話している。

 

(センゴクが手古摺る訳だ……)

 

 頭を抱えてブツブツと文句を言っていた友を思い浮かべながら、ゼファーも動く。

 策が破られ、白ひげが動く以上この先の行動は決まっていた。

 

「遊撃隊。今すぐこの戦場を離れて広場の海兵と合流し、防衛に当たれ! 海賊共の追い込みは人造兵器とオレがやる!」

「はっ! ゼファー先生!」

 

 ゼファーの指示に従って踵を返す教え子の背中を見送りながら、彼はモビーディック号から降りた白ひげを見る。

 

「さて、オレの本来の仕事をさせて貰おうか」

 

 ゼファーは、能力者の海賊たちを次々と狩っている実績を持つ男だ。

 腕に取り付けられたバトルスマッシャーは海楼石で作り出した兵器。つまり、彼の武器は能力者に対して無類の強さを誇るという事だ。

 今までは作戦によって傘下の海賊たちを襲っていたゼファー。しかし、もうその戒めは必要ない。着実に戦力を削る為――隊長たちを狙うことにした。

 

「はっ!」

 

 ゼファーが跳んだ。月歩を使って空を蹴り、一番最初に視界で捉えた男――3番隊隊長“ダイヤモンド・ジョズ”に狙いを定め、右腕のバトルスマッシャーを振り下ろした。

 ジョズは、直前に気付いて己の能力を行使し体をダイヤへと変化させる。そして、こちらに向かってくるゼファーの一撃を迎え撃つべく、クロコダイルを吹き飛ばす威力を持つ技を使った。

 

「“プリリアント・パンク!”」

 

 ダイヤモンド化させた腕でのラリアット。喰らえばダメージは必須。

 しかし、ゼファーの右腕はそれを受け止め……あろうことか押し返した。

 苦悶の表情を浮かべて後退るジョズ。激突した際の脱力感から、ゼファーの巨大な義手の正体に気付いたのだ。

 そんなジョズにゼファーが笑みを浮かべて襲い掛かる。

 

「ダイヤモンド・ジョズ! 3番隊隊長とか呼ばれて、良い気になっているんじゃねえのか!」

「なにを……!」

 

 海楼石の腕とダイヤの腕が音を立てて激突する。

 しかし相性の差でゼファーが有利だからか、打ち合う度にジョズの動きが鈍くなっていく。

 覇気が込められた左腕も厄介で、巨大な右腕をフェイクに近づき腹部に叩き込んで来る。素手な分スピードもあり、ジョズは何発も良いものを喰らった。

 そして――。

 

「ぐっ――」

「覇気も使えるようだが――修練が足りんなァ!」

 

 海楼石の腕がジョズの巨体を捕らえた。

 そして、義手に仕込まれた機能を作動させる。

 

「“スマッシュ・ブラスター!”」

 

 スマッシャーから巨人族を一撃で屠る威力の砲撃が放たれ、ジョズは爆煙に包み込まれ――そのまま白目を剥いて気絶していた。

 それを見た海賊たちが目を見開き、叫んだ。

 

「ジョズ隊長ーー!」

「そんな、隊長があんなあっさり……!」

 

 戦慄する海賊たちを視界に入れながら、ゼファーは倒したジョズを捨て置くと前に出る。

 そして、スマッシャーを構えてショックで体を固くした海賊たちを吹き飛ばした。

 

『ぎゃああああ!?』

「せいぜい生き残れよ海賊共ォ! おれを止めるのなら、命を懸けろォ!」

 

 そう言うと、ゼファーは次の標的の元へと跳んだ。

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

 ゼファーが隊長格を狙って襲い掛かると同時に、白ひげも動いていた。

 グラグラの実で島を傾けさせて海兵たちのバランスを崩させ、目の前に立ち塞がった巨人海兵ジョン・ジャイアントを一発で仕留めた。さらに地震の力はそのまま処刑台へと斜線上の海兵たちを吹き飛ばしながら突き進む。その力に海兵たちは恐れ戦き、海賊たちは勝鬨の声を上げる。

 だが、三大将によって白ひげの一撃は逸らされてしまい、海軍の強固な守りを堂々と見せつけた。

 

「氷の下に落ちるかと思った……! あのおっさん、味方も敵も関係無しか」

「白ひげ海賊団の者たちは邪魔にならねぇように動いている。オレ達も合わせた方が良さそうだ」

 

 グラグラの実の影響で海の中に落ちかけたルフィの言葉にジョットが答える。

 白ひげが動いた事で大分戦場が混乱した。しかし、海兵の邪魔が無くなった分広場までの道が一気にできた。妨害の無い今がチャンスだ。

 ルフィが腕を伸ばして、エースの元へと向かおうとする。しかし、突如氷の下から飛び出した鋼鉄の壁で弾かれてしまった。

 

「な、なんだ!?」

 

 戸惑いの声を上げるルフィ。壁が飛び出したのはルフィの目の前だけではない。

 まるで湾内を囲うかのように壁が現れた。まるで、海賊たちを袋小路にしているかのように。

 海賊たちが壁に攻撃を仕掛けるが、頑丈に作られており傷一つ付かない。

 ジョットは、壁の強靭な耐久力と備え付けられた大砲に嫌な予感を感じていた。

 

「まさか――」

 

 ジョットは、勘を頼りに跳び上がった。下からルフィが呼び掛けるが、それに応える暇もない。

 ジョットが壁の高さを乗り越えると同時に――目の前に赤犬の“流星火山”が迫り来ていた。

 ――やはり、そうか。

 氷の大地に溶岩が降り注げばどうなるか。子どもでも分かる事だ。そうなれば海賊たちは海に放り出され、壁に取り付けられた大砲とパシフィスタによって袋叩きに遭う。

 それを何としてでも防ぐために、ジョットはスタープラチナと共に目の前の溶岩群を打ち壊す。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!」

 

 幾つかの溶岩を壊すも、広範囲に放たれた溶岩を防ぐには二人では足りなかった。

 打ち漏らした溶岩が氷を溶かし、海上の船を沈めていく。そして、その中には白ひげ海賊団を長い間支え続けたモビーディック号の姿があった。

 

「モビーディック号が!」

「ちくしょう! 俺たちの船が!」

 

 白ひげは、燃えて海の底へと沈んでいく長年の相棒に心の中で謝る。

 だが、もう立ち止まってはいられない。この戦いで命を落とした者は多い。それに報いる為にも、エースを何としてでも助け出さなくてはならない。

 白ひげは、自分たちを阻む壁に向かって能力を使用した。しかし、大きな音を立ててへこむだけで壊れない。どうやら、この日の為に特注で作った代物なようだ。

 そうなると、唯一の突破口であるオーズの上を行くしかない。海兵たちが待ち構えていようともだ。

 そう考えてルフィが突っ込むが……あえなく砲撃の集中砲火にあって返り討ちにされた。

 それを赤犬の溶岩を蹴散らしながら見ていたジョットが、ルフィの元へと戻る。同時に、それぞれ相手をしていた敵が撤退した事で手が空いたジンベエとイワンコフも合流した。

 

「ルフィくん! 無茶をするな!」

「敵が唯一空いているあの道を放って置く訳が無いっシブル! むしろ罠よ!」

「ゼェゼェ……だってよ! あいつらエースの処刑をするって……!」

「ああ。オレも聞いた――いよいよやべえな」

 

 ルフィの焦る気持ちは、白ひげたちと同じだ。

 だが、急げば急ぐほど海軍の思う壺。

 どうすれば――打開策を考えるジョットたちに、ルフィが言った。

 

「――頼みがある!」

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

 突如、湾内から一つの海流が飛び出した。それは海軍が作動させた包囲壁を乗り越え――三大将の立つ広場へと着弾した。

 そして、その中から出てきたのは――麦わらのルフィ。

 折れたマストを手に、彼は息を切らしながら海軍の最高戦力を前に立つ。

 

「あららら……とうとう此処まで来たか。だが、お前にはまだ早いよこのステージには」

「堂々としちょるのぅ……ドラゴンの息子」

「怖いねェ~……その若さ」

 

 その心意気は認めざるを得ない。しかし、現実は違う。

 ルフィが大将を……それも三人を相手にするには、青雉の言うようにまだ時期が早い。一人でまともにやり合えば、彼の命は無いだろう。

 

 ――そう、一人なら。

 

「――違う、上だ!」

 

 センゴクが叫ぶと同時に、広場上空から猛スピードで落下する影があった。

 その影は、ルフィの前に降り立つと、ギロリと目の前の大将を見据える。ルフィの無理矢理な侵入に気を取られた隙を突いた突貫。現れた男――ジョットに大将たちの表情が変わった。

 

「お前らの相手は――オレだ三大将!」

「ジョジョ……貴様……!」

 

 忌々し気に赤犬がジョットを睨み付け、青雉と黄猿も視線を鋭くさせる。

 

「行け、麦わら! 此処はオレに任せろ!」

「おう!」

 

 ジョットの言葉に答えると同時に、ルフィが三大将に向かって手に持ったマストを投げつける。しかし青雉によって瞬時に凍らせられ――それを死角にジョットが懐に入り込んだ。

 

「――っ!」

「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

 

 覇気が込められた必殺の拳。それが青雉を襲う。

 まともに喰らえば致命傷は確実なそれを、青雉は覇気で見切ってロギアの実体の無い体と覇気で受け流す。しかし、ジョットはそれに構わず青雉が凍らせたマストを掴むとオーラを流し込んで補強。そしてそのまま横へとぶん回した。

 

「ふん!」

 

 赤犬のマグマの拳と激突し、触れた箇所は氷が解けて、そして木材は燃え、折れる。

 真っ二つになったマストを、ジョットはギア2で駆け抜けたルフィの背中へと投げる。

 

「うわ!?」

 

 それと同時に、光の速度で移動していた黄猿のレーザーの直撃を躱す事に成功する。

 黄猿は忌々しそうにジョットを見て、処刑台へと走るルフィを見て……どちらが脅威かを考えた結果他の二人の大将たちの隣へと戻る。

 一瞬の攻防に海兵たちが生唾を飲んで見守る中、青雉が口を開く。

 

「さっきまでのように麦わらのお守りをしなくて良いのか、星屑のジョジョ」

「どういう意味だ」

「麦わらは――死ぬぞ。おれ達が止めなくても中将クラスで対処可能だ」

 

 青雉の言うように、ギア2を使用しているルフィの動きを数人の中将たちが捉えて追い込んでいる。

 ジョットの能力である程度回復したとはいえ付け焼刃。根っこの部分はボロボロだ。体力を消耗するギア2を使えばすぐにバテる。

 

「配役を間違えたね~星屑のジョジョ。アイツを捨て石に、君が処刑台に行った方がまだ可能性があった筈」

 

 ジョットはルフィと違って空を飛ぶ事ができる。ルフィが広場に飛び込んだと同時に、開戦時に行ったような突貫をすれば、あるいはエースの元へと届く事ができたかもしれない。

 

「お前ともあろう者が、何故自分よりも弱い男に付き従う? あまり苛立たせるなよジョジョ」

 

 赤犬が理解できないと言わんばかりにジョットを睨み付けた。

 自分が認めた男の行動が、彼の怒りのマグマを逆撫でするのだろう。麦わらを無視して突っ込めば、あるいはあの時七武海を退ければもっと早く此処に立てただろうに、と。

 

 大将たちの問いに対して、ジョットの答えはシンプルな物だった。

 

同盟相手(ダチ)が絶対助けるって言ってんだ。だったら、それに手を貸すのは当たり前じゃねえか――なぁ、三大将さんよ」

『……』

 

 ジョットは、ルフィに対して幾つかの恩がある。これは、それの恩返し――という訳ではない。

 友達が命を懸けて兄を救おうとしている。それを黙って見過ごすのは、クルセイダー海賊団の船長としてあまりにも情けない。

 そして、何よりも根幹の部分が白ひげ達への感情と同じなのだ。白ひげ達を気に入って、友達のエースを助ける為に戦争に参加した事と。

 兄の為に必死になって、戸惑い無く命を懸ける弟の姿に手を貸したいと思った事は。

 効率だとか実力だとか、そういう問題ではない。

 ジョットの魂が麦わらのルフィを全力で援護しろと言っていたのだ。そして、ジョットはそれに従っただけだ。

 

「それと、これは個人的な事なんだが――」

 

 そして、何よりも――。

 

「アンタ達との決着を付けようと思ってな、三大将さんよォ……!」

 

 負けっぱなしというのは、男として我慢ならないというのが本音だ。

 まるで獣のように獰猛な笑みを浮かべるジョット。それに対して大将達は――それぞれ能力の力が漏れ出していた。

 冷気が地面を凍らせ、垂れるマグマが全てを熔かし、指先の光が視界を覆う。

 感情に反応したロギアの力は、主の指示を今か今かと待ち望んでいた――目の前の舐め腐った若造を殺せと。殺意を形にして。

 

「――そうかい。もう何も言わないよ~……光の怖さ、教えてあげるよ」

「――もう少し、物は考えて言って欲しいものだ……粉々になっても知らんぞ」

「――ああ。人を苛立たせる才能は兄弟も妹も変わらんのぅ……存在ごと熔かしてやる」

「いつでも来い――オレはとっくの昔に覚悟決めてんだ」

『――ほざけ!!』

 

 マグマが、氷が、光が、オーラが――広場を死地へと変える。

 近くに居た海兵たちは恐怖に顔を引きつらせ、中将たちも冷や汗を流しながら距離を取る。

 壁の向こうに脅威が居る事も忘れ、彼らは恐れた。三大将と星屑のジョジョ達の決闘の被害に遭う事に。

 それだけ大将達の怒りが恐ろしく……ジョジョの覚悟に圧倒されたからだ。

 

 白ひげが能力を使用していないにも関わらず、マリンフォードが大きく揺れた。

 








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