とある海賊の奇妙な冒険記   作:解放したPNTマン
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世界最悪の海賊

「いやー、懐かしいなこの島」

 

 上陸したジョセフの言葉に、レイリーが何処か呆れた視線を彼に送る。

 

「そう言えば、随分昔に此処の猛獣を連れ出したんだったな。それも東の海(イースト・ブルー)に」

「へへへ。まぁあれっすよ。ジョットを鍛えるなら、此処の猛獣くらい強くねーといけませんから」

 

 何でもないように言っているが、下手をすれば東の海の生態系が崩れる可能性もあった。その事をジョセフは理解しているが、しかし全く気にしている素振りは見せていなかった。

 本人曰く、上手く調教しているから大丈夫だと言っているが――それも言い訳臭く感じてしまうレイリー。そんな彼の視線にジョセフは気づきながらも触れずに、振り返って軍艦に乗っているバギーたちに手を振った。

 

「キャプテン・バギー、送ってくれてありがとうございました! じゃあ、また会った時はよろしく!」

『いやいやいやいやいや!』

 

 しかし、バギーたちはそんなジョセフを呼び止めた。

 

「ふざけんなテメエ! 海王類蔓延るこの凪の帯に放り出されて、生きていける訳ねえだろ!」

『そーだそーだ!』

 

 ここまで来るまで、何度か大型の海王類が軍艦を襲った。その度にジョセフが追い払い、途中拾ったレイリーもそれを手伝い、何とか此処ルスカイナまで辿り着いたが……。

 ここでジョセフたちとはいさよならすれば、確実にバギーたちは海王類の餌となってしまうだろう。

 彼らを足代わりに使っていたジョセフは、流石に責任を感じたのか……。

 

「あー……大丈夫! バギー様ならきっと!」

「投げやりだガネ!」

 

 ……そんな事は無かった。

 ブーブーと不満を顕にするバギー一味に、ジョセフはどうしたものかと悩み――。

 

「――面倒だから、此処で殺すか」

「よしお前ら早く出航だ大丈夫オレ様が着いてる何も問題なしそれ行けそれ行けバギー様がとおおおる!」

『イエス! キャプテン・バギー!』

 

 一息で指示を下すバギーとそれに従う囚人たち。

 彼らは急いで軍艦を動かしてルスカイナから……いやジョセフから逃げるように出航した。残ったのはジョセフたちともう一つの軍艦。そして事の顛末を見ていたコアラたちだった。

 ジョセフは、ぬるりと頭をコアラたちに向ける。

 その生理的に不快感を与える動きにコアラたちが悲鳴を上げるなか、ジョセフは笑顔で彼女たちに尋ねた。

 

「俺の息子は何処に居る?」

「あの、その……」

「ジョセフ。無駄に威圧するな! まったく……」

 

 ――結局レイリーが応対し、二人はコアラに案内されてジョットの元へ向かった。

 そこには、能力を使ってジョットの手術を行うロー。メアリーと何か話しているルフィ。仲が良さそうな二人に嫉妬しているハンコック。エースと合流し、肉を焼いているサボとジンベエ。

 他にも九蛇の海賊団が居る筈だが……現在猛獣を狩りに向かっており此処には居ない。

 

「思ったより元気そうだなルフィ君。それにメアリーちゃん」

「え? レイリー?」

 

 戦いで疲れた体を癒していた面々は、ルフィの言葉に振り向き、そして実際に目にして驚いた。

 

「冥王……つまり、海賊王の――」

 

 特にエースの反応はあまりよろしい物では無かった。

 彼は、自分の血の繋がった父であるロジャーに対してあまり良い感情を抱いていない。だからといって、同じ船に乗っていたレイリーまで嫌悪の感情を向ける訳ではないが……それでも手放しで喜べる事でも無かった。

 

 皆がレイリーの登場に驚くなか、メアリーは彼の後ろに続いてやって来た人物に目を見開いた。

 

「パパ!?」

「ようメアリーちゃん! 実際に顔を合わせるのは久しぶりだなァ」

『――パパァ!?』

 

 そして、周りの者たちは彼女の言葉にさらに驚き、視線をジョセフとメアリーと行ったり来たりさせる。

 

「そうか。メアリーはジョットの妹! すなわち隠者のジョセフの娘という事になる!」

 

 サボは、思い浮かべた家系図から正確に彼らの関係性を当て嵌め――。

 

「だが、それはおかしいぞ! リードの姐さん曰くジョン・スターの一族は一世代に一人じゃ! つまり――貴様! リードの姐さんに隠れて浮気でもしたのか!」

 

 過去の行いから、ジンベエは隠者に厳しい目を向け――。

 

「誰だ、あのおっさん」

 

 無知から不思議そうに視線を送るルフィ。

 

 反応は様々だが、一言で言うなら混沌。

 それをジョセフは面白そうに眺めて、持参した酒を飲む。

 一つ一つに答えても良いが、今は――ジョットに用がある。

 

「ちょっとどいてくれ」

「!? いつのまに――」

 

 ジョセフは、一瞬で――それこそ見聞色の覇気でも見切るのが難しい方法でジョットの傍に移動する。いきなりすぐ傍に現れたジョセフにローが驚くなか、ジョセフは屈んで意識を失っているジョットの体を()た。

 

「ん~~……こりゃあ随分とやられたなァ……。それに、悪魔の実がオペの邪魔をしてやがる」

「こいつ、一目見て……!」

「そう驚くなオペオペの小僧。こんなの、経験があれば誰でも分かる」

 

 そう言って、ジョセフはぐるりと辺りを見渡す。

 そこには、ルフィたちが必死になって集めた猛獣たち。彼らは、ジョットのオラオラの覚醒によってどんどん生命力を吸われているが――ジョセフから言わせればイタチごっこ。大元をどうにかしなければ、ジョットを救うには時間が掛かる。

 

(大方、変な知識持ってるメアリーちゃんの指示だろうなァ……確かに二週間もすれば目が覚めるだろうが――それじゃあまどろっこしいな)

 

 ジョセフは、時間が掛かるという理由でさっさとジョットを治す事にした。

 彼は、右手を手刀の形にすると――それをジョットの心臓に突き刺した。鮮血が舞い、ジョセフの頬に返り血が飛びり付く。

 

「な――」

「――お前! ジョジョに何してるんだ!!」

「うそ、パパ……?」

 

 ジョセフの凶行に、メアリー達が絶句するなか――ジョットに変化が起きた。

 ドクンッ……ドクンッと心臓が脈打ち、ジョセフに貫かれた場所から黒いオーラが噴出し――彼の肉体は漆黒に包まれた。

 メアリーは、ジョセフからジョット――だったモノへと視線を移す。彼女は、あれを見たことがある。戦争中に黒ひげと大将たちに追い詰められた時に見せた暴走。あれが、今此処で起きている。

 

「よし、何とか成功したな」

「ちょっと、何したの!?」

 

 黒いオーラで包まれて異形の姿に変化し、獣のようにグルルル……っと喉を鳴らすジョットを指差し、メアリーはジョセフに詰め寄った。他の者たちもジョットへと視線を送り、構えている。明らかに普通の状態ではなく、その原因とも言えるジョセフへの敵意は当然のものだった。

 メアリーもまた同じで、怒りの表情でジョセフを睨み付ける。それにジョセフはヘラヘラと笑いながら答えた。

 

「安心しろ、安心しろよメアリーちゃん。何もそこまで顔真っ赤にさせて怒る事ないじゃないか。俺ァ、ジョット(アイツ)を救う為の裏技を使っただけさ」

「裏技?」

「ああ。今のジョットは悪魔の実が暴走し、辺りの物を手当たり次第に喰らい尽くす化け物になっている。ほら、見てみろ」

 

 ジョセフが示すその先には、足元の地面を無理矢理オーラに変えて取り組むジョットの姿があった。そして、次には辺りに転がる猛獣へと狙いを付けて飛び掛かると、直接噛み付いて再びオーラに変えて己の血肉へとしていく。

 覚醒した時は、ギリギリまでオーラを取り込んでいたが、暴走している今は相手の存在全てをオーラに変えて喰らっている。言うなれば捕食。その光景にメアリーはぞっとし、ジョセフに聞いた。

 

「大丈夫なの?」

「それはどっちだいメアリーちゃん?」

「両方」

 

 明らかに普通じゃないジョット。

 そして、それに巻き込まれる可能性の高い自分たち。

 メアリーの問いに、ジョセフは簡潔に答えた。

 

「ジョットは大丈夫だ。傷が癒えて目が覚めたら暴走も治まる」

「そう……で、私たちは?」

「そりゃあ、もちろ――」

 

 突如、メアリーの視界からジョセフが消え失せ、代わりに黒く巨大な何かが過ぎ去った。そして、離れた場所から大きな音が響き、全員がそちらを向くと、そこには岩に減り込んだジョセフが居た。

 どうやら、ジョットの体から伸びる尾の形をしたオーラが、ジョセフを叩き付けたらしい。

 ジョセフは、口から血を吐き出しながら――答えた。

 

「――うん、こりゃあ死ねるな。すまん! 暴走舐めてた!」

『ふざけんなこの野郎!!』

 

 満身創痍でプルプルと体を震わせて『計算違いだった』とほざくジョセフに、全員が吠えた。

 こいつ、事態を悪化させただけじゃないか。

 しかし、突っ込んでいる暇もない。暴走したジョットは既に周りの猛獣たちを白骨死体に変えて、次のターゲットに狙いを定めている。

 

「くそ、どうする!?」

「どうするって言ったって……」

 

 ――大将やグラグラの実の直撃を受けても耐える強靭な体。

 ――幼少の頃から鍛え抜かれた武装色の覇気。

 ――触れるモノを全てオーラに変える漆黒のオーラ。

 ――そして、隠者と呼ばれて恐れられる男に不意打ちをぶちかます程の速度。

 

 メアリー達の判断は速かった。

 

『逃げるぞ!!』

 

 反転して、ダッシュでこの場を走り去るメアリー達。抑え込むには、少しばかり厄介な相手だった。それはレイリーも同じなのか、殿を務めつつも逃げるメアリー達に続いた。

 

「あ、ちょっと待ってメアリーちゃん。レイリーさん。海賊たちさん。逃げる前に助けてくんない? おーい?」

『グルルルル……』

「うわーお!? 俺の糞長い人生の中でも、トップ3に入る程のピンチだぜこりゃあよう! しかし、俺は信じてる! 息子のジョットなら、奇跡が起きて――」

『ガアアアアアア!!』

「痛い! 噛んだ! 息子が父親である俺を噛んだ! テメエふざけんなよジョット! 誰がここまで育てたんだと思って――」

『グオオオ!!』

「うそ、ごめん、許して! 心なしかグリグリするのヤメテ! ちょ、おま、右腕が白骨化してる! 待て、死ぬ! マジで死ぬ! ゲームオーバーになる!」

 

 

 

「ああああああああああ!?!?」

 

 何処か余裕そうなその叫びを聞きながら誰もが思った。

 あいつ、さっさと死なねーかな、と。

 ジョットの父親に対する物言いにしてはあまりにも酷かったが――不思議と誰もそれを咎めなかった。

 娘であるメアリーでさえ。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

 ――16時間後。

 

「いやぁ、死ぬほど痛い目にあった」

「何で死んでねーんだお前」

 

 傷が完全に癒え、暴走が収まり眠っているジョットの隣で、酒を飲みながら笑うジョセフにエースがズバッと斬り込んだ。

 どうやら、ジョットの心臓を貫き、暴走に追い込んだ事が頭に来ているらしい。ジョセフのふざけた態度で実感し辛いが、一歩間違えればジョットは仲間を己の手で殺すこともあり得たのだ。そして、その対象にはジョセフも入っている。

 だからか、自然とエースの口調は刺々しいものとなっていた。

 

「いや、三回くらい死んだぜ?」

「何を言っているんだ……」

「まぁ、そういきり立つなロジャーさんの息子さん」

「――」

 

 明らかに挑発をしているジョセフに、ピキリとエースの額に青筋が走る。

 ボッ! とエースの右腕が炎に変わりそれをサボとルフィが止める。

 

「待てエース! こいつはジョットの父親だ! 信じたくねーけど!」

「このおっさんはジョジョを助けてくれたんだ! 一応!」

 

 だから、攻撃するのは止めてくれ。そう懇願する兄弟たちに、エースは深呼吸をして目を閉じた。

 そして、ギロリとジョセフを睨み付ける。

 

「あの時言っただろう。おれはエースだって。それに、おれの親父は白ひげだ」

「あー、そう言えばそうだったな。悪いな無神経に」

「……分かったなら、良い。それと、ジョットを助けてくれてありがとう」

 

 気に食わないが――目の前の男はジョットを救った。故に、礼を述べるのは当たり前だった。それが、自分の事を“ロジャーの息子”としてしか見ない男だとしてもだ。

 エースからの礼を受け取ったジョセフは、次に何か聞きたそうにしているメアリーへと視線を向ける。彼女もまた、義父に向ける感情が、少し前と比べて厳しいものへと変わっていた。

 幼き頃は優しい父親だと思っていたが――こうして時間を置いて再会すると分かる異常さ。その事に気付いていなかった事にメアリーは薄ら寒いものを感じつつ、それでも育てた人だからと無理矢理己の感情に折り合いをつけてジョセフと向き合った。

 

「お父さん、聞きたい事があるの」

「あれ? パパって言ってくれないの?」

「茶化さないで! ……どうして此処に居るの? 確か、シャンクスさんの船に居るって話だけど」

 

 後ろでルフィが「シャンクスの船に乗っているのか!?」と一人驚いているが、メアリーはジョセフだけを見ていた。

 それに対して、ジョセフは一言。

 

「いや、普通にジョットを助ける為だから。ジョットにはまだこんな所で死んで貰う訳には行かねェからなァ。だから、さっきみたいな荒療治をさせて貰った」

「でも、治すなら時間掛けても……」

「あー、ダメダメ。ジョットはもう前半の海(こっち)に居ちゃあ不味いんだ。さっさと新世界に行って貰わねーと色々とヤバい」

「どういう事?」

「んー。詳しい事を省くと――モタモタしてると、四皇のカイドウとビッグマムがこっちに来る」

「は?」

「シャンクスさんが何とかしてくれるだろうけど、それでも持って二週間だろう。だからジョットにはさっさと新世界入りして貰いたい。

 というか、一番スムーズなルートだと、今頃新世界で暴れて貰っていたつもりだったんだがなァ。やっぱり人生って難しい」

「ちょ? ええ?」

 

 ジョセフの不可解な言葉にメアリーが首を傾げていると、のそりと起き上がる影があった。

 

「――最悪な目覚めだな。隣に酔っ払いがいやがる」

『ジョジョ/ジョット!』

 

 ジョットの目覚めに、皆が喜びの表情を浮かべる。

 彼らは詰め寄ると口々に、今まで溜め込んでいた感情を解き放った。

 

「ジョジョ! 戦争じゃあ助けてくれてありがとうな! おれ、お前のおかげでエースを助ける事ができた!」

「おいこらジョジョ! テメエ、助けてくれた事には礼を言うが弟に無茶させて、そしてそれ以上に無茶しやがって……! 何から言えば良いか分からねえよ!」

「ジョット! 本当にありがとう! お前の力でこいつらを思い出すきっかけを得られた!」

「ジョジョ! 本当に無茶して……! 私たちがどれだけ心配したか――」

「ジョット。起きたなら久しぶりに飯作ってくれ」

「――喧しい! 全員で言われても聞こえねーよ!」

 

 詰め寄って来たルフィたちを、ジョットが振り払った。

 しかし、彼らが自分のことを心配していた事は良く分かり――彼はボロボロの帽子を深く被って「ありがとう」と確かに口にした。

 ひっくり返っていたルフィたちも、それを見てそれぞれ笑みを浮かべてジョットの復活を喜んだ。

 

「お前にも世話になったな、トラファルガー」

「いや。こんな所でくたばって貰ってもつまらないからな」

 

 木に寄りかかり、傍観していたローはジョットの礼の言葉を受け流すとクルリと背中を向ける。

 ジョットが目覚めたのなら、彼が此処に居る理由はもう無い。ローは、この場から立ち去るつもりだった。

 

「この礼は必ず返す」

「……ふっ。お前なら、期待しても良さそうだ」

 

 それだけ言うと、ローは木々の暗闇に姿を消して去って行った。

 その光景をボーっと見ていたメアリーの背後に、ソロリとジョセフが近づき……。

 

「“クールキャラの掛け合い、ご馳走様”とか考えてる?」

「――何が言いたいの?」

「いんや……うんうん。メアリーちゃんも成長したみたいで良かったねー」

「だから! 何が言いたいの!?」

「何してんだあいつら……」

 

 メアリーとジョセフのやり取りに、ジョットは呆れつつも近づかなかった。巻き込まれると面倒なのは、昔からよく知っているからだ。

 すると、自然とジョットは次に気になる人物へと視線が向く。

 レイリーだ。

 

「レイさん。アンタ、どうして此処に?」

「なに、私も戦争の様子は見ていたのでね。気になったから動いた所、ジョセフに拾われて一緒に来たのさ」

 

 ジョットの問いに答えると、次にレイリーはルフィへと視線を送る。

 

「ルフィくん。君はどうする?」

「ん? 何がだ?」

「これからの事だ――君は、シャボンディ諸島での事を覚えているかい」

 

 ルフィの脳裏に、あの日の出来事が浮かび上がる。

 大将にやられ、くまに飛ばされ――最も己の無力を悔いたあの日の事を。

 ごくり、とルフィが生唾を飲み頬には冷や汗が垂れる。

 そんな彼の様子に、レイリーはルフィの心情を察するとある提案を出した。

 

「ルフィ君――私から一つ提案がある」

 

 レイリーの申し出に――ルフィは頷いた。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

 数日後。世界各地で、二つのニュースが世界中で注目されていた。

 

 一つは、マリンフォード頂上決戦にて白ひげを討ち取り、新世界で快進撃を続ける黒ひげ海賊団と同盟相手の金獅子のシキについて。

 黒ひげは、白ひげの縄張りについて熟知しており、次々とそれらを己の物としていた。

 四皇の座を狙う海賊たちの間では一歩リードと言ったところだろう。彼のこれからの行動に、世界が震えていた。

 

 そして、もう一つ。それは――。

 

「そうか……ルフィはそちらの道を選んだのだな」

『ええ、そうです。レイリーさんの元で“覇気”の修行をするようでして』

 

 新世界のとある島で、シャンクスは電伝虫でジョセフと連絡を取り合っていた。

 彼の手には、先日ルフィが起こした『マリンフォードで新時代への16点鐘』。世間では、ルフィが海軍、並びに他のライバルに向けての宣戦布告とされているが――それはフェイク。ルフィの真の狙いは、彼の右腕に刻まれた仲間へのメッセージ。

 それをジョセフから聞いたシャンクスは、ルフィの決断に笑みを零し――次にジョットについて尋ねる。

 

「ジョットは――こっちに来るのか?」

『はい。準備ならもうできているんでね――くっくっくっ……暫くは退屈しなくて済みますぜ?』

「ふっ……相変わらず性格が悪い」

 

 それぞれ、ジョットの新世界入りを喜ぶジョセフとシャンクス。

 思えば、あの日から随分と経ったとシャンクスは目を閉じた。ジョセフを探しに東の海に来てみれば――真っすぐな目をした少年が居た。しかし、その心には迷いがあり……思わず背中を押してしまった。

 辛い世界に引き摺り込んだと後悔はしていない。ただ、仲間たちと仲良くしているのなら……シャンクスはそれで満足だった。ルフィとも仲が良いのが、さらにシャンクスの笑みを深めた。

 

(お前に会える日を待っているぞ、ジョット)

 

 ジョットの成長に思いを馳せているなか、ふとシャンクスはジョセフに尋ねた。

 

「ジョセフ、一つ聞きたい事がある」

『なんですか?』

「お前がマリンフォードで見せたエターナルポース……あれは本当に“ラフテル”を指し示しているのか?」

 

 シャンクスは、ジョセフの性格から考えて誰もが飛びつく餌を持って来るとは思っていなかった。しかし、気になるのはあの言葉。

 

 ――これは家族以外には渡さないから!

 

 何故、あのような言葉を吐いたのか。それも――嘘偽りなく。

 ジョセフがあのエターナルポースを大事に持っているのは、隣に居て何となく感じていた。しかし、指し示す先がラフテルだからこそ生じる矛盾。ジョセフは、ラフテルにもワンピースにも興味を示していない筈だった。

 故に、シャンクスは問うた。そのエターナルポースが示しているのは何処だ、と。

 

『……まぁ、察しの通りラフテルではありませんね。というか、ラフテルのエターナルポースなんてありませんし、持ってないですよ』

「なら、お前がそこまで大事にして……息子の命を海軍から救う為に使った切り札は何だ?」

『……別に。示しているのは人も獣も宝も無い。何も無い無人島ですよ』

 

 シャンクスの問いに、ジョセフは嘘を吐かずに答えた。

 いつもと違って飄々とした態度ではなく、世界で遊ぶ最悪の海賊としてではなく。

 

『ただ――一つだけ、墓があるだけです。俺にとって大切な墓が、ね』

 

 たった一人の女性(ヒト)を想う夫として――。

 ジョセフは、持っていたエターナルポースに張り付けたシールを剥がし、そこに刻まれた島の名前を愛しそうに見る。

 そこには“ジョースター島”と書かれていた。

 




はい、てな訳でラフテルへのエターナルポースはありません。
これ知ったら釣られた海賊達はブチ切れますね。
さすが世界一最悪な海賊です







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