それぞれの憂鬱~深海棲艦大戦の軌跡~《完結》   作:とらんらん

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次のイベントに先駆けて、EO攻略中。最低でも二個勲章はとっておきたいです。


それぞれの憂鬱外伝62 深海棲艦大戦の軌跡4

 2039年、オーストラリアを攻略したことにより、戦況は大きく変わった。インド洋は完全に人類の海と化したため、EUはインド洋に張り付けていた戦力を大西洋に呼び戻す事が出来たし、日本も東南アジア戦線が解決したことにより、戦力の多くを太平洋戦線に注力(ミクロネシアは未だに深海棲艦の勢力圏ではあるが、戦力としては小さい上に確保しても旨味は少ないため、早急に攻略する必要性も薄いという事でオーストラリア防衛用の戦力で対処している)、新大陸からやってくる深海棲艦との戦いに集中していた。

 残る深海棲艦の有力な勢力圏は、南北アメリカ大陸。これを攻略すれば、長きにわたる深海棲艦との生存競争の勝利が確定する。誰もそれを理解していた。だが、

 

「あそこの攻略は、一苦労どころの話じゃないぞ……」

 

 そんな状況を前に各国の政府及び軍上層部は、いささか尻込みしていた。

これだけを聞けば、「生存競争で何を言っているんだ」との文句が飛んできそうではあるが、彼らにも言い分はあった。南北アメリカ大陸の攻略はこれまでの様には行かない事は目に見えていたからだ。

 まずその立地が厄介だ。陸続きだったインド、東南アジアの島々から近かったオーストラリアとは違い、南北アメリカ大陸の拠点には太平洋と大西洋という大海が横たわっている。この距離の暴虐は攻め入る側からすればあまりにも厄介な存在だ。深海棲艦がうじゃうじゃいる大海を超えるだけでも相当の労力がかかるのに、更に現地で橋頭保を築いて進撃、占領しなければならないのだ。どれだけの物資、軍事費、労力が掛かるか予想もつかない。一応、シベリア―アラスカ間であればそこまで距離はないのだが、現地の気候、自然環境を考えると、大部隊の展開は難しい。

 また南北アメリカ大陸の大きさも厄介な点の一つだ。人類は大陸の一つであるオーストラリアの攻略の経験もあるが、南北アメリカ大陸の広さはその比ではなく、占領にも時間が掛かる。更に戦力面でもハワイ、アゾレスから移ってきた1級拠点が北アメリカに、イースター島沖の特級が南アメリカにあり、深海棲艦側の戦力は先のオーストラリアを軽く超えていた。

 そして何より重要な敵戦力だが――、生産能力は北アメリカは「最低でも」日産約2500隻、南アメリカは約3000隻との予測がされており、大陸に駐留する戦力は約20年にも及ぶ深海棲艦の統治によって予測すら立てられない状況であった。

 国家を運営する者たちは、そんなどう考えても攻略に苦労するのが確定な地など、好き好んでいきたくはなかったのだ。

 

「アメリカが生きてれば、こんな苦労はしなくて済んだんだ」

「言うなよ……」

 

 とはいえ、何もしないのも不味いのは事実でもある。太平洋戦線にしろ大西洋戦線にしろ突破されれば即本土決戦であるので、何か手を打つ必要はあった。

 

「衛星による戦略爆撃でアメリカの深海棲艦を弱体化させた後に攻略すれば、安く済ませられるはずだ」

 

 そんな時期に世界各国の協議の元、打ち出された各国共通の軍事方針がこの「戦略爆撃論」だった。

 衛星による戦略爆撃とはいっても、深海棲艦への戦意喪失効果は見込めないし、マイクロ波故に敵拠点や水路の破壊は困難ではあるものの、移動中の無防備な敵へ攻撃して深海棲艦の総数を減らせるし、そして何よりも弾は実質無限である上に恐ろしく安い。これをフル活用しようというのだ。

 勿論、この方式ではアメリカ攻略までに相応の時間が掛かるという欠点もあるが、予算や各種資源、戦力が浪費されるよりはずっとマシだと各国は考えていた。

 そんな思惑の元、オーストラリア攻略戦の後始末が未だ続けられている2039年2月より、宇宙太陽光発電衛星9基(ついでに今年中に新たに5基がロールアウト予定)と多数の中継衛星、照準のための軍事衛星を活用した戦略爆撃が開始された。

 

「データが来たぞ。ミシシッピ川北部に約30隻」

「よし照射。……命中、撃破確認」

「オハイオ川河口部に照射――あ、クソ。結界で防がれた」

「しゃーない、切り替えていけ。弾は実質タダだし」

 

 そんなやり取りが、軍の宇宙太陽光発電衛星の管轄部署で行われていた。軍事衛星で敵を見かけたら即発射して敵を撃破する。それが今の彼らの仕事であった。

中継衛星によって攻撃範囲が南北アメリカ大陸全てカバーされている上に24時間攻撃可能なので、アメリカの深海棲艦にいつでもどこでもマイクロ波を届ける事が出来る。攻撃を防がれても問題ない。弾は無限なのだ。後にこの部署の者からは「まるでテレビゲームでもやってる気分だった」とのコメントが残されている。

 そんな一方的な攻撃を続ける人類。だが深海棲艦も黙ってはいなかった。

 爆撃開始から半年後の2039年8月のある日、アメリカの低軌道上にあった中継衛星の一基との交信が途絶えた。この事件は当初は衛星の故障と判断されていたのだが、時間が経つごとに2基目、3基目、4基目と通信が途絶し始めた事から、深海棲艦による攻撃の可能性が高い判断。偵察衛星を中心とした分析が行われる事となったのだが、思わぬ事実が発覚する。

 

「ASATか!」

 

 映像解析の結果、先の2~4基の衛星破壊の原因が、深海棲艦の大型機であるフリントが高高度で発射したミサイルが低軌道上にあった中継衛星を破壊したことが判明したのだ。これにより、深海棲艦は対衛星ミサイルという宇宙太陽光発電衛星への一定の対抗手段を得ている事が確認された。

 また調査の過程で南アメリカ、ブラジル北西部のマナウスの特級拠点の解析が行われていたのだが、その際に新たな脅威が発覚する事となる。

 

「おい、なんだよこの大型砲」

「デカいな。サイズ的に16インチくらい口径があるぞ」

「列車砲かよ。それにしちゃ砲身が滅茶苦茶長いけど」

「こんなんなんに使うんだ……いや、待て。これなんかレールガンっぽくないか?」

「勘弁してくれよ……」

 

 まさかレールガンと思われるような物が発見されたのだ。解析班曰く、サイズ的にも南アメリカ大陸全土が射程に入る可能性が高いとの事で、攻略に大きな支障をきたすのは確実であり、軍上層部は頭を抱える羽目になる。

 ――後の調査で件の巨大砲はレールガンではなく巨大な高射砲である事が判明。IDROは最初の1基目の破壊はこの高射砲が原因であり、恐らく人類の衛星を撃墜するための手段の一つとして建造したのではないか、との結論を下しているのだが、そんな事などこの時誰も分かるはずもなかった。

 だがこのレールガン(と思われるもの)の発見による影響は、軍以外の別の所にも飛び火し、炎上する事となる。

 

「このまま深海棲艦を放置してしまうと、技術を発展させていって、そのうち人類並の科学技術を手に入れるんじゃないのか?」

 

 深海棲艦はこれまで大型戦闘機を始めとした人類が使うような技術を繰り出してきており、ついにはレールガンすら実現しようとしている。このままいけば、大陸間弾道ミサイルやら軍事衛星、果てには深海棲艦に絶大な効果を挙げている発電衛星すら完成させるだろう。そんな事になればせっかく逆転した戦況が停滞してしまう。いや敵の技術進歩のスピードを考えれば人類を追い抜いていき、最終的には圧倒的な技術差で人類が滅ぼされかねない。

 そんな不安が各国の国民の間に広がり始めたのだ。そしてそのような不安は、すぐに変異する。

 

「手が付けられなくなる前に、一刻も早く深海棲艦を駆逐するんだ!」

 

 このような意見が世界各国で一挙に広がり、あっという間に主流となったのだ。これが根拠のない与太話から来たヒステリーなら各国政府も無視していたのだろうが、厄介なことに今回の件に関しては過去の事例を鑑みても起こりうる可能性は非常に高い上に、各国の軍部も件のレールガンのような物を発見して以降は、民衆と同様に攻勢を主張していた。

 各国政府はこれらの圧力を跳ね除ける事が出来ず、「戦略爆撃論」から軍の投入による早期アメリカ攻略へと方針転換し、準備を進める事となる。

 余談だがこの方針転換の際、間違った戦略を推し進めたという理由により、各国で軍上層部や軍に近い閣僚の交代劇が起こった。それは日本も例外ではなく、防衛省で戦略爆撃論を熱心に推し進めていた防衛大臣及びその賛同者の辞職及び閑職行きが見られた。なお防衛大臣の後釜だが、

 

「またですか……」

 

 この重要局面を担えるのは軍事知識を持ち、かつ経験豊富な人材でなければいけない、との名目で、ピンチヒッターとして坂田が4度目の防衛大臣就任を果たしていた。

 

 

 

 ともかく、各国は南北アメリカ大陸攻略のために調整を行いつつ、2040年6月にはアメリカ攻略における前哨基地の確保のためにハワイ及びアゾレスの攻略を同時に開始。件の地は深海棲艦にとっても前線基地であるため激しい抵抗が見られたものの、戦線が整理され集中投入できるようになった戦力と、これまでアメリカ大陸を焼いていた衛星群を攻略に当てた事もあり、2か月も経たずに粉砕。

 

「急げ! 深海棲艦は待ってはくれないぞ!」

「急いで作り上げるんだ!」

 

 すぐさま後方で待機していた工兵部隊が上陸し、穴だらけの両島を各国の軍は急ピッチで整備を開始。更に後続で大量の援軍も届けられたお陰で、翌年の2041年4月にはいささか歪ながらも立派な軍事基地を完成させた。

 そしてこの基地の完成は、南北アメリカ大陸攻略の開始の合図あった。

 ハワイから新型空母である「かが型」空母2隻を中心とした自衛艦隊、アゾレスからはクイーンエリザベス級4隻を中心としたNATO艦隊がほぼ同時にアメリカに向けて進軍を開始。道中では発電衛星対策なのか結界を展開できる姫級もしくは鬼級を旗艦とした100隻程度の小艦隊があらゆる方角から文字通り無数に襲いかかってきたり、発電衛星登場以来その数を増やしていた潜水艦による群狼戦術に遭遇したりと、多大な妨害を受けつつも両艦隊は海洋を突破。

 その後アメリカ本土まで辿り着くと、自衛艦隊はサンディエゴで、NATO艦隊はニューヨークで上陸戦を開始し、更に同時刻にこれまで沈黙を続けていたロシア艦隊が事前の打ち合わせ通りアラスカへの上陸戦を敢行。この北アメリカ大陸での3方面からの上陸戦に、北アメリカの深海棲艦の対処能力は飽和し、日本が軽空母「いずも」を喪失、NATOは空母「プリンスオブウェールズ」が大破するも、日本、NATO、ロシアは北アメリカ大陸への上陸を果たした。

 

 その後の各軍だがその行動は事前の打ち合わせに基づき、一方は連携を、もう一方は単独での攻略に乗り出していく。

 連携を取ろうと動き始めたのは、日本とロシアの太平洋に面している二国だった。日本はサンディエゴの防備を固めると、防衛戦力を残して内陸部への進撃は避けてそのまま沿岸部に沿って北上を開始、同じくロシアもアラスカから沿岸部に沿って南下を始めていく。これは両軍の地上での合流を目指しての行動だった。日露連合軍の攻撃目標はカナダのエドモントンにある1級拠点。攻略のためにも必ず合流する必要があったのだ。

 対してNATO艦隊はニューヨーク上陸後、戦力の一部を分離させ海軍の艦艇と南下させると、単独でデンバーの1級拠点に向けて進軍していく。元々NATOは現時点で最大の艦娘戦力を有しているイギリスがいる上に、多数のヨーロッパ諸国が参加しているため、艦娘戦力の規模は日露連合軍のそれを大きく上回っているのだ。数の力で押し通るつもりであった。

 3軍は道中で内陸部からの反攻や深海棲艦支配地域の沿岸部からくる攻撃に会いながらも前進を強行。特に元アメリカ合衆国領は深海棲艦も重点的に戦力を配備していたせいか、各地で激戦が繰り広げられる事となったが、多数の被害を被りつつも前進を強行。2043年2月にはバンクーバーにて日露両軍の合流に成功し、両軍はエドモントンへと進撃していく。

 なおこの北アメリカ攻略戦では北米の深海棲艦も不味いと感じたのか、南米から援軍と思われる艦隊が度々現れていたのだが、

 

「ここで援軍を入れさせる訳にはいかんよ」

 

 太平洋では日本の自衛艦隊がメキシコ沖に、大西洋ではキューバに突貫で基地を築いていたNATO艦隊がカリブ海に展開しており、これらの援軍を尽く侵入を阻止し、北アメリカの上陸部隊を陰ながらに援護していた。

 そして翌2044年1月、

 

「攻撃開始」

 

 両拠点が互いが互いに援軍を送れないようにするために、後方の各国の軍上層部の人間が現場の情報を元に調節をしていった結果、日露連合軍がエドモントンに、NATO軍がデンバーにほぼ同時に到達、すぐさま攻略を開始した。

 戦局は終始人類側が優勢だった。これまでで2度の1級拠点の攻略により経験は十分得ていたし、戦力も本国が出し惜しみなしに送り込んでいるので十分。更に1級拠点の同時攻略により大規模な援軍はありえない。各軍は深海棲艦を次々と撃破、敵拠点を切り崩していき、2044年2月の終わりにはデンバーが、3月上旬にはエドモントンが陥落した。

 その後の動きだが、北米の各国の軍はここで一度解散し、独自行動を始めた。これは今まで1級拠点攻略が第一目標であったため、北アメリカ大陸には未だに深海棲艦の支配地域が多数残っており、それらの掃討をしなければならない、――との共同声明が発表されているのだが、実態は、

 

「よーし、切り取りの時間だ」

「今度は植民地獲得競争にならなくて良かったな」

 

 各国による北アメリカ大陸の持ち分の確保に動いただけであったりする。なおこの切り取りは、北米自体が広大な上、未だ各地に中小規模の深海棲艦の拠点が点在していた事もあり、2046年中ごろにようやくある程度終わったという。

 

 裏で生臭いやり取りこそあったものの北アメリカ大陸を攻略し、深海棲艦最後の領域である南アメリカ大陸に王手をかけた人類。マナウスの特級拠点――かつて艦娘出現前に各国の海軍からなる連合艦隊をコテンパンに叩きのめした因縁の拠点を攻略出来れば、後は消化試合という事もあり、マナウス攻略が最終局面でもあった。

 とはいえ、人類には懸念もあった。

 

「あのレールガンをどうしようか……」

 

 この時、彼の大砲を未だにレールガンと思い込んでいる各国の軍上層部は頭を抱えていた。射程が南米全土に及び、防御不能かつ排除も内陸部故に容易ではない彼の砲がある限り、現地に橋頭保を築く事すら困難なのだ。マナウス攻略のためにはかの地のレールガン、通称マナウスカノンの排除は必須であった。

 

「ICBMや巡航ミサイルとかは?」

「結界で防がれるのがオチだな」

「じゃあ発電衛星は? あれなら迎撃不可能だ」

「マイクロ波にハードターゲットの破壊は向いていない」

「神の杖ってあったよな。衛星からタングステンの棒を落とす奴。それならハードターゲットにも有効だろ」

「一から衛星を作れってか?」

「軌道上からの降下物を対象にピンポイントに撃ち抜く技術はない。そもそもの話だが、神の杖ってそこまで火力はないって聞いたことがあるぞ?」

 

 このように各国の軍では様々な意見が飛び交ったという。そして、長きにわたる議論の末、彼らはある答えに辿り着いた。

 

「航空機による飽和攻撃による破壊。これしかない」

 

 人類が操る航空機群が道中の梅雨払いをし、艦娘たちの操る航空機群で赤色結界を突破、防空網を突破しマナウスカノンを撃破する。今ある手札ではこれが最も成功確率が高いと考えられたのだ。

 この結論に至った各国は即座に連携し、急ピッチで整備したパナマに戦力を集中させていった。各国の空軍が保有する各種機体は勿論、海軍からはパナマ近海に日英露の残存する空母が集結、そして艦娘たちが操る航空機も文字通りかき集められていく。

 

 そして2047年1月。作戦司令部の号令と共に、各国の戦闘機群と大量の空中給油機、そして艦娘を載せた輸送機が出撃。こうして後に、「勘違いから始まった史上最大の航空作戦」と呼ばれる「マナウス航空戦」が開始された。

 道中では人類の行動に触発されて南米北部に集められていたブラックウィドウを始めとした大型機や深海棲艦から出撃した小型機群による迎撃に幾度となく遭遇する事になるも、人類側の航空機隊は字通り各国からかき集められた結果、数的優位であったこともあり、これらの妨害を尽く撃退。相応の犠牲を払いつつも約2500㎞もの距離を空中給油を繰り返しながら強引に突破、とうとうマナウス上空まで辿り着いた時、作戦は次の段階に移行する。

 

「航空隊発艦!」

「行って!」

 

 戦闘機隊の後方に随伴していた輸送機に搭乗していた空母艦娘たちが航空機隊を発艦させたのだ。瞬く間に空中で巨大な航空隊が形成され、次の瞬間にはマナウスの拠点、その西側にある巨砲めがけて襲い掛かったのだ。

 対する深海棲艦側も慌てて防衛のための機体を発艦、更に拠点に設けられている防空設備や戦力を用いて防空網を形成、艦娘たちが操る航空隊を迎え撃つ。

 両者とも後がないため一歩も引かず、双方の機体がまるで雨のように堕ちていくという、壮絶な消耗戦が繰り広げられるマナウスの空。そんな戦いの勝者は――艦娘たちだった。

 

“コース入った!”

“投下っ!”

 

 深海棲艦たちが作り上げた防空網を潜り抜けたTBFアベンジャーの軍団がマナウスカノンの砲身の根本への爆撃を成功。弾薬が誘爆したのか、大爆発と共に崩壊したのだ。

 

 マナウスカノン撃破。この報はすぐさま各国に届けられた。各国の軍関係者は歓喜の声を上げ、そして号令を出した。

 

「南米への上陸作戦を開始せよ」

 

 南米攻略の一番の障害はなくなったのだ。マナウス航空戦で戦い抜いた者たちのためにも、この機を逃すなどありえない。各国の軍は即座に出撃し、敵がマナウス航空戦に気を取られていたこともあってか、若干の抵抗を受けつつも日露連合軍が元エクアドルの最大の港湾都市グアヤキルに、NATO軍がブラジルのマカパに上陸に成功。両軍合わせて30万もの軍勢は河川を伝ってマナウスを目指して進軍を開始した。

 しかしながらこの南米の攻略は苦労の連続であった。

戦力面ではこの南アメリカ大陸は、その高い生産力によって北米以上の戦力を保有しており、南米に上陸した各軍を大いに苦しめていたのだが、それ以上に障害となっていたのはアマゾンの大自然だ。

 どうも深海棲艦はアマゾンの熱帯雨林を自然の防御陣地として活用しているらしく、かの地には人類がいた時よりも広大な自然環境が残存していたのだが、この環境が大軍の歩みを大いに阻んでいた。

 熱帯雨林という高いレベルの不整地のせいで大軍の進撃速度は大幅に低下し、更にはマラリアを始めとした疫病も発生。戦闘部隊を構成する艦娘たちは病気にはならないので問題はなかったのだが、彼女らをサポートする軍人たちが次々と罹患していった。そんなガタガタな所に、地の利を生かして深海棲艦たちが攻撃を仕掛けてくるのだ。人類の進撃は遅々として進まなかった。

 

「……いっそ、枯葉剤でも撒くか?」

「気持ちは分かるが、流石にダメだろ……」

 

 そんな愚痴があちこちでこぼれつつも、各国は南米に大量の物資を送り込み、更に後方要員として稼働時間が改修された三五式自立機械歩兵の大量投入、そして軌道上ではいくら撃ち落されてもいいように宇宙太陽光発電衛星用の中継衛星が大量に配備。全力で、だが着実に目標に向かって前進を続けていく。

 そして2049年12月には両軍が最後の深海棲艦の大型拠点であるマナウスに到達、すぐさま全軍にて攻略戦が開始された。

 その戦いはこれまでの戦いの集大成といっても過言ではないだろう。空では人類が操る最新鋭機と深海棲艦が最後まで保有していたブラックウィドウを始めとした大型機、そして両軍の小型機たちが航空優勢を確保するために鎬を削り、地上では敵の拠点を落とさんとする艦娘と何とか撃退しようとする深海棲艦による激しい砲撃戦が、陸地で河川で行われている。

 この戦いは約4か月もの長期にわたって行われ、陸空共に多数の損害が生じた。

だが――その犠牲は無駄ではなかった。

 

 2050年4月23日。最後まで抵抗を続けていた未確認の姫級深海棲艦を、とあるイギリス系艦娘が撃破したことにより、マナウス拠点の占領が完了。

 この時をもって、生存競争としての深海棲艦大戦は終わりを告げた。

 

 

 




とりあえず何とかダイスの女神さまのオーダー通り、2050年までに大まかな攻略ができました。次回は後日談かな?


今回出てきた新ワード

〇ASAT
深海棲艦側テコ入れその2。アメリカの対衛星ミサイルそのまま。

〇マナウスカノン
深海棲艦側テコ入れその3。見た目は16インチ砲の砲身を連結させたような感じ。深海棲艦は人類の衛星を打ち落とすつもりで作ったのだが、人類にレールガンと勘違いされた。何かで聞いたことがあるが、アメリカでは戦艦用の16インチ砲を連結させた物で、実際に砲弾を宇宙空間まで到達させたことがあるらしい。

〇かが型航空母艦
30年代末に海自に配備された航空母艦。基準排水量6万トン、満載で8万トンで、キティホーク級とほぼ同等。なお見た目はやっぱりニミッツ級に似ている。一番艦「かが」、二番艦「あかぎ」
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