とある海賊の奇妙な冒険記   作:カンさん

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主人公日記 十七ページ目

 $月+日

 

 今日、ビッグマムの傘下の海賊と交戦、そしてこれを撃退した。精々足掻けと言っていたが……どうやらそういう意味だったらしい。

 しかしオレ達も強くなった。それに今はジンベエ達も居る。そこまでアイツらとの戦闘は苦じゃなかったが数が多く疲れた。

 

 問題はその後だ。海軍の奴ら、何処から嗅ぎつけたのか、包囲網を敷いていやがった。どうも敵船の海賊達の電伝虫を盗聴して、オレ達の存在に気付いたらしい。

 しかもゼファーも一緒に居て、連戦に加えて激戦。クルー達の疲労がピークに達し、ランのシャボンコーティングを使って潜水して戦線を離脱。あのまま戦っていたら、大将格が二、三人送り込まれていただろう。それが出来るくらいに海軍は強くなっている。

 特にG-5のヴェルゴという男の覇気は、他の中将とはレベルが違っており、オレの拳をまともに喰らって立ち上がる程に強かった。だが、それ以上に奴から感じた殺気が海兵らしく無い事が気になった。視たオーラも、むしろ海賊のような、正義を謳う人間側の者とは思えない程冷たい色をしていた。

 荒くれ者が多いG-5を纏めているからだろうか? とにかくアレは注意した方が良い。

 

 $月-日

 

 最近、ようやくジンベエがオレの傘下になった事が世間に浸透し始めた。

 ……元々、そういう理由だったが今でも気に食わないな。傘下というのは。

 それと本人の前では言わないが、ジンベエは義理でオレの下に着いている。それ自体は別に悪く思っていないし、アイツの性格はオレも好ましく思っている。

 だが、今までのアイツの行動を……アラディンから聞いた話を考えると、もう少し自分に素直になっても良いと思うんだけどな。

 アラディンも同じ気持ちなようで、しかしオレから言うのは止めておいてくれと頼まれた。いつかジンベエが、己の中で結論を出す。そう信じていた。

 だからオレもアラディンのように待つ事にした。

 

 

 $月/日

 

 かつて、シャッキーから聞いたシャボンディ諸島に集まったオレを含めた超新星。そこに黒ひげを入れて世間では最悪の世代と呼ばれているらしい。……どっかで聞いたことあるな。新聞に載る大事件の数々では、大抵この最悪の世代が関わっており、世間ではイかれた奴らだと書かれている。

 特に黒ひげの事は酷い書かれようだが、それと同時にアイツの力が認められているとも取れる。……爺さんの力と縄張りを奪って、な。

 いつか絶対にぶっ飛ばさないといけない。その為にはあの時の力をコントロールできるようにならなければ。

 

 

 $月!日

 

 到着した島で、最悪の世代の一人である“海鳴り”スクラッチメン・アプーと遭遇した。

 当然ながら向こうもオレの事を知っており、一触即発の空気になる。しかし、船長であるスクラッチメンが止めるとそれも収まり、衝突することはなかった。

 それよりも気になったのは、スクラッチメンのあの傷だ。相対して分かるが、アイツは弱くない。だから、あそこまでボロボロに……それこそ完膚無きまでに打倒されているのは普通じゃないと思う。

 奴は何も語らなかったが、何かあったんだろう。

 

 

 $月)日

 

 新世界に入って随分と経った。当初はデタラメな気候にいっぱいいっぱいだったオレ達も随分と成長をした。何人かは覇気を扱えるようになり、アーサーは愛剣を半分の確率で黒刀へと強化できるようになった。ランもメアリーの指導もあって能力の使い方が上達し、能力者でありながら水中戦が可能となった。シャボン玉を割られたら沈むが……。

 カリーナも随分と逞しくなった。そう伝えるとあまりいい顔をせず「綺麗になったって言ってくれた方が嬉しいんですけど?」と言って、初めて会った時のように色仕掛けをし、いつものようにメアリーと喧嘩をしていた。アイツ、絶対にメアリーとの喧嘩を楽しんでいるだろう。

 そしてメアリーだが、アイツも強くなった。CP9の六式のうち「剃」「月歩」「嵐脚」「指銃」の四つを既にマスターし、最近は能力と併用した新しい技を作っている。かなり凶悪な技で、正直オレもアイツとは戦いたくないくらいにエグイ。

 この前、海賊相手に試し打ちをしているのを見たが……いったい何処を目指しているのだろうか。というか、アイツの手にスカスカの能力が渡ったのが一番やばかった気がする。さらに極めたらオレでも防ぐのが難しくなる。

 見聞色の覇気も人並みには使えるようになっている。武装色の覇気は未だに苦手みたいだが、感覚は掴んでいるようなので近いうちにラン達に追い着くだろう。ラン達はラン達で見聞色の方は難航しているからな。

 お互いに得意なもの、不得意なものを教えあっていけば強くなる。

 オレはそれが嬉しい……嬉しいのだが。

 何故アイツらは、オレが手伝おうとすると全力で拒否をするのだろうか?

 ジンベエに聞いても目を逸らされるし、メアリーにははっきりと邪魔だと言われる始末。

 ……今日はもう寝よう。

 

 

 $月=日

 

 さて、どうしたものか……。

 航海の途中、ある冬島に迷い込んだ。それがまさか四皇カイドウのお気に入りの島だとは。

 ただ迷い込んだだけだからさっさと去ろうと思ったが……ある男によってそれが阻まれた。

 その男の名はX・ドレーク。赤旗の異名を持つ最悪の世代の一人。奴はカイドウの傘下になったのか、オレを見つけると戦いを仕掛けてきた。どうもカイドウがオレに用があるらしい。十中八九親父関係だろう。

 ドレークは動物(ゾオン)系古代種の悪魔の実の能力者で、覇気を纏ったオレの肌にその強靭な顎で歯を食い込ませてきた時は少し驚いた。しかし、オレも柔な鍛え方はしていない。逆に硬度を上げて歯を折ってやった。

 だが、今となってはそれも少し後悔している。ドレークは、どうもオレ達を捕らえるつもりは無く、追い出すのが目的だったらしい。好意からか、それとも別の意図があったのか。どういう理由でそうしたのかは知らないが……今度会ったら牛乳を渡そう。

 

 

 $月~日

 

 またゼファーの奴が襲い掛かってきた。もう挨拶をしたら即戦闘みたいな感じだ。

 ただ、今回はメアリーが直接ゼファーと戦っていた。

 いい加減、謂れのない罪で追われるのが嫌になったらしい。聞いたところ、戦争での奇行は親父の指示で行っていただとか。今思うと、多分掌の上でコロコロと転がされていただけだと思う。

 親父は性格が悪いからな。昔の日記を見てみると、改竄した跡があった。何が「……追い付かないといけない人が増えたな」だ。他にも所々手を付けやがって。おそらく同行していた時にこっそりと変えたんだろう、能力を使って。

 時間でも止めたか、過去を変えたか。もしくは事実を変えたか。その辺は分からないが、考えるだけ無駄だろう。

 で、メアリーもその事にやっと気づいて親父に対してキレて、半ば八つ当たり気味にゼファーと戦った。

 

 

 

 その結果懸賞金が5200万上がって4億になった。

 掛ける言葉が見つからなかった。即日繰り上げだった。

 この5200万は、アイツが自分で上げたものだ。もう立派に邪王真眼だ。

 メアリーは、泣いた。

 

 

 $月$日

 

 カリーナが熱を出して倒れた。偉大なる航路(グランドライン)は天候や季節が滅茶苦茶だからな。町のある島に向かって、薬を調達する事にした。船医が言うには、今持っている薬では完璧に治らないらしい。

 それに、ここ最近は海賊やら海軍やらで忙しくまともに買い出しも出来なかったしな。

 クルー達もお小遣い貯まっているから楽しむと息巻いていた。

 ジンベエ達は船番しておくらしい。ワダツミはおいしいお菓子が欲しいと言っていた。

 色々と買っておくか

 

 

 $月&日

 

 あのアマ、絶対に許さん。

 “大食らい”ジュエリー・ボニーの能力で、不覚にもオレは弱体化させられてしまった。というか幼児化した。

 そのせいで熱で倒れていた筈のカリーナに好き勝手弄ばれるわ、メアリーがそれに対抗して窒息させられかけるわと散々だった。クルー達は、逃げたジュエリー・ボニーを探して「俺達も!」とアホな事を抜かしていた。

 幸い、時間をかけてオラオラの能力で解除したが……あの姿で風呂に入れられかけた時はどうしようかと思った。

 とりあえず、次にあのアマに会ったら泣かす。絶対に泣かす。

 

 

 $月°日

 

 変な奴に襲われた。

 ボクの人気を返せとか最悪の世代は全員殺すだとか、特にオレはとか……今も良く分からん。

 だが、流石新世界の海賊と言うべきか。実力は折り紙付きだった。本人が言うには才能だけで此処まで来たらしいが……それでも十分強い。

 オレの拳を受けて砕けなかったあの剣と、美麗さを兼ね備えた(本人曰く)剣技は厄介だった。何とか気絶させる事ができたが――その後の方がもっと厄介だった。

 顔が豹変したかと思うと、見聞色の覇気で見切るのが難しい速度で斬りかかってきた。殺気を感じて咄嗟に武装色の覇気でガードしていなかったら……おそらくオレはこの世に居なかっただろう。

 時止め……スタープラチナ・ザ・ワールド(いつもの如くメアリー命名)でようやく対処できた。偉い目にあったが……その分時止めの力の良い練習になった。

 ……いや、アイツとはもうあまり会いたくないな。奴とぶつかる度にメアリーの目が何となく怖かった。キャベンディッシュの追っかけが送る視線とはまた違った熱視線。カリーナがドン引きして「よろしい、ならば布教だ」と言って部屋に籠ったが……何だったんだろうな?

 

 

 $月@日

 

 

 カリーナが、メアリーは腐っていると言っていた。どういう意味なのだろうか?

 別にモリアが従えていたゾンビって訳じゃあないし、初めて会った時のようなクレイジーさは無い。聞き返しても、ジョットは知らなくて良い世界だと言っていたが……。

 メアリーも何やら反省しているのか、珍しくカリーナに謝っていた。あの後何があったんだ?

 

 今日は珍しく海賊や海軍からの追手が無かった。辿り着いた島も、新世界にしては普通で穏やかな夏島だった。

 この前立ち寄った町でタイミングよく水着を買ったので、今回は修行無しの完全休暇にした。そう伝えると全員喜び思い思いに過ごし始めた。

 クルー達は競争したり、アラディン達にボードを引っ張って貰ってはしゃいだり、ランの能力でダイビングを楽しんでいた。本来なら能力者であるオレは、海に入ると力が抜けて溺れるが、ランの能力のおかげで海を楽しむことができた。

 カリーナは日光浴をしていた。例によって男どもは……まぁそういう事だ。

 メアリーもカリーナと一緒に、浜辺でゆっくりするかと思えば、クルー達と一緒になって騒いでいた。まるで子どもみたいに。

 ただ、オレがジンベエ達と海獣を獲りに行っていた時に何かあったらしく、クルー達の頬に真っ赤な紅葉ができていた。聞いても顔を真っ赤にさせて聞くなと言うので追及しなかったが――とりあえず兄としてクルー達の記憶を一部消しておいた。

 鬼とか悪魔とか言われたが知らん。オレは海賊だ。

 で、夜は海獣の肉を使ってバーベキューをした。いつも栄養を考えて料理を作っているが……こういう時くらいは、思いっきり食っても良いだろう。

 普段口うるさく言っているからか、アイツらの喜びっぷりは凄かった。美味しそうに食べていたので、食いながら漏らしていた愚痴の数々には目を瞑ろう。しっかりとメモはしておいたが。

 さて、今日の日記はこれくらいにしようか。まだ騒ぎ足りないし、オレも行こう。

 


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