それぞれの憂鬱~深海棲艦大戦の軌跡~《完結》   作:とらんらん

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時系列は少なくとも本編99話以降になります。


イベントは現在、E-3のラスダン中。一度様子見でギミック無しで行きましたが、やれなくもなさそうですが安全を期してギミックを解除して改めて行く予定です。


それぞれの憂鬱外伝41 ある駆逐艦についてのインタビュー・上

○横井正美 横須賀地方隊所属提督

 元在日米軍所属のミサイル駆逐艦「デューイ」についてですか? ええ、良く知っています。私の艦隊はあの艦に助けられましたからね。

 あの艦と会ったのは、2017年9月16日の戦艦棲姫艦隊による東京湾侵入未遂の時です。あの時、私は水雷戦隊を率いて、横須賀鎮守府から出撃しました。目的は勿論、東京湾に侵入しようとしている戦艦棲姫を迎撃するためです。

 ……今ならお話しできますけど、勝ち目のない戦いに挑むという事で、私も含めて艦隊の士気は最低レベルでした。

え? 敵は立った一隻だから水雷戦隊でも倒せるのに? ですか。今と当時とは全体的な艦娘戦力が違います。当時は世界的にも艦娘の運用が始まったばかりで、艦娘の絶対数も少なかったですし、当然高練度の艦娘も極僅かでした。しかもあの時、私が率いていたのは、今朝建造されたばかりの艦娘ばかりで、練度も低く、連携も碌に取れない。いくら相手が一隻とはいえ、勝ち目はありませんでした。

ですから私たちが戦艦棲姫と接敵した時、採れる戦法は限られていました。ええ、魚雷の射程ギリギリからの一斉雷撃です。命中率が低い事は重々承知でしたが、戦艦棲姫を倒せる可能性がある戦法はこれしかありませんでした。

 この苦し紛れの決死の一斉雷撃ですが、分かってはいましたが通用しませんでした。秋山艦隊の奮闘で損傷しているにも関わらず、戦艦棲姫はいとも簡単に魚雷を避けていきました。……あの時程、血の気が引いた事はありません。この攻撃が失敗すれば、後は蹂躙されるだけでしたから。

 でも奇跡が起きたんです。最後の一本を避けられそうになった瞬間、後方から飛んできたミサイルが戦艦棲姫に命中して目くらましになり、雷撃が成功したんです。

はい、そのミサイルを撃ったのがデューイです。――この後の話はご存知ですよね?雷撃が成功した事により戦艦棲姫の足止めに成功し、更に間を置かずに秋山艦隊が到達したお蔭で、戦艦棲姫を撃破できました。

デューイのお蔭で勝てた。私はそう考えています。

 

 

○秋山叢雲 伊豆諸島鎮守府所属艦娘

 一連の後始末が終わった後、横井提督と一緒に、私と司令官もデューイのクルーにお礼を言いに横須賀の米軍基地に行ったわ。

 あの時の事は良く覚えてる。基地の敷地内を歩く私たちに対して、アメリカ軍の人たちは何処か余所余所しかったわ。そうね、強いて言えば、「負い目があって会いたくなかった」って感じよ。

 当然よね。いくら政府からの命令だからと言って、味方を見捨てたんだもの。ましてや私たちはその見捨てた相手。そんな相手を前に何も負い目を感じない奴がいるなら、ただのクズね。

でも例外はいたわ。駆逐艦デューイのクルーよ。命令違反ギリギリの事をしたみたいだけど、誇りは失わなかった。だから基地の中で彼らだけは、私たちを笑って迎え入れてくれたわ。

 そんなクルーの中心にいたのが、艦長のアラン・クラーク中佐よ。私は何系白人とかそういうのは見分けは付かないけど、ドイツ系らしいわね。見た目は短い茶髪をオールバックにしてて、第一印象は理知的な渋いおじ様って感じだったわ。

 でも話してみたら、見た目に反して結構豪快な性格だったわ。例の援護攻撃も「やりたいからやった。政治的配慮? はっ、クソくらえだ」なんて、言ってたわよ。……中佐となると、割と政治関連も留意しなきゃならないはずだけど、良かったのかしらね?

 ともかくこの時の縁で横須賀の在日米軍とは、彼らが帰還するまで交流を続けることになったわ。私と司令官は離島の鎮守府にいたから交流は限定的だったけど、横井提督の所は頻繁にやり取りをしていたみたい。

ええ、そうよ? 横須賀地方隊の艦娘が在日米軍に対して、それなりに良い感情を持っているのは、私たちや横井提督の艦娘が協力して、情報を流したからよ。最初は皆白い眼で見てたけど、ああなった背景を教えたら、同情的になってたわ。お蔭で在日米軍の軍人たちと余計な衝突は無かったし、在日米軍が本土に帰還が決まった時も、それを惜しむ声はそれなりにあったわ。

……今思えば、本当にあのまま日本に残ってくれていた方が良かったのは、皮肉な話よね。

 

 

 

○ジョン・サンダース 造船技師(当時)

 ……これ軍事機密にならないか? いやアメリカは滅んだし良いか。

アメリカに帰還したデューイは太平洋艦隊に組み込まれる事になったんだが、すぐさまドック入りする事になったよ。日本じゃ戦い続きだったにも関わらず物資不足で碌に整備が出来なかったらしいからな。ドック入りした時にはボロボロだったよ。

最初はそのまま修理して、出渠後は直ぐに太平洋艦隊に復帰する予定だった。アメリカは艦娘大国とは言え、深海棲艦から集中して攻められているからな。そこまで余裕がある訳ではなかったから、自然な流れだったから、この時は何も思わなかった。

 で、さあ修理を始めるぞってなった時に、急に海軍省の奴らがやって来て待ったがかかったんだ。

 

「デューイを新型兵装レールガンの試験艦として運用する」

 

 そんな事を言ってきた時のあいつ等の顔はやけに覚えてる。やけに疲れた顔をしていたよ。あれだ、上司に厄介な仕事を押し付けられた時のやつと、全く同じだった。後で聞いたんだが、海軍は乗り気じゃなかったんだが、政界がレールガンを押し付けてきたらしい。で、丁度デューイがドック入りしているから、ついでにレールガンを載せちまえってなったんだ。

 こうして始まった改装だったが……、ああ、全く滅茶苦茶だったさ。一応改装の設計図は引かれていたが、かなり無理のある物だった。そりゃそうさ。確かにアーレイ・バーグ級は優秀だが、レールガンなんて新機軸の兵装を装備する事なんて考慮されていないんだ。あんな電力を馬鹿食いするような兵装を乗せるなんて無茶が過ぎた。

改装内容? 簡単に言ってしまえば、元の艦砲をレールガンに換装、電源として艦載ヘリ関連の兵装を全部降ろして、空いた格納庫とヘリコプター甲板にレールガン用の発電機を乗っけるってやつだ。

バランスも何もあったもんじゃない。出渠後の試験航海で操艦に苦労したっていうのも頷ける代物だった。クルーの入れ替えが最小限だったのも、デューイを熟知しているベテランじゃないと、この改造された駆逐艦を運用できないから、ってのもあったんだろうな。

 

 

 

○シドニー・パーマー アメリカ海兵隊員(当時)

 駆逐艦デューイについて訊きたい? すまねぇが、詳しい事は知らないぞ? 精々、レールガンの試験艦になった事くらいだ。……ああ、待て待て。確かに艦の方は良く知らないが、俺はクルーとは交流があったんだ。ハイスクール時代の友人がデューイにいたから、そいつのツテで内部事情もある程度知ってるぜ。

 おう、じゃあ何が聴きたい? ああ、改装期間中についてか。あの当時のクルーだが……、陸で艦娘の環境改善に取り組んでいたよ。

 どういう事だって? そうだな。あの当時のアメリカにおける艦娘の扱いは知ってるだろ? 便利な兵器扱いで、人権なんてない。作戦中に沈む事を前提とした命令を出すような軍人だって沢山いる。しかも国民は艦娘を危険視するような奴だらけだ。

 正直言うぞ。在日米軍が帰還して、アメリカでの艦娘の扱いを知った時、デューイのクルーだけじゃなく、俺を含めた元在日米軍の全員が、日本との余りの違いにカルチャーショックを受けたんだ。俺たち元在日米軍組は艦娘が出現した時は日本にいたし、実際に艦娘と交流していたからな。その分アメリカ本国との余りの落差に驚いたし落胆した。

 そんな事情もあり、デューイのクルーは元在日米軍の面子と一緒に、艦娘の地位向上の啓蒙活動をしていたのさ。最初は本土組と対立する事もあったが、元々親艦娘だった太平洋艦隊司令官のアーロン大将が俺たちの側に立ってくれたお蔭で、環境の改善はスムーズに行った。

 ああ、そうそう。俺たち軍人と艦娘が交流する事は度々あったんだが、その中でもデューイのクルーは艦娘に人気があったな。アイツらは日本じゃ危険を冒して艦娘を援護した事があったから、その分信用があったんだろう。――俺の友人が護衛駆逐艦たちに懐かれていて、よく休日に一緒に遊んでたせいで、ロリコン疑惑が出てきたのは笑っちまったがな。

 

 

 

○マーク・ヘイズ アメリカ太平洋艦隊司令部勤務(当時)

 改装が終わり出渠したデューイですが、当然直ぐに戦闘に参加した訳ではありません。レールガンという新機軸の兵器を搭載したわけですから、主な任務はデータ取りでした。ええ、私も試験の際に何度かデューイに乗艦していました。

 ……改装されたデューイですが、正直な所、お世辞にも褒められた物ではありませんでした。レールガンは元の艦砲であるMk.45 5インチ砲よりも重量があった上に、レールガン用の電力の確保に艦載ヘリの格納庫と甲板を潰してそこに発電機を置いたせいで、トップヘビーになりましたし、速力も低下していました。またレールガンを使うためのシステムについても、突貫工事で作られていたせいで、不具合も度々発生しましたし、最初期にはレールガンに関係のない武装システムに干渉してしまう事すらありました。

……まあ、そこは名目上試験艦ですからね。次々出て来る不具合に、その都度対処しながら試験をしていましたよ。

 そうそう。目玉となるレールガンですが、威力については申し分ありませんでした。目標として浮かべられていた専用のブイが木っ端微塵になるのは圧巻でしたね。開発した企業が「これからの艦砲はこれにとって代わるだろう」と豪語するだけありましたね。

 え、評価ですか? 確かに火力には目を見張るものがありましたが、そのまま採用するのは無理ですね。実際、議会は押し通そうとしていたらしいですが、大統領と海軍が断固拒否しましたし。あのレールガンを使うには、当時の主力駆逐艦であるアーレイ・バーグ級では無理がありましたからね。

 とはいえ海軍側もレールガンの火力には目を引かれるものがあった様で、レールガンを標準搭載した次期主力駆逐艦の設計が始まっていた様です。噂ではアーレイ・バーグ級の発展改装型だそうで。これが完成していれば、アメリカ海軍は更なる飛躍を遂げていたでしょう。

 ……もっとも、その様な機会は永遠に訪れる事はありませんでしたが。

 試験航海が始まって暫くして、オルソン提督の反乱、テキサスでの虐殺から始まった一連の艦娘との対立の末に、全ての艦娘は合衆国を見限り出ていってしまいました。そして同時期にハワイからの大規模攻勢があり、太平洋艦隊は住民の避難の為の時間を稼ぐために出撃していきました。試験艦扱いだったデューイも第35任務部隊に編入され、出撃していったのです。

 

 

 

○レイモンド・テイラー アラスカ州政府職員(当時)

 東太平洋で戦った太平洋艦隊がこのアンカレッジに入港すると聞いた時、多くの人は首を傾げたんだ。アラスカ州には軍港であるダッチハーバーがあるんだぜ? 普通ならそっちに行くはずなのに、なんでアンカレッジに来るんだって思ったモノさ。

 そんな事を考えている間に、太平洋艦隊が入港して来たんだが、それを見た時、疑問なんてすっ飛んじまったよ。噂じゃあ出撃した太平洋艦隊は空母、駆逐艦その他諸々を合わせて60以上の大艦隊だったはずだったんだ。だがアンカレッジにやって来た艦隊は、駆逐艦4隻、補給艦2隻の計6隻。しかもどれもボロボロだったんだ。これを見たら何があったか嫌が応でも理解させられたさ。太平洋艦隊はボロ負けしたんだってな。

 ああついでに、なんでこいつらがアンカレッジに来たかも、乗員から教えてもらったよ。簡単さ。ダッチハーバーは深海棲艦のせいで壊滅しちまったから、ここに来たんだとさ。

 デューイ? ああ、あの変な艦砲を載せてた艦か。アイツもボロボロだったけど、他の艦と比べたらまだキレイだったな。

 話を戻すぞ。アンカレッジに入港した太平洋艦隊の残党だけど、最初は直ぐに出港するつもりだったらしいが、西海岸が深海棲艦に占領されたせいで帰れなくなっちまったんだ。艦隊の方でも本土の軍部に指示を仰いだらしいんだが、本土はそれどころじゃなくて、碌な返答も無かったらしい。結局艦隊はどうすることも出来ず、アンカレッジに立てこもる事になった。

 アンカレッジにいる間の艦隊だけど、本当にやる事が無かったみたいだったな。一応、艦隊の任務はアンカレッジ防衛になっていたらしいが、当の深海棲艦がアメリカ本土に夢中なせいで、アンカレッジに攻めて来る事なんて無かったんだ。それのせいか、休日にパブにやってくる軍人たちは、割と気が緩んでたな。

 そんな日々が終わったのは、アメリカが崩壊してから暫くしてからだった。

 知っての通り、アメリカ崩壊以降も深海棲艦の侵攻は続いていた。だからアメリカ大陸の人間は、深海棲艦から逃れるために海を渡ろうと、各地の港に集まっていたんだ。当然アンカレッジも例外じゃない。元合衆国民だけじゃなくて、カナダ人もロシアに逃れようと次々と集まっていた。幸いな事にアラスカは州政府がまだ機能してたんだが、州政府は各船会社から接収した船を使って、船が満員になり次第、難民を脱出させようとしていたんだ。

 でもそれにそれまで極潰しだった太平洋艦隊が待ったをかけた。何でも各船にあった無線に通信繋げてこんな事を言ったらしい。

 

「このままバラバラに出港した所で、深海棲艦に食われるだけだ」

 

 確かにそうだが、最初は皆無視しようとしていたよ。一刻も早くアメリカ大陸から逃げ出したい奴らがこんな事を聴くはずがない。でも次に無線から届いた言葉で、踏みとどまる事になったんだ

 

「船団を組んでくれ。そうすれば我々アメリカ太平洋艦隊が命を賭けてロシアまで送り届ける」

 

 ああ、これが後に「ダンケルク作戦」と呼ばれる脱出作戦の始まりだったんだ。

 

 




次回はダンケルクの戦いよりもヤバい撤退戦となります。
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