とある海賊の奇妙な冒険記   作:カンさん

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主人公日記 十五ページ目

@月$日

 

 ビッグマムに喧嘩を売った。そう伝えると「どうしてそうなった?」と海の森から帰って来たメアリーが頭を抱え、クルー達は「しらほしちゃんとキャッキャウフフしてた時間に戻りたい……」と遠い目をしていた。

 海の森から帰って来たしらほしは最近良く笑うようになり「勇ましいんですね!」と言い、フカボシ達は事の顛末を聞いて驚いていた。

 まぁ、オレも流石に勝手に決めて悪いと思ってネプチューンとエース達に謝った。オレが勝手に縄張りにするって言っても困るし、白ひげ海賊団からすれば乗っ取りみたいなものだ。

しかしエースはオレなら申し分ない。むしろ頼むと言い、スクアードは反対する奴はおれが説得すると言った。……助かるなぁ。

ネプチューンは別に気にしていないと言い、むしろ、オレ達のこれからの航海が心配だと言っていた。大丈夫だろ。

 そう答えるとメアリー達がぶち切れてオレに説教して来た。心の準備をさせろって。結局諦めて仕方ないな―と笑うのがお決まりだが。

 

 ――で、だ。ネプチューンは魚人島をオレの縄張りにする事を認めた訳だが……そこでジンベエがある申し出をして来た。

 

 それは、ジンベエを含むタイヨウの海賊団がクルセイダー海賊団の傘下に入る事。

 ジンベエはかつて七武海だった。それには様々な理由があり、その一つに魚人島を海賊たちから守るためというものがあった。しかし、先日の戦争で魚人島を守る二つの()は無くなり、この先この国を守るには大きな名が必要だった。

 だからこそ、オレが……世界最悪の海賊“隠者ジョセフ”の息子であり、ジョン・スターの血を引き、大将を退ける“星屑のジョジョ”がこの島を縄張りにする事に恩を感じ、仁義に則りオレの下に着くと言った。

 元七武海のジンベエがオレの下に着けば、海賊たちはさらに魚人島に手を出せない。

 ゆえに、ジンベエが傘下になる理由は十分だ。

 だが、オレは別に子分は要らないんだけどなぁ。同盟で良いだろ。

 そう言っても聞き入れて貰えず、メアリーやエース。そして何よりこの国の王であるネプチューンに頭を下げられてしまい――誠に不服ながら傘下の海賊ができてしまった。

 他のタイヨウの海賊団のクルー達が反対したり、魚人島の人たちが嫌がったら同盟にするぞと言っても、結局こうなった。

 国中でお祭り騒ぎになって皆喜んでいる。どうやら逃げていったビッグマムの使者たちから、この話が漏れていたらしく受け入れられてしまった。子どもたちがジンベエの親分だからジョジョ大親分だ! と言い出した時は、どんな顔をすれば良いのか分からなかった。

 悪乗りしてタイヨウの海賊団たちも言い出す始末。

 シャーリーが「私の占い、当たるでしょ?」と言って笑っていたが……そういう事かよ。

 海賊だからあまり堅気の人間に感謝される事が無いから、少しくすぐったい。

 

 

@月)日

 

 今日、フカボシ達の案内の元オトヒメ王妃の墓参りに行った。

 魚人島がオレの縄張りになるから。かつてオレの母と友だったから。

 色々と理由はあるが……やはり話を聞いて、線香を上げたいと思ったからだ。

 フカボシ達は、母の意志と夢を継いで魚人島の地上への移住を為そうとしている。二年後の世界会議に向けて署名を集めている。

 ……彼らは強い。素直にそう思った。

 

 墓参りを済ませた後、オレ達はエース達を見送った。

 戦争の事、縄張りの事、爺さんの事。……そして、オレが倒し損ねた黒ひげの事。

 彼らもこのまま黙っているつもりは無いらしい。エースもスクアードもその眼には覚悟があった。

 もし何かあったら駆け付ける。

 そう伝えるとこっちの台詞だと言われた。

 エースは相変わらず負けず嫌いだ。

 

 

 @月!日

 

 さて、いい加減オレ達も新世界に行こう。

 明日になったら、オレ達は遂に新世界入りだ。

 三つの指針を示すログポースも手に入れた。クルー達もビッグマムへの恐怖を克服……というよりも自棄になって掛かって来いと叫んでやる気十分だ。

 しらほしがオレ達……特にメアリーとの別れを惜しんでいたが、また再会する事を約束していたようで、フカボシ達とその光景を温かく見守った。

そうしたらメアリーがニヤニヤするなと怒って来たが、しらほしに「え? 嫌、なのですか?」と言われてフォローに回っていたのは面白く、オレやクルー達に見せない素の状態で「私たちズットモ(?)だから!」と叫んで、その様子は竜宮城に居た者たちからの視線を集めるほど必死で「名とは違い、邪な人間では無いのだな」やら「かなわんわー」と感心されていた。

その後部屋で顔を真っ赤にさせて悶えていたのは……黙っていてやるか。

 

 そして、新世界に行くのはオレ達だけではない。

 ジンベエたちタイヨウの海賊団が、クルセイダー海賊団の傘下に入った事をアピールする為にしばらくオレ達の航海に着いて来く事になった。

 ビッグマムに喧嘩を売ったからか、メアリー達は泣いて喜んでいた。七武海が居るのなら心強い、と。

 オレもジンベエ達と冒険ができるのは嬉しいし楽しみだ。

 アピール云々は考えず、これからを楽しもう。

 それともう一人着いてくる奴が居る。

 元バンダー・デッケンの部下、ワダツミだ。

 ワダツミは早々にバンダー・デッケンに裏切られてしまった。それを可哀そうと思ったのか、もしくはワダツミを収容する牢が無いからか、彼はタイヨウの海賊団が身元を引き受ける事になった。この航海で問題が無いと判断されれば、その巨体を活かして魚人島の守備を任せるつもりだ。

 それと、深海を進む際に船を引っ張って貰う予定でもある。

 いきなり人数が増えたが――いよいよシャンクス達が居る海だ。

 再会して、成長したオレを見て貰って、あの時オレに夢を与えたあの人に言うんだ。

 ありがとう、と。

 

 

 @月“日

 

 魚人島を出発し、新世界に向かって深海を航海中、事件が発生した。

 船に、一人の女が乗り込んでいた。

 それも宝物庫の中に。

 気づいたのは、魚人島を出発して暫く後。飯を食って日記の整理をしていたら数が足りない事に気付き、見聞色の覇気を使って船の中を調べて――発見。

 で、甲板に連行して軽い尋問をしたのだが……妙な事になった。

 

 整理するために、まずは船に乗り込んだ女の名前を此処に記そう。

 彼女の名前はカリーナ。本人ははっきりと明言しなかったが泥棒だ。宝物庫に潜んでいたというのもあるが、本人がナミと知り合いだと言っていた。確認の為に記憶を見せて貰ったが事実だった。

 魚人島には今回みたいに海賊船に潜んで上陸したらしい。深海という珍しい環境から、見つからなかったとか。

 で、今回も同様にオレ達の船を狙って潜り込んだとの事。世間を騒がせているオレ達の船なら、大層山のように宝があると思ったらしい。

 ……ここまで問題なく尋問できていた。ここから話がややこしくなった。

 カリーナは、いきなりオレに惚れたと言い出した。一目惚れとか何とか言って、言い寄って来た。それを見たクルー達の反応は、今思い出しても凄かった。

 羨ましいやら、何でアンタだけやら、ジョジョから離れろ(自主規制)やら……オレが死にかけた時もよりも感情を動かしていないか?

 で、憤るアイツらを落ち着かせて聞いたところ、元々タイプだったやら、実際に見て痺れたやら尤もらしい事を言っていた。……オレが書いた日記を持って。

 大方、日記の方は弱みを握ろうとかそんな事を考えていたのだろう。今は厳重に保管しているが。

 その辺りの所を指摘すると一瞬押し黙って、また色気を使おうとしていたが、メアリーがやばかったので彼女の処遇を決める事にした。

 と言っても、意見を取り入れたのはジンベエたちからだけだったが。

 メアリー達が「何故!?」と心外そうに言っていたが、当然の判断だと思う。メアリーは普段と違って正常な判断ができないし、クルー達は色気であっさりとカリーナに傾く。

 そう伝えると反論は無くなった。

 で、カリーナの処遇だが……しばらく一緒に来て貰う事にした。

 それを聞いたカリーナは嬉しそうにしていたが――甘い。

宝を盗もうとしたんだ。ちょっとした罰くらいあっても良いだろうとジンベエたちが言う。新世界に行ったら、過酷な航海が待っている。それに着いて来て貰うだけで、十分に罰になる。

 それに、何かしようとしてもオレが止めれば良いし、その時はオレの判断で彼女を好きにする……。

 そういう事になった。

 

 

 @月<日

 

 カリーナがグロッキーになっていた。

 まぁ、新世界だしな。前半の海とは桁違いな海だ。

 それと、レッドイーグル号が空を飛び、そして操作する事が難しい事を知って苦い顔をしていた。それを見たメアリーが笑っていたので、仕事の量を倍にしておいた。

 なんでー!? と叫び、それを見たカリーナが笑っていたので彼女も仕事の量を増やしておいた。

 余裕が無くなれば、無駄にいがみ合う事も無いだろう。

 それに、何となくあの二人は仲良くなれる気がする。……傍から見たらいつも喧嘩しているが。

 まるで、麦わらの所のロロノアとサンジみたいだ。

 

 ああ、それとあの戦争でオレ達の懸賞金が上がっていた。

 まずオレは5億から一気に7億に上がっていた。それを見たジンベエは、ジョン・スターの名が知れ渡ったのにこの金額は低いと言っていた。そういうものなのかね。

 それと麦わらは4億。エースは6億5000万。サボは5億200万だった。他にも見慣れた奴らの懸賞金が上がっていたが……中でも気になったのがこの二人だ。

 一人は、オレの妹のメアリー。懸賞金はオレと同じように2億上がって2億9800万ベリー。最初はその金額に喜びつつも震えるのかと思ったら、別の所に喰いついていた。

 邪王真眼のメアリー。二つ名がそう変わっていた。しかも、写真もより禍々しいポーズをして、クルー達が思わず「眼帯してください」と言うほどだった。どうやら赤犬を追い詰めた時のモノらしい。

 その後のメアリーはヤバかった。能力使いながら、いつの間にか習得していたCP9の技を使って、全力で暴れ回っていた。こう、弾丸のようにビュンビュン飛び回るみたいな。皆が不思議そうにし、カリーナが邪王真眼と呼ぶまで彼女は悶え続けた。やっぱり仲良いだろうアイツら。

 そして、もう一人はオレの兄弟であるウソップだ。

 以前のそげキングの手配書は破棄され、新たに発行されたのは仮面越しではなくどうどうと素顔を晒したウソップのもの。

 ゴッド・ウソップ。懸賞金2億ベリー。

 初めは、何故此処まで跳ね上がったんだ? と、ウソップの力が世界に認められて嬉しく思いつつも疑問に思った。

 その答えは、メアリーに聞いた。

 何でも、あの赤犬に啖呵切ったらしい。記事を見ると、赤犬が呼び掛けてこうなったらしい。

 ――負けてられないな。

 とりあえず、久しぶりにこの船で宴会をする事にした。

 今日は、気持ちよく酔えそうだ。

 

 

 @月■日

 

 新世界初めての島に着いた。

 ライジン島という、常に雷が落ち続ける島だった。

 最初は唖然としていたが――よくよく考えればこれはチャンスだ。

 オレは、あの戦争で能力が覚醒したらしい。そのおかげで今こうして生きているわけだが、今はその力は使えない。

 魚人島でも試したが、上手くいかず何でだ? と思っていたが……今分かった。

 覇気は、実戦で……それも死にそうな程の激闘をして強くなる。

 そしてオレの能力は覇気に似ている。つまり、ライジン島のような過酷な島なら――覚醒の制御に一歩近づけるのかもしれない。

 そうと決まれば早い。この後上陸だ。傘を売っている婆さんが居たが、命綱があると本当の危機にはならない。ゆえに、体一つで行く。

 という訳で、少し筆を休める。

 

 

 @月□日

 

 (何も書かれていない)

 

 

 @月▲日

 

 (何も書かれていない)

 

 

 @月▽日

 

 (何も書かれていない)

 

 

 @月○日

 

 寝る時間になって、ようやく説教から解放された……。

 ジンベエもメアリーも容赦ないな……。何処から持って来たんだ。海楼石の重石なんて。

 さて、オレの試みだが……結果を言うと成功した。

 と言っても、感覚的に習得率20%といったところ。もう少し続ければ……具体的には後八回くらい死んで蘇生できれば完全に使えるようになると思う。

 だが、これ以上するとメアリーの言う通り「趣味:自殺」になりかねんしな……。

 あと、ジンベエに「そうじゃった。あの隠者の息子でもあったんじゃった……!」と悲壮感たっぷりに天を仰がれるのもキツイ。それとカリーナやアラディン達からドン引きされるのも、クルー達から「知ってた」という目で見られるのも堪える。

 ワダツミだけがオレの味方だったぜ……。

 とりあえず、蘇生作業をしてくれたメアリーには、今度お礼をしないとな。

 

 さて、次の島はどんな所だろうか……?

 




カリーナ

ワンピースフィルムゴールドで登場した映画キャラ。
かつてナミと同業者で、ナミからは女狐と言われている。
ナミ並みにスタイル抜群である。
黒くて大きいモノを「なんて大きいの?」と頬を赤らめて言うシーンは映画作中で屈指の名シーンだと作者は思ってます。
今作では、メアリーとよくキャットファイトして服が乱れ、クルー達の目の保養となっている。


今後も映画キャラが出るので、その度に紹介します

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