それぞれの憂鬱~深海棲艦大戦の軌跡~《完結》   作:とらんらん

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イベントに集中していて、結局ストックを出す羽目に……

イベントはE-7まで行きましたが、第一ゲージで盛大に沼っています。誰か助けて、ボスケテ……


鎮守府編5話 提督と潜水艦達とゲーム事情

 とある冬の日の朝。鎮守府の主たる提督は、自室で机に向かっていた。

本日は非番。緊急時は早急に鎮守府で指揮を執らなければならないが、秋津洲をトップとした航空偵察部隊の報告では、管轄内を含めた周辺海域には異常はないとのこと。このパターンだと、十中八九自分が出なければならない程の事件は起こらない。そのため本音としては惰眠を貪りたいところではあったが、目の前の書類がそれを許さなかった。

 

「大攻勢か」

 

 資料には深海棲艦の太平洋における一大拠点であるハワイで、深海棲艦の活動が活発になっている様子が、詳細に記載されている。これまでの傾向からして、近々深海棲艦による大規模攻勢が行われるであろうと、本土では考えられていた。

 

(やっぱりこの間の艦隊は強硬偵察だったか)

 

 以前、近隣鎮守府との共同作戦で殲滅した深海棲艦の艦隊は、質はかなりのものだったがそこまでの数はいなかった。また、艦隊も高速で航行できる艦種でまとめられていた。対深海棲艦のセオリー的にも、あの艦隊が人類の戦力を測るための強硬偵察だったと考えるのが自然だった。

 現在の状況からすると、次に本土から来る指令は大体予測はつく。大規模攻勢に対する艦隊戦力の派遣だ。そしてこの指令が各鎮守府の提督たちにとって頭を悩ませるものだった。

 この戦力の派遣はただ単に自艦隊の強力な艦娘を出せばいいものではない。艦隊を派遣している間も、通常の鎮守府の業務も行わなければならないし、鎮守府の防衛戦力も残す必要がある。更に艦娘は武勲を望む者も多く、それらの意見もくみ取らなければならない。艦種、艦隊練度、適性、鎮守府に残す人員、予備戦力などバランスを取らなければならないのだ。それはこの鎮守府においても例外ではない。

 

「さてどうしたもんか」

 

 この鎮守府の艦娘の練度は全体的に高いのだが、他の鎮守府と比べてクセが強い。例を上げれば大和型戦艦二番艦『武蔵』は戦意が高く勇猛な言動が多いが、彼女は防衛戦が得意としており、攻勢は苦手だ。このような特性も考慮して艦隊を編成しなければ、彼女たちの力は十全に発揮できないのだ。

 この鎮守府に所属する艦娘の詳細なデータがまとめられたファイルと睨めっこしつつ、ああでもないこうでもないと、唸る提督の耳に部屋にノックの音が響いた。

 

「てーとく、遊びに来たでち」

 

 返事を待たずに、声の主が部屋に乗り込んで来る。巡潜乙型改二の三番艦である伊58、通称ゴーヤだった。後から伊168ことイムヤと、伊19――イクが続く。

 

「いらっしゃいと言いたいところだが、仕事中だぞ」

「今日は非番じゃない」

「……いや、仕事が残っていてな」

「どうせ大規模攻勢対策の編成でしょ?辞令が来てからでも十分間に合うじゃない」

「……」

 

 イムヤの言葉にぐうの音も出ない提督。事実、艦隊派遣の事例は来ておらず、今編成を考える必要はないのだ。暫しの沈黙の後、提督は一つため息をつく。

 

「分かった降参」

「分かればいいのね」

 

 イクがうんうんと頷きつつも、手土産で持ってきた菓子類をサイドテーブルに広げていく。どうやら以前本土で買ったものを持ってきたらしい。

 

「で、なにやんだ?」

「丁度四人だしマ○カーとかどう?」

 

 そう言いつつも、イムヤが手早くゲーム機をテレビにつなげる。この部屋で据え置きタイプのゲームをするのはよくあるので、彼女の動きには淀みがない。

 

「そんなところか」

「じゃあ、早速やるでち」

 

 そういうわけでゲームが始まったのだが――

 

「提督……、相変わらず弱いのね」

 

 イクのこの一言に尽きた。

 何せ十レースやって常に最下位なのだ。こう言われても仕方がない。因みに潜水艦達の勝率は、イムヤが四回、ゴーヤが三回、イクが三回程一位を取るという接戦だったりする。

 

「むしろお前らが強すぎるんだが……」

 

 提督の名誉のために記すが、彼は特別レースゲームが苦手なわけではない。強いて言えば割と得意な分野であった。しかし彼女たちは明らかにこのゲームをやり込んでいる様子だった。

 

「そもそも、なんで潜水艦はゲーマーなんだ?」

 

 現在、鎮守府に所属している潜水艦は全員で十二隻。好きなジャンルこそ違いがあるが、全員がゲーマーと呼ばれる人種だった。

 

「敵が来るまで水中でやることないし、ゲームでもしてなきゃ暇が潰せないでち」

「いや、仕事しろよ」

 

 潜水艦達の思わぬサボりにツッコミを入れる提督。しかし三人とも気にした様子もない。

 

「オリョクルって暇なのね」

「まあ群狼戦術だから、敵が来るまで待つ必要があるけどさ……」

 

 オリョールクルージング。通称オリョクル。

 概要は陸地消滅を狙う深海棲艦(輸送ワ級)の艦隊を潜水艦で特定の海域で待ち伏せし、殲滅するといもの。要するに陸地を囮とした群狼戦術だ。勿論、敵の航行の予測を行う必要もあり事前準備も必要だが、潜水艦だけで行うことの出来る上に、ほぼ確実に戦果を挙げられる有効な戦術として、提督たちの間では有名だった。因みに名前の由来はこの戦術を考案した鎮守府が受け持つ管轄海域を、非公式にオリョール海と呼称していたことに起因する。

 この鎮守府では囮になりそうな無人島が一か所存在し、そこを起点にオリョールクルージングを行っていた。潜水艦達からは守る地点が一か所なので楽だ評判の任務である。

 

「ゲーム機が水中で使えるのか?」

「明石さんに改造してもらったわ」

「ああ、うん……」

 

 相変わらず明石は便利屋扱いである。――本人は好きでやっているようだが。

 

「となると配置的に対戦は出来ないし、一人プレイが出来るゲームが多いのか」

「基本的にはそうだけど、対戦プレイもするわよ?」

「……水中だと電波はほとんど届かないはずだが?」

 

 群狼戦術の性質上、包囲陣を敷くために各艦は数十m以上間隔を開けている。そのため電波は届かないのだ。電波を使用するためには海面に出る必要があるが、待ち伏せの意味をなさないし、敵に電波を受け取られかねない。

 

「その時はこれを使ってるのね」

 

 そう言って渡されたそれを提督は手に取る。それは大きめの巻取り式ケーブルであり、その両端には接続端子がついている。つまり――

 

「通信ケーブル……」

 

 まさかのアナログ式だった。確かにこれなら電波の問題は解決される。昔はこれを使っていた子供は多かったというが、数十mもの通信ケーブルでワイワイとゲームをする姿は実にシュールな気がする。そもそも現在のゲーム機に通信ケーブルは対応していないはずだが、大方明石が改造したのだろう。

 

「ホントに何でもありだなアイツ」

 

 そう言えば明石は鎮守府の業務以外にも、個人で何でも屋の様な事をやって居る。かなり儲かっていると本人が言っていた。

 

「明石さんにはよくお世話になっているわ。オリョクルに持っていくゲーム機も私が大破しても殆ど無傷なくらい頑丈だし」

「任○堂製かな?」

「この場合は明石堂でちね」

 

 湾岸戦争時のエピソードは潜水艦達も知っている位有名らしい。

 

「なんでも艤装用の鋼材を使っているから頑丈なんだって」

「へぇ。……艤装用の鋼材?」

 

 聞き捨てならない言葉に提督は思わず聞き返す。艤装用の鋼材を初めとした各種資源は、その重要性から鎮守府による管理が行われている。使用する場合は提督の許可が必要であるのだが――

 

「俺は明石から何も聞いてないぞ?」

「え?明石さんは提督の許可はもらったって言ってたよ?」

「ん?」

 

 意見が食い違っている。提督はしばし考え込み――そして結論を出す。

 

「……横領?」

『……』

 

 沈黙が部屋を支配した。

 数時間後、明石の工廠に余罪の追及のために編成された特別チーム(全員武闘派)が乗り込むという大騒動はあったが、割りとどうでもいい話である。

 




追記、20分後のラスダン17回目、瑞鳳さんが決めたああああああ!(ノД`)・゜・。
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