私が彼と出会ったのは、“祭礼の蛇”が神の概念を創り、“覚の嘯吟”としての私が導きの神となって暫く経った頃のことである。
「お前は…もしや導きの神か?」
私は同朋達が少ない所を歩いていただけなのに、何故かそう呼び止められたのである。
相手を見てみると、巨大な黒い蛇。創造神であった。
何となく誤魔化せないと直感した私は彼にこう言った。
「そちらの名は偽りであって、私は“大智の天蓋”と言うのだ」
「そうか」
彼はそう言った後に少し間を置いてからこう切り出した。
「知恵者よ。お前は何がしたいのだ?」
この世界の神同士の最初の問答はこうして幕を上げた。
「何がしたい、とは?」
「なに、余は同朋達が好きだ。だからその願いを叶えるべく神という概念を創り、自ら神となった。しかし、お前の場合はただ面白おかしく様々なことを伝え続けたことで余と時をほぼ同じくして神となった。お前が何をしたくてそれらを伝え続け、神にまでなったのか聴いてみたかったのよ。そう思っていたらたまたまではあるが、お前を見つけて直感的に導きの神だと思った。これは運命ではないかと思っての先の言よ」
回りくどい言い方ではあるが、芯の通った立派な存在であることは分かった。ならばこそ言ってやろうではないか。私がやりたかったことを。
「私は世界を守りたいのだよ」
「守りたい、と言うか」
「ああ。世界の黎明期、我々は突如としてこの世に生まれ、同朋達の誰もが必死に生きていた。どのように生きればいいのか、どのように歩めば良いのか、全て手探りだった。その中で無為に争い命を散らした者さえいた。そんな者を減らす為に情報を発信し続けた。しかし私自身の名は当時悪い意味で有名だったのでな。架空の同朋“覚の嘯吟”として伝えたのよ」
「その結果が導きの神か」
「そうだな。“覚の嘯吟”の名は便利だった。否、便利すぎたと言っても良いだろう。勿論真実しか伝えてはいないが、それでも恨みを買うことも多い中で、真実を伝え続けて同朋達を応援するための隠れ蓑として。実際に導きの神を探した者達はかなりの数いたようだからな」
そこで一旦間を置いてから話を続ける。
「これから先、新たな概念が生まれるだろう。新たな生きるための術が生まれるだろう。新たな娯楽が生まれるだろう。その中でより便利に生きるための術を同朋達は選ぶだろう。そして…あくまで可能性でしかないが、危険が伴うかも知れない事すらあるだろう。それを行った同朋だけでなく、その周りの同朋達、ひいてはこの世界を滅ぼす事すら考えられる。それを避けるための術を識り、彼らを導いていきたい。勿論、これからは私以外でも様々なことを考え、予想して、同朋達を導いていく、貴殿や私の生徒達のような同朋達もいるだろうから、私の助けなくば儚くその業績も識られずに朽ちていくような、そんなものを中心に伝えていくことになるだろう。それが私の生き方だよ」
「そうか、そういう生き方もあるのだな」
彼は少し考えた後にそれだけ言って去って行った。